映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
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四十二番街

四十二番街(1933 アメリカ)

四十二番街原題   42ND STREET
監督   ロイド・ベーコン
原作   ブラッドフォード・ロペス
脚本   ライアン・ジェームズ ジェームズ・シーモア
撮影   ソル・ポリト
編集   トーマス・プラット
音楽   ハリー・ウォーレン
出演   ビービー・ダニエルズ ジョージ・ブレント
      ワーナー・バクスター ウナ・マーケル
      ルビー・キーラー ガイ・キビー
      ネッド・スパークス ディック・パウエル
      ジンジャー・ロジャース アレン・ジェンキンス

第6回(1932〜1933年アカデミー賞作品、録音賞ノミネート

ジャス・シンガー』(1927)でトーキー時代の幕があき、ミュージカル映画が登場。『ブロードウェイ・メロディ』(1929)が興行的に成功しましたが、その後粗製乱造状態となって早くも観客にあきられ、"ミュージカルの石器時代"と呼ばれる有様でした。この『四十二番街』はブラッドフォード・ロペスの原作を大幅に改編し、ブロードウェイから振付師バズビー・バークリーを招いて製作され、従来のミュージカル映画になかった、真上からダンサーたちを見降ろし万華鏡のように見せる撮影法(バークレー・ショット)が評判を呼び大ヒット。ミュージカル映画が息を吹き返すきっかけとなり、2006年にAFIが選んだミュージカル映画ベストで13位にランクされるなど今なお、高い評価を得ている作品です。




 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

物語
恐慌によって経済的に追い詰められた、かつての名舞台演出家ジュリアン(ウォーナー・バクスター)は、新作ミュージカル『プリティ・レディ』を大ヒットさせることに執念を燃やしていた。体調を崩していた彼は医者からドクターストップがかかっていたが、彼はこれを最後の花道にする覚悟でのぞんだ。主演は、出資者ディロン(ガイ・キビー)の希望によりドロシー(ビーブ・ダニエルズ)の起用が決まった。彼女には長年の恋人パット(ジョージ・ブレント)がいたため、2人の関係がばれるとディロンから出資をとめられていしまう恐れがあった。また、パットは喜劇役者としてのキャリアが停滞気味で2人のあいだには別れ話も出ていた。一方、ペギー(ルビー・キラー)はこれが初舞台。共演者であるビリー(ディック・パウエル)はベギーに恋をしており、彼女もまんざらではない。フィラデルフィアのプレミア前日、パットとペギーの親しげな様子をみたドロシーは逆上し、ディロンに悪態をついたあげく足を骨折してしまう。急きょ、代役をつとめることになったのはペギーだった。

ドラマ部分がしっかり描けていることが魅力のひとつ。演出家は励ましているのか、プレッシャーをかけているのかよくわからない。いつも怒鳴っている、休め以外はけなすことしかできない昔気質の男。こんな上司に仕えたくない(笑)。ラスト、称賛は新人女優にいき、死に物狂いで演出した演出家はカヤの外。誰も彼の功績をたたえない。ひとり会場の外で煙草を吸う。それでも満足...ドラマとして余韻をしっかり残す。なお、2005年の映画名台詞ベスト100ではジュリアンの"Sawyer, you're going out a youngster, but you've got to come back a star!"(ただの若者として舞台に出ていくが、戻ってきたときは君はスターになっている)が87位にランクインしています。

徹底的な悪役は出てこない。映画としてはパットと2枚目役者ビリーが似たような顔に見えて、ときどき混同するのが難点。このパットという男、優しい男なのか、プレーボーイなのか。ドロシーはスターの座を追われる女優にしては物分かりがよすぎてねえ。もっとキャットファイトしてくれないと!ちなみにブラッドフォード・ロペス原作でビリーと恋仲になるのは演出家ジュリアンであったが、当時同性愛を描くことができなかったため、相手役はペギーへ変更になったそうです。

『四十二番街』はミュージカルですから、売りはやっぱり映像と歌。
楽曲の作詞はアル・デュービン、作曲はハリー・ウォーレンがすべて手掛けている。

"It Must Be June" は最初のレッスン場面で歌われます。
客には受けるという設定ですが、こんな曲が?

"You're Getting To Be A Habit With Me" ピアノの上と舞台稽古の2回歌われる。
"いつでも別れられると思ってたけど、今はあなたの虜よ"という他愛のない歌です。(笑)
"You're Getting To Be A Habit With Me"   sung by Bebe Daniels
とはいうものの、この曲、フランク・シナトラビング・クロスビードリス・デイ、アニタ・オデイなど多くの歌手がレコーディングを行っています。

Youre Getting To Be A Habit With Me1Youre Getting To Be A Habit With Me2

"Shuffle Off to Buffalo"は舞台上の、ハネムーンで列車に乗っているコミカルな場面で使われる。
Cartoon Song from Movies 1: 'Shuffle Off to Buffalo'
"どうせ1年もたてば離婚よ。それでもバッファローにいくのかしら。リノに直行すべきよ"と歌うウナ・マーケルとジンジャー・ロジャーズのコンビ。↓
Shuffle Off to Buffalo

この曲の歌詞に関するトリビアを少々。まず、"リノに直行すべきよ"の意味は離婚法がらみです。当時のアメリカは離婚に厳しく、申請から成立まで1年はかかる状態。ところが、ネバタ州リノでは1930年代に離婚手続きに関する州法が改定され、6週間滞在すれば相手の同意なしに離婚できる。そのため離婚希望者が押しかけて"離婚の町"として知られるようになりました。その名残か現在でも"go to Reno"は離婚する"という意味の俗語で使われています。この映画の製作は1933年、ホットな話題を歌詞に組み込んでいたんですね。また最初のほうで男が"I'll go home and get my panties, you'll go home and get your scanties"...男がパンティ?当時、pantiesという言葉は男女問わず、下着の意味で使われていたそうな。

僕は若くて健康だ!君は魅力的だし、抱かないのは罪だよ、というむかつく歌(笑)"Young and Healthy"のときにひとつめの見せ場はやってきます。 Young and Healthy

幾何学的だの、万華鏡のようだの、いろいろ言われているこれがバークレー・ショット!このあと山ほど真似されました。
バークレー・ショット

この映画を象徴するショット。
女の脚、脚、脚....。
42nd Street legs

ラストで歌われる"Forty-Second Street"はまさに圧巻。AFIが2004年に発表したアメリカ映画主題歌ベスト100でも97位にランクされているナンバー。ラスト、華やかなレビュー場面というミュージカル全盛期のお決まりごとはこの映画で確立された!

この曲の途中、赤ちゃんをたたいてリズムとってるオバハン、けしからん!
42nd Street 1

男に殺されそうになる女は銃声をバックに悲鳴をあげながら窓から飛び降りる。
42nd Street 2

みんな大盛り上がりさ♪
42nd Street 3

ラスト、斜め下からのカメラワーク
42nd Street 4

ルビー・キーナーは本作がデビュー作。第51回アカデミー賞授賞式に歌曲賞のプレゼンターとして登場して喝采をあびました。
ジンジャー・ロジャースは端役ながら存在感を示し注目を浴びるきっかけとなったのが本作。その後フレッド・アステアとのコンビで一斉を風靡したのは皆さまご存知のとおり。
四十二番街 ジンジャー・ロジャース 

ブロードウェイ・ミュージカルの大ヒット作は概ね映画化されます。その一方、映画からミュージカルへ...というパターンもあります。ただ、『8 1/2』とか『サンセット大通り』とかドラマ作品に無理矢理曲をつけてミュージカルにするという形がほとんど。ミュージカル映画→ブロードウェイというパターンはあまり見られない。この『四十二番街』はその数少ない例。映画の公開が1933年、ブロードウェイミュージカルの初演が1980年。いわゆるバックステージものでこんなに舞台化しやすい作品もないんじゃないかと思うんですが何故そんなに時間かかったのか。金かかりそうだし、上からのカット、女性の脚の束...カメラワークを指定できる映画ならではの見せ方も多く、舞台に応用するのは難しいという判断か?ブロードウェイのプライドか?しかし、いざ80年に舞台化されるやいなや、トニー賞ミュージカル部門作品賞を獲得、8年間、3486公演の大ロングランとなる。42nd Street (musical)。演出担当のガワー・チャンピオンが公演初日の朝に亡くなるという、この物語の演出家ジュリアンをほうふつさせる出来事が現実に起こったりしました。また、ブロードウェイ版において、映画版だけでは曲が足りないので他の作品からも曲をいくつか拝借しています。バスビー・バークレーが監督をつとめた映画"Gold Diggers of 1935"(1935)に使われ、アカデミー賞歌曲賞に輝いた"ブロードウェイの子守唄(Lullaby of Broadway)"もそのひとつ。

『四十二番街』は80年以上前の映画ながら、今みても十分面白い。ラストがカラーだったらなと思わなくもないですが、想像力をかきたてるモノクロ映像もgood。ミュージカル映画を語るうえで絶対に外せない作品。ミュージカル映画好きは必見です。
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2017.06.24 Saturday | 00:24 | - | - | - |

コメント

名画座で見ましたが、見事♪ロイド・ベーコン監督はチャップリンのサイレント映画でも知られ、本編の厳しい演出家のイメージは完全主義者チャールズ・チャップリンみたいです。舞台が成功しても注目はスターに集まり演出家はあくまでも裏方…。その悲哀感も人生ドラマとして秀逸!!勿論、バークレーショットの万華鏡の舞台や街のシーンとの交錯する幻想シーンはミュージカルの金字塔の映画(パリのアメリカ人)の到来をも予告しているのかも知れません…。
2016/03/18 4:20 AM by PineWood
PineWoodさん、はじめまして。
劇場でごらんになったんですね。

>バークレーショットの万華鏡の舞台や街のシーンとの交錯する幻想シーン

ああ、これは映画館で観たかった!

「四十二番街」は、ミュージカル映画史を語るうえで絶対に外せない作品。
この映画に触れていない"ミュージカル映画ガイド"など信用してはいけません(笑)。
2016/03/18 6:35 PM by moviepad

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