映画のメモ帳+α

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気儘時代

気儘時代(1938 アメリカ)

気儘時代原題   CAREFREE
監督   マーク・サンドリッチ
原案   マリアン・アインスリー ガイ・エンドア
脚本   アラン・スコット アーネスト・パガノ
     ダドリー・ニコルズ ヘイガー・ワイルド
撮影   ロバート・デ・グラス
作詞・作曲アーヴィング・バーリン
音楽   ヴィクター・バラヴァリー
出演   フレッド・アステア ジンジャー・ロジャース
      ラルフ・ベラミー ハティ・マクダニエル
      ルーラ・ギア ジャック・カーソン

第11回(1938年)アカデミー賞作曲・編曲、室内装置、歌曲賞("Change Partners")ノミネート

ミュージカル映画『気儘時代』は8回目の顔合わせとなったフレッド・アステアジンジャー・ロジャースのコンビに加え、監督はおなじみマーク・サンドリッチ。楽曲の作詞・作曲は『トップ・ハット』、『艦隊を追って』に続いて大御所アーヴィング・バーリンと実績十分の布陣で万全の態勢を敷いた。"Change Partners"というスタンダード曲を生みだし安定感を見せる一方、アステア=ロジャースコンビ作としては初の赤字興行となり、さすがのドル箱コンビも飽きられた、"パートナーを変える"時期に差し掛かっていることを暗示する作品となった。

物語
弁護士のスティーヴ(ラルフ・ベラミー)は婚約者のラジオ歌手アマンダ(ジンジャー・ロジャース)が気が変わってばかりいるので、友人の精神科医トニー(フレッド・アステア)に相談し、アマンダの精神分析を依頼する。トニーは彼女に恋してしまい、自分を愛するように催眠術をかける。その催眠がさめないうち彼女は起こされたのでさまざまなトラブルを起こす。トニーはスティーヴを愛するように催眠術をかけなおし、アマンダとスティーヴの結婚式が近づくが...

シーフードカクテル、マヨネーズを山もりかけたロブスター、キュウリーとバターミルク...変てこな組み合わせの料理を次々と頼む場面が出てくる。まさにこの映画を象徴するシチュエーション。なぜなら、この『気儘時代』、材料はてんこ盛りなのにどうも組み合わせが悪いというか今いち面白くないのである。上映時間は82分とアステア=ロジャース作品の中でも短いのだが、結構長く感じる。アステア=ロジャース、アーヴィング・バーリンの楽曲という組み合わせも3回目となるとある種のマンネリ感が漂う。かつ脚本がね...ネタだけは豊富に用意したけど雑な調理で必要以上に不味くしてしまった。その結果、アステア=ロジャースコンビが賞味期限切れに...。

当時、流行中だった精神分析を物語にとりこんでみたのはいいけれど、これが上手くいっていない。そもそも精神分析を取り扱った映画が成功した試しがない。夢を映像化したとしても、それが意味するものは言葉で説明せざるを得ず、全体的にどうしても味気ないものになる。本作中、"I Used to Be Color Blind"の場面は夢の映像化だけれど、ダンスをスローモーションで映し出すぐらいじゃ夢には見えんぜよ。周りに変な白枠がついているけどカメラがピンボケしているようにしか見えない。曲も通俗的すぎて、全然夢っぽくない。

気まま時代 夢場面

『気儘時代』は当初テクニカラーで撮影される予定でしたが、予算の都合でモノクロに。でも、この"I Used to Be Color Blind"の夢シーンだけはカラーでも撮影してみた。曲名の"Color Blind"にかけて、ということなんでしょう。ただし、その出来があまりにもお粗末だったため、お蔵入りになった。でもこの曲のタイトル、"Color Blind"(色盲)なんて今の日本じゃ自主規制がかかって絶対に使わないだろう言葉だな。アメリカではどうなんでしょうか?

ストーリーの完成に至るまでは

原案 マリアン・エインスリー、ガイ・エンドア
ストーリー ダドリー・ニコルズ、ヘイガー・ワイルド (赤ちゃん教育)
脚本 アラン・スコット、アーネスト・パガノ (有頂天時代)

と6人の手をわずらわせています。原案、ストーリー、脚本執筆とそれぞれ別のコンビが手掛けているのがミソ。段階をへるにつれ、少しずつズレが生じたのではないでしょうか?冒頭、きれまくるスティーヴはただうざいだけ、精神分析、女の声で間違い電話をかける医者の助手ete、ギャグはてんこ盛りだけどことごとく寒い。"いろいろぶち込みました、どう、面白いでしょ?”と材料だけをちゃんこ鍋にしてぶち込んだ感がしてうっとうしい。唯一の見どころは催眠術をかけられたジンジャー・ロジャースのコメディ演技。そこそこ面白いけどテンポとか間が悪いのか、やや物足りない。

といってもダンス場面はそれなりに見ごたえがある。

 "Since They Turned 'Loch Lomond' into Swing"。
ゴルフボールをうつアイデアはアステアによるもの。2週間のリハーサルを含め、約3週間かけて撮影された。ただし、通してやるのはあまりに難しい動きなので、アステアにしては珍しく通しではなく複数テイクをつなぎ合わせた映像が作品として残っている。そうでしょうね、これ危ないし、人間業じゃないと思いましたんもの(爆)。ゴルフ親父が真似したら大火傷!




 ジンジャー・ロジャースがソロで歌う"The Yam"。当初、アステアが歌う予定だったがアステア様が"くだらん"と却下、ロジャースに払い下げとなりました。『トップハット』の"The Piccolino"と同じパターンですね。でもこの曲、後日アステアもレコーディングしている。このあたり、ようわかりませんわ(笑)。Fred Astaire & Ray Noble - The Yam (1938)

でも曲はともかく、ダンス場面は華やかで活気があってすごく良い。表情、衣装、ダンス、ジンジャー・ロジャースにしか目がいかない。楽しそうでいいなあ。テーブルに足ぶつけたりしなかったかな。Fred Astaire & Ginger Rogers - The Yam - Carefree (1938)

気まま時代  The Yam

 ラスト、"Change Partners"。ダンス場面は相変わらずのハイクオリディ。冒頭の催眠術ダンスが好き。



曲は、映画を離れてじっくり聞くと、多くの歌手がカバーするものよくわかる良い出来なんですが、映画の中で聞くと印象が薄い。歌詞は見事ですけど。というよりこの曲がスタンダードになったのは歌詞の力でしょう。いろいろ邪推できますからね(笑)。ところでこの"Change Partners(パートナーを変える)"、奇しくも、アステア=ロジャースコンビの今後を暗示するようなタイトルですね。アステア自身ロジャースとのコンビが飽きられるのではないか?と常々思っており、ソロ志向の強いアステアはコンビで扱われるのを嫌がっていた。歌よりも演技よりもまずダンス!のアステアと、演技もしっかりやりたいと考えたロジャースとは俳優としての方向性にもずれがあった。2人の不仲説はひんぱんに囁かれていたそうです。アステアはアーヴィング・バーリンと仲良しだったこともあり、"そろそろ、パートナーを変えるよって曲買いて!"とリクエストしたのかも(笑)。

少し話はそれますが、この邦題。媒体によって"気儘時代""気侭時代""気まま時代"..."まま"の表記が違う。原題がCAREFREE(気楽な)だからおかしくはない。でも映画の内容を考えるとcare freeと考えた方がいいんじゃないかな。free(無料の)care(診療)。トニーがアマンダに無料の精神分析診療を行った結果、恋が芽生えた。このあたりを粋に訳してほしかった。まあ、80年近く前に公開された映画の邦題に今さら文句をつけてもしょうがないし、下手に変更されても困る。『恋愛準決勝戦』と『ロイヤル・ウェディング』って別の映画だと勘違いして、間違ってDVD買っちゃったことあるし。

うーん、こう書き進めていくと『気儘時代』、ミュージカル場面はやっぱり楽しいんだな。何で面白くなかったんだろう。やっぱりネタは良くても混ぜ合わせに失敗したチャンコ鍋映画だな。もう少し演出力のある監督と脚本家がいればぐっと面白くなっただろうに。もったいない映画です。
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2017.11.21 Tuesday | 00:33 | - | - | - |

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