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グアンタナモ、僕達が見た真実

グアンタナモ、僕達が見た真実(2006 イギリス)

「グアンタナモ、僕達が見た真実」公式サイトにリンク原題   THE ROAD TO GUANTANAMO      
監督   マイケル・ウィンターボトム
      マット・ホワイトクロス
撮影   マルセル・ザイスキンド          
音楽   ハリー・エスコット
      モリー・ナイマン      
出演   アルファーン・ウスマーン
      ファルハド・ハールーン
      リズワーン・アフマド

2006年 ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞

かのマイケル・ムーアをして「アメリカの有権者は皆、この映画を観るべきだ(Powerful. A film every American voter should see.)」と言わしめた作品。ごく普通の若者がテロリストと決め付けられ、2年以上も拘束された事実を当事者の証言と、その再現ドラマで構成された映画が『グアンタナモ、僕達が見た真実』である。2006年ベルリン国際映画祭で上映され、そのあまりに衝撃的な内容が物議を醸し出した。

〜物語〜
アシフ・イクバルはイギリス・バーミンガム近くの町ティプトンに暮らすパキスタン系イギリス人。両親の勧める縁談のため、故郷パキスタンと出発する。村に着き、結婚を決めた彼は、友達のローヘル・アフマドシャフィク・レスルムニール・アリを誘い、旅行と結婚式出席を兼ねて一緒にパキスタンへと向かう。米軍の侵攻による隣国アフガニスタンの悲惨な状況を耳にする。自らの目で確認したいと国境を越えるが、アメリカからの空爆や北部同盟からの攻撃に逃げ惑い、ムニールともはぐれ、遂には捕らえられてしまう。米軍に引き渡されたあと、キューバのグアンタナモ米軍基地に移送される…。〜


 グアンタナモ米軍基地とは?

キューバ東部の米軍基地。
1903年以来、米国が租借権を主張しており、キューバ政府は返還を求めている。
9.11同時多発テロを経て、アフガニスタン侵攻以降に捕らえた、テロリスト容疑者が収容されている。
米国は拘束者を「捕虜でも犯罪者でもない敵性戦闘員」と位置づけ、容疑者の処罰よりテロ組織壊滅のための情報収集(自白・密告誘導など)を目的として拘留を行っていると言われている。今でも世界各国400人以上の人たちが、起訴もされず裁判もないまま、収容されている。釈放された元被収容者の告白や各国の弁護士たちの努力によって収容者に対する日常的な拷問の実態が明らかになってきたことで、世界的に非難が高まり、収容所の閉鎖を求める声が相次いでいる。

下記はその一例である。
・2004年11月 米軍は同基地収容者に対して心理的、時に物理的な強制を加えており、拷問に等しいとする赤十字国際委員会の報告書がリーク、
・2006年2月 国連は報告書でグアンタナモ収容所が違法であると指摘してその閉鎖を勧告
・2006年5月 アムネスティ・インターナショナルは「世界の人権状況に関する年次報告書」によって、“対テロ戦争を口実にした収容所での人権侵害”と告発。
・2006年6月 米連邦最高裁はグアンタナモに設置された軍事法廷に対して違憲判決。Source
・2007年1月11日 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は初の公式記者会見においてグアンタナモ刑務所の閉鎖を要求。

にもかかわらず、米政府は、収容所の閉鎖を拒否し収容を続けている...。


 誰もが潜在的テロリスト?

ブッシュ大統領の「これは悪との戦いだ」というコメントで映画はスタートする。
そして「収容されているのは犯罪者だ。彼らは我々と価値観が違う
価値観が違えば、即犯罪者もしくはテロリストなのか…。
この映画を見る限り、ブッシュ政権は、非アメリカ人は皆、潜在的なテロリストとみなしているのではという疑惑さえよぎる。

お前らは海兵軍の所有物だ
手錠をかけられ、まるで動物園のような金網の檻(おり)に入れられる。
運動は禁止され、外に出れるのは5分だけ。犬以下である。
「おまえはアルカイダだな」「友達もお前はアルカイダの一員だと言っている」と詰問され、
「違う」と答えると殴られる。
ビンラディンの演説集会の写真を見せられ、その聴衆のひとりを指差し「これはお前だな」と決め付ける。写真はひどく不鮮明。そもそも彼らはその集会当時の2000年、イギリスで暮らしていたのだ。
自分たちが望むとおりの答えを引き出すための拷問としかいいようがない場面が次々と映し出される。アメリカはこんな原始的なやり方でビンラディンを探し出そうとしていたのか?これでは9.11の謎解明など永久に不可能だろう。

法律に従った手続きを経ることもなく、また捕虜としてのジュネーブ条約が適用されることもない。アメリカ政府の一存だけで長期間の拘束が行われている。犯罪者でも享受することができる基本的な権利である家族の面会や弁護士との接触も許されない。捕虜や犯罪者としてさえ扱われない。つまり人間として看做されていないのだ。

「役に立ちそうなヤツを選んでいるんだ」アメリカ軍のひとりがそうコメントする。
「我々のために働いてくれるか?」もちろん彼らは拒否する。
この収容所でのアメリカ軍の態度はとても民主主義国家のそれではない。ただの野蛮人である。
シャフィク・レスル氏によると「米国政府がしていることを謝罪します。でも、上官に反対したら自分が檻に入れられてしまう」と話しかけてくる兵士もいたが、大半は上官に洗脳されており、自分たちを9・11の犯人と思いこんでいたという。

「追い詰められたとき、人は潰れてしまうか、強くなるかどちらかだと思う。僕は強くなった。」
映画の中での元拘留者はポジティブにそう語るが、多感な青年期にこのような経験をしたトラウマは生涯つきまとうことだろう。

 この映画について

この映画はベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)受賞、ヨーロッパ映画賞においても作品、監督賞ノミネートと高い評価を受けている。アメリカでも2006年6月に公開されているが、インディペンデント・スピリット賞でドキュメンタリー部門にノミネートされているのが目立つ程度。アメリカの映画評論家たちは自国が極度の人権侵害を行っている現実には目をつぶってしまった。アメリカを被害者の立場から描いた『ユナイテッド93』は絶賛していたのに...。
アメリカの価値観を基準として流される情報は、当分のあいだ鵜呑みにしないほうが懸命なようだ。

周囲が地雷原で脱走が不可能な上、実態がなかなか見えなかったグアンタナモ米軍基地。
映画という形でその実態を伝えようと尽力を尽くしたマイケル・ウィンターボトムマット・ホワイトクロス両監督ら制作スタッフ、証言したアシフ・イクバル、シャフィク・レスル、ローヘル・アフマド3氏の勇気に心から敬意を表したい。
 ラスト、収容所看板の「HONOR BOUND TO DEFEND FREEDOM」の文字がクローズアップされる。これは「アメリカの名誉にかけてアメリカだけの自由を守れ」と訳すべきであろう。
ちなみにこの収容所からは未だに誰も有罪とされていない。
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アムネスティ・インターナショナル・アクション「グアンタナモにNO!」

2009/1/21 追記
オバマ大統領はグアンタナモの収容施設を閉鎖する意向! 参考



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2017.07.23 Sunday | 01:43 | - | - | - |

コメント

こんにちは。
私も両監督たちとアシフたち3名に敬意を表したいです。
(出演したのはローヘルの方だったかと思います。
 行方知れずとなってしまったムニールは哀悼の意を・・・)
本作はアメリカであまり注目を浴びなかったのなら残念です。
2007/02/09 2:15 PM by かえる
かえるさん、こんばんわ!

>出演したのはローヘルの方だったかと思います。

全くそのとおりです。お恥ずかしい(大汗)
記事は訂正いたしました。
ご指摘、大感謝です!

ムニールさんは未だに消息がわかっていないと
いっていましたね。

>本作はアメリカであまり注目を浴びなかったのなら残念です。

やっぱり自国がこういうことをやっているということを事実として認めたくないんでしょうね。こういう地味な力作にスポットをあてることこそ評論家の仕事だと思うんですが...。

グアンタナモについてはつい最近も

・イラク元大統領のポスターなど撤去、グアンタナモ基地
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200702020024.html
・国防副次官補が引責辞任 グアンタナモめぐる失言で
http://www.usfl.com/Daily/News/07/02/0205_008.asp?id=52357

などというニュースが報道されてますね。
閉鎖要求の国際世論がよりいっそう高まるといいんですが...。
2007/02/09 6:38 PM by moviepad
こんにちは、moviepadさん、お久しぶりです。
さすがmoviepadさん、とても深い意見、大変参考にさせていただきました。
キューバに立てた軍基地を、返還を求めているのにそれを無視している場所。
おっしゃる通り、この映画を製作した少人数の方々に尊敬の念が起きました。
2007/02/17 6:22 PM by とらねこ
とらねこさん、こんばんわ。

国交のない国に存在している基地である、という条件を悪用し、拘束者を"奴隷でも犯罪者ですらない"非人間的な扱いをしている。
唖然としました。これはまさにこの世の地獄ても呼びたい場所です。

ところでこの映画に対して、"3人がこのような目にあったのは自己責任"みたいな書き方をしている記事を偶然目にして、びっくりしてしまいました。
自己責任であれば、人間として扱われなくても仕方がないとでもいいたいのでしょうか。
この映画をそういう目では見たくないし、見てはいけないと思います。
テーマはあくまで「グアンタナモでアメリカが一体何をやってるか」ですから。
おっと、いただいたコメント&TBとまったく無関係な内容に話がそれてしまいました。
すいません。m(_ _)m

本当に映画スタッフ、そして証言した3人の行動は勇気ある、称えられるべきものだと思います。
また、著名な法律事務所がこの"容疑者"たちの弁護を無償で引き受けているというニュースを読んで、少し救われた気がしました。
2007/02/17 9:30 PM by moviepad
はじめまして♪ すっきりわかりやすくまとめられていますね。TBおくらせてもらいました。

>「アメリカの名誉にかけてアメリカだけの自由を守れ」と訳すべきであろう。

本当にそう思います!
2007/06/16 6:30 PM by あずーる
あずーるさん、はじめまして!

この映画、もう少し話題になってほしかったですね。DVDでもいいから多くの人に見てほしいです。!
2007/06/16 7:28 PM by moviepad

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