映画のメモ帳+α

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愛のイエントル

愛のイエントル(1983 アメリカ)

愛のイエントル原題   YENTL
監督   バーブラ・ストライサンド
原作   アイザック・バシェヴィス・シンガー
脚本   ジャック・ローゼンタール バーブラ・ストライサンド
撮影   デヴィッド・ワトキン
編集   テリー・ローリングス
作詞   アラン・バーグマン マリリン・バーグマン
音楽   ミシェル・ルグラン
出演   バーブラ・ストライサンド マンディ・パティンキン
      エイミー・アーヴィング ネヘミア・パーソフ
      スティーヴン・ヒル アラン・コーデュナー


第56回(1983年)アカデミー賞音楽(編曲・歌曲)賞受賞。助演女優(エイミー・アーヴィング)、歌曲("Papa,Can You Hear Me?","The Way He Makes Me Feel")、美術監督・装置賞ノミネート

バーブラ・ストライサンドが歌う"The Way He Makes Me Feel"と"Papa,Can You Hear Me?"は映画を観ていなくても知っていた。特に"The Way He Makes Me Feel"のメロディが好きで、この曲が使われているミュージカル映画『愛のイエントル』はずっと観たいと思っていた。その一方、女装でもそれなりに問題があるバーブラの男装を2時間も見るのは拷問に近い...とひそかに感じていたのも事実。この『愛のイエントル』はバーブラ・ストライザンドの初監督作品。製作・監督・脚本・主演・主題歌を担当し"バーブラ・コングロマリット(conglomerate 複合企業)"と揶揄された。作品は高い評価を受け、ゴールデン・グローブ賞で作品、監督賞を受賞。アカデミー賞でも躍進が期待されましたが、作品、監督ともにノミネートもれ。ハリウッドの女性監督への偏見がもろに出たと物議を醸したことでも知られています。この作品、日本では(記事執筆時点で)DVDになっていないので見ることができませんでしたが、このたびVHSでようやく観賞。その結果は...拷問でした。



物語
1904年のポーランド、ヤネブの街。学問は男のもので、女は家事をやっていればよいと考えられていた時代だっが。イエントル(バーブラ・ストライサンド)はメンデル(ネーミア・パーソフ)からタルムードを学んでいた。父が急死したため、イエントルはタルムードを学び続けるため男装しててアンシェルと名乗りイェシバ(ユダヤ教神学校)に入学する。アヴィドール(マンディ・パティンキン)と友達になり、彼はイエントルを婚約者ハダス(エイミー・アーヴィング)の家に連れていく。だが、アヴィドールの弟の死因が自殺したことが判明すると2人の婚約は破棄。変わりにイエントルがハダスの婿として招かれることになる。

うーん、"The Way He Makes Me Feel"が好きだったのと、アカデミー賞うんぬんのエピソードで観る前のハードルが高すぎたか?はっきり言うとそれほど出来の良い作品ではない。理由は大きくわけて3つもある。

1. バーブラの男装が中途半端。髪を切っただけで声音すら変えておらず、どうみても男に見えない。
2. 原作はノーベル文学賞作家アイザック・バシェヴィス・シンガーの短編小説なんだけど、この話って無理がありすぎない?
3. 楽曲の質、バーブラの歌い方、映像...ミュージカル映画としての見せ方に問題が多々あり。

1.2はもうそのまんま、これ以上述べることはありません。バーブラが第4回ゴールデンラズベリー賞の最低男優賞にノミネートされたのも納得です。この年のラジー賞には最低助演女優賞(エイミー・アーヴィング)、作曲賞も候補入り。ここが結構ミソ。同じ年のアカデミー賞でエイミー・アーヴィングは助演女優賞にもノミネートされており、作曲に関しては受賞をはたしているのです。(グラミー賞のオリジナル作曲アルバム賞(映画・テレビ部門)でも受賞。)ひとりの俳優が同じ演技でアカデミー賞、ラジー賞両方にノミネートされたのは1981年のジェームズ・ココと彼女のふたりだけである。ただ、アーヴィングのラジー賞ノミネートは当時、付き合っていたスティーヴン・スピルバーグ監督がらみのゴシップの影響でしょう。さて、問題は音楽です。たとえアカデミー賞やグラミー賞を受賞していようが、この映画での楽曲が魅力的とはとても思えない。"The Way He Makes Me Feel" は映画の中では歌い方も使い方も変でだめでした。

ファンが作ったビデオ。"The Way He Makes Me Feel"はStudio versionが使われているようです。こっちのほうがいいな。


楽曲リストは以下のとおり。

"Where Is It Written?"
"Papa, Can You Hear Me?"
"This Is One Of Those Moments"
"No Wonder"
"The Way He Makes Me Feel"
"No Wonder"
"Tomorrow Night" 
"Will Someone Ever Look at Me That Way?"
"No Matter What Happens"
"No Wonder" (Reprise)
"A Piece of Sky"

公開当時、批評家からは"歌が全部同じに聞こえる"という声が結構あがったそうです。それに対し楽曲をてがけたアラン&マリリンのバーグマン夫婦は"タルムード学習の進行具合を反映させて曲を作っているから"とわけのわからん反論。でも曲以上に歌詞がひどい。もう、ほとんど映画の状況説明。中学生でもわかるような内容で深みも渋みも何にもなし!楽曲の半分近くでバーブラは口パクすらせず、BGMとして流れているだけなので音楽というより説明を聞かされている気分でしたよ。このバーグマン夫婦、バーブラの名曲『追憶』も作っているんだけどな...。全部同じように聞こえる大きな理由は、全曲バーブラひとりで歌っているから。ミュージカルって普通歌い手は複数いて、その掛け合いが魅力だったりしません?エイミー・アーヴィングやマンディ・パティンキンはブロードウェイ出身。特にマンディは歌えることで知られておりトニー賞も受賞済み。歌えるから彼らをキャスティングしたんじゃないの?さすがバーブラ・コングロマリット!他の人に見せ場は与えません(爆)。あとミュージカル映画に一番必要なカタルシスがないのが痛い。演出にダイナミズムがないため、熱唱だけが浮き立っている。もともと文芸物はミュージカル向きではないし、ここはもう少し抑えて歌うべき箇所だろ、舞台じゃなくて映画なんだしと思うことがしばしあり。それにしてもミュージカル映画ってこんなにつまらないものだっけ?ショービジネスの頂点に君臨しているバーブラが作った映画とは思えない。

ただ、この映画の存在を最近知った人も結構いるでしょう。なぜなら"Papa, Can You Hear Me?"(パパ、見守ってください)が村上佳菜子をはじめ、フィギュア・スケート大会で何度も使われています。確かにこの曲、メロディは本当に美しい。この曲と"The Way He Makes Me Feel"は名曲。映画の出来がやや悔やまれる。

『愛のイエントル』、まさに"バーブラのバーブラによるバーブラのための映画"。彼女のファンは熱狂したようですが、そうでない人にとっては拷問に近い130分。ミュージカル映画としての魅力がことごとく欠けており、アカデミー賞監督賞に漏れたのは女性差別以前の問題じゃないか、と。ゴールデン・グローブ賞やこの作品を持ちあげたマスメディアは"スーパースター・バーブラ・ストライザンド"の名前に惑わされ、無意識に評価を上乗せしてしまったのでしょう。
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2018.10.14 Sunday | 00:22 | - | - | - |

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