映画のメモ帳+α

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ショウ・ボート (1936)

ショウ・ボート(1936 アメリカ)

ショウ・ボート(1936)原題   SHOW BOAT
監督   ジェームズ・ホエール
原作   エドナ・ファーバー
脚本   オスカー・ハマースタイン二世
撮影   ジョン・J・メスコール ジョン・P・フートン
振付   リロイ・プリンツ
音楽   ジェローム・カーン
出演   アラン・ジョーンズ アイリーン・ダン
      ヘレン・モーガン ポール・ロブソン
      チャールズ・ウィニンガー ハティ・マクダニエル

1927年、ブロードウェイで上演された『ショウ・ボート』は、単純なシンデレラ物語が主体だったこれまでの、ミュージカルとは一線を画すものだった。結婚生活の困難などリアルな生活描写、当時タブーとされていた黒人差別問題を堂々と扱った本作は、今でもミュージカル史を語るうえで絶対に外せない、真のアメリカ的ミュージカルを確立した作品としてその名をとどめている。その『ショウ・ボート』は過去3回映画化されている。1回目1929年版は通常のドラマ。この2回目からがミュージカルで、1936年版は舞台キャストの多くがそのまま映画版でも出演、楽曲の作詞を手掛けたオスカー・ハマースタイン二世が脚本も手掛けるなど、3本の映画化の中では一番ブロードウェイ版に近い仕上がりとなっている。3回目1951年はテクニカラーで作られているが、この1936年版『ショウ・ボート』が決定版という評価は今でも揺るぎない。2006年AFIが選んだミュージカル映画ベストの24位に選ばれている。

 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。



オリジナル予告編は現存していない模様。

物語
ミシシッピ川沿岸の町にショウ・ボート「コットン・ブラッサム」号がやってきた。一座の主演女優ジュリー(ヘレン・モーガン)に黒人の血が流れていることが暴露され、州の法律に従ってジュリーは追放されてしまう。困ったアンディ船長(チャールズ・ウィニンジャー)は、娘のマグノリア(アイリーン・ダン)と彼女を追い掛けてきた青年ゲイロード(アラン・ジョーンズ)を急遽代役に選んで舞台を乗り切った。2人は恋仲になり結婚。だが、ゲイロードは上品な紳士を装っていたものの、沿岸を渡り歩く賭博師であった。娘キム()が生まれたころ、親子3人はショウ・ボートを離れ、シカゴに移り住む。ゲイロードはまたしても賭博三昧で金がなくなり、アグノリアと娘を置いて逃亡した。困り果てたマグノリアは舞台の仕事を得るため、売り込みをはかる。その舞台はジュリーが主演を務めていたが、彼女が困っていることを察したジェリーはマグノリアに気づかれぬようそっと身を引いた。ジェリーの代役として舞台にたったマグノリアは観客席に父親を発見。やがてマグノリアは引退を表明し、娘キムにその座を明け渡すことにする。そして娘の初舞台を見守っていたとき、ゲイロードがやってきた。

何といってもキャストが皆いきいきしている。それもそのはず、主要キャストは既に舞台で同じ役を経験済みなのです。ヘレン・モーガンチャールズ・ウィニンガー、タップダンサー役のサミー・ホワイトは1927年オリジナル講演からの引き続き。アイリーン・ダンはオリジナルの全国公演でマグノリアを演じ、アラン・ジョーンズは夏季公演でゲイロードを、そしてポール・ロブソンは1928年のロンドン公演と1932年のリバイバル公演で黒人召使を演じている。

船長役のチャールズ・ウィニンガーがいい味出してたな。いいオトッツアンだ。
上演中、悪役が観客から撃たれてしまい、場をつなぐためにひとり芝居する場面は面白い。
それにしても、アイリーン・ダン、当時既に37〜38歳。マグノリアの少女時代まで演じるのはいくらなんでも...。最初、ヘレン・モーガンをアイリーン・ダンと間違えてしまい、えっアイリーン・ダンってこんな顔だったっけとは思いました(笑)。でも同時代の女優の中で実力はアイリーン・ダンがトップじゃないかな。普通のドラマ演技はもちろん、歌えるし、コメディも抜群にうまい(『新婚道中記』の暴演をみよ)。

さて、楽曲にうつります。舞台での16曲中、9曲が残され、映画用の新曲として3曲がつけ加えられています。"Why Do I Love You"がカットされていることが話題となりました。(収録はされたものの、上映時間を削るためやむなく削ったとか)まあ、BGMとしてインストでちらっと出てくるんですけど。

 "Cotton Blossom"
ショウ・ボート(1936)2オープニング。ジーグフェルドをほうふつさせるウェディングケーキ風の映像。紙でつくった看板にキャストのクレジットがかかれている。そこで流れているのがこの曲。タイトルはショウ・ボート船の名前です。映像のかわいらしさと快活なコーラスのアンバランスよ。

 "Where's the Mate For Me?"
高貴な青年を装ったゲイロードが"僕の伴侶はどこ"とさわやかに?歌います。その後、マグノリアと会うわけですね。でも、「あの靴を見ろよ」と囁かれる。見る人は見ています。

 "Make Believe"
自称高貴な青年は、「僕の愛を信じてほしい」と優雅に歌います。オンナはあっさりほだされるわけです。
つづいてアイリーン・ダンも「信じれば心配も消えるわ。素晴らしいことを想像しましょ。私の愛を信じて」と返す。若いっていいですねえ、アイリーン・ダンは若くないけど(笑)。

 "Ol' Man River"
"ミシシッピと呼ばれる老人に自分もなりたい。父なる川よ、すべてを知っていても何も答えない。静かに流れているだけ。生きることを諦めて死ぬことにおびえるても川はただ流れているだけ"

という内容。
黒人であるがゆえ奴隷でこき使われるだけで将来希望がもてない。
そんなやるせない思いをミシシッピ川に託すように歌う歌。

『ショウ・ボート』と言えば、この曲と言われる代表曲。ストーリーには直接関係しないんですけどね。ポール・ロブソンの名歌唱で知られている。疲れて、醒めきった感情を絞りだすような歌い方、歌い終わったあとの笑顔もよい。51年版のウィリアム・ウォーフィールドも悪くはないが、オペラ風に歌いすぎる。歌詞の内容からしてこんなに歌いあげるべき曲じゃない!

"Ol' Man River"はすっかりスタンダードとなっており、白人であるフランク・シナトラやジュディ・ガーランドまでこの曲を取り上げているが、この映画でのポール・ロブソンが決定版と言われている。もともとロブソンの舞台出演が決まったとき作られた曲、いわば彼のためにかかれた曲らしいので、はまるのは当然かもしれぬ。



 "Can't Help Lovin' Dat Man" (愛さずにいられない)
ヘレン・モーガン扮するジェリーがマグノリアに「あなたは恋をすると周りが見えなくなるタイプだから気をつけなさい」とアドバイスした後歌う。
"私は死ぬまであの男を愛する。怠け者のあの男を。愛さずにいられない"という歌。
召使い役のハティ・マクダニエルとポール・ロブソンも加わり、アイリーンがそれに合わせてニワトリのようなダンス。外でもみんな踊っている。ミュージカルらしいのどかな場面。ハティ扮する召使いが「なぜ黒人の歌なのにあなたが知っているの?」とジェリーに訪ねる場面はその後を暗示します。この曲もスタンダード。多くの歌手が録音していますが、決定版はビリー・ホリデイかな。Billie Holiday - Can't Help Lovin' Dat Man

この後、ジュリーの素性がばれ、彼女はボートを去る。それを複雑な表情で見送る黒人たち。
後半、マグノリアがナイトクラブに売り込みをする場面でこの歌を歌う。
それをジュリーが「あの歌は昔、私が教えたの」とつぶやく場面が印象的。

その後、ゲイロードが"船に泊まらせてくれ"という厚かましいお願いをします。
マグノリアの母は「何か高貴さ、賭博師よ」と彼の正体を見抜いたように吐き捨てますが
緊急時のため、いやいや彼を雇い、マグノリアと2人で代役をつとめる。
ショーは成功します。

 "I Have the Room Above Her" (新曲) - Allan Jones and Irene Dunne
夜、窓辺でゲイロードが「彼女は上の階にいる僕が愛していることに気づいていない。なぜはっきり告白しなかったのだろう」続いてマグノリア「私は平静でいられない。彼は部屋に戻ってしまった。」とゲイロードが歌った歌詞をそのままお返しする。

 "Gallivantin' Aroun'" (新曲)-Irene Dunne and show boat chorus, danced by Irene Dunne and show boat chorus
ショーボートのステージでアイリーン・ダンがblackfaceで歌う。"ぶらぶら歩いていた。一晩じゅう踊っていたからいつ寝たかもしらない。ぶらぶらしていた。でもそれでおしまいよ。だってあなたといるほうが楽しいことに気付いたから"と歌う。最後、かもめ(アヒルにみえる)のぬいぐるみが空を飛ぶが、うまく動かず観客から笑われるというオチ。

 "You Are Love" (愛するあなた)
夜、密会の場面でゲイロードとマグノリアのデュエット。
"愛しい人よ。今日も明日も一緒に暮らそう。2人でいればどこでも天国"
この曲はラストにもう一度歌われ
ステージ上の娘キムから「母が一番好きな曲」と紹介され
客席で年老いたマグノリアとゲイロードが歌いあげる。

 "Ah Still Suits Me" (新曲)
黒人召使役、ポール・ロブソンとハティ・マクダニエルのデュエット。
ポール・ロブソンの役を大きくするために作られた曲。
「怠けものといわれようが俺には俺の生き方がある」
豆を向きながら歌うロブソン。
ひたすら文句を言い続けるハティに「結局、俺が好き」とロブソンが抱き寄せるという歌。
ポール・ロブソン、ここではコミカルな味を良く出している。それにしても、公開当時この映画を見た人は、ハティ・マクダニエルが3年後『風と共に去りぬ』で黒人初のオスカー女優になるなんて誰も予想しなかったでしょうね。

 "Bill"
helen morganすっかりやさぐれてしまったジェリーがリハーサルで歌う。
"理想の恋人をいつも求めていた。でもビルはタイプじゃない。ハンサムじゃないし、背も高くない。着こなしだってテッドやジムよりひどい。頭が悪くても彼に心がときめくの。私のビルだから。"
ヘレン・モーガンが物憂げにしっとりと歌い上げる。
後半のハイライトのひとつ。
その後、"女は男で変わる。シカゴで一番だった彼女をならず者がだめにした"と陰口をたたかれる。

ヘレン・モーガンはシカゴのナイトクラブで歌っており、その後ブロードウェイで活躍した。
Torch singer(失恋や片思いを嘆く、感傷的なラブソングを歌う歌手)の第一人者として有名。
この映画から5年後、肝硬変により41歳の若さで亡くなっている。

 "Goodbye, My Lady Love"
舞台での脇役コンビ、クイーンイー・スミスとサミー・ホワイトが
"さようなら、恋人よ。また戻ってきて愛してね"と踊りながら明るく歌う。
まあ、次のマグノリア登場場面での前座ですね。

 "After the Ball"
マグノリアが復活ステージで歌う。最初は調子が出ず、「引っ込め」とやじられていたが
客席にいた父親の激励で調子を取り戻し、最後は喝采を浴びる。
宴が終わったあとのむさしさを歌った曲。歌いあげたあとのアイリーン・ダンの表情が良い。

ところで、この1936年版、『ショウ・ボート』映画決定版と言われているわりには、DVDとか見かけないと思いません?ショップはもとより(通販では買えます)、レンタル店でも大規模店舗じゃないと置いていないのでは?51年版は(廉価版も発売されていることもあり)嫌というほど見かけるのに。レンタル店にいくたびに、"こっちじゃない!見たいのはこの前のやつ!"と何度心の中で雄たけびをあげたことか(笑)。

そもそもこの1936年版、アメリカでもしばらくの間、なかったことにされていたらしいのです。理由は"Ol' Man River"で名歌唱を披露したポール・ロブソン。ロブソンはこの映画のような怠けものではなく、公民権運動、共産主義者としての側面も持ち、スターリン平和賞まで受賞してしまっている。そのおかげで1950〜1970年代あたりまでロブスンが出演した映画は市場に流通しなくなり、この『ショウ・ボート』もアメリカではしばらく1951年版しか見ることができない状況になった。(もしかして1951年版はそれを見込んでつくった?)アメリカでこの1936年版のDVDが公式にリリースされたのは何と2014年だという。(imdb参照。ホンマかいな?)こういう本国の事情が日本にも影響しているのかな、と。関係ないような気がしなくてもないけど。

当時のユニバーサル社長カール・レムリ・ジュニアはこの映画に莫大な製作費をつぎこみ、会社経営が危機に陥った。そのため(ユニバーサルは彼の父親が作った会社だったにも関わらず)彼は会社を追われてしまったことは有名。映画は公開された後、批評、興行ともに成功をおさめている。監督のジェームズ・ホエールは『透明人間』『フランケンシュタインの花嫁』などホラー映画で名高いが、自作で一番のお気に入りはこの『ショウ・ボート』だそうです。

それにしても、歌良し、役者良し、物語良し、映像良し。あらゆる要素がこんなにバランスよくまとめられているミュージカル映画はそうそうない。"Ol' Man River"をはじめとする楽曲の良さはもちろん、5度のアカデミー賞ノミネート歴を誇る名女優アイリーン・ダン(なぜか受賞なし)、黒人初のオスカー女優ハティ・マクダニエル、そして伝説的存在といわれるポール・ロブソンとヘレン・モーガンの出演。かなり贅沢な映画です。ミュージカル映画好きなら必見の作品。映画『ショウ・ボート』、1951年版を見ただけではすませてはもったいないです。
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2017.03.12 Sunday | 00:31 | - | - | - |

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