映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< フレンジー | TOP | ヒッチコック映画 INDEX & ランキング+α >>

ファミリー・プロット

ファミリー・プロット(1976 アメリカ)

ファミリー・プロット原題   FAMILY PLOT
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ヴィクター・カニング
脚色   アーネスト・レーマン
撮影   レナード・J・サウス
衣装デザイン イーディス・ヘッド
編集   J・テリー・ウィリアムズ
音楽   ジョン・ウィリアムズ
出演   カレン・ブラック ブルース・ダーン バーバラ・ハリス
      ウィリアム・ディヴェイン エド・ローター キャスリーン・ネスビット
      チャールズ・タイナー キャサリン・ヘルモンド エディス・アトウォーター
      ウィリアム・プリンス ニコラス・コラサント マージ・レッドモンド

ファミリー・プロット』はアルフレッド・ヒッチコック監督53作目の映画です。(『メアリー』(ドイツ語版『殺人』中編国策映画『闇の逃避行』、『マダカルカルの冒険』除く)インチキ霊媒師が犯罪に巻き込まれていく姿をゆるく描き出し、前作『フレンジー』以上にアメリカン・ニュー・シネマの影響がみられ、ヒッチコックらしさがあまりない作品。はからずしも遺作となってしまいましたが風格ゼロ、次回作も準備していており本人もコレを遺作にするつもりはなかった模様。といっても遺作ゆえヒッチファンにとって少し感傷的になってしまう作品でもあります。



 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

物語
自分の財産を譲るため、唯一の血縁である、行方不明の甥を探し出してほしい...インチキ霊媒師のブランチ(バーバラ・ハリス)は富豪老婦人(キャスリーン・ネスビット)からこのような依頼を受ける。多額の報酬に目がくらんだブランチは恋人のタクシー運転手ジョージ(ブルース・ダーン)とともに調査をはじめる。その甥とはアーサー・アダムソン(ウィリアム・ディヴェイン)。表向きは宝石商だが、実のところ誘拐を繰り返し金儲けをたくらむ犯罪者。目的のためなら人殺しもやむなしと考える悪党だった。つい最近も恋人フラン(カレン・ブラック)に手伝わせ、億万長者を誘拐し身代金としてダイヤをせしめたばかりだった。ガソリンスタンド経営者マロニー(エド・ローター)からジョージらがいろいろ嗅ぎまわっているという報告を受けたアダムソンは彼らを殺害するよう指示。マロニーはブランチとジョージが乗っている車のブレーキに細工を加え事故死させようとしたが、手違いでマロニーが車ごと崖から墜落してしまう。ジョージが運転手の仕事に復帰さざるをえなくなり、ブランチはひとりで調査を続ける。彼女はついにアダムソンの居場所をつきとめた。アダムソンは彼らが自分を探していたのは"大金がころがりこむ良い知らせ"だと知って安堵するが、ちょうと誘拐したばかりの牧師の姿を見られてしまったため、アダムソンはブランチを監禁。ジョージはブランチが戻らないのを不審に思い、彼女の伝言にしたがってアダムソンの家に忍び込む。

本作の配役序列トップはカレン・ブラック。宣伝用ポスターも彼女が大々的にクローズアップされています。ですが、彼女の出番は少なく、実質的助演。カレンは当時、『イージーライダー』(1969)、『ファイブ・イージー・ピーセス』(1970)、『華麗なるギャツビー』(1974)などで人気沸騰中で映画会社からカレン・ブラックを使うように圧力がかかっていた。ヒッチコックも"この役は女なら誰でもできる。映画会社のお偉方にわざわざ逆らうこともなかろう"と要求を呑んだいきさつがあります。(当初、フラン役はフェイ・ダナウェイにオファーしたが主役じゃないという理由で断られた)

出番は少ないといっても、本作唯一の有名俳優、ちゃんと見せ場は用意してあります。
実は『ファミリー・プロット』の見せ場って2か所しかないので、主演扱いは間違ってない!
そう、冒頭のヘリコプター登場シーン。ブロンドのカツラにサングラス、ヒッチコック好みのクール・ビューティを気取っていますがどこかぬけた感じがするのはご愛嬌。Family Plot Trader Scene

ファミリー・プロット カレン・ブラック1
私、イケてる?

ファミリー・プロット カレン・ブラック2
ヒッチ先生の好みじゃなさそうね...。

インチキ霊媒師役ブランチに関しては映画会社はライザ・ミネリやゴールディ・ホーンを希望していましたが、ヒッチコックが彼女らの演技を観たことがなく(2人とも既にアカデミー賞女優でした...)舞台でみたことがあるバーバラ・ハリスにあっさり決めてしまった。ちなみに、カレン・ブラックも当初、霊媒師ブランチ役を希望しましたが、ヒッチ先生が却下。霊媒師は"女なら誰でもできる役"ではなかったようです。バーバラ・ハリスがいくら霊媒師役だからいて臨死体験オバチャンとは同姓同名の別人です、悪しからず。

もうひとつの見どころはカー場面。ブレーキに小細工をされ止められなくなった。
崖近くの道路を車が右往左往。ヒッチ映画の定番であります。
こんな状況下では通常5秒であの世行きなのですがヒッチ映画ゆえ、もちろんsurvival!
おまけに、どさくさにまぎれてやりたい放題。Runaway Car Scene from Hitchcock's "Family Plot" (1976)
ファミリー・プロット カー場面1ファミリー・プロット カー場面2

ジョージ役のブルース・ダーン
ちょい役で登場した『マーニー』に続き2本目のヒッチ映画です。(TVシリーズ"ヒッチコック劇場"にも出演経験あり)
この役、当初はアル・パチーノにオファーされていましたが、『ゴッドファーザー』(1972)、『セルピコ』(1973)と絶好調だったパチーノが破額のギャラを要求したため実現せず。ブルース・ダーンはヒッチコックにどうして自分をキャスティングしたのか尋ねたところ、ヒッチコックは"Because Mr. Packinow wanted a million dollars, and Hitch doesn't pay a million dollars." ブルース・ダーンが"Packinow"がアル・パチーノ(Al Pacino)のことだと気づくのに少し時間がかかったらしい。

ところでこのブルース・ダーンの格好...。
ファミリー・プロット ブルース・ダーン
妙にゲイっぽい。ケネス・アンガーの『スコピオ・ライジング』をパロった?

『ファミリー・プロット』を語るうえで見落とせないのは、音楽担当があのジョン・ウイリアムズであること。『ジョーズ』(1975)でアカデミー賞作曲賞をとったばかりで、昇り調子な時期。ヒッチコックとは最初で最後のタッグとなりました。ヒッチとウイリアムズはともに英国音楽好きだったため意気投合。だが、ウイリアムズはバーナード・ハーマンを尊敬しており、親交もあったため躊躇いもあった。ヒッチとハーマンは『引き裂かれたカーテン』の製作中に衝突し、袂を分かち合っている。(ちなみに衝突後もハーマンは何度かヒッチコックに会おうとしたが、ヒッチが取り合わなかったと言われています。ヒッチ...)ウイリアムズは2人にそれぞれお伺いをたてた。ヒッチは「気にする必要なし」、ハーマンからも「ヒッチコックと仕事ができるチャンスを逃すな」と助言を受けたため、安心して引き受けた。ウイリアムズはヒッチコックから"殺人は楽しむものなんだよ"というアドバイスに戸惑いつつ、シーンに合わせて女性コーラスを使ったり、ストリングスを使ったりとバリエーション豊かなサウンドを作り上げた。公開当時、サントラ版は発売されなかったため長年海賊版が出回ったりしたが、映画公開時から34年後の2010年、やっと公式のサウンドトラックが発売させるという珍しい現象が起きている。



ヒッチコック カメオ出演場面「ファミリー・プロット」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

0:40 戸籍係のドアの外に映るシルエット。
亡霊みたい..。

ファミリー・プロット ヒッチコック カメオ


『ファミリー・プロット』はヒッチコックの遺作です。遺作の最後がヒロインのウインクで終わるというのも妙にヒッチコックらしい。当初、脚本にはなかったリアクションですが、バーバラ・ハリスが勝手にやってしまいヒッチコックがそれを良しとした。

映画の中では童顔ゆえ若く見えますが、バーバラ・ハリス当時既に40歳。
こんなオバハンにウインクされても(以下省略)。
ファミリー・プロット ウィンク

『ファミリー・プロット』は批評、興行ともまずまずの結果でしたが、冒頭の霊媒シーンが長すぎるなどテンポも悪く、前作『フレンジー』より少し落ちた印象。美男美女が主役でもなくヒッチコックらしさに乏しい作品が遺作というのは切ない。ヒッチコックはどんな作品をとってもユーモアがなければダメと考えるタイプ。アメリカン・ニューシネマの波をヒッチコックは映像テクニックよりユーモアで乗り切ろうとしたのではないか?『フレンジー』、そして『ファミリー・プロット』と続けてみるとそんなことが頭をよぎります。

『ファミリー・プロット』公開当時、ヒッチコックはこんなことを言っていたそうです。

"いずれ家庭で映画が見ることができるようになる。そうなったら美男美女は時代遅れ。キャラクターがしっかり描けていないと誰も映画を見なくなる。"

もし、格段に映像技術が発達した今の時代、ヒッチコックが生きていたらどんな映画を撮っていただろう?ふと、そんなことが頭に浮かびます。ヒッチコックのことですからうまく対応して3D映画の傑作くらいモノにしたでしょう。でも、ハリウッドにニューシネマの波が押し寄せてからのヒッチコック作品群(『引き裂かれたカーテン』以降)をながめてみると、ヒッチコックは"生まれるべき時代に生まれた人"だという感を強く持ちます。

今なお、どんなに映像技術が発達してもサスペンス・スリラー映画のジャンルにおいてアルフレッド・ヒッチコックを超える存在は現れていない。これはなぜだろう?ヒッチコック映画の原動力はどこにあったのだろう?簡単にわかることではないが、以上2点は自信を持っていえる。

1.ヒッチコックはサイレント映画からの生え抜きである。
2.常に観客からどう見えるかを第一に考えて、映画を作っていた。

ヒッチコック映画の冒頭が台詞のない、サイレント的演出ではじまるのは定番。"台詞なしで、映像だけでわからせないとだめ"がヒッチコックの口癖でした。ヒッチ作品初期の9本はサイレント映画です。ヒッチコックはサイレント映画をへてトーキーに移行した後、もっとも長く現役第一線で活躍した映画監督です。この経歴は誰にも真似が出来ない。トーキー嫌いだったチャップリンを想像する人もいるでしょう。でもチャップリンよりヒッチコックのほうが、時代に対応しつつサイレント的表現を残し続けた。ヒッチコック映画を何本か観たあと今の映画を見ると、大半の作品が台詞に頼りすぎているのがよくわかります。アート映画の中には"台詞を少なめにして、間をたっぷりあけて"雰囲気を醸し出す方法がよくとられます。それでそれで良いのですが、それ以外の方法でアプローチできる人が本当に少ない。一方、昨今のハリウッド大作のようにお金をかけて豪華な映像を作り出す、それが映画の魅力か?少し違う気がします。

また、ヒッチコックほど観客の視線を意識してる映画監督はいないでしょう。ヒッチコックは"映画の登場人物がまだ知らない情報を観客に先に教えてしまう"、ネタバレもどきの演出が定番です。観客にちょっとした優越感をうえつけ、物語ではなく映像で楽しませようとする。よほど見せ方に自信がないと出来ない手法でもあります。

昨今、個人的には映画監督の名前で映画を見に行くことがほとんどなくなりました。好きな映画監督は?と聞かれると結構困ります。でも誰かひとりだけ名前をあげろ!と脅迫されたら、迷うことなくアルフレッド・ヒッチコックだと答えます。自分を映画好きにしてくれたのはヒッチコック。映画の楽しさを一番堪能できるのはヒッチコック作品。ヒッチコック映画の中には脚本がダメダメだったり、主役がミスキャストだったり、ヒッチコック向きの題材でないものを映画会社から押しつけられていたり...どう贔屓目にみても傑作とは言い難い作品も多々あります。それでもヒッチコック印の映画は観ていて楽しい、どこか面白い。映画の魅力って本来こういうものではないでしょうか。


サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックの遺作『ファミリー・プロット』のラストクレジット場面。

ファミリー・プロット ラスト ダイヤ

"DIRECTED BY ALFRED HITCHCOCK"。
ヒッチコックの映画すべてがダイヤモンドの輝きをはなっていた証
ではないでしょうか?

....これで締めようかと思いましたが、こっ恥ずかしいのでやめます。
単なる偶然でしょう、はい。
たかが映画。Fake it.
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

1000 Frames of Family Plot (1976)

2014.08.21 Thursday | 00:25 | A・ヒッチコック | comments(4) | trackbacks(0) |

スポンサーサイト


2017.04.26 Wednesday | 00:25 | - | - | - |

コメント

ヒッチコック特集期間、毎日、こちらにお邪魔するのが楽しみでした。
初期の作品は観ていないし、『鳥』以降は観ていなかったり記憶がなかったり…という状態ですが、その間の作品は自分でも意外なほど覚えていました。
moviepad様の文章力のおかげで細かいことを思い出すことが沢山ありました。
『サイコ』も『鳥』も傑作だと思います。でも他の作品も、映画の魅力がたっぷりです。

私もヒッチコック作品が大好きです。
素敵な記事をありがとうございました。
2014/08/21 11:08 PM by パール
ありがとうございます。
あと1本、INDEX&ランキング記事があります。もうすぐアップします。

>moviepad様の文章力のおかげで細かいことを思い出すことが沢山ありました。

文章力というよりは...
ヒッチコックの映画は文字だけで語っても魅力が伝わらないので、やりすぎと思うくらい写真や動画を使いました。

このブログをはじめて、しばらくの間は他人に映画を紹介するのだから、
水準以上のクオリティがあって、"おすすめできる"映画に絞って取りあげるようにしていましたが、
最近はそれほどこだわらなくなりました。

傑作だけをとりあげていたら、このヒッチコック記事の分量は半分以下になりますし、
少し前にやったゾンビ映画やスター・トレックはほぼ全滅(笑)。

作品全体としては今イチでもどこか面白いところがあれば満足。
それが映画の楽しみ方じゃないか、と。
ヒッチコック映画の特集をしたことは、それを再確認できる良い機会でした。
2014/08/21 11:23 PM by moviepad
ヒッチコックロス 状態です(涙)。
2日置きか3日置きにアップしていただいていれば、まだ楽しみが続いていたのに…(八つ当たり)…

ヒッチコック監督と好き女優さんが似ているとずっと思っていました。
でも、ローレンス・オリヴィエ ジョセフ・コットン アンソニー・パーキンス ジョン・フォーサイス マイケル・レッドグレーヴ…
好きなヒッチコック作品に出ている俳優さんは、女優さんより私の好みだと気が付きました。
2014/08/25 4:59 PM by パール
>2日置きか3日置きにアップしていただいていれば

そんな面倒くさいことをしていると途中で忘れてそれっきり(笑)。

まあ、ひとりの監督の作品を全作とりあげるのはこれで最後です。(キム・ギドクはある事情があってやったので)どんな優れた監督でも全作となるとどーしても飽きが出てくる。ヒッチコックだから出来たことです。仰せのとおり出演俳優の顔ぶれも豪華多彩ですし。

個人的にはジェームズ・スチュワートの底力を感じました。彼は他にも代表作いっぱいあるし、彼のイメージとヒッチコックって一見ミスマッチのように思えるのですが出演4作ハズレなし。

また、ジョセフ・コットンもすごい。「山羊座のもとに」は残念な出来でしたが、ヒッチ本人が一番好きな映画「疑惑の影」出演!彼には「市民ケーン」、「第三の男」もある。ジェセフ・コットンはアカデミー賞にノミネートすらされたことありません。俳優にとって大事なのはアカデミー賞なんかより、後世に残る名作に出演することなんだな、とつくづく思います。


2014/08/25 9:28 PM by moviepad

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://moviepad.jugem.jp/trackback/649

トラックバック

▲top