映画のメモ帳+α

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見知らぬ乗客

見知らぬ乗客(1951 アメリカ)

見知らぬ乗客原題   STRANGERS ON A TRAIN
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   パトリシア・ハイスミス
脚本   レイモンド・チャンドラー チェンツイ・オルモンド
撮影   ロバート・バークス
音楽   ディミトリ・ティオムキン
出演   ファーリー・グレンジャー ロバート・ウォーカー ルース・ローマン レオ・G・キャロル
      パトリシア・ヒッチコック ローラ・エリオット マリオン・ローン ジョナサン・ヘイル

第24回(1951年)アカデミー賞撮影賞<白黒>ノミネート

サスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコック監督の作品群は実際、かなりバリエーション豊かだ。にもかかわらず、"ヒッチコックらしい"、"らしくない"と語られることが常。そういう観点でみると『見知らぬ乗客』に実に"ヒッチコックらしい"映画である。サスペンス演出が盛りだくさん。特にラストのメリーゴーランドでの決闘場面は強烈なインパクトを残す。興行的にも大成功している。

物語
有名なアマチュア・テニス選手ガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、浮気がちで他の男との子を妊娠中の妻ミリアム(ケイシー・ロジャース)と別れ、モートン上院議員(レオ・G・キャロル)の娘アン(ルース・ローマン)と結婚したがっていた。離婚の話し合いのため、故郷メトカルフへ帰る途中、アントニー(ロバート・ウォーカー)という男と出会った。アントニーはガイの事情を知っており、自分の父を殺してくれるなら妻を殺してあげる"交換殺人"を提案する。ガイは相手にしなかったが、アントニーはさっさと妻ミリアムを殺し、ガイに"約束の履行"を迫る。やがて、ガイは妻殺しの容疑者として警察にマークされることになる。




パトリシア・ハイスミスの原作を、レイモンド・チャンドラーに脚色を依頼。だが、チャンドラーの脚色はうまくいかず、クレジットは残っているが実際はチェンツイ・オルモンドが仕上げた。ヒッチコックいわく「使い物にならなかった」チャンドラーいわく「こんな不自然な話はとても考えられない」まあ、この2人の相性が合うとは思えませんけどね。

実にヒッチコックらしい映画、といえる理由のひとつは小道具がうまく生かされていること。
まず眼鏡。アントニーが妻ミリアムをストーカーする場面の怖いこと、怖いこと。妻ミリアムはやぼったい眼鏡をかけており、首を絞められたとき、地面に落ちた眼鏡が"殺人現場"を映し出す。
ヒッチコック映画おなじみのカメラワークだ。

見知らぬ乗客 眼鏡1

アンの妹バーバラ(パトリシア・ヒッチコック)が殺された女と同じような眼鏡をかけていることでガイが動揺し、お遊びでご婦人の首を締めていたのがつい本気に...うまく眼鏡をサスペンスにとりいれている。パトリシア・ヒッチコックはいうまでもなく、ヒッチコックの娘。残念ながら父親似のようです。(笑)

見知らぬ乗客 眼鏡2見知らぬ乗客 眼鏡3

ライターはこの物語の主役である。駅についたアントニーがライターを排水溝に落としてしまう。手をのばしてとろうとするアントニー。なんてことない描写だが、一刻を争う状況ではスリリングに見える。大の男2人が現場にライターを置きに行くことを争うのはよ〜く考えると滑稽だが、まあそれは良しと(笑)。

見知らぬ乗客 ライター

見知らぬ乗客 ライター2

疑惑の影』でも見られたが、常に2組がセットになっているようだ。2人の男、厳格な父親、眼鏡をかけた2人の女、2人組の刑事....。この映画用の音楽にも"double”というタイトルの曲がある。決してすべて対称的に描いているわけではない。この2にこだわることにどんなサスペンス効果があるのか個人的にはよくわからない。

小道具のフューチャーにとどまらず、魅力的なショットもいっぱいです。

冒頭、二人の男がそれぞれ駅に急いでいる。カメラは靴をフューチャーしている。そして列車の中でその2つの靴がぶつかり合うことで、男2人の出会いが始まる。人物の出会いにおいて、こんな映像表現は他に観たことがない。スーツに白い靴なんて履くだろうか?なんてことはとりあえず置いておく。
見知らぬ乗客 靴

また、ガイの試合中、他の観客はボールの行方を追って顔を右往左往させているのに、客席にいたアントニーだけはじっとガイを見つめており、いやがおうでも彼の存在が目立つ。何気ないサスペンス描写はヒッチコックの真骨頂だ。
見知らぬ乗客 テニス試合

そしてラスト、メリーゴーランドが暴走した状況で戦う2人の男、喜ぶ少年、メリーゴーランドをとめるため、その下に潜り込む老人、心配する人々...2重3重の仕掛けでラストのサスペンスを盛り上げる。

見知らぬ乗客 回転木馬1見知らぬ乗客  回転木馬2

トリュフォーがやたら褒めている悪役のロバート・ウォーカー。ヒッチコックがこのアントニー役を自分しかいないと考えてくれていたことを知り、歓喜したそうだ。(ちなみにガイ役はウイリアム・ホールデンを希望していた)『見知らぬ乗客』は彼の演技も絶賛され、キャリアは上昇気流に乗っていたが、この映画の撮影終了8カ月後に薬のアレルギー作用で死亡。32歳の若さだった。ガイ役のファーリー・グレンジャーはロバート・ウォーカーとの共演に満足しており、(ファイリーがバイセクシャルだった)ロバートの訃報をきいてかなり動揺したそうだ。『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミス原作であるせいか、この映画の登場人物2人もどこか同性愛的雰囲気がありますね。

ヒッチコック カメオ出演場面「見知らぬ乗客」でのヒッチコック・カメオ出演場面!
見知らぬ乗客 ヒッチコック カメオ

0:10 ファーリー・グレンジャーが列車から降りるとき、コントラバスを持って列車に乗り込むオッサン。

大昔、はじめてこの作品を観ただけなので、メリーゴーランドの映画としか記憶していなかったが、改めて見ると...よくこんなシチュエーションを考えついたものだ、とうなりました。めちゃくちゃな物語を力技で面白くしている。ラストに至るまでサスペンス場面てんこ盛り!(トリュフォーは少し違和感を感じたようです)。『見知らぬ乗客』はストーリー、ディテールともに、多くのファンが思い描く"ヒッチコックらしさ"にあふれている作品。『三十九夜』とともにヒッチコックを観たことがない人に勧める"最初の一本"候補でしょう。
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1000 Frames of Strangers on a Train (1951)


2014.08.06 Wednesday | 00:56 | A・ヒッチコック | comments(4) | trackbacks(0) |

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2017.09.09 Saturday | 00:56 | - | - | - |

コメント

山羊座のもとにと 舞台恐怖症は未見です。
見知らぬ乗客は 観ているはずなのに、細部が思い出せません。観ている作品は、moviepad様の記事を読むと、かなり思い出せるんですが…記憶が他の作品とごちゃ混ぜになっているようです。
女優さんがあまり私の好みではなかったのかも(笑)
2014/08/07 4:01 PM by パール
今のご時世、「山羊座のもとに」と「舞台恐怖症」を見ている人はヒッチコッキアン(熱心なヒッチコックファンをかつてこう呼んだそうです)だけでしょう。
「見知らぬ乗客」はサスペンスの見せ場をぶちこみまくっただけの映画で、ストーリーは無茶苦茶なので憶えてなくて当然。でも面白い!だからOK(笑)。
2014/08/07 7:39 PM by moviepad
DVD借りてきて観ました。
テニスの試合の観客席(みんなが首を左右に振っているところ)と、メリーゴーランドのシーンしか、記憶になかったことが分かりました(笑)。

>ストーリーは無茶苦茶
その通りでした。

つっこみどころいっぱい。

でもロバート・ウォーカーを観ただけでも良かった(ガウン姿が怪しすぎ)。
この後、テレビ放送されるとも思えないので、moviepa様の記事に惹かれなければ、観ることもなかったと思います。
ありがとうございました。

すっと、アン(ルース・ローマン)が大地真央に見えてしまっていたのですが、実際はそんなに似ていないのでした。
2014/08/10 2:00 PM by パール
パールさん、こんばんわ。
拙記事を読んで映画を見てくださったんですね。
うれしいなあ。

はい、この映画、ストーリーは無茶苦茶なので1週間もすればたぶん忘れますよ(笑)。
でも面白いから許せてしまう、不思議な魅力をもつ映画です。
2014/08/10 9:33 PM by moviepad

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