映画のメモ帳+α

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マーニー

マーニー (1964 アメリカ)

マーニー原題   MARNIE
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ウィンストン・グレアム
脚色   ジェイ・プレッソン・アレン
撮影   ロバート・バークス
音楽   バーナード・ハーマン
出演   ショーン・コネリー ティッピー・ヘドレン マーティン・ガベル
      ダイアン・ベイカー マリエット・ハートレイ ブルース・ダーン

アルフレッド・ヒッチコック監督の『マーニー』は、ウィンストン・グレアムの原作が発売されるとすぐヒッチコックが映画化権を獲得、モナコ王妃となったばかりのグレース・ケリーの銀幕復帰作として準備していた作品だった。ところが、グレース・ケリーはMGMとの専属契約が終わらぬうちにモナコ王妃となったため他社作(ユニバーサル・ピクチャーズ)出演が契約上困難だったこと、モナコ国民が"盗癖のあるヒロイン"という役柄が王妃にふさわしくないという声があがったことからグレース出演を断念、エヴァ・マリー・セイント、ヴァラ・マイルズなど数人の女優にオファーを断られたあげく、『』に続いてティッピー・ヘドレンの起用で落ち着いた。さて、映画の評判だが、精神分析を題材としている点では『白い恐怖』、異常心理恋愛を描いている点で『めまい』など、ヒッチコックの過去の作品のネタの寄せ集めと称され、失敗作とみなされた。また、ヒッチコック常連スタッフのうち、ロバート・バークス(撮影)、ジョージ・トマシーニ(編集)は本作が遺作となり、バーナード・ハーマン(音楽)とは次作『引き裂かれたカーテン』でケンカ別れしたため、ヒッチ映画は本作が最後、そしてヒッチ映画のトレードマーク"ブロンド美女"が主演をつとめるのもこの『マーニー』で終わり...いろんな意味でヒッチコック全盛期の終わりを暗示する作品となってしまった。



物語
会社社長マーク(ショーン・コネリー)はマーニー(ティッピー・ヘドレン)が金庫泥棒であることを見抜いたうえで自分の秘書として雇い入れた。予想通りマーニーは会社の金を盗みだし逃走するが、マークにばれた。マークはマーニーの盗癖の原因を探りたいと考え、衝動的に彼女と結婚。新婚旅行に出かけるが、マーニーはマークを避けるばかり。マーニーはマークとの別れを決意するが、マークは彼女をつれて、マーニーの母親バーニス(ルイス・レタム)に会いに行く。マーニーは母親のために盗みを働いており金を貢ぎ続けていた。マークは母親に会えばマーニーの行動の謎が解けると考えたのだ。

冒頭、怪しげなバックを抱えた女性の後ろ姿。そう、マーニーが会社の金庫からかっさらった金が入っている。『サイコ』をほうふつさせるシチュエーション。だけど...もっとおサレな駅で撮ってほしかったな。これじゃ、西武新宿線のどっかの郊外の駅みたい。
マーニー 後ろ姿

その後、状況説明台詞みたいのが出てきてがっかり。
ヒッチコックってこういうことあんまりしないのに...。

ショットの積み重ねだけで、この女が名前をいくつも替え、悪事を重ねていることがわかる。
マーニー 名刺

そして、きた〜、ブロンドに染めます。『めまい』をほうふつさせる場面。
このアップ、キム・ベイシンガーに似てる!
マーニー ブロンド染め

『めまい』をほうふつさせる場面は他にもいくつかある。マーニーがプールに飛び込む場面もありましたね。『めまい』ではゴールデンブリッジ近くの海だったのに。なんかグレードダウン。

ヒッチコック映画にはよくあることだけど、背景は絵です!とこんなに露骨にわからせていいの?
大スクリーンでこれ観たらかなり興ざめ?
マーニー 背景 絵

マーニーという女、赤をみると幻覚のようなものをみます。
この手の場面、何度か出てきますが、どうも安っぽい。
血と関係しているのが容易に想像できるし。あと、おなじみ悪夢にうなされる場面も出てきますが、『めまい』みたいにアートしてくれない。
マーニー 赤マーニー 悪夢

そう、『マーニー』は過去のヒッチコック映画断片の劣化版ツギハギなのです
ヒッチコックほど長いキャリアをもっていれば、ある程度仕方ないんだけど、それにしても...。

新しいことだってします!
こんなにキスシーンをドアップで撮ったことないでしょう!?
マーニー キス

この映画でもっともヒッチコックらしく魅力的な場面。
会社から金を盗むマーニー、掃除の女性、ふたりの動きを同時にみせる。
音楽もなく、スリリング。舞台的な見せ方だけど、映像に奥行きがあるためそれを感じさせない。
マーニー 盗み 掃除

まあ、見どころはこんなところです。
『マーニー』、好きな人もそれなりにいるようですが、個人的にはひどくつまらない。
上映時間は130分だけど、テンポも悪く、こんなに長く感じるヒッチ映画も珍しい。

何せ主役2人のキャラがめちゃめちゃで魅力に乏しく、演じる俳優の演技も今ひとつなのだ。
まずはショーン・コネリー。これほどヒッチコック映画のイメージにそぐわない人もいない。当時のコネリーは007シリーズに2作出演した直後で007シリーズ以外の映画出演が難しい時期だったが、ヒッチコックが彼を望み、コネリーもヒッチコック映画に出演したがった。ショーン・コネリー演じたマークの行動は、ヒッチコックいわく"女の弱みを握ることで女を支配したいと思う男、泥棒女と寝ることへの興味"によるものだそうですが、単なるエロ親父にしか見えない。そもそもショーン・コネリーという俳優は"顔がペニスを連想させる"といわれるほど、セックスしか連想させない。この役にはあっているのかもしれないが、はっきり言うと滑稽だ。ヒッチコックはマリリン・モンローのような"外見だけでセックスの塊"みたいな女優には関心を示さなかったというが、男優ならいいのか?

あえて見どころを探すなら、女の弱みを握ることで、女を意のままにしようとするところ。
今風に言えばいわゆる"パワハラ"なのだが、この男の姿にヒッチコック本人を重ねてみると面白いかも。

ヒッチコックはこの時期、ティッピー・ヘドレンにセクハラ行為を重ねていたといわれており、そのエピソードはTV映画『ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女』に描かれている。このTV映画はヒッチコック研究家で知られるドナルド・スポット(はっきり言ってこの人が言うことは全般的にピントがずれているように感じる)の書籍『Spellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladies』を基にした内容だけど...。ヒッチコックが亡くなって30年もたってから何でこんなことを告白する!?このTV映画の内容については、過去ヒッチコック映画に出演したエヴァ・マリー・セイント、ドリス・デイ、キム・ノヴァクらが"ヒッチコックは紳士。セクハラなんてなかったわ"と語るなど関係者から疑問が多く寄せられている。まあ、ヒッチコックがヴァラ・マイルズ、そしてティッピー・ヘドレンを自分の手でグレース・ケリーのようなスター女優に仕立てるため、長期の専属契約を結んだのは事実。まあ、ヒッチコックって撮影現場でこんなことやってて、ティッピー・ヘドレンは演技ではなく地で怖がっていただけ?ティッピー・ヘドレンの演技はたいして上手くないけど、難役だしモデル上がりの女優としては上出来だしな、なんて妄想するのは楽しい!?ティッピー・ヘドレンが演じた役もね...馬がケガしただけで、治療しようともせず、"早く銃で撃って楽にしてあげたい"とわめく。何、この女!?


ヒッチコック カメオ出演場面「マーニー」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

マーニー ヒッチコック カメオ

0:05 ホテルの廊下にて、ティッピ・ヘドレンが過ぎ去ったのち画面左から登場する。

この映画の一番の欠点はラストがあまりに想像どおりなこと。主人公2人をはじめ、マーニーの母、マークの妹など出てくる人はみな変なのに、ラストは月並みなハッピーエンド。母が本当はマーニーを愛していて...異常心理を描いた作品でラストが凡庸って最悪。しかも変な人ばっかり出てくると、結果として誰の異常さも伝わってこない。変人は先着一名様にしてくれないと。

ヒッチコックは自分の作品の中でもっとも好きな作品は『疑惑の影』で、理由は"登場人物の心理を深く掘り下げることができた。スリラーをやっているとそこまで手が回らないことが多いから"と答えている。『疑惑の影』の物語は比較的シンプル。ヒッチコックがドラマに重点をおいて作った作品はシンプルな物語設定のほうがうまくいっている。『北北西に進路を取れ』みたいな、"間違えられた男が場所を移動して逃げ回るアクション系"ならいくら物語がごちゃごちゃしていてもかまわないのだが、『マーニー』みたいな作品だとドラマ作家ヒッチコックの弱さがもろに出てしまっている。『マーニー』はヒッチコック映画としては俳優ダメ映像ダメ物語ダメ...明らかな失敗作である。『めまい』、『北北西に進路を取れ』、『サイコ』、『鳥』...傑作を連発していた後になぜこんな駄作を?『鳥』で力尽きたか、それともやっぱり私生活が荒れていて...。
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1000 Frames of Marnie (1964)

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2017.03.12 Sunday | 00:22 | - | - | - |

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