映画のメモ帳+α

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ディパーテッド

ディパーテッド(2006 アメリカ)

ディパーテッド(2006)原題   THE DEPARTED (死者)     
監督   マーティン・スコセッシ
脚色   ウィリアム・モナハン     
撮影   ミヒャエル・バルハウス        
音楽   ハワード・ショア     
出演   レオナルド・ディカプリオ マット・デイモン
      ジャック・ニコルソン

第79回(2006年)アカデミー賞作品、監督、脚色、編集賞受賞。助演男優賞(マーク・ウォールバーグ)ノミネート。

マーティン・スコセッシは「アメリカで現代最高の映画監督」と言われている。作品はすべて水準以上の出来で、駄作のない監督である。それゆえ周囲の期待値は異常に高く、ここ数年、新作を発表するたびに「よく出来てはいるが、スコセッシの最高傑作ではない」というコメントがつきまとう。大監督って大変ですね(笑)。そのスコセッシの最新作が『ディパーテッド』。2002年に大ヒットした香港映画『インファナル・アフェア』のリメイクである。「これぞ映画!」「スコセッシの最高傑作のひとつ」との賛辞が立ち並び、2007年アカデミー賞においても、作品賞、監督賞など複数の部門でノミネートが期待されている。




〜物語〜
犯罪者一族に育てられ、自分の過去と決別するために警察官となったビリー(レオナルド・ディカプリオ)。一方、マフィアのボス、コステロ(ジャック・ニコルソン)によって警察官に仕立て上げられたコリン(マット・デイモン)。ビリーはいきなりマフィアの潜入調査を命じられ、コステロ一味に紛れ込む。一方のコリンは有能な警察官を装いながら、コステロに情報を流し続ける。
マフィアに潜入した警察官と警察に潜入したマフィア。警察学校の同期生でありながら、お互いの存在を知らない2人。同じ男(コステロ)に命運を握られ、同じ女を愛するようになる。やがて警察側もマフィア側も"犬(イヌ)=組織内の内通者・スパイ"の存在に気づき、2人はそれぞれ窮地に追い込まれる...。

この映画ではネズミと言っています。日本の警察官の隠語では内通者は"イヌ"と呼んでいるようです。

上映時間は2時間32分。
スコセッシ監督作品ですから、長いと相場は決まってます(笑)
でもいつものことながら、圧倒的な演出力でぐいぐいとひっぱる。先の見えないストーリー展開であるため、上映時間の長さを全く感じなかった。僕は『インファナル〜』を見ていなかったことも関係あるだろうが。

でも...。

見終わった後、全く余韻が残らない
上映終了後5分も立てば内容を全て忘れてしまいます。
「私はハリウッドのやり方にあわせることができない」
そんなことをのたまわっていた"アメリカ最高の映画監督"マーティン・スコセッシが娯楽度100%究極のハリウッド印ポップコーンムービーを撮るとは...。

ストーリー展開の面白さをすべてに優先しているため、登場人物に全く血が通っていない。まるでテレビゲームのキャラクターのようである。これが地じゃないか、と思える程の貫禄ジジイぶりを発揮したジャック・ニコルソン以外は演技も今イチ。最近、急激にオヤジ化が進んでいるといわれているディカプリオですがニコルソンとの共演場面ではおじいちゃんと孫にしか見えませんでした。ニコルソンは映画館で変なモノつけてましたね。私生活のご愛用品を持ち込んだか?変態ジジイめ(爆)また2人から愛される女マドリン(ベラ・ファミーガ)の役は不要。サスペンス性を緩慢にし、上映時間を無駄に引き伸ばす以上の効果を伴っていない。

この映画を見終わった後、オリジナルの『インファナル・アフェア』を見た。
基本的なストーリー構成はほとんど同じです。(未見の人は予習などしないほうがいいと思います)ただオリジナルのほうはラストの「仏陀いわく − 無間地獄に死はない。長寿は無間地獄 最大の苦しみなり」の言葉が象徴するように、正反対な生き様の2人の男の接点とそれぞれの哀しみがきちんと表現されている。名匠マーティン・スコセッシをもってしても「リメイクはオリジナルを絶対に超えられない」というハリウッドの定説を打ち破ることはできなかったか?ハリウッド映画でもアル・パチーノジョニー・デップ主演の「フェイク」(1997)のように潜入捜査官をきっちり描いた作品があるのにな。(原作のほうがはるかに面白く、ちょっと?な脚色もありましたが。ただ実話に基づいているという大きな強みがあった

スコセッシは「予算オーバー、予定超過、あげくのはてに映画は当たらない(ヒットしない)」監督としてハリウッド・スタジオからは敬遠されていた。前作『アビエイター』で初めて全米興行収入1億ドルを突破。「ディパーテッド」は前作の記録をさらに更新し現在全米興行収入は約1億2000万ドルと自己最高のヒットとなっていり、「当たらない」という汚名は返上しつつある。スコセッシにとって映画製作状況は良くなっているといえるだろう。
「ときどきはヒット作に出演しないと、本当にやりたい役が出てきたときに声をかけてもらえなくなるんだ」
名優ダスティン・ホフマンのセリフである。スコセッシも「今はヒット作を出してスタジオの信頼を勝ち取る時期」と割り切っているのかもしれない。

『ディパーテッド』は娯楽映画としては100点満点である。ただ"アメリカ最高の映画監督"マーティン・スコセッシにそれ以上のSomethingを期待する人にとってはあまりの娯楽色の強さに戸惑うかもしれない。スコセッシは現在、ローリング・ストーンズのドキュメンタリー映画の製作中であり、その後遠藤周作氏の小説『沈黙』の映画化が控えているという。もともと神父を志していたというスコセッシ。神の沈黙という究極のテーマを扱うこの小説の映画化は世界中で話題になること確実だ。この作品で、これぞスコセッシ!という作品の底力を見せてくれることをひとりの映画ファンとして強く願わずにはいられない。
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2007/1/29 追記 スコセッシの来日時インタビューです。やっぱりな、って感じ。あまりに正直すぎるスコセッシに好感度大UP!「本当はこの映画は作りたくなかった」なんて作品のプロモーションで言うか?(笑)「沈黙」にかける情熱はやはり並々ならぬものがあるようです。大期待!
2006.12.20 Wednesday | 00:15 | 映画 | comments(10) | - |

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2024.03.19 Tuesday | 00:15 | - | - | - |

コメント

こんにちは!
インファナルアフェアが暫くトラウマになってしまったので(トニーが何故?!)、観るのがこわいのですが、ブログも始めてしまったことだし、観ようと思っています。

moviepadさんとお話出来てとても楽しかったです。ありがとうございます。
来年もヨロシクお願いします。

良いお年を!
2006/12/31 9:38 AM by 由香
由香さん、こんにちわ

ブログ、すごいすごい!
毎日更新してる!どこかの誰かに爪のアカでも飲ませたいものです < ワタシのことです。

当ブログは来年更に更新頻度が落ちる予定です<おいおい

何はともあれ来年もよろしくお願いしますm(_ _)m

2006/12/31 2:09 PM by moviepad
さっそくTBかえしありがとうございました。
私も、精神科の女医はいったい何だったの?というかんじを受けましたね。
2007/01/12 12:26 AM by ノルウェーまだ〜む
ノルウェーまだ〜むさま、コメントありがとうございます!

あれはオリジナルの「インファナル・アフェア」にも出てくる役なんですが、(結局3作全部見ました。1作目がやっぱり一番よかった)この映画での描き方は消化不良。いらんよ、と思いました(笑)
2007/01/12 12:42 AM by moviepad
こんにちわ。
TBさせていただきました。
この映画もよかったんですが、オリジナルが描いた「生き残った者が無間地獄に陥る」という核になる部分がスッポリ抜けてたのが残念でした。欧米の思想には理解されにくいのでしょうね。
2007/01/17 4:19 PM by Boh
Bohさん、こんばんわ
コメント&TBありがとうございました。

オリジナルの魂がずっぽり抜け落ちて、単なる娯楽映画になってしまってましたね。
1映画ファンとしてスコセッシにこんな映画期待してない(;_;)
この映画を絶賛している人はスコセッシのネームバリューにひれ伏したいだけなのでしょう。

TBいただいた記事にこの映画のラストについて不満を書かれてましたが、アレは

--------警告!以下、大ネタばれです。おまけに大暴言もあり---------




『インファナル・アフェア』の3作目のパクリですよね。スコセッシとしたことが...。

このラストシーンについてスコセッシは
「あのラストは9.11以降の信じるべきものがなくなってしまった、
悲しく絶望的な世相を映し出したものだ。
この世界をぜひとも描きたかったのは、
これが"モラルのグラウンド・ゼロ"を映し出しているからだと思う」
とのたまわれております。

解説のために後から考え出した屁理屈ですね。
あのラストからそこまで思いをめぐらすことができるお方がこの世にいるとは思えず。
だからタイトルは「死者」なんでしょうかね(爆)

とうとうスコセッシもヤキがまわって、ぼ○はじめたか。
早くオスカーのひとつくらいくれてやりな(笑)
【2007/01/17 10:05 PM】 moviepad |
2007/01/17 10:08 PM by moviepad
こんにちは!
観て来ました。
『全く余韻が残らない』に同意見のようです。
無間地獄+勧善懲悪=ゼロって感じてしまいました。皆死んじゃったなぁ〜みたいな気持ちしか残らなくて残念です。だって役者は良かったと思うんです。特に最近精彩を欠いていたレオ君は頑張ったと思います。
こうなったら『ブラッドダイヤモンド』に期待したいです。
2007/01/24 6:17 PM by 由香
由香さん、こんばんわ。
ついに見てしまったのですね。

この映画でのレオの演技、記事には今イチと書きましたが、実は演技の問題というよりは単純にミスキャストだと思っています。マット・デイモンも同様。

彼らの顔や雰囲気がこの映画が描く世界にどうもしっくりこない。別の役者使えばもう少しこの作品も陰影が醸し出されたかもしれないのに....。
2007/01/24 7:45 PM by moviepad
moviepadさん、こんにちは!
小説の稚拙な感想をupしたのですが、記事にmoviepadさんの名前を書かせて頂きましたので、TBさせて頂きました。
事前に連絡しなくて申し訳ありません。
尚、ご迷惑でしたら名前を消しますので仰って下さい。
それからTBも映画に関係ありませんので、消しちゃって下さいね。
お手数掛けて申し訳ありません。
それでは失礼しますm(--)m
2007/01/26 1:56 PM by 由香
由香さん、こんばんわ。

全然問題ありません。宣伝していただいてありがたいです。TBは、見ず知らずの方だったらspam扱いしたかもしれませんが、由香さんならOkです。

僕ははるか昔の学生時代、遠藤周作さんの本をよく読みました。といっても狐狸庵ものと呼ばれるエッセイのほうが中心で小説は...僕はキリスト教信者じゃないので理解には限界があります(笑)
「沈黙」は「神よなぜ沈黙する」という主人公の心の叫びがとても印象的な小説でした。
実は僕は生前の遠藤周作さんに何度かお目にかかっており(畏れ多くてお話することはできませんでしたが)サイン本も持ってます。
何年か前、映画にもなった「深い河」という小説を読みましたが、(宇多田ヒカルのアルバム「DEEP RIVER」のタイトルはこの小説からとってるようですよ)ちょっとついていけないものを感じました。やっぱ人間トシをとると考え方とか感性とかが微妙に変化するんですね。単に感性が衰えただけなのかもしれませんが(笑)
2007/01/26 8:36 PM by moviepad

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