映画のメモ帳+α

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アニーよ銃をとれ

アニーよ銃をとれ(1950 アメリカ)

アニーよ銃をとれ原題   ANNIE GET YOUR GUN
監督   ジョージ・シドニー
製作   アーサー・フリード
脚本   シドニー・シェルダン
撮影   チャールズ・ロッシャー
音楽   アーヴィング・バーリン ロジャー・イーデンス アドルフ・ドイッチ
出演   ルイス・カルハーン ハワード・キール
      ベティ・ハットン J・キャロル・ネイシュ
      エドワード・アーノルド キーナン・ウィン

第23回(1950年アカデミー賞ミュージカル映画音楽賞受賞。撮影(カラー)、美術装置(カラー)、編集賞ノミネート

アニーよ銃を取れ』は1946年エセル・マーマン主演で上演回数1,147回の大ロングランを記録したブロードウェイ・ミュージカルの映画化。ブロードウェイ上演では作曲を依頼していたジョローム・カーンが急死したため、アーヴィング・バーリンがピンチヒッターとして起用されるアクシデントがあったが、映画版でも監督、主演女優などの交代劇があり完成までに困難を極めた。だが、そのかいあって?ブロードウェイ版同様、この映画版も大ヒットを記録している。

 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。



物語
シンシナティにバッファロー・ヒル(ルイス・カルハーン)の西部ショウ一座がやってきた。田舎娘アニー(ベティ・ハットン)は一座の2枚目スター、フランク(ハワード・キール)に一目ぼれ。アニーは射撃大会で彼を負かしたことをきっかけに一座に加入。アニーは彼の愛を獲得することに成功するが、射撃の腕前はアニーがはるかに上回ることが愛の障害となる。アニーはインディアン酋長ブル(J・キャロル・ナイシュ)に養子に迎えられ、ヨーロッパ興行で評判を高める。一方、失意のフランクはライバル一座に移籍していたが、ヨーロッパから帰国したバッファロー・ヒルと共演が決まり、アニーとフランクは再び射撃で対決する。

主人公のアニー、いかにも創作上のキャラクターといった風情ですが夫のフランクともども実在の人物。モデルとなった女射撃手アニー・オークレイはアメリカ最初の女ヒーローのひとりとみなされています。それにしても...写真などで観る限り、ベティ・ハットンより本物のほうが美人な気がする。フランクハワード・キールのほうがイケメンですけどね。撮影中、ベティ・ハットンとハワード・キールはあまり仲よくなかったらしいです、まあどうでもいいですけど。何と本物アニーの動画が残ってますのでここでご紹介。残念ながらお顔はよくわかりません。
↓右クリック→再生で動きます。



まあ、それにしてもこの映画、完成に至るまでトラブル続きです。まずプロデューサーはアーサー・フリード、監督は『イースター・パレード』のチャールズ・ウォルターズに決まっていた。ところがウォルターズが賃上げを要求したことから監督はバズビー・バークレーに変更。しかし、当初主演に決まっていたジュディ・ガーランドとバークレーは衝突が絶えなかった。ジュディ・ガーランドはヴィンセント・ミネリとの結婚生活の不安定、不眠症、体重増加など多くの問題をかかえており遅刻、無断欠勤、あげくのはてには自殺未遂までしてしまい解雇。代わりにベディ・ハットンが起用されました。監督のバークレーもジョージ・シドニーに交代。また、バッファロー・ビル役のフランク・モーガンが急死してしまい、ルイス・カルハーンが代役に。この手のトラブルが続出すると興行的にも大コケするのがオチですが、さすが大ヒット舞台の映画化とあってそれは免れ、結果オーライ?となりました。

映画『アニーよ銃を取れ』で必ず語られることはジュディ・ガーランドの降板劇。ジュディは先にレコーディングもすませており、"Doin' What Comes Natur'lly"と"I'm an Indian, Too"の場面は撮影済みでした。ベティ・ハットンとどっちがいいか?となると微妙なところ。ジュディのコケティッシュさと安定した歌声は捨てがたいし、ハットンの破壊的な存在感は役柄にあっている。好みの問題ですね(笑)。ベティ・ハットンはインタビューで「MGMはジュディ・ガーランドのほうがふさわしいと考えていたので、自分は邪険に扱われた」と語っている。なお、ジュディに決まる前はドリス・デイ、Judy Canova、そしてベティが候補にあがっていた。ベティは本作以前でもジュディの代役で起用されることが多かったとか。ちなみにあのジンジャー・ロジャースが"ギャラは最低料金でいいからアニー役を演じたい"と売り込みましたが、"ジンジャーはハイヒールとシルクのストッキングがお似合い。アニーのやんちゃな感じは彼女には出せない"と相手にされなかったそうな。(ジンジャーってそれほどお上品には見えないんですが)

本作は『スイング・ホテル』(1942)、『イースター・パレード』(1948)ら同様アーヴィング・バーリンの曲がずらりと並んでいる。バーリンは、まず自分が曲をつくった後、それをもとに脚本を書かせるパターンが一般的。だが、今回はジェローム・カーンの代打だったため、彼にしては珍しく脚本の後から曲をつけている。そのせいか、従来のバーリン映画より曲がすんなり物語にとけこんで心地よい

まず、冒頭"Colonel Buffalo Bill"からスタート。まあ、威勢のよござんすこと。最高の出し物を出すのはバッファローヒル大佐さ、という単なる宣伝歌です。続いてはアニーによる"Doin' What Comes Natur'lly"。教育やお金がなくたって気儘に暮らしてるから幸せと歌います。ジュディ・ガーランド版とはずいぶん動きが変わっています。キャラクターをはっきりさせる意味でベディの方が良い。その後、アニーはフランクと出会い一目ぼれ。このときの描写...口をぽかんとあけて崩れ落ちる。こんなマンガチックな反応する人、現実社会にはいません(笑)。アニーは早速フランクに「どんなタイプの女の子が好き?」と聞きます。するとフランクは「雑誌に載っているような、頬がピンクの女性」と答え、"The Girl That I Marry" を歌いだします。女性からしたらこんな男こっちから願い下げだわ!しょうね。アニーは銃では男は射とめられないと嘆き、"You Can't Get a Man with a Gun"を歌う。

その後、射撃大会でアニーは見事フランクを負かします。その腕を認められアニーは一座に加入。その後、みんなで"There's No Business Like Show Business"を歌います。オープニングでもインストで流れているし、この映画のテーマソングといえる曲。本作からわずか3年あと、この曲をそのままタイトルにした『ショウほど素敵な商売はない』(1954)が作られました。ここでこの曲を歌うのはエセル・マーマン。本作の主役を奪われた怨念をはらした(笑)。それにしても射撃ショーのことを歌っておりながら、芸能界、舞台全体のことに通じる曲づくりは見事です。Irving Berlin - There's No Business Like Show Business Lyrics



このあと、一座は巡業に出かけます。ある日、列車の中でフランクに「恋をしたことがあるか」と聞かれたアニーは"They Say It's Wonderful"で皆、恋は素晴らしいというわとしっとり歌います。そのあとフランクが続けるのですが、フランクはオペラ風に歌うだけ。はっきりいって下手です。そのあと、自分の看板をみて感激したアニーがソロで歌う"There's No Business Like Show Business"。しっとりと歌いだし次第に力強さをましていく。ワンコーラスしか歌わないんだし、ここは最後までバラード調で歌いきってほしかった。

案の定、アニーをスター扱いすることにフランクは不満を表明。アニーはそのショーで隠し技を披露すればフランクと結婚できると思い込んでいる。その後、フランクは"My Defenses Are Downで"俺も形なしだ。女の手に落ちた。みじめな気分も楽しくなってきた"と歌うんですが、ハワード・キールの歌い方が単調なため、全然ニュアンスが感じられない。ちなみに"My Defenses Are Down"というタイトル、日本人の感覚でみると俺のディフェンスがダウンした、何て仰々しいと思うんですが、One's defenses are downは"気が緩む"という意味です。

ここでアニーはとっておきの技を披露し、フランクを唖然とさせる。プライドを傷つけられたフランクは一座を離れてしまいます。一方、アニーはインディアンの酋長ブルに見込まれ、養子に迎えられる。資金繰りに苦しむ興行主の思惑どおりです。インディアンになるための儀式を終えたあとアニーは"I'm an Indian, Too"を歌う。ジュディ・ガーランドも撮影済だった曲。演出がかなり変わっており、前述の"Doin' What Comes Natur'lly"とあわせてみてもバズビー・バークレーが監督のままじゃダメだったなとつくづく思います。ただし、この場面に関してはコミカルな魅力の出せるジュディ・ガーランドのほうが適役だったかな。

このあとはドラマ主体で歌が少なく、公演をしたが王室が金を払わず金欠になった一団がフランクと組みショーを行うというストーリー仕立て。赤いドレスに勲章をぶらさげたアニーが"I Got the Sun in the Morning" で"貯金はなくても信用がある。ダイヤがなくても私は幸運よ。私には朝の太陽と夜の月がある"と歌います。この曲はベティにぴったりですね。個人的には本作中一番好きな曲。
Betty Hutton - I Got The Sun In The Morning (1950)

やがてアニーとフランクは再会し熱い抱擁をかわしますが、アニーの勲章をみたとたん、フランクは逆上し「世界の射撃王は俺だ」とどなり、"Anything You Can Do" でどんなことでも君よりうまくできると2人でガナリ合いのデュエット。アホらしいけど楽しい。
Irving Berlin - Anything You Can Do Lyrics | MetroLyrics



ついに再び射撃対決という何とも単細胞で、物語をまとめますよと言わんばかりの展開。そしてラストは"You Can't Get a Man with a Gun"の歌詞そのままに銃じゃ男は射とめないよとアニーがブルに諭され...ラストは皆で"There's No Business Like Show Business"を歌ってちゃんちゃん。起承転結、物語をしっかりまとめました(笑)。

映画『アニーよ銃を取れ』、ストーリーは単純。フランクがイケメン以外何の魅力もない男にしかみえず(よくみると腹も少し出ている)なぜこんな男をアニーがほれたのかもよくわからない。なのに"男のプライド"をひとかけらも考えない行動!主演2人の人物像には疑問だらけなのですが、射撃シーンは文句なく楽しいし、アーヴィング・バーリンの曲もいつも以上に突き抜けて明るい曲ぞろい、そして実在の女射撃手というアニーのキャラクターが受けたのでしょう。ベティ・ハットンの演技は好き嫌いが分かれそうですが、個人的には役にぴったりだと思います。

この『アニーよ銃をとれ』大ヒット舞台の映画化なのに1973年から約30年間ビデオ化すらされず、長らく見ることができない作品でした。理由はMGMとアービング・バーリンとのあいだの権利関係の衝突(バーリンが本作のインディアン描写をひといと感じ"自主規制"してしまったとの説もあり)。1998年にブロードウェイ舞台がリバイバルヒットしたのをきっかけに、映画公開50周年となる2000年になって再び観ることができるようになりました。

『アニーよ銃をとれ』は今でも何度となくリバイバル上演されている大ヒット舞台の映画化とあってキャラクター描写の粗雑さに目をつぶれば、アニーの破天荒さ、射撃場面、バーリンの能天気な楽曲、見どころは多い。気軽に観ることができる作品です。
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2019.09.05 Thursday | 00:15 | - | - | - |

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