リトル・ミス・サンシャイン
リトル・ミス・サンシャイン(2006 アメリカ)
原題 LITTLE MISS SUNSHINE
監督 ジョナサン・デイトン
ヴァレリー・ファリス
脚本 マイケル・アーント
撮影 ティム・サーステッド
音楽 マイケル・ダナ
出演 グレッグ・キニア トニ・コレット
スティーヴ・カレル
第79回(2006年)アカデミー賞助演男優(アラン・アーキン)、脚本賞受賞。作品、助演女優賞(アビゲイル・ブレスリン)ノミネート
「私がこの世で嫌いなものは負け犬だ」
カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーのこの発言に触発され執筆された脚本だそうです。美少女コンテストの舞台がカリフォルニアと設定されているのはおそらくこれが理由でしょう。この作品はそんな「勝ち組」志向に真っ向から立ち向かう。
〜物語〜
アリゾナ州に住むぽっちゃり気味のオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は『リトル・ミス・サンシャイン』というタイトルの美少女コンテストで優勝すること。ビデオで研究したり、おじいちゃん(アラン・アーキン)にダンスのレッスンを受けたりと練習に余念がない。なんとオリーヴは地方予選で繰り上げ優勝して、コンテスト出場資格を得た。家族総動員で開催地カリフォルニアまで車で出発するのだが、皆、それぞれ問題を抱えていた...。
原題 LITTLE MISS SUNSHINE
監督 ジョナサン・デイトン
ヴァレリー・ファリス
脚本 マイケル・アーント
撮影 ティム・サーステッド
音楽 マイケル・ダナ
出演 グレッグ・キニア トニ・コレット
スティーヴ・カレル
第79回(2006年)アカデミー賞助演男優(アラン・アーキン)、脚本賞受賞。作品、助演女優賞(アビゲイル・ブレスリン)ノミネート
「私がこの世で嫌いなものは負け犬だ」
カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーのこの発言に触発され執筆された脚本だそうです。美少女コンテストの舞台がカリフォルニアと設定されているのはおそらくこれが理由でしょう。この作品はそんな「勝ち組」志向に真っ向から立ち向かう。
〜物語〜
アリゾナ州に住むぽっちゃり気味のオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は『リトル・ミス・サンシャイン』というタイトルの美少女コンテストで優勝すること。ビデオで研究したり、おじいちゃん(アラン・アーキン)にダンスのレッスンを受けたりと練習に余念がない。なんとオリーヴは地方予選で繰り上げ優勝して、コンテスト出場資格を得た。家族総動員で開催地カリフォルニアまで車で出発するのだが、皆、それぞれ問題を抱えていた...。
Little Miss Sunshine
「世の中には勝ち組と負け組しかいない」と力説する父リチャード(グレッグ・ギニア)。彼は家庭においても常にこの自説を撒き散らし、家族不和の一番の原因となっています。「勝てると思わないのなら、コンテストなど出るな!」とオリーヴにまで言う始末。そういう自分はこの成功プログラムの売り込みに必死のビンボー人。コンテスト直前、オリーヴが「自信がない。負けたらパパに嫌われる」と愚痴をこぼす。おじいちゃんは「負け組とは結果ではない。成功するための努力をしない人のことだ」と諭します。このセリフがこの作品のテーマでしょう。
ちなみに美少女コンテストでは、妖怪みたいな塗り物をした少女たちがぞろぞろ出てきます。あんなの全員失格だぜ(爆)僕ならオリーヴに1票!でもアメリカの美少女コンテストって実際のところはかなり壮絶な戦いなんでしょうね。映画に登場するミスコン参加の親子たちは、実際のミスコンに参加している人たちで、プロの俳優はひとりもいないそうです。何気にジョンベネちゃん殺人事件を思い出してしまいました。
いわゆるロード・ムービーですが、行き先でさまざまな人々に出会う、というパターンではありません。旅の途中の出来事によって、家族ひとりひとりが抱える問題が明らかになっていくという構成になっています。
・途中で立ち寄ったレストランで、オリーヴがアイスクリームを注文。独自の成功論を掲げる(9段階の何とかプログラムってヤツですね。よく聞くパターンですが)リチャードから「ビューティ・クイーンはみんなスリムだ。アイスクリームなんか食べない」と"成功理論"を説かれて悩むオリーヴ。そのアイスクリームをおじいちゃんや兄ドウェーン(ポール・ダノ)や叔父フランク(スティーヴ・カレル)らが食べ始める。大のオトコ3人が7歳の女の子からよってたかってアイスクリームを取り上げるんですよ!幼児虐待で逮捕すべきですな(爆)この小さなエピソードは後で活きてきます。
・ある事で落胆するオリーヴ。フランクがドウェーンに「ハグしてやれ」とアドバイス。
オリーヴをハグするフランク。彼はこの行為が何を意味するかを後で体感します。
この映画で最も好きな場面のひとつです。
・兄のドウェーンは空軍に入隊しテストパイロット試験に合格するまで、ニーチェばりに"沈黙の誓い"をたていっさい誰ともしゃべらないと決めている。必要にせまられたときは筆談ですます。
このドウェーンのキャラクター、個人的に一番好きです。
彼がついに口を開く場面はこの作品のクライマックスのひとつ。
・おじいちゃんはポルノ雑誌愛好家で15歳のドウェーンに「とにかく女とヤリまくれ」と説く。この彼の趣味が家族のピンチを救い、そして...。彼はオリーヴのダンス指導をしていたんですよね。
旅先で起こる事件と登場人物個々のキャラクターが見事にリンクしている。
小さなエピソードまで物語に活かしきった脚本はまさにお見事!
登場人物もひとりが突出することはなく、それぞれの個性がひとつずつ重なっていくことで作品を彩っていく。最高のアンサンブル演技を満喫できる映画です。
勝ち組、負け組といった言葉は最近よく使われる。
日本でも「負け犬」なんて言葉が一時期流行りましたね。
財産とか社会的地位とか結婚の有無、子供の有無...。
目に見えるわかりやすい基準だけで人間の価値を計りたがる奴らはこの世に山ほどいる。
この映画に"勝ち組"のヒトはひとりも出てきません。
勝ち組論者のリチャードも、娘がコンテストに登場すると人一倍応援するひとりの父親の顔に戻っています。たとえ目に見える形で努力は報われなくても、その過程で得たカタルシスは貴重な宝物になるはず。コンテスト終了後、崩壊寸前だった家族は実に楽しそうに車を手押ししてエンジンをかけ、飛び乗ります。
自分は負け組だと思っている人にこそ、ぜひ見てほしい映画です。
この作品を見た後では、そんなことを気にすることが馬鹿馬鹿しくなるでしょう。自称「勝ち組」のヒトは「まあまあ面白い映画じゃない」と鼻でせせら笑うように言うかもしれない。そういう輩には哀れみの一瞥でもくれてやればよい。人生に勝ったか負けたかなど他人様に判断してもらうことではない。自分の心の持ち方が決めるものだ。そんなさりげないメッセージが込められている作品。ラスト、黄色いおんぼろバスは太陽のように輝いている。
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