映画のメモ帳+α

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フェーム (1980)

フェーム(1980 アメリカ)

フェーム(1980)原題   FAME
監督   アラン・パーカー
脚本   クリストファー・ゴア
撮影   マイケル・セレシン
作詩   ディーン・ピッチフォード レスリー・ゴア
音楽   マイケル・ゴア
出演   アイリーン・キャラ バリー・ミラー リー・キュレーリ
      ローラ・ディーン ポール・マクレーン エディ・バース
      ジーン・アンソニー・レイ ボイド・ゲインズ アルバート・ヘイグ
      アントニア・フランチェスキ ジョアンナ・マーリン モーリーン・ティーフィ 
      デビー・アレン トレサ・ヒューズ アン・メアラ
      スティーヴ・インウッド メグ・ティリー リチャード・ベルザー

第53回(1980年)アカデミー賞作曲賞、歌曲賞("Fame")受賞。脚本、音響、歌曲賞("Out Here on My Own")ノミネート

アイリーン・キャラのヒット曲"フェーム"につられて、かなり若かりき頃にこの映画を観た。正直いってよくわからなかった。それから10年以上たち、TVで放送していたのを"アノつまらない映画ね"と思いつつ何となく観た。...唖然。これ、傑作じゃない!同じ作品を2度見ることが滅多にない自分としては、"時間を経て見直すと評価が変わる"映画は初めてだった。そしてさらに年月はたち、アラン・パーカー監督『フェーム』3回目の観賞の運びに。やっぱり良い作品。評価は変わらなかった。



 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

ニューヨークに実在する音楽・芸術系高校に通う学生たちの4年間を追ったドキュメンタリータッチの作品。Auditions(オーデション風景)、Freshman year(1年目)、Sophomore year(2年目)、Junior year(3年目)、Senior year(4年目)とパートがわかれているが、ストーリーはあってないようなもの。特に主役はおらず、歌の上手いココ(アイリーン・キャラ)、シンセサイザーをあやつり、古典的な音楽授業をバカにしているブルーノ(リー・キュレーリ)、無駄話が多くよく注意されているダンス科のリサ(ローラ・ディーン)、演劇科でコメディアンをめざすラルフ(バリー・ミラー)、同じく演劇科でゲイに悩むモンゴメリー(ポール・マックレーン)、母親に付き添われて"ここが一番学費が安かったから"オーデションにやってきた内気な娘ドリス(モーリーン・ティーフィ)、ダンスは上手いが字が読めないため女教師と対立ばかりしているレノイ(ジーン・アンソニー・レイ)らを中心にした郡集劇である。

まず、オーデションシーン。これ、最初専門学校かと思ってたんですが、高校なんですね。登場する人物、誰も通りそうにないように見えるのですがひとりを除き、皆合格。レノイは当初、恋人のダンスパートナーとしてオーディションに参加、彼は受験申し込みをしていないのですが、彼が合格。恋人は下品すぎて?落選します。まあ、学校もビジネス、矢継ぎ早に落としていては経営が成り立たない。途中、リサが"ダンスの才能がない"と教師に言われ「じゃあ、なぜ私を採用したの」と問い詰めたところ、教師は口ごもって「見る目がなかったのね」。ビジネスのため、とはさすがにいえませんね。

この映画出演者のオーデション、スター性というより、あくまでも役柄にあった子を採用したのでしょう。映画『フェーム』のオーデションを受け落選したと言われているのはトム・クルーズ、パトリック・スウェイジ、ミシェル・ファイファー、エミリオ・エステベス、マドンナ...。もしスター性を重視していたら、本作のプロデューサーは相当見る目がなかったことになります(爆)。

さて、この映画のキャストで目立つのは...やっぱり"歌った"メンバーなんですね。そう、ココ役のアイリーン・キャラとゲイ役のポール・マックレーン。日本語版wikiがつくられているのもこの2人だけです。(笑)。アイリーン・キャラは当初、ダンサー役だったそうですが、彼女の歌声を聴いたあと歌手役に変更されたとか!そうでしょうね。ポール・マックレーンは『ER緊急救命室』など主にTVドラマで活躍しています。

では、その楽曲を見ていくことにしましょう。

まずは"Red Light"。リロイとその恋人が下品なダンスをするオーデション場面で流されます。落とされた女はリロイに「オーデションを横取りされた」と怒鳴ったあと、学校側に「貴重な4年間台無しにせずにすんだわ」と強がりを言って立ちさる。"Red Light"を歌うは当時の人気ディスコ歌手リンダ・クリフォード。(出演はしていません)ところでリノイのダンスも思い切り下品だったのに何故彼だけ受かったんでしょう。それは審査員が女だったから。下品な女はきらいでもいやらしい動きをする男は...。Linda Clifford - Red Light

「才能だけではだめ。技巧、売り込み、そして面の皮だ。ヤジや屈辱に耐えなければならない。」
若い子にこんなこと教えるんですね。人前にたつ舞台なら仕方ないか。コメディアン志望のラルフは面の皮が薄かったようです。

そしてランチタイム。オシャレな雰囲気は皆無。狭い中、人がたむろしています。そこで何気なく歌われるのが"Hot Lunch Jam"。"Red Light"同様、同時流行のディスコサウンド。熱気あふれる場面です。ちなみにこの映画の題名は当初、"Hot Lunch"だったが、同じ時期に同じタイトルの成人向け映画が上映されていたため"Fame"に変更されています。製作側は"Hot Lunch Jam"が映画の看板曲と考えていたんでしょうね。ところでこの曲のリズムって"ディスコ・インフェルノ"に酷似していない?

日本ライブからです。アイリーン・キャラ、ノリノリ。ニホンジンオトナシイネ。


さて2年目に入ってもブルーノは音楽の授業にぶつぶつ言うばかり。そのブルーノが曲を作ったということになっている"Fame"を父親のタクシー運転手が街中に流してしまいます。歌っているのはココ役のアイリーン・キャラ。最初、この場面を観たとき地味な使い方だなと思ったものですが、今みると派手です。ちなみにこの映画の撮影時、"Fame"という曲はまだ完成しておらず、流していたのはドナ・サマーの"Hot Stuff"だったという。それにしてもすごい歌詞ですね。Fame Lyrics

fame 1980Remember my name
(Fame)
I'm gonna live forever
(中略)
People will see me and cry

私の名前を覚えて!永遠に生きたいわ。〜人々は私を観て歓喜の声をあげるようになるわ。...

ショービジネスを目指す若者はこれくらいの気持ちを持たなければいけないんでしょうね。ドキュメンタリー映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』(2008)でもオーディションを受けていた女の子が審査員に向かって"Remember my name"と歌っていました。何ともストレートな歌詞。これを日本語に直訳したら絶対売れないでしょう。ピンク・レディーが"リメンバー(フェーム)"というタイトルでカバーしていますけど原曲とちょっとニュアンスが違っていたような...。"Fame"はこの年のアカデミー賞歌曲賞を受賞。単なるダンスナンバー以上の評価を勝ち得たのは、アイリーン・キャラのボーカルの魅力と歌詞の強烈さ、アレンジがほどよくおさえてある(ディスコソングはアレンジをやりすぎることが多い)ことが要因でしょう。この曲はビルボード最高4位まであがる大ヒットとなり、グラミー賞でも最優秀ソング、最優秀ポップ女性ボーカル賞(アイリーン・キャラ)にノミネートされています。アイリーン・キャラ、グラミー賞受賞はなりませんでしたが、一緒にノミネートされていたのがベッド・ミドラー(受賞)、オリヴィア・ニュートンジョン、ドナ・サマー、バーブラ・ストライザンドという錚々たる大スター...。アイリーン・キャラ大出世でっせ、奥さん(爆)。

3年目に入り、アイリーン・キャラ扮するココがピアノで"Out Here On My Own"を歌っている。聞いていたブルーノに対し、「ちょっと感傷的すぎるわね」と語るココ。う〜ん、その通りですね(笑)。客席で聞いていたブローノの父ちゃんが拍手するんですが...。この"Out Here On My Own"はビルボード最高19位まで上昇。"Fame"とともにこの年のアカデミー歌曲賞にノミネートされました。アカデミー歌曲賞に同一映画から2曲ノミネートされたのはこれが初めて(今では珍しくない)。おかげでアイリーン・キャラ嬢はアカデミー賞授賞式ステージで"Fame"と"Out Here On My Own"をメドレーで7分にわたって披露。これは大事件ですよ、奥さん。irene cara oscars(出だしは緊張して音を外したが、あとは堂々たる歌いぶり。アカデミー賞授賞式史に残る名パフォーマンスになりました)

映画『フェーム』のサウンドトラックはビルボードアルバムチャートNo.1に輝いています。ただ、このアルバム、個々の楽曲は粒ぞろいなんだけどディスコ曲とオーソドックスなバラードがごちゃまぜになっているので通して聞くとあまり心地よくない。まあ、映画のサウンドトラックにはつきものですけどね。



5歳だった妹が父親に暴行を受けた件で泣きだすラルフ。それを慰めるドリス。2人の間に愛が生まれる。同席していたモンゴリーはいたたまれなくなって部屋をそっと抜け出します。その場面の"微妙な間"がすごくいい。モンゴリーはゲイに悩み、冒頭「パーティにいくと全世界に拒絶された気分になる」と語っていた男の子です。彼はその後、ひとりギターで"Is It Okay If I Call You Mine?“ を歌います。ポール・マクレーン扮するモンゴリーはもうひとつ"Dogs in the Yard“ という曲を歌っているのですが、街の人々の描写でバックに流れているだけなので、あんまり印象に残っていない。結構、いい曲なんですけどね。

その後、ラルフとドリスが『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)を見に行く場面に移ります。アラン・パーカー監督はドリスが女優になるため自分自身の畏れを克服する場面をつくりたいと考えていた。そんなとき、映画『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)の上映が"観客参加型"で行われていることを知り、早速視察に出かけた。彼はたいそう気に入り"Time Warp”のパフォーマンス時、ドリスを劇場に参加させ、そのまま映画に使った。これは驚きましたね。内気な女の子がアレに飛び入りするなんて...。自我のめざめ描写としては悪くないかもです。どうせなら舞台版に乱入させたほうが面白かったのに(笑)。

4年目、いよいよ最後の年。ココがフランス人写真家にスカウトされ、気が付いたら裸にさせられる場面やラルフがコメディアンとしてデビューするも全く受けず、やけ酒の日々。全く反応がないため舞台を途中で降板してしまいます。あのドリスから「あなたには才能があるのに、なぜフレディ・プリンゼ(ラルフが崇拝するコメディアン)の真似ばかりするの?」とののしられ、モンゴリーに慰められる。アーティストの卵たちの苦い日々の描写が続きます。ラスト、出演者全員で"I Sing the Body Electric“ を歌い、ブツ切れのように終わる。この場面、一見卒業公演のようにも思えますがあまりにも立派なため、幻にも見える。説明は一切なし。ブツ切れの終わり方がかえって想像をかきたてます。アラン・パーカー、うまいなあ。

さて、この映画出演者でダントツの出世頭は言うまでもなくアイリーン・キャラ!その後、映画『フラッシュダンス』(1983)の主題歌が大ヒット、アカデミー賞歌曲賞をまたしても受賞。今回はアイリーンもソングライターのひとりとして受賞しています。グラミー賞最優秀女性ポップボーカリスト賞も獲得、若くしてグラミー、アカデミー賞両方の受賞者となりました。

Flashdance What A Feeling - Irene Cara Official Video
"Flashdance...What a Feeling" winning Best Original Song Oscar®

彼女のボーカルはまさに"万人に届く声"。イメージとしてはドナ・サマーから暑苦しさや生硬さを抜いた感じ。洗練された歌声です。パワフルであっても耳触りではなく、ほどよくバランスがとれている。非常に聞き心地のよい声でポップス歌手として理想形に近いと個人的には思います。"Fame"も"Flash Dance"もすぐれた楽曲ではありますが、アイリーン・キャラが歌わなければあそこまでヒットしなかったでしょう。その後も"Why Me"(全米13位)、"Breakdance"(全米8位)などのヒットを飛ばしますが、その後音沙汰がなくなります。既に2曲も世界的大ヒットがあるし、彼女の"声"なら楽曲に恵まれればいくらでもヒット曲を生み出せる。大歌手への道は約束されたように思えましたが...。ところがレコード会社との契約で、大ヒット曲を生みだしながらも彼女にはほとんど報酬が払われなかったらしいのです。そこでアイリーンはレコード会社を訴えました。1993年に勝訴しますが、そのあいだ彼女はアメリカ音楽業界から干されてしまい、満足に音楽活動が行えない状況だったそうです。アイリーン・キャラほど才能のある歌手を"奴隷契約"によって簡単につぶしてしまうとは...アメリカ音楽業界、恐ろしや。今、『フェーム』を見直すと、アイリーン・キャラの人生がフランス写真家にだまされて脱がされるココの姿に重なって見えてしまう...。アイリーン・キャラの歌声は今聞いても素晴らしい。個人的に"好きな声"です。

では、これまた日本ライブからの動画を。今、ライブでこれほど歌えるシンガーってどれくらいいるんだろう?
曲はもちろん"Fame"です。



映画『フェーム』の良い点はあくまで日常を描こうとしている点。郡集劇ではひとつひとつのエピソードにドラマティックなオチをつける傾向があるが、本作にはそれがない。ダンスの才能がないと言われたリサが地下鉄で投身自殺を匂わせるけれど、結局は演劇科転向という現実的な選択をしている。一方ダンスの才能はあるが文字が読めないため単位がとれないレノイやコメディアンとして伸び悩むラルフがその後どうなったかも描写がない。無理にオチはつけない。"学校"での4年間なんてたいしたことは起こらない。ドラマがあるのはこれからだよ、と言わんばかりである。また、物語はクサイ表現をあえてするなら"青春の光と影"を描いている。光があたっている人物のバックが必要以上に暗い。エピソードだけでなく視覚的にもそれが感じ取れるようになっている。作品全体としてドキュメンタリータッチで、非常に英国人監督らしい演出。ハリウッドにどっぷりつかったアメリカ人監督だったらもう少し(不自然な)ドラマを持ちこむだろう。

1980年に公開された映画『フェーム』は好評をはくし、1982年にはTVシリーズ、2009年には映画版リメイクがつくられている。アラン・パーカー監督はいずれにも不満を表明し関わっていない。「あの学校の生徒たちと実際に数カ月をすごし、それから1年かけて最善を尽くして撮った。"Fame"は私の作品なんだ」とかなりオカンムリの模様。TVシリーズ、映画リメイクも個人的に観ていないので何ともいえないが、今後も観たいとは思わない。上記に記した美点がおそらく失われていると思うので。

映画『フェーム』(1980)は、アイリーン・キャラの歌声、青春の光と影、挫折、少しずつ内面的に成長している若者の描写を通して、若かりし頃、そして大人になってからも形を変えて芽生えてくる感情を静かにゆり起してくれる。映画公開から30年以上たった今でも十分観賞に耐える青春映画の傑作です。
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2017.06.24 Saturday | 00:15 | - | - | - |

コメント

こんにちは^^
かなり前にコメントしたことのある者ですが・・お久しぶりです。

大好きな映画「フェーム」の記事だったので、とにかく嬉しくて〜〜
私のお気に入りベスト10のひとつで、アイリーン・キャラの歌は最高です。
映画『フラッシュダンス』(1983)よりこちら映画「フェーム」が好きです。
と、意味のないコメントで失礼しました。
2014/10/30 10:11 PM by zukka
zukkaさん、お久しぶりです。
ちゃんと覚えてますって(笑)。

『フェーム』本当にいいですね。
わざとらしいドラマがないので歌の場面が余計ひきたつ!それとアイリーン・キャラの声って個人的に本当好きなんです。"2発屋"(笑)で終わるような人じゃないんですけどね、もったいない。

『フラッシュダンス』は見たけどよく覚えていない。でも、あの作品って当時流行していた"サントラ映画"のひとつとして軽く見られがちだけど、意外と評価高いんですよ。いつか見なおしてみたら「フェーム」同様、印象が変わるかもと思っています。
2014/11/01 11:20 PM by moviepad

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