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アリスのままで

アリスのままで(2014 アメリカ)

アリスのままで原題   STILL ALICE
監督   リチャード・グラツァー ワッシュ・ウェストモアランド
原作   リサ・ジェノヴァ
脚本   リチャード・グラツァー ワッシュ・ウェストモアランド
撮影   ドニ・ルノワール
音楽   イラン・エシュケリ
出演   ジュリアン・ムーア アレック・ボールドウィン
      クリステン・スチュワート ケイト・ボスワース
      ハンター・パリッシュ シェーン・マクレー
      セス・ギリアム スティーヴン・クンケン ダニエル・ジェロル

第87回(2014年) アカデミー賞主演女優賞(ジュリアン・ムーア)受賞

映画『アリスのままで』は若年性アルツハイマー病を患った50歳の大学教授とその家族の姿を描いた作品。主役アリスを演じたジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞を受賞した。原作は神経科学者であるリサ・ジェノヴァ。研究で多くの患者や家族と触れあった経験をもとに執筆した小説で、2007年に自費出版するや口コミがひろまり、全世界で1800万部を超えるベストセラーとなっている。共同監督のひとりリチャード・グラツァーはこの映画の企画が進められていた2011年にALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、言葉が発せられなくなりipadを親指でたたいてコミュニケーションをとり撮影を続けた。ジュリアンのオスカー受賞はTVで見届け、その3週間後に亡くなっている。



若年性アルツハイマーは老年性のものより進行が早い、遺伝によっておこる「家族性」のものが多々あることなどショッキングな内容が次々と語られる。働き盛りの年齢におこるため、本人だけでなく家族への影響も計り知れない。映画はそのあたりを安易な感傷を避け、じっくりと描きだす。見ているのがつらくなる描写ばかりだ。

料理の手順がわからなくなる、方向感覚が鈍るなど初期〜中期の症状が描かれるが、単なるド忘れとの区別の仕方などをもう少し具体的に知りたかった気もする。

主人公アリスが「癌ならよかったのに。癌なら恥ずかしくない」と語る。本人はこの病気を「恥ずかしい」ことと感じていることが痛ましい。トイレの場所を忘れおもらしをする。そういうことを繰り返していくうちに人間としての尊厳を失っていく。

"何を読んでいるのかわからず"娘の日記を読んでしまったことによる、娘との葛藤。
アルツハイマーがどこまで進んでいるかは本人にしかわからない
それを感じ取れない家族をはじめ周囲の人たちとのいざこざ。

この映画の核となるのは、病気が進行する中でアリスが行ったスピーチである。
同じことを何度も繰り返さぬため原稿に黄色のマーカーをつけながら話し続ける。
自分は一生懸命働いて生きてきたが、忘れるという技術は何の努力もしなくても日々習得してしまう。だからこの瞬間を生きると語る場面はせつない。

何かが起こったときのために"将来の自分へ向けたビデオレター"を作成していた。
それをPCで再生したあと記録した内容を実行しようとするがその途中で内容を忘れてしまい、後戻りしてPCを持参する。何か行動を起こそうとしても、その都度記憶が失われていくため先に進めない。この場面に関してはそれが逆に救いとなったのだが。

最後には自分の名前すら忘れていく。
何もかも忘れてしまい、最後に残る記憶はいったい何だろう?
それは"自分が今、生きている"という記憶だろう。
そしてその記憶が失われた時....と考えると何ともやりきれない気分になった。
病気がきっかけで、しっくりいっていなかった娘との絆が深まり、彼女の面倒を観るのはその娘だったというオチは少しきれいにまとめすぎの感があるが、商業映画として製作する以上、ひたすら絶望だけを描くわけにもいかないのだろう。ただ、"シビアな社会問題"と"映画の娯楽要素"は本来両立しえないものであり、あまりにも娯楽要素を考慮し過ぎると他の描写が嘘っぽく見えてしまう。本作に関しては演出に抑制がきいているのでなんとか見られたが、ラストに少し違和感を覚えたことは否めない。

アルツハイマーの苦しさは絶対に本人でないとわからない。いくら経験者に聞いたところで症状が進むと本人に記憶がなくなるため、他人にその苦しみを語る術がなくなる。映画『アリスのままで』が若年性アルツハイマーの苦しみにどれだけ迫れているかは誰にもわからない。だが、記憶を積み重ねることで人間は生きている、記憶の積み重ねがその人の個性をつくることを教えてくれる。誰にとっても他人事とはいえぬ内容。かなりつらいが一度観ておいたほうがよい作品だ。
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2015.06.29 Monday | 16:09 | 映画 | comments(0) | trackbacks(4) |

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アリスのままで '14:米 ◆原題:STILL ALICE ◆監督:リチャード・グラッツァー 、 ウォッシュ・ウェストモアランド ◆出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワース、ハンター・パリッシュ、シェーン・マ
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