映画のメモ帳+α

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有頂天時代

有頂天時代(1936 アメリカ)

有頂天時代原題   SWING TIME
監督   ジョージ・スティーヴンス
原作   アーウィン・ゲルシー
脚本   アラン・スコット ハワード・リンゼイ
撮影   ドロシー・フィールズ
音楽   ジェローム・カーン ナサニエル・シルクレット
出演   フレッド・アステア ジンジャー・ロジャース
      ヴィクター・ムーア ヘレン・ブロデリック エリック・ブロア
      ベティ・ファーネス ジョージ・メタクサ

第9回(1936年)アカデミー賞歌曲賞受賞(「今宵の君は」("The Way You Look Tonight")。ダンス監督賞(ハーメス・パン)ノミネート

有頂天時代』はフレッド・アステアジンジャー・ロジャースの共演第6作目。アステア=ロジャーズコンビ最良の作品という評価もあり、2007年に選出されたアメリカ映画ベスト100(10周年エディション)で90位、コンビ作唯一のランクイン。ジェローム・カーンが作曲を手掛けた"Pick Yourself Up"、"The Way You Look Tonight"、"A Fine Romanceらは今でもスタンダードナンバーとして歌いづがれています。



 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。


物語
ラッキー・ガーネット(フレッド・アステア)は舞台でダンサーをしていたが、マーガレット(ベティ・ファーネス)との結婚が決まり一座を抜けることになった。だが、彼に抜けられたら困る一座の仲間が策略をしかけ、結婚式に遅刻させてしまった。式は中止となり、激怒したマーガレットの父親は「NYで2万5千ドル稼げば結婚させてやる」と条件をつける。NYでラッキーはダンス教師ペニー(ジンジャー・ロジャース)と出会い、コンビで仕事をはじめ、次第に2人は惹かれあっていく。ラッキーは貯金が2万5千ドルに達しないよう苦心するなか、ベニーはラッキーが婚約していることをポップ(ヴィクター・ムーア)から聞き、失望。以前からベニーに執心だったバンド指揮者リカルド(ジョージ・メタクサ)と結婚を決めてしまう。

この映画の原題は"SWING TIME"。邦題はSWING=有頂天と訳しているんですね、うーむ...。まあ、それはさておき原題も当初は"I WON'T DANCE"、その後は"NEVER GONNNA DANCE"に変更、そして"SWING TIME"で落ち着いたということです。この映画に"Waltz in Swing Time"という曲はあるけど、スウィングっぽい曲はないんだけど...。『ジャズ詩大全』という本によると、swingという言葉はジェリー・ロール・モートンの"Georgia swing"が最初らしいのですが、事実上はあの有名な"スウィングしなきゃ意味ないね"(It don't mean a thing if it ain't got that swing)の大ヒットが発端。1935年ごろはスウィング時代と言われており、まあ、流行語を入れてみましたくらいの意味だそうです。邦題も一時『スイング・タイム』としてDVDが出ていたこともありましたが、これ...同じアステア主演の『スイング・ホテル』(1942)と間違えそうになりますよね。『有頂天時代』のいう意味不明な題材のほうがマシ(笑)。

では、早速、劇中歌をみていきたいと思います。

 "Pick Yourself Up"
アステアがダンス教師ロジャースの気をひこうとわざとコケたりします。その後で歌われるのがこの曲。
そのあとアステアが"本気を出して"ロジャースとダンスする場面でもBGMとして使われています。
さあ、立ちあがるのよというシンプルな曲。世界恐慌の余韻が残るアメリカの世情にはまったという指摘もあります。2009年オバマ大統領が就任演説で"Starting today, we must pick ourselves up, dust ourselves off, and begin again the work of remaking America."と語り、この曲のサビの"pick yourself up, dust yourself off and start all over again"の部分を引用したことはよく知られています。Pick Yourself Upという言い回しがアメリカ人に響くんでしょうね。Pick Yourself Up - Swing Time (1936)
多くのジャズ歌手、ミュージシャンが録音しているスタンダード曲。2、3回聞くと知らぬ間に口づさんでしまう、そんな曲です。アニタ・オデイはアルバムタイトルにこの曲を使い、彼女の代表作となっています。すごい力技でジャズっぽくしている。

 "The Way You Look Tonight"
アステアがピアノを弾きながらひとり歌う。いつかひどく落ち込むときがきても、今宵の君の姿を思い浮かべるだけで明るい気分になる、君を愛しているんだ、というオーソドックスなバラード。このあとジョージ・メタクサがオペラっぽく歌ったりするんですが、こういう曲はアステアの少し不器用な歌い方のほうが説得力があっていい。まあ、アカデミー賞歌曲賞をとりそうな曲です。アレック・ワイルダーはこの曲について「品格と優美さにあふれている。バラードのよく見られる下手でゴツゴツとして動きが皆無で、カーンが勇気を奮ってもう少しメロディックにする危険を冒していたら、チェコ協奏曲のスローな楽章の初めの部分のようにきこえたろう」(『ジャズ詩大全』参照)確かにこの曲からはあえてひねりを入れない滑らかさを感じますね。だからこそスタンダードになったのでしょう。The Way You Look Tonight

 "A Fine Romance"
ジンジャーがアステアに迫るのに、婚約者がいるアステアはそれをかわそうとする。
そんな場面で歌われる。

キスもしないロマンスなんて素敵ね
アザラシのほうがましよ。
拍手してくれるかな。
何でそんなお堅いの
もうお手上げよという歌。

fine romance(素晴らしいロマンス)というタイトルはもちろんは皮肉。
1番、2番はジンジャー、3番、4番はアステアが歌います。
例えが違うだけで同じような内容の繰り返し。
3番あたりにくるとさすがに飽きます。
4番あたりでオチがついてちゃんちゃんかと思いきや、最後までこんな感じです。
アステアもジンジャーも上手いとはいいかねますが、ぎこちなさがかえってこの曲にフィットしている。
A Fine Romance - Fred Astaire & Ginger Rogers in Swing Time

この曲もビリー・ホリデイ、フランク・シナトラはじめ、多くの歌手がレコーディングしています。
有名なのはルイ・アームストロングとエラ・フィッツジェラルドのデュエット。濃すぎる...。ぎこちなさなんてヒトカケラもありません。Louis Armstrong, Ella Fitzgerald - A Fine Romance

あのマリリン・モンローまで。モンローにこんな曲で迫られたらセクハラ以外何物でもない!(爆)。
これは映画の劇中歌じゃない。いつ録音したのかな。Marilyn Monroe sings - A Fine Romance

 "Bojangles of Harlem"
これは歌なしの曲。当時、ラテン・リズムが流行しつつあったのを受け、リズムの激しい曲が欲しいという映画会社からの要請で作られた曲。とはいっても音楽よりもアステアのシャドウ・ダンスが印象に残る。アステアは作品のなかに最低ひとつは強烈なビジュアルをともなったダンス場面を盛り込む人ですが、『有頂天時代』ではここです。ビル・ボージャングル・ロビンソンに扮し、アステア唯一の黒塗りでのパフォーマンス。SO COOL!



 "Never Gonna Dance"
ラスト近く、アステアがジンジャーの心をつなぎとめようとして、ダンスなしでしっとり歌う。やっぱりアステアは歌手としてはバラードのほうがうまい。この曲タイトルが当初、映画の題名候補だったこともあり、推しナンバーだったんでしょうけど、"Never Gonna Dance"はスタンダード曲にはなりませんでした。有名なのは歌のあとのダンス場面。最初ゆっくりで徐々に激しくなっていく。完璧主義のアステアはここだけで47テイクも重ねたらしいです。この場面をみているとダンスはまさに芸術、ダンスをもってしっかり演技をしていることがわかります。もー、今時の、カッコだけの振り付けでドヤ顔をしている"ダンサー"たちに見せてあげたい!


前述の通り『有頂天時代』はアステア=ロジャーズコンビ最良の作品という評価が定着しています。ジンジャー・ロジャースもアステアとの共演作でこの作品が特に気に入っているとのこと。興行的にも成功しています。ただし、コンビ人気に陰りが見え始めた作品でもあるという記載も書物等で見かけますが、映画会社の利益金額をwikiで調べたところ(我ながらヒマだ...)コンチネンタル』(1934) $584,000、『トップ・ハット』(1935) $1,325,000, 『艦隊を追って』 (1936)$945,000、『有頂天時代』(1936) $830,000、『踊らん哉』(1937)$413,000...。1年に2作もコンビ作後悔してりゃ多少数字は落ちますって!人気に陰りがみえたといえるのは明らかに『踊らん哉』から。書籍をうのみにしすぎてはいけません(笑)。

かといってこれが最良の作品かというと...。確かに脚本はアステア=ロジャースコンビ作品の中ではまとまっているほうです。時折、はさむ賭博のエピソードがうざいですが、ポップ(ヴィクター・ムーア)とメーベル(ヘレン・ブロデリック)のコンビで笑いをとるところや、ズボンの折り目のエピソードをきちんと活かしている点、ジンジャーからアステアにすり寄るという新パターン(?)、そしてラスト、しんみりするはずのところを大笑いで終わるなど工夫も見られます。でも全体的には"いつものパターン"の範疇内。とりたてて傑出しているわけでもない。なぜこれが...つまるところ楽曲の力でしょうね。1つの映画内で3曲もスタンダードを生み出した!『トップ・ハット』も同様ですが、『有頂天時代』のほうが全体的に曲だけでなく、ラストのダンスも含めて品格が漂っている!高評価の原因はそんなところではないでしょうか?『有頂天時代』はミュージカル映画評価は楽曲の魅力に負うところが大きいことを再認識させてくれる作品です。
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2017.05.25 Thursday | 00:24 | - | - | - |

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