映画のメモ帳+α

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キャロル

キャロル(2015 イギリス・アメリカ・フランス)

「キャロル」(2015)原題   CAROL
監督   トッド・ヘインズ
原作   パトリシア・ハイスミス『キャロル』
脚本   フィリス・ナジー
撮影   エド・ラックマン
衣装デザイン サンディ・パウエル
音楽   カーター・バーウェル
出演   ケイト・ブランシェット ルーニー・マーラ
      サラ・ポールソン ジェイク・レイシー カイル・チャンドラー
      ジョン・マガロ コーリー・マイケル・スミス ケヴィン・クローリー

第88回(2015年)アカデミー賞主演女優(ケイト・ブランシェット)、助演女優(ルーニー・マーラ)、脚色、撮影、作曲、衣装デザイン賞ノミネート。第68回(2015年)カンヌ国際映画祭女優賞(ルーニー・マーラ)

ミステリー作家パトリシア・ハイスミスの映画化作品と聞いて、まず思い浮かぶのがヒッチコック監督の『見知らぬ乗客』(1951)とアラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』(1952)だろう。ともに名作として語り継がれている。特に『太陽がいっぱい』は日本公開時、かの淀川長治氏が"同性愛を描いている"と指摘し物議をかもした。この説、当時はほとんど受け入れられなかったらしいが、その後原作のパトリシア・ハイスミスが同性愛者であることが判明して信ぴょう性が高まり、今では"淀川氏は立派な評論家の仕事をした"という評価が定着している。そのパトリシア・ハイスミスがが長篇第1作『見知らぬ乗客』の発表前、クレア・モーガン名義で発表した作品が"The Price of Salt"。原作は同性愛者のあいだで話題を呼び、100万部を超えるベストセラーとなっている。これを鬼才トッド・ヘインズ監督のもと、ケイト・ブランシェットルーニー・マーラの2大女優で映画化したのが『キャロル』。求婚されて戸惑う百貨店員テレーズと離婚協議中の人妻キャロルの恋物語である。といっても同性愛色はさほど強くなく、"人が人に惹かれるのに理由などない"ことを映像からにじませる"純文学映画"といったほうがよい仕上がりとなっている。



 一部ネタバレ的表記があります。未見の方はご注意ください。



ケイト・ブランシェットはいつもながら本当に巧い。
前半はスカした女に徹していたが、キャロルとテレーズが旅行に出かけてから以降は何ともいえない絶妙な演技の連続。

・2人の情事が盗聴されていることを知って、その雇われ人を罵倒するときの表情
・2人が別れたあと、電話口でうなだれる
・弁護士との話し合いで、夫側の言い分を娘との面会権の主張以外はほぼ全面にのみ、「そんなに醜い人たちじゃないはず」といって立ち去る。
・テレーズがニューヨーク・タイムズにカメラマンとして就職したことを知り、車から窓ごしに彼女の姿をみるときの表情
・ひさしぶりにテレーズと会って「愛している」と伝えるときの表情
・そして、最後、テレーズが彼女を訪ねてきたときの驚き、そして嬉しさを押し殺しつつもわずかにこぼれてしまったような表情。

ほんと微妙な表情の変化でかすかな感情の機微を見事にみせる。
もうケイト・ブランシェットSHOWといいたくなる名演の連続で思わずため息。
キャリア最高といってよいほどの演技で2度の受賞歴(および同性愛映画というレッテル)がなければ本年のアカデミー主演女優賞は文句なく彼女にわたっただろう。

一方のルーニー・マーラも、"食事のメニューすら自分で決められない女"テレーズが徐々に成長していくさまを見事に体現。まるでオードリー・ヘプバーンのようなピュアな雰囲気。『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)の主演女優と同一人物とは思えないほど!でもラストは決めてくれます。

また、色の使い方もトッド・ヘインズ監督らしい。少しけばく、不調和なようで調和しているような。
今回、意図的に画質を粗くしているらしく、それが不安感をいっそう醸し出す
赤と白の色使いの見事さを指摘している評があったが、個人的に印象深いのは緑のまぶし方。
ケイト・ブランシェットは緑のワンピースをよく来ている。

緑は"目に優しい色"なので、文字に色をつけたい、でもあまり強調したくないとき、個人的によく使う。当サイトの各ページ、アカデミー賞受賞歴などを書いている箇所を緑色にしているのはそういう理由だったりします。作品の受賞歴、興味ある人はあるだろうけど、ない人は...だからうるさくない色を使っているんです。そんなことどーでもいいですね、はい。(汗)
話それるけど、これがアカデミー作品、監督賞に漏れたことは本来、大事件でっせ。
アカデミー賞は同性愛映画には(俳優の演技以外)厳しい。そう、差別されているのは黒人だけじゃないんです。

本作の緑は、少しくすんでいるため、"目に優しい"とか"安心感"とは少し違うニュアンスを醸し出している。
緑だけでなく、本作の色使い、"微妙な不調和感"が作品内容と見事にマッチしている。
夕陽が落ちる刻、道路が淡いパープルで覆われたようにみえるワンシーンにも感嘆した。

映画『キャロル』はこれぞ映画といいたくなる仕上がり。
物語は比較的オーソドックスだが、台詞よりも映像で感情をにじませる。
うがった見方をすれば、求婚に戸惑っていたり、離婚協議中だったり不安な状態の中で
救いをもとめるように2人は出会った。これは本当の愛なのか?という視点も成り立つかもしれない。
それぞれ、相手の男があまりにバカに描かれていることもうがった見方を促進しそうですが
映画の品格がそんな邪心を覆ってしまう。
同性愛映画というより、"人が人に惹かれるのに理由はない"ことを映像からにじみだしている作品。
これは純愛映画、純文学映画なんです。
台詞よりも映像で感情をにじみだすことは映画として当たり前のことなんだけど
最近ではね..優れた監督、脚本、撮影、俳優...全ての条件がそろったときでないとなかなかお目にかかれない。
『キャロル』がその条件を満たしている映画であることは間違いない。

『キャロル』は既に名作の風格をもつ作品10年後、20年後も残り、ずっと語りつづけられるだろう。
見事としかいいようがないです、ハイ。
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2016.02.15 Monday | 00:13 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.06.24 Saturday | 00:13 | - | - | - |

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