映画のメモ帳+α

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裏窓

裏窓(1954 アメリカ)

裏窓原題   REAR WINDOW
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   コーネル・ウールリッチ
脚本   ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影   ロバート・バークス
音楽   フランツ・ワックスマン
出演   ジェームズ・スチュワート グレース・ケリー
      レイモンド・バー セルマ・リッター ウェンデル・コーリイ

第27回(1954年)アカデミー賞監督、脚色、撮影(カラー)、録音賞ノミネート


裏窓』は批評家、映画ファン、学者、映画製作者など立場問わず、多くの人がアルフレッド・ヒッチコックの傑作のひとつとみなしている作品。『L.A.コンフィデンシャル』で有名なカーティス・ハンソン監督が「ヒッチコック映画とは何か?と聞かれたら『裏窓』を見せれば答えになる」と語るなど、ヒッチコックサスペンス演出の全てが盛り込まれていると評されています。AFIが選んだベスト100シリーズでも、アメリカ映画ベスト100(1998)で42位、スリルを感じる映画ベスト100(2001)で14位、アメリカ映画ベスト100(10周年エディション 2007)で48位、ミステリー映画ベスト10(2008)で3位とその評価はゆるぎない。

物語
N.Y,グリニッチ・ヴィレッジのアパート。雑誌社カメラマンのジェフ(ジェームズ・ステュワート)は事故で足を骨折し、車椅子生活。楽しみといえば、望遠レンズで窓から中庭の向こうのアパートの様子を覗くこと。裸に近い格好で踊っている"ミス・グラマー"、いつも孤独な"ミス・ロンリー"、新婚の男女、いつもピアノに向かっている作曲家、犬を飼っている老夫婦などを観察していた。ある日、いつも喧嘩が絶えなかった中年夫婦のうち病気で寝ていた妻の姿が突然見えなくなった。夫は夜中に外出を何度もしていた。ジェフは夫が妻をトランクにつめて殺したのではないかと疑い、恋人リサ(グレース・ケリー)や看護婦ステラ(セルマ・リッター)の協力をへて独自に調査をはじめる。



原作は『幻の女』で有名なコーネル・ウールリッチ。例によって大胆に脚色されており、小説に出てくるのは妻を殺した男とそれに気づいた男だけ。グレイス・ケリー、家政婦、ミス・グラマー、作曲家らは映画用に創作されたキャラクターです。また、英国で有名なクリッペン博士事件(秘書を好きになった男が妻を殺して自宅の裏庭に埋めた。男は船で逃げようとして秘書に船員の格好をさせた。男どうしの船員にしては親しすぎたので船長に怪しまれ、結局それが原因となってクリッペンは捕まった。)やイングリッド・バーグマンとカメラマン、ロバート・キャパのスキャンダルも物語のヒントにしたと言われています。



 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

冒頭の語り口はいつもながらのヒッチコック。まず、ジャズ風の音楽に乗せて、まるで舞台のカーテンがひとつずつあがっていくように開き、少しずつアパートが見えはじめます。そして全部見えたあと、主人公のアパートのクローズアップ。これは主人公の部屋の窓からの風景だったことがわかります。ここで音楽の聞こえ方が変わる。いわゆる"映画音楽"のようなクリアな音ではない。アパートには売れない作曲家が住んでいて、常にピアノを弾いているため、その音や誰かがかけているレコードなどの音がそれともなく聞こえてくる。そう、部屋にいる主人公に届く周囲の雑音が観客にもリアルに聞こえるような演出なのです。主人公の部屋にある温度計をうつしだす。(華氏92°摂氏に直すと33°くらい)アパートの住民がみな窓を開けているのはこの暑さが原因だということがわかります。その後、片足にギブスをはめた主人公、壊れたカメラ、いくつかの報道写真、女性のネガ、そして写真...主人公は報道カメラマンで事故で足をケガしたこと。美しい恋人がいることが映像だけでわかります。

裏窓 ファーストシーン1

裏窓 ファーストシーン2

『裏窓』のすごいところは、主人公を"映画を観る観客"と全く同じシチュエーションに据えている点です。車いすに座ったまま、望遠レンズで周囲をのぞく主人公。これは映画館で椅子に座って映画をみている観客と全く同じ状況です。主人公が望遠レンズごしにみる世界は、観客がフィルムごしにみる世界といっしょ。見ている以外、何もできないことも...。

裏窓 アパート

物語も実に考え抜かれています。まず、主人公が報道カメラマンという設定は原作にないものですが、これが至るところにいかされている。まず、職業柄?周りを"のぞき見"する。そしてラスト、襲ってくる犯人に向かってフラッシュをたいて時間を稼ぎ、身を守ろうとする。フラッシュをたいた後、画面がオレンジ色になるのが妙だなと思っていたのですが、これは実際フラッシュをたかれた人を実験した結果を反映した。目は光そのままではなく、カラフルに見えた、それゆえ画面をオレンジにしてみたということのようです。

裏窓 フラッシュ

また、主人公は彼女と結婚すべきかどうか迷っているという設定も生きています。新婚ほやほやの夫婦、喧嘩の絶えない中年夫婦、子供がおらず犬を溺愛する老夫婦、望遠レンズを通していろんな夫婦の人生を"のぞき見"してしまったからか、主人公は彼女に「金持ちのお嬢様である君が、報道カメラマンに同行できるとは思えない」と言い放ってしまいます。だが、彼女は大胆にも犯人の部屋へ"不法侵入"。重要な証拠となる(殺された妻が持っていた)結婚指輪をせしめ、それを指にはめて主人公に見せる。この場面にラブストーリーと謎解きの2つの意味を重ねる。

裏窓 結婚指輪

さて、『裏窓』はヒッチコック映画の中でも指折りの傑作ということになっています。
でも、この映画を1回見ただけでそう思った人はどれくらいいるのでしょうか?

私に関していえば、『裏窓』ははるか昔に一度観ています。のぞきという特異なシチュエーション、ラストのサスペンス場面のインパクトは強烈で、面白かったという記憶は残っていました。ただ、それ以外の印象がほとんどなかったため、傑作であることに異論はないものの『裏窓』が各種アンケートで上位にくることにほのかな疑問を抱いていました。

この記事を書くにあたって今回『裏窓』を2回観ました。1回目、おかげさまでストーリーはほとんど忘れていたので、はじめて見るのと同じような気分で楽しめました。ところが...印象も昔とほとんど変わらなかった。映画館賞力に成長がないのか(泣)。でも今回は、"期待したほど面白くなかった"理由は明確にわかりました。何しろ、じらしが半端ない。物語が本格的に動き出すのは最後30分程度で、あとは表向きアパートの住民の人間描写だからです。かつ、前半はミステリーよりも"主人公は彼女と結婚すべきかどうか"に物語の焦点がおかれているため少しイラつきます。そんなもんどーてもいいから早く殺しみせんかい(爆)。ミス・ロンリーだの、作曲家だの、ミス・グラマーだの、老人夫婦だの、ミステリーにからむのかからまないのかよくわからないエピソードがずらずら続く。ミス・ロンリーが自殺を図ろうとしたところ、完成したばかりの作曲家の曲が聞こえてきて思いとどまるエピソードはドラマとしてはいいですが、サスペンスにしか関心のない者から見ると邪魔にしか感じない。何よりいらつくのはこの殺人事件が本当に起こったのかどうか、なかなかわからないこと。単なるカメラマンの道楽であり、彼がひとりで妄想ゲームをしているだけのようにみえる。殺人がわかったからといって彼の身に危険が起こるわけではないし。野次馬ののぞき見をみせられても、観客の立場としては"事件"になかなか興味がわかない。ちなみにこの『裏窓』最後まで死体は出てこない。ヒッチコック映画としては珍しいパターンです。

また、グレース・ケリーがファンサービスで?何度も着替えて出てくるのもイラつく原因です。衣装を担当したのはイデス・ヘッド。これをきっかけにイデスはその後、ほとんどのヒッチコック作品の衣装を担当することになります。でも、そんなものどーてもいいから早く....。グレース扮するファッション・モデルが「女は宝石類を無造作にバックに入れたりしない」「女はお気に入りのハンドバックと宝石類は旅行には持ち歩く」と女は、女はをやたら連発!結婚指輪を家に置いたまま、女が外出するわけないという着眼点は問題解決の重要な要素となるわけですが、ちょっとうざい。ラスト、グレースが「ヒマラヤを超えて」を読んでいたのをファッション雑誌にとりかえて終わるのをみると、男と女の違いは映画のテーマなのかもしれませんが。

裏窓 ラスト グレース1  裏窓 ラスト グレース2

ヒッチコック カメオ出演場面「裏窓」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

裏窓 ヒッチコック カメオ

0:25 作曲家のアパートで時計を巻く。

『裏窓』は主人公の"結婚観"がミステリーの進展にしたがって変化する、そのシンクロさせ具合が絶妙です。事件となった中年夫婦、犬を殺された老人夫婦などアパートの住民の様子を通して、さまざまな結婚の形を見せつけます。ラスト、温度計は華氏70°(摂氏21°くらい)だいぶん涼しくなり窓を開けなくてもすごせる季節になっている。ミス・ロンリーは作曲家と親密になり、ミス・グラマーは"夫"が戦場から帰ってきた、昼間からお盛んだった新婚夫婦は早くも倦怠期、そして主人公と彼女も...細かいディテールの積み重ねが導く"結婚ドラマ"とミステリーの見事なアンサンブル。『裏窓』を2回続けてみるとその巧みさにうなりますし、『裏窓』がクオリティ的に傑作であることは確かです。『裏窓』を大絶賛している人はこの作品を何度も観ているのでしょう。でも...純粋なサスペンス性だけでみると『裏窓』は単純な面白さが"他のヒッチコックの傑作"よりやや落ちる。ディテールが完璧に計算しつくされているのも考え物です。まあ、厚みのある物語を好むか、物語はシンプルでいいからばりばりのサスペンスを見たいか、要は好みの問題なんですけどね。
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1000 Frames of Rear Window (1954)

2014.08.09 Saturday | 00:01 | A・ヒッチコック | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.07.23 Sunday | 00:01 | - | - | - |

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