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第87回(2014年)アカデミー賞

第87回(2014年) アカデミー賞

第87回(2014年)アカデミー賞作品賞「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」第87回アカデミー賞trivia
〜作品、候補者、プレゼンターまで地味で視聴率急落!〜

 本年度のアカデミー賞授賞式司会はニール・パトリック・ハリス。彼はアメリカで2005年9月から2014年3月まで放送され人気を集めたシットコム『ママと恋に落ちるまで』の主演俳優であり、『ゴーン・ガール』にもヒロインを執拗においかけるストーカーまがいの男役で出演している。トニー賞4度、エミー賞でも2度授賞式の司会をつとめている。また、私生活において2014年9月に俳優デビッド・バートカとイタリアで同性結婚式を挙げたことが話題となった。アカデミー賞でも2010年のオープニングで歌とダンスを披露しており、(Neil Patrick Harris's Opening Number: 2010 Oscars)実績と話題性が買われた形だが、彼はアカデミーのファーストチョイスではなく何と第4希望!エレン・デジェネレス、クリス・ロック、ジュリア・ルイス=ドレイファスに断られたため、彼に声がかかった。前回のエレン、そして今回のハリスともに同性愛者。2年連続で同性愛者がアカデミー賞司会をつとめるのは史上初。ニールは『バードマン〜』のパロディでパンツ一丁でステージに登場するなど、軽妙な司会ぶりを見せたが、結果は平均視聴者数は昨年の4370万人から3660万人と前年比16%の大幅ダウン。過去10年間で3番目に低い数字。作品賞候補5枠を撤廃した第82回(2009年)以降に限れば、最低の数字となった。内容評価について観客は賛否半々ぐらいだったが、メディアは「とにかく長い。緩慢」と、最悪とまではいわれなかったが否定的な評価が大半を占めた。

視聴率の大幅ダウンはノミネート発表の段階で既に危惧されていた。作品賞候補のうち、全米興行収入1億ドルを越えたのは『アメリカン・スナイパー』一本だけ。『アメリカン〜』に受賞の見込みはなく、作品賞は『6才のボクが、大人になるまで。』(全米興行収入2500万)と『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(全米興行収入3700万)という地味な争い。 2作とも受賞発表当時の数字 おまけにノミネート俳優の顔ぶれも地味で、プレゼンターも大物不在、音楽パフォーマンスも今ひとつ、悪い意味で予想通りの結果に終わってしまった。

 ノミネート発表は1月15日(現地時間)に行われた。大きなサプライズはなかったが8枠もあった作品賞にノミネートされていない『フォックスキャッチャー』のベネット・ミラーが5枠しかない監督賞にノミネート。作品賞に入らず、監督賞のみにノミネートされたケースは作品賞候補5枠が撤廃されて以後、はじめてのことで、作品賞レースの混沌が浮き彫りになった。一番物議を醸したのは、キング牧師をきっちり描いた初の映画として下馬評の高かった『グローリー 明日への行進』が作品賞・歌曲賞のみのノミネートに終わったこと。キング牧師を演じたデヴィッド・オイェロウォ、そして黒人女性として初の監督賞ノミネートが期待されていたエヴァ・デュヴルネがともに候補漏れ。LAtimes紙はオスカーの"人種の多様性の欠如"を強く批判、Diversity efforts slow to change the face of Oscar voters National Postも「2015年のオスカーはここ20年で一番白い」と評した。Oscars 2015: This year’s acting nominees are the whitest in nearly two decades かのジョージ・ルーカス監督も「アカデミー賞は単なる政治キャンペーンになり下がった。もはや芸術とは全く関係がない」と厳しく批判している。司会のニール・パトリック・ハリスはオープニングで「ハリウッドの最高かつ最も白い(whitest)……おっと、最も輝かしい(brightest)夜」と皮肉り、英国人俳優の活躍を称えつつも、ノミネートされていたエディ・レッドメインらを無視し、ノミネート外漏れしたアフリカ系イギリス人俳優デイヴィッド・オイェロウォを取りあげた。また、授賞式でも例年になく黒人俳優のプレゼンターが多く、アカデミーなりの配慮を見せた。『グローリー 明日への行進』は歌曲賞("Glory”)で受賞をはたしている。



追記  後日、日本でも公開された『グローリー 明日への行進』観たけど、正直言って監督、主演男優ともに5枠に残るほど良いとは思いませんでした。

日本勢では長編アニメ映画賞に高畑勲監督の『かぐや姫の物語』がノミネート、ジプリ映画の2年連続ノミネート、宮崎駿監督作以外のノミネートはともに初。また短編アニメ賞ではピクサーの元スタッフである堤大介が日系人のロバート・コンドウと共同で手掛けた『ダム・キーパー』が候補入り。残念ながら2作とも受賞は逃した。

ノミネート発表時、アカデミー会長のシェリル・ブーン・アイザックスが、撮影賞候補者『ターナー、光に愛を求めて』のディック・ポープ(Dick Pope)の名前を"Dick Poop"と言い間違えるハプニングがあった。Poopはうんちという意味。ちなみにDickは男性器。ネットでは"うんち氏受賞するといいな"と大盛り上がりだった。当のディック・ポープ氏は「ひどい呼ばれ方には慣れているので気にしていない。ノミネートされて本当にうれしい」と冷静なコメントを出している。うんち氏受賞しませんでした。残念。

LEGO oscar最大のサプライズは長編アニメ映画賞で"受賞有力"とみられていた『LEGO(R)ムービー』の候補漏れ。監督のフィル・ロードは落選がわかったあと「オスカー像は自分でつくったからもういいよ」とレゴ製オスカー像をツイッターにアップし喝采をあびた。だが、それだけでは終わらなかった。"Everything Is Awesome!!!"が歌曲賞にノミネートされていたため、ティーガン&サラ、ザ・ロンリー・アイランドが授賞式でパフォーマンス。曲の最中、客席にレゴ製オスカー像を手渡す大サービスでこの授賞式一番の盛り上がりを見せた。



でも受賞しそうな人には渡してないみたい。
lego oscar1  lego oscar2  lego oscar3  LEGO oscar4

助演女優賞発表時、レゴのオスカー像を握りしめながら発表を待つエマ・ストーンが妙にせつなかった。
lego oscar エマ・ストーン

このLEGOオスカー像を作ったのは、プロのレゴ職人ネイサン・サワヤ氏。以前、フィル・ロード監督がtwitterにアップしたレゴオスカー像も彼が手掛けたもの。授賞式のために20体の制作。500個のブロックが使用されているという。サワヤ氏は、その作り方を紹介する動画を公開している。(3秒でできるんかい!)




 助演男優賞はロバート・デュヴァルが16年ぶり84歳でノミネート。第80回(2007年)ハル・ホルブルックの82歳を抜き、同部門の最年長ノミネート記録を更新した。その助演男優賞では『セッション』で鬼教師を演じたJ・K・シモンズが絶対視され、そのまま受賞した。シモンズは家族や両親に感謝し、「もしあなたの片親や両親がこの惑星にいるのであれば電話しなさい。メールではなくて電話して」と述べてステージを後にした。うーん...授賞式冒頭に発表されたこともありますが、何か影が薄かったですね。受賞確実だったのだからスピーチの内容、もう少し練ってほしかったな。

 助演女優賞は『6才のボクが、大人になるまで。』で主人公の母親を演じたパトリシア・アークェットが大本命。12年にわたって同じ役を演じ、老いをそのまま見せた点が評価された。そして受賞もパトリシアだった。彼女はメモ用紙をとりだして、スタッフや家族に感謝。それで終わるかと思いきや、彼女は突然語気を荒げ、「国に力をあたえる子供を産んだすべての女性たち。私たちは平等の権利を得るために戦ってきました。今、アメリカ人女性が賃金やすべての権利において平等を勝ち取る時がきたのです。」("To every woman who gave birth to every taxpayer and citizen of this nation, we have fought for everybody else's equal rights," the best supporting actress winner said. "It's our time to have wage equality once and for all and equal rights for women in the United States of America.")と発言、メリル・ストリープやジェニファー・ロペスらが喝采をおくった。


だが、これだけで終わらなかった。パトリシアは受賞後の舞台裏でこのようなことをいった。
「アメリカ人女性、女性を愛する男性、ゲイや有色人種も私たち女性のために戦うべき」

Oscars 2015: Patricia Arquette wins the Oscar with Meryl Streep whooping her speech

 「レズビアンや有色人種の女性が賃金不平等のために戦っていないとでも?」「今まで人種差別や反LGBT(トランスセクシュアル)と戦ってあげたんだから、今度は私たち女性のために戦って!なんて言い回しは、白人女性のイメージを悪くするだけ。」などがtwitter上を飛び交い、無神経すぎるという批判を浴びた。これに対してパトリシアは「私はLGBTコミュニティーの権利を長らく唱えてきた。でもなぜあなた方は女性のための平等を唱えようとしないのかずっと疑問に思っていた」「賃金平等は人種に関わらず、アメリカ中の女性を救うのよ」と自身のツイッター上で反論している。

2014年12月にハッキングによってソニー・ピクチャーズ幹部のメールが暴露され、ギャラの男女格差が明らかになったばかり。パトリシア自身も以前「『6才〜』はお金儲け以上の情熱を持って作られた作品」と前置きしながらも、「この映画のギャラは、私がベビーシッターや犬の散歩人に支払った額より少ない」とこぼしていた。"犬の散歩人"を雇える人が世の中にどれだけいるのやら...。


 アカデミー賞 エディ・レッドメイン主演男優賞では『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートンが前哨戦をリード。元ヒーロー役者がブロードウェイ舞台で再起を図るという役は、元バットマン役者であるキートン本人をほうふつさせるものだった。対抗馬は『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』でスティーブン・ホーキング博士を演じたエディ・レッドメイン。難病におかされる天才科学者という、見事なほどオスカー好みの役。若手にもっとも厳しい主演男優賞部門ゆえ33歳という若さがネックとみられていたが、全米俳優組合、英国アカデミー賞主演男優賞を連続受賞し、一気に本命に躍り出た。そしてプレゼンターのケイト・ブランシェットが読み上げた名前もエディだった。ステージにあがったエディは「興奮して、自分の気持ちを表現できない」とオスカー像をみてうろたえたあと、「このオスカーは、世界中のALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘っている人たちのもの。その中でも特にホーキング家の子供たちのためのものです。私は彼らのために像の管理人となって、毎日磨きます。」と語ったあと、スタッフや家族に謝意をのべた。ホーキンス博士はエディの受賞に祝福コメントを寄せている。ちなみにホーキンス博士は「残念ながらエディは私のルックスの良さは引き継いでくれなかった」と語っているようです。(笑)

ところで、一時は本命視されていたマイケル・キートン。すっかり頭髪も薄くなり好々爺風情漂う、そのお姿に好感度大だったんですが、当然のことながらスピーチ用意してたんですね。エディの受賞が発表されたあと、スピーチ原稿をしまう姿が目撃され、ネット民の涙を誘いました。個人的にもマイケル・キートンが受賞すべきだったと思います。




 julianne moore oscar主演女優賞は早い段階でジュリアン・ムーアが有力視されていた。まず『マップ・トゥ・ザ・スターズ』の怪演でカンヌ国際映画祭女優賞受賞で景気をつけ、同年に公開された『アリスのままで』は若年性アルツハイマー病にかかった50歳の女性というもろにアカデミー賞好みの役を演じた。ジュリアンのノミネートは12年ぶり5回目だが、そのあいだ何度も下馬評にのぼるなど演技派女優の地位をしっかり築きあげていた。批評家賞では『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクがやや優勢であったがジュリアンでは当たり前すぎて面白くない、とみなされた結果にすぎず、本命はジュリアン・ムーアであることは疑いようがなかった。

プレゼンターのマシュー・マコノヒーが読み上げた名前は大本命のジュリアン。満面の笑みでオスカー像を受け取った彼女は「アカデミー賞をとると寿命が5年伸びるという記事を読んだことがあります。本当ならうれしい。夫が年下なので」と笑わせ、家族やスタッフに感謝したあと、「若年性アルツハイマー病のことをもっと知ってほしい。この病気にかかった多くの人は疎外感にさいなまれている。でも孤独じゃないということを映画を通して伝えられた」と語りステージを後にした。ジュリアン・ムーアはメリル・ストリープと並んで年齢を重ねても良質な役に恵まれている、数少ない女優のひとり。遅すぎた初受賞だった。ちなみにカンヌ、ベネチア、ベルリンの女優賞、米アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、英アカデミー賞の主演女優賞、この6つを制した女優はジュリアン・ムーアがはじめてだそうだ。(メリルはベネチアでとってないんですね...ジュリエット・ビノシュはアカデミー賞では助演での受賞。)

 作品賞、監督賞ともに前哨戦では『6才のボクが、大人になるまで。』が一歩リードし『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が後を追う展開。だが、全米製作者組合賞、全米監督組合賞で『バードマン〜』が『6才のボク〜』を打ち負かし"本命"に躍り出た。そして、その流れのままで作品・監督賞ともに『バードマン〜』にわたった。作品賞のプレゼンターはショーン・ペン。「このクソ野郎にグリーン・カードを与えたのは誰だ」ときつい紹介のあと『バードマン〜』の名を読み上げた。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は壇上にあがり、「メキシコ移民そして、全ての移民の人たちが、移民で成り立ったこの国で平等に暮らせることを期待します」とショーンと打ち合わせでもしていたようなスピーチをし、有力視されながら受賞を逃した主演のマイケル・キートンを呼び寄せ、スピーチの機会を与える心遣いを見せた。ちなみにプレゼンターのショーン・ペンはアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作『21グラム』の主演男優。一時期、アカデミー賞嫌いで知られた(受賞してからコロっと態度変わってますが)ショーン様がわざわざプレゼンターとしておいでいただけたということは...前哨戦では大接戦といわれていても、ハリウッド業界内の評価は『バードマン〜』が『6才のボクが、大人になるまで』を圧倒していたのでは? 本当に"どちらが受賞するかわからない"状態なら、めんどくさそーな2度のアカデミー賞に輝く名優ショーン・ペン様のご招聘はしなかったと思われます。

『6才のボクが、大人になるまで。』は"12年にわたって同じ俳優を使って撮影"というのが大きなセールスポイントだが、"(一部の)映画評論家やシネフィルのみに寵愛され、好きな人とそうでない人の温度差が激しい"優良サンプルのような作品。個人的には演出、脚本、演技どの側面からみても特筆すべき魅力を見出せず。「21世紀に公開された作品の中でも並外れた傑作の1本("one of the most extraordinary movies of the 21st century")」(NYタイムズ)というのはちょっと下駄をはかせすぎ!"撮影の困難や企画力"と"作品のクオリティ"は別問題。"この偉業を称えよ"といった論調に違和感を禁じえなかった。

『アメリカン・スナイパー』はアカデミー賞ノミネート発表後に拡大公開。全米興行収入3億ドルを超え歴代戦争映画最大のヒットとなりました。。監督のイーストウッドは「反戦映画た」と語っているのですが、多くのリベラル派には"好戦的"とうつったようだ。個人的にイーストウッドはバランスをとるべくかなり配慮していたように思えた。それでも戦闘場面の印象が強すぎて最後のPTSD描写が"おまけ"にしか見えず『ハート・ローカー』のようなグレーゾーンへの落とし込みに失敗した感あり。(それでも日本のキネ旬では年間1位になっちゃうんでしょうね。あそこの審査員はイーストウッド信者だらけ)自称リベラル派の多いハリウッドにおいて『アメリカン・スナイパー』が作品賞をとるとは誰も思っておらず、他の作品賞候補7作の興行収入合計を上回るメガヒット作も賞レースの盛り上がりに華を添えることはできなかった。

個人的には『バードマン〜』の受賞は極めて妥当だと思う。『バードマン〜』は物語枠組みこそ、ありがちな舞台裏ものだが、1ショット風にみせるカメラワーク、時折挿入されるドラム・ソロ、死のイメージをも伴う飛翔、そしてネット時代、個人の存在のあり方をも問い、既存のどの映画とも違う持ち味を見事に醸し出していた。

ただし、これはアカデミー作品賞があくまで"芸術的に優れた作品に贈られる"ことを前提とした話。実際のところアカデミー作品賞の選考基準はあってないようなもの。興行的に大成功した作品が選ばれるわけでもなく、かといって芸術的に優れた作品が選ばれるとも限らない。そのときの社会情勢や業界の"気分"で決まるといわれている。傾向としては、一昔前は批評家賞と観客の中間くらいのイメージと言われていたが、最近は完全に批評家賞よりといってよい。『ハート・ロッカー』や『アーティスト』など興行的に成功したとは言い難い映画に作品賞が渡される傾向も強くなり、今年の結果もその傾向に拍車をかけた。

年に一度のアカデミー賞。アカデミー事務局にとっては授賞式TV中継の視聴率はまさに命綱。収入の大半がTV中継時の広告収入だからだ。視聴率をあげるためには何としてもヒット映画が多く候補にあがり、受賞してほしい、それが本音だろう。だが、投票するアカデミー会員はそんな事務局の懐具合などおかまいなし。その傾向は今後もかわりそうもない。視聴率の大幅ダウンや、相変わらずヒット映画に賞が渡らない傾向を受け、映画芸術科学アカデミー協会は作品賞候補をかつての5枠に戻すことを検討中!何をやっても変わらないなら、すっかり下落した"アカデミー作品賞ノミネート"の重みを以前に戻そうということか。まあ、これは予想通りですね。でもね...『バードマン〜』は本当に画期的な映画でもっとそれを称える空気があってもよさそうなのに、今年もまたコジンマリした、誰も見ていないつまらん作品が撮ったみたいなリアクションってどうよ?ちなみに『バードマン〜』は編集賞にノミネートされていない。作品賞の行方を占ううえで、編集賞は監督賞以上に重要な指標と言われており、編集賞候補漏れは作品賞レースからの脱落を意味するのが定説となっていた。『バードマン〜』はその定説を覆しての受賞。編集賞にノミネートされなかった作品がアカデミー作品賞を受賞したのは第53回(1980年)の『普通の人々』以来、34年ぶり。『バードマン〜』の1ショット風のカメラワークゆえ映像が編集されているように見えなかったのだとしたら、それはむしろ名誉なことなのかもしれない


 lady gaga oscar 授賞式では『サウンド・オブ・ミュージック』製作50周年トリビュート企画で人気歌手のレディー・ガガがパフォーマンス。"サウンド・オブ・ミュージック"、"私のお気に入り"、"エーデルワイス"、"すべての山に登れ"をメドレーで歌いあげた。ガガは純白のドレスで無難に歌い終え、直後にプレゼンターとして登場したジュリー・アンドリュースと抱擁を交わした。ただ、問題はたくましい二の腕のタトゥー。あんなもの見せられて"エーデルワイス"とか歌われてもね。消せとはいわぬが、せめて隠せよ。まあ、確信犯でしょうけど。

 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』で脚色賞を受賞したグレアム・ムーアは16歳のときに自殺未遂をしたことを告白、「自分の居場所がないと感じている子供たちへ、変わったままで、人と違うままでいてください。いつかあなたがこの場所に立った時、同じことを子供たちに伝えてほしい」(Stay weird, stay different, and then when it’s your turn and you are standing on this stage, please pass the same message to the next person who comes along.)と語った。受賞作『イミテーション〜』の主題と見事にシンクロさせた内容で、今年のベストスピーチと称された。劇中でキーラ・ナイトレイが発した"The world is an infinitely better place precisely because you weren't."(あなたが普通じゃなかったから、今世界はよりよい場所になっているのよ)。名台詞としてずっと映画史に残っていくだろう。難解でてんこ盛りの題材をわかりやすくまとめ、ひとつの決め台詞で映画を見事に締めた。納得の受賞!グレアム・ムーアってまだ34歳だって!末恐ろしい才能が出てきた。



 長編ドキュメンタリー賞はアメリカ国家安全保障局 (NSA) による個人情報収集の手口を暴露した、元NSA職員エドワード・スノーデンについて描いた"Citizenfour"が受賞。"Citizenfour"とは、スノーデン容疑者がローラ・ポイトラス監督にコンタクトをとったときのハンドルネームのこと。ローラ・ポイトラス監督はジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald)氏とともにステージに立ち、「エドワード・スノーデン氏の勇気と、その他多くの内部告発者に感謝したい。真実を暴いているジャーナリストたちとこの賞をと分かち合いたい」とスピーチした。司会のニール・パトリック・ハリスは「スノーデンは反逆のため (for some treason(for some reason(訳あって)とかけたジョーク)授賞式に参加できない」とシビアなコメントをはさんだ。エドワード・スノーデンについては現在オリヴァー・ストーン監督作を含む2本の劇映画が準備されているという。

 本年度のアカデミー名誉賞は女優モーリン・オハラ、脚本家ジャン=クロード・カリエール、そして宮崎駿監督の3名に贈られた。日本人の名誉賞受賞は第62回(1989年)黒澤明監督に続いて2人目。アカデミーは"『もののけ姫』で世界的に有名になる前から、母国日本で絶大な支持を受けている"ことを授賞理由にあげている。Academy press release

授与式は2014年11月8日に行われ、宮崎監督へのプレゼンターはピクサーCEOのジョン・ラセター。"アニメ監督として史上最多の11作品を手掛けている。ウォルト・ディズニーと並ぶアニメ界の偉人"と宮崎監督を紹介した。宮崎監督は過去、一度もアカデミー賞授賞式に出席したことがなかったが、さすがに今回は、監督いわく"ジョン・ラセターに脅されて"出席。



受賞スピーチは宮崎駿監督、アカデミー名誉賞受賞記者会見 全文
宮崎監督は2013年9月長編アニメ製作からは引退すると表明しているが、短編アニメ製作は続ける意向だという。

 本年度の科学技術賞には有機ELモニターの開発を手掛けた、日本ソニーの技術者4人(筒井一郎、武昌宏、田村光康、浅野慎)に贈られた。有機ELモニターは映画の編集作業で使われ、液晶モニターにくらべて黒の再現率が高いのが特徴。

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第87回(2014年)アカデミー賞ノミネート一覧

※ ★マークは受賞作品。リンクは当サイト記事もしくはamazon

作品賞
 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」  
   「アメリカン・スナイパー」   
   「6才のボクが、大人になるまで。
   「グランド・ブダペスト・ホテル
   「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
   「グローリー/明日への行進
   「博士と彼女のセオリー
   「セッション

主演男優賞
 エディ・レッドメイン 「博士と彼女のセオリー」
   スティーヴ・カレル 「フォックスキャッチャー
   ブラッドリー・クーパー 「アメリカン・スナイパー」
   ベネディクト・カンバーバッチ 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
   マイケル・キートン 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」   

主演女優賞
 ジュリアン・ムーア 「アリスのままで」   
   マリオン・コティヤール 「サンドラの週末
   フェリシティ・ジョーンズ 「博士と彼女のセオリー」   
   ロザムンド・パイク 「ゴーン・ガール
   リース・ウィザースプーン 「Wild」    

助演男優賞
 J・K・シモンズ 「セッション」 
   ロバート・デュヴァル 「ジャッジ 裁かれる判事」
   イーサン・ホーク 「6才のボクが、大人になるまで。」
   エドワード・ノートン 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   マーク・ラファロ 「フォックスキャッチャー」      

助演女優賞
 パトリシア・アークェット 「6才のボクが、大人になるまで。」
   ローラ・ダーン 「Wild」
   キーラ・ナイトレイ 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
   エマ・ストーン 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   メリル・ストリープ 「イントゥ・ザ・ウッズ」    

監督賞
 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   ウェス・アンダーソン 「グランド・ブダペスト・ホテル」   
   リチャード・リンクレイター 「6才のボクが、大人になるまで。」
   ベネット・ミラー 「フォックスキャッチャー」
   モルテン・ティルドゥム 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」    

オリジナル脚本賞
 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   「6才のボクが、大人になるまで。」
   「フォックスキャッチャー」
   「グランド・ブダペスト・ホテル」
   「Nightcrawler」

脚色賞
 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」    
   「アメリカン・スナイパー」   
   「Inherent Vice」
   「博士と彼女のセオリー」
   「セッション」 

撮影賞
 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」   
   「グランド・ブダペスト・ホテル」
   「イーダ」
   「ターナー、光に愛を求めて
   「Unbroken」

美術賞
 「グランド・ブダペスト・ホテル」   
   「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
   「インターステラー
   「イントゥ・ザ・ウッズ」
   「ターナー、光に愛を求めて」    

音響賞(録音賞)
 「セッション」 
   「アメリカン・スナイパー」
   「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   「インターステラー」
   「Unbroken」
      
編集賞
 「セッション」
   「アメリカン・スナイパー」
   「6才のボクが、大人になるまで。」
   「グランド・ブダペスト・ホテル」
   「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」      

作曲賞
 「グランド・ブダペスト・ホテル」   
   「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
   「インターステラー」
   「ターナー、光に愛を求めて」
   「博士と彼女のセオリー」

歌曲賞
 "Glory" (グローリー 明日への行進)
   "Everything Is Awesome" (LEGO(R)ムービー)   
   "Grateful" (Beyond the Lights)
   "I'm Not Gonna Miss You" (Glen Campbell: I'll Be Me)
   "Lost Stars" (はじまりのうた)    

衣装デザイン賞
 「グランド・ブダペスト・ホテル」
   「Inherent Vice」
   「イントゥ・ザ・ウッズ」
   「マレフィセント
   「ターナー、光に愛を求めて」    

メイクアップ&ヘアスタイリング賞
 「グランド・ブダペスト・ホテル」
   「フォックスキャッチャー」   
   「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」   

視覚効果賞
 「インターステラー」
   「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
   「猿の惑星:新世紀(ライジング)
   「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」   
   「X-MEN:フューチャー&パス

音響編集賞
 「アメリカン・スナイパー」   
   「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
   「ホビット 決戦のゆくえ
   「インターステラー」
   「Unbroken」

短編賞
<アニメ> 
 「愛犬とごちそう」
   「The Bigger Picture」
   「ダム・キーパー」   
   「Me and My Moulton」
   「人間の一生」  

<実写>
 「The Phone Call」 
   「Aya」
   「Boogaloo and Graham」
   「チベットの埃」
   「Parvaneh」    

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
 「Crisis Hotline: Veterans Press 1」
   「Joanna」
   「Our Curse」
   「The Reaper (La Parka)」
   「White Earth」   

<長編>
 「Citizenfour」   
   「Finding Vivian Maier」
   「Last Days in Vietnam」
   「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」
   「Virunga」    

外国語映画賞
 「イーダ」(ポーランド)
   「Leviathan」 (ロシア)
   「Tangerines」(エストニア)
   「Timbuktu」(モーリタニア)
   「Wild Tales」(アルゼンチン)    

長編アニメ賞
 「ベイマックス」   
   「The Boxtrolls」
   「How to Train Your Dragon 2」
   「Song of the Sea」
   「かぐや姫の物語」    

ジーン・ハーショルト友愛賞
   ハリー・ベラフォンテ

名誉賞
   モーリン・オハラ
   ジャン=クロード・カリエール
   宮崎駿
2015.02.26 Thursday | 20:05 | アカデミー賞の軌跡 | comments(0) | - |

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