映画のメモ帳+α

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ジャズメン

ジャズメン(1983 ソ連)

ジャズメン(1983)原題   МЫ ИЗ ДЖАЗА
監督   カレン・シャフナザーロフ
脚本   アレクサンドル・ボロジャンスキー カレン・シャフナザーロフ
撮影   ウラジミール・シェフツィク
音楽   アナトリー・クロール
出演   イーゴリ・スクリャール ニコライ・アヴェリュシキン
      アレクサンドル・パムスラートフ=チョールヌイ エレーナ・ツィプラコワ
      ピョートル・シチェルバコフ ラリーサ・ドリーナ  エフゲニー・エフスチグネーフ

ジャズの映画が見たい!おすすめは?と聞かれるとちと困ります。自分の知る限りジャズ映画の傑作はかなり少ないのです。ドキュメンタリー映画だと『真夏の夜のジャズ』(1959)などいくつかあげられますが、劇映画となると『5つの銅貨』(1959)と『ラウンド・ミッドナイト』(1986)くらい?実在ミュージシャンに特化しているものはjazzファンなら楽しめるのですが、登場人物がジャズミュージシャンという設定にすぎないフィクション映画に良いものがない。『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977)とか『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989)...ああ、ダメダメダメ、『ニューヨーク〜』に至ってはスコセッシの最高駄作(笑)。というわけで"ジャズっぽい雰囲気を漂わせている、肩の力をぬいて見ることができる楽しい映画"を教えてほしいと言われたら、少し変化球を投げてこの『ジャズメン』をおすすめします。何とソ連製jazz映画。他愛のない物語ですが、テンポもよく気楽に観ることができる良作です。

物語
1920年代のソ連、オデッサ。音楽学校でピアノを学んでいたイワノフ(イーゴリ・スクリャール)はジャズピアニストを目指していたが、学校から「ジャズはブルジョワ音楽の手先」と決めつけられ退学する。大道芸人をしていたスチョーバ(アレクサンドル・パンクラートフ・チョールヌイ)とジョーラ(ニコライ・アヴェリュシキン)に声をかけジャズバンドを結成。イワノフは2人にジャズを教え込み、はじめての野外ライブに挑むが観客から相手にされなかった。意気消沈していた最中、怪しげな男2人からホテルでの演奏会の依頼を受ける。だが、主催者は犯罪組織のボスだったことから、演奏会の最中彼らも一緒に投獄されてしまう。そこでサックス奏者イワン(ピョートル・シチェルバコフ)と出会った。彼をバンドメンバーに加えシティ・ガーデンで演奏するバンドを決めるためのオーディションに挑むが

ジャズバンドを結成してから、トラブルに見舞われながらのサクセスストーリー。まったくもって予想通りに物語はすすむ。イワノフ以外の3人がアドリブがわからず苦労。大道芸人の2人は演奏ではなくパフォーマンスでアドリブし、サックス奏者は軍隊で譜面どおり吹いてきたからアドリブの意味がわからない。「心の声にしたがって即興演奏をするんだ」イワノフは彼らを鼓舞する。でもそこをネチネチと描き、ジャズとは何ぞや、とくだ巻いたりしないのがいい。また、この手の話は恋愛をからめて無駄に時間を長くする傾向があるのだが、『ジャズメン』ではそれがない。恋愛らしきものは最後のほうにちらっと出てくるが、マット・デイモン似の主人公イワノフ君は"仲間"、つまりジャズを選ぶ。いいですね、こういうの。

やっぱりこの時代、ジャズはソ連でもマフィアみたいな人がからんでいるわけですね。ジャズが好きなのは"パパ"と呼ばれるボスだけみたいです。「デューク・エリントンが最高だ」そうです。ちなみにイワノフ君はスコット・ジョップリンがアイドルとか。でしょうね、彼の演奏する曲はジャズというよりラグタイム。"アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド"もちらっと出てきました。まあ、この曲はラグタイムではないんですが。まあ、この映画はジャズというよりラグタイム好きの人におすすめかもしれません。

この映画の曲目リストを必死で探したのですが、なかなか見つからず。
やっとこさ見つけました。ネタもとはここ

1. Regtaym
2. Ya budu igrat dzhaz
3. Chemodanchik (nar. folklor)
4. Ulybka staroy Moskvy
5. Reg-diksi
6. Prosti, proshchay, Odessa-mama (nar. folklor)
7. Ermitazh (fokstrot)
8. Staryy royal
9. Rumba
10. Keyk-uok
11. Blyuz starogo Arbata
12. Moya staraya dobraya razvalina (negrityanskaya pesnya)
13. Puteshestvie v dzhaz
14. V besedke
15. Spasibo, muzyka
16. Tam, gde zhivet mechta

うー、コトバワカリマセン。

ところで、この映画『ジャズメン』非常にありがちな物語ですが、元ネタがあります。1929年にソ連で初のジャズバンドを結成し、迫害をあびながらも国立ジャズオーケストラを結成するまでにいたったレオニード・ウチョーソフです。彼は『陽気な連中(VESLVOLVE REBYATA)』(1934)というソ連初のミュージカル・コメディにも主演しているそうです。うーん、何より不可解なのはこんな有名な人なのにレオニード・ウチョーソフ (Leonid Ytesoff)で検索しても顔写真がほとんど出てこないこと。ソ連恐ろしや!?やっとこさ見つけました。こんな面のお方だそうです。

レオニード・ウチョーソフ

この映画を観るとき考慮しなければいけないことは製作年が1983年であること。ソ連においてジャズは、激しく規制されていたのは1985年にペレストロイカがはじまるまでスターリン時代の末期(1948〜53年)くらいだったようですが、この作品で描かれているとおり"敵の音楽"であり長年、肩身のせまい状況であったのは確かなようです。ラスト、年老いた彼らがステージ上拍手でむかえられる場面で終わりますが、知りたいのはその間の出来事なんですけどね。見事にすっとばしています。(爆)モチーフとなったウチョーソフのジャズは"テアジャズ(Thea -Jazz)"と呼ばれる演劇的ジャズで、ユダヤ音楽の要素をとりこむなどアメリカのジャズとはかなり異なるものであったこと、激しい規制のなか肋骨レコードが普及していたことなどソ連のジャズ史をひもとけば面白いエピソードは結構ありそうです。それゆえ、映画『ジャズメン』はソ連におけるジャズ迫害の歴史がきちんと描かれていないという批判もあるようです。(史実をきちんと描いていないと即座に作品全体を否定する、紋切り型、思考停止の批評家というのは数多く存在します)ただ、前述の1983年という製作年度を考えると、"よくそ当時のソ連でジャズ映画を作った"という見方のほうが適切ではないかと思います。まあ、あと2年待ってればもう少し自由に作れたのでは?と思わなくもないですが...。

<参考>
・ソ連のジャズ史をコンパクトにまとめてあるページ→速成 ロシア・ジャズ入門
・レオニード・ウチョーソフについて→ウチョーソフとテア・ジャズ

何はともあれ、ソ連製『ジャズメン』、日本でも1984年に劇場公開されその後テレビ放送もされているようですが、残念ながらDVD化されておらず、今観るのは難しい状況です。傑作!というほどのクオリティではないですが、コメディ色が強くテンポもよい。気楽にジャズの雰囲気を楽しめる映画です。DVD化されるといいですね。アメリカでジャズ・ミュージシャンを扱った映画は辛気くさいのが多いんで、たまにはこーいうのも観たい。アメリカのジャズ映画より、ソ連のジャズ映画のほうが"ライト"な味わいなのは奇妙ですが、まあ、当時の規制をくぐりぬけるための苦肉の策が功を奏したのでしょう。今、ロシアでジャズ映画をつくったら重〜い作品になっちゃうでしょうね。
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2015.03.27 Friday | 19:37 | Jazz映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.12.10 Sunday | 19:37 | - | - | - |

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