映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< フェーム (1980) | TOP | 第87回(2014年)アカデミー賞 >>

スウィング・キッズ

スウィング・キッズ(1993 アメリカ)

スウィング・キッズ 1993原題   SWING KIDS
監督   トーマス・カーター
脚本   ジョナサン・マーク・フェルドマン
撮影   ジャージー・ジーリンスキー
音楽   ジェームズ・ホーナー
出演   ロバート・ショーン・レナード クリスチャン・ベイル
      フランク・ホエーリー バーバラ・ハーシー
      トゥシュカ・バージェン ジェイス・バルトーク
      デヴィッド・トム ジュリア・ステンバーガー ノア・ワイリー
      ジェシカ・スティーヴンソン ケネス・ブラナー(クレジットなし)

(DVDタイトル)スウィング・キッズ -引き裂かれた青春-

自分は"泣ける映画"なんて言い回しがひどく苦手で、映画を観てもあまり泣かない。劇場で、まわりが皆鼻水をすすっていても、ひとり茫然としているタイプだ。そんな自分が周りよりもはるかに泣いていた映画が『スウィング・キッズ』。スウィング・キッズとは1930年代のドイツに実在した、アメリカやイギリスのファッションやスウィング・ジャズを好み、ナチズムとくにヒトラーユーゲントを嫌悪した、いわば"敵のライフスタイルに憧れていた"青年たちの総称。映画はその史実を題材としてスウィング・ジャズに熱狂する若者を描いている。



物語
1936年、ドイツ、ハンブルグ。HJ(ヒトラーユーゲント ヒトラー青年団)に加入する同世代を背に、ピーター(ロバート・ショーン・レナード)、トーマス(クリスチャン・ベール)、アーヴィッド(フランク・ウェイリー)らはスウィング・ジャズに熱狂していた。ピーターはラジオを盗み、警察につかまりそうになったところをクノップ(ケネス・ブラナー)に助けられたことをきっかけにHJに入団せざるをえなくなる。ピーターに同調し、トーマスもHJに加入した。ピーターたちは昼はHJ,夜はスウィング・キッズという生活を謳歌していたが、アーヴィッドはそんな彼らを非難し、距離を置くようになる。アーヴィッドは生まれつき足が悪く、スウィングが踊れないためギターを習得し、ダンスホールで演奏を披露していた。トーマスは日増しにHJに洗脳されていった。ピーターは父親がナチに抗議して収容所に入れられ、その後病死していたことから、戸惑いを残したままだったが、HJの任務としてある家庭に小包を届けた際、あることに気づく。

とはいうものの、『スウィング・キッズ』劇場公開時に1度観ただけでそれっきり観ていなかった。TV放送されたときに録画していたものの観ていない。最初の印象が崩れるのが嫌だったのだ。それに、観終わったあと"ある種の疑念"があった。

Swing Kids1.スウィング・キッズというのは本当に実在していたのか?
映画公開時に買ったパンフレットを観ると、"〜実在したと言われている"くらいの記載しかなく、『シリアル・ママ』や『ファーゴ』のような"実話詐欺"ではないか?と密かに思っていた。でも今はありがたやネット情報化社会。スウィング・キッズは実在していました!Swing Kids( Wikipedia)。映画公開時、自分と同じような疑問を抱いた人もいたでしょう。

2.劇場公開時、作品は不評でヒットしなかった
ここでの不評とは観客ではなく、あくまで批評家様のあいだ。えっなぜ?
ヒットしなかったのはよくわかりません。日本公開時でもそれほど話題にもならずひっそり消えた印象。

上記の英語版wikiにこのような記載があります。
the picture was not a commercial success but sustains a large underground following

そう、この映画には"sustains a large underground following"、まるでカルト映画のごとく、現在でも(数は多くないかもしれませんが)一定の支持者がいます。youtubeをみると、本作のダンス場面などの動画がいくつかあがっておりますし、スウィングファンはこの映画を気に入るはず!?

アメリカで最も影響力のある批評家と言われていた故ロジャー・エバートが本作を酷評している。大先生は主人公が"ノンポリ"なのが、気に入らなかったみたいですね。ナチがとんでもないことをしているのに政治に関心を持たず、スウィングにうつつを抜かしているのはけしからん!というわけです。また、(彼だけでないですが)史実を背景としている場合、それをきっちり描かないのはダメと決めつける。映画のテーマがそれではなかったとしても...。

それにしてもロジャー・エバートって時々PTAのおばちゃんレベルで映画を批判するんですね。有名なのは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)の批評。"少女が母親を殺すなんて!ヒーローさえ最後に殺される。誰も生き残らないなんて最悪だ。このような映画は子供たちに見せないようにしなければならない。配給会社は何をしているんだ?"...これって映画批評っていうの?『ナイト・オブ〜』の評価が高まっていくにつれ、ヤツは掌をひるがえし、4点満点中3 1/2に評価を変更。ふざけてる!『スウィング・キッズ』の批評も同レベルですね。音楽映画としても、青春映画としての魅力も完全無視、政治的な描写が不足しているというだけで罵倒している。

ロジャー・エバートのWEBサイトには反論コメントが2〜3件(笑)入っています。"史実的なことばかりにとらわれ、音楽映画としての魅力を全然わかっていない"、"アンタが大絶賛した『プライベート・ライアン』だって政治的な側面は何もつっこんでいないじゃないか!あれを絶賛してなぜこの作品をここまでこき下ろす?"ごもっともです、その通りだ!もっとやれ!Swing Kids - Roger Ebert

さて、死人へのムチ打ちはこれくらいにして本題に入ります。当サイトでも本作を"jazz映画"のカテゴリーで紹介しておりますので、映画内で使われている音楽について少々。ちなみに、既存のスウィング・ジャズ以外の音楽は『タイタニック』で有名になったあのジェームズ・ホーナー!個人的にこの方の音楽は好きじゃないので無視。まあ、本作ではかなり抑制された使い方だったのがよかった。

 Sing, Sing, Sing (With a Swing)
"シング・シング・シング"は1936年、ルイ・プリマによって作られた曲ですが、有名になったのは1938年、ベニー・グッドマンがカーネギー・ホールでのコンサートで演奏してから。12-min version of "Sing, Sing, Sing (With a Swing)" live @ Carnegie Hall, 1938
1955年に映画『ベニイ・グッドマン物語』が公開されてからますます有名になりました。この曲を使った映画は数知れず。吹奏楽でもよく演奏され、日本映画『スウィングガールズ』にも取りあげられていました。マイナー調の曲をビッグバンドの分厚いアレンジでぐっと迫る。いいですね、"イン・ザ・ムード"みたいなメジャー調の曲をビッグバンドで聞くとだんだんうるさく聞こえてくるんですが、マイナー調の"シング・シング・シング"だとずっと気持ちよく聞ける。まあ、これは好みの問題なんですけどね。本作では映画用の集められたオーケストラが演奏しています。ボーカル入りバージョンもあり、アニタ・オデイのものが有名です。ここではリミックスバージョンをご紹介。うー、何じゃこりゃ!?
Anita O'Day - Sing, Sing, Sing (RSL Remix)

それにしてもこの場面を映画館の大スクリーンで観たときの躍動感!ロバート・ショーン・レナードが女性におじぎをしたあと、オラオラの乗りで手招きする。この仕草、真似したいと思った男も多いでしょう。物語的には単なるダンス・パーティ描写なんですが、この映画のハイライトともよべる場面。『スウィング・キッズ』が今でも"一定の支持者"をえているのはこの場面の魅力に負うものかも!


 IT DON'T MEAN A THING (IF IT AIN'T GOT THAT SWING)
この映画の核とも呼べる「スウィングしなけりゃ意味ないね」です。この曲については『有頂天時代』(原題SWING TIME)のところでも書いていることをまず引用。〜ジャズ詩大全』という本によると、swingという言葉はジェリー・ロール・モートンの"Georgia swing"が最初らしいのですが、事実上はあの有名な"スウィングしなきゃ意味ないね"(It don't mean a thing if it ain't got that swing)の大ヒットが発端。1935年ごろはスウィング時代と言われており、まあ、流行語を入れてみましたくらいの意味だそうです。〜本作で曲タイトルがここぞというときに台詞がわりに使われています。はっきり言ってダサイ(笑)。映画ではビリー・バンクスの歌が使われています。
It don't mean a Thing - Billy Banks

他に使われている曲としては
・"Shout and Feel It" カウント・ベイシーの曲。Count Basie - "Shout and Feel It"
・"Flat Foot Floogee" スリム・ゲイラード、スラム・ステュワート、バド・グリーンの3人が1938年に作った曲。ゲイラードとスチュワートのコンビで発表された。The flat foot floogie par SLIM Gaillard et SLAM Stewart
映画ではベニー・グッドマンの演奏が使われています。Benny Goodman - Flat Foot Floogie
・"Swingtime in the Rockies" ベニー・グッドマンの演奏が映画でそのまま使われています。
"SWINGTIME IN THE ROCKIES" BY BENNY GOODMAN
・"Daphne" ジャンゴ・ラインハルトの曲です。Daphne - Django Reinhardt
・"Life Goes to a Party/Jumpin' at the Woodside"メドレー。
"Life〜"はベニー・グッドマン、The Benny Goodman Orchestra - Life goes to a party
"Jumpin〜"はカウント・ベイシーの曲。Count Basie - Jumpin' at the Woodside。ベニー・グッドマンも好んでとりあげた。
・"Goodnight, My Love" 映画『テンプルの上海脱出』の中でショーリー・テンプル及びアリス・フェイによって歌われたのが最初。『スウィング・キッズ』では歌はなく、ベニー・グッドマンの演奏が使われている。Benny Goodman - Goodnight My Love

 BEI MIR BIST DU SCHON (MEANS THAT YOU'RE GRAND) 素敵なあなた
ラスト、実に印象的な使われ方をしているのがこの曲。"BEI MIR BIST DU SCHON"は1932年にショロム・セクンダ (Sholom Secunda) が作曲。1937年に英語に訳され、アンドリュー・シスターズの歌が大ヒット。Andrews sisters -Bei Mir Bist Du Schon (means you're grand)
ベニー・グッドマンも録音を残しており、ジャズのスタンダード曲となる。Benny Goodman - Bei Mir Bist Du Schön
この映画ではジャニス・シーゲル(マンハッタン・トランスファー)の歌が使われています。Bei Mir Bist Du Schoen - Janis Siegel

後半にいくにつれ曲がアップテンポに変わっていき、ロバート・ショーン・レナードのダンスも絶望を振り払うように激しくなります。"Bei Mir Bistu Shein"とはイデッシュ語。「私にとって君は美しい」という意味だそうだ。イデッシュ語はヘブライ語、ドイツ語、スラブ語が混ざった言葉でドイツや東欧諸国に住んでいたユダヤ系の人々が使っていた言葉ですが、ホロコーストとともに彼らの基盤が崩壊したため、今では英語圏にすむユダヤ人が主に使っているとされる。この曲を使ったのは映画のイメージに会うからという理由だけではなさそうです。この曲がイデッシュ語のタイトルであったこと、それが重要だったのでしょう。

さて、なぜ自分がこの映画に魅せられたか...。ひとつは言うまでもなく音楽の魅力。そしてもうひとつは若者が社会に出て多かれ少なかれぶち当たる壁がきちんと描かれていた点だ。

ちなみに本作『スウィング・キッズ』は1930年代、ドイツに実在したSwing Kidsを題材としたフィクションであって、実話の映画化ではないし、そのようにも謳っていない。当時、クリスチャン・ベール演じるトーマスのような男はいくらでもいただろうが、ピーターやアーヴィッドのような男が実際にいたかはかなり疑わしいし、物語がラストに近づくにつれ、いかにもお涙頂戴的な展開が待っているのは否定できない。今回本作を再見し、さすがに泣かなかったが改めて良い映画だと思った。若者が社会に出るとき、諸事情で自分の意図しない方向性にいかざるをえなかったときどうするか?比較的短期間で洗脳されてしまうトーマス、妥協したふりをしながらもどこか割り切れないピーター、第三者から観るとやや滑稽に見えるほどはっきり拒絶するアーヴィッド...。三者三様の対応がくっきりと描かれる。「何の抵抗もなくHJに入り夜は音楽を聴く。そんな奴にスウィングがわかるか」アーヴィッドが叫ぶ。確かにスウィングはアメリカが恐慌後、意気消沈していたころに流行りだした音楽である。アーヴィッドはスウィングをナチに対する反抗のシンボルのようにとらえていたのだろう。

ピーターの母親(バーバラ・ハーシー)は彼を諭す。

主義を貫くことなど何になって

彼女の夫、つまりピーターの父親はそれで亡くなっている。過去、"主義を貫いたことで"痛いめにあった人をまじかで観るとどうしてもそういう考え方に変わりやすい。主義を貫くこと、世の中の変な流れに抵抗したものが"落後者"と言われる。ケネス・ブラナー演じるクノップはピーターに対し、「若さと情熱を無駄にするとは」とあきれ顔でいう。世の中には強いものや世の中の流れにすがることで自分を大きく見せようとする人もいる。ぶれずに生きようとすると人生のレールをはみだしてしまい落後者とののしられる。ぶれずに生きることの難しさとその代償を本作は見事にあぶりだしている。諸事情で夢をあきらめざるをえなかった人には『スウィング・キッズ』はかなり刺さる映画なのではないか、と思う。

ピーターを演じたのがロバート・ショーン・レナードだったのもよかった。当時、彼は『いまを生きる』(1989)でブレイクし、ケネス・ブラナー監督『から騒ぎ』(1993)、マーティン・スコセッシ監督『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(1993)にも出演。若手演技派として名をとどろかせていた。品があり誠実な役柄に説得力をもたせられる数少ない俳優。だが、それ以降映画ではあまり見かけなくなってしまい、活躍の場は舞台やTVドラマに移っていった。2001年にはトニー賞演劇助演男優賞を受賞、2004〜2012年にわたってTVドラマDr.HOUSEにも出演しており、"あの人は今"的存在というわけではないようだ。ロバート・ショーン・レナードについて、日本でPR来日したときの模様を映画雑誌で読んだことがある。真面目な演劇青年といった感じで、スターにありがちなワガママ要求など全くなく、ほとんどホテルから出なかったという。要は"手のかからないスター"だったということですね。もしピーター役をチャラい俳優が演じていたら多分泣きませんでした(笑)。

映画レビュー記事に個人的なことを交ぜることは好きではないのだが、筆者、この映画を観た当時(まあ、今も似たようなものなんですけど)、不本意な就職をし、職場環境もよくなかったため精神的に参っていた。本作でいうピーターのような心情だ。アーヴィッドのように生きたいと思いつつも、諸事情でどうしてもそれができない。毎日もんもんとした生活を送っていた。よって、本作のピーターとアーヴィットにやたら感情移入してしまい、2人が悲劇的最期をとげるのを観て思わずワーとなってしまったのだ。映画『スウィング・キッズ』は"苦い思い出の作品"。例えヒットしてなかろうが批評が悪かろうが、自分にとって大事な映画です。
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

2014.10.14 Tuesday | 00:07 | Jazz映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

スポンサーサイト


2017.08.15 Tuesday | 00:07 | - | - | - |

コメント

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://moviepad.jugem.jp/trackback/675

トラックバック

▲top