映画のメモ帳+α

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山羊座のもとに

山羊座のもとに(1949 イギリス)

原題   UNDER CAPRICORN
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ヘレン・シンプソン
脚本   ジェームズ・ブリディ
潤色   ヒューム・クローニン
撮影   ジャック・カーディフ ポール・ビーソン イアン・クレイグ
音楽   ルイス・レヴィ リチャード・アディンセル
出演   イングリッド・バーグマン ジョセフ・コットン
      マイケル・ワイルディング マーガレット・レイトン

(日本劇場未公開)

おなじみ『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』の中で、トリュフォーがヒッチコックに問いかける。「フランスでは奇妙な誤解が生じていて、多くのヒッチコックファンがこれをあなたの最高作とみなしているのです。」"これ"とはイングリッド・バーグマンジェセフ・コットン主演の『山羊座のもとに』。あのエリック・ロメールもそう評している。トリュフォーは"興行成績が悪かったから、せめて批評で救ってあげようという動きではないか?"と推測しているが、これを最高作と看做すのはヒッチコックに対する冒涜に思える。ヒッチコックも"当時、人気絶頂でプロデューサーで奪い合っていたイングリッド・バーグマンを自分は起用できる!という虚栄心だけでとった映画"と述懐している。久しぶりにヒッチの母国イギリスで撮影、ヒッチがバーグマンとともに英国入りした時には多数のフラッシュライトがたかれた。





物語
1831年、オーストラリアのシドニーで、オーストラリア総督の甥である、アイルランド貴族アデアー(マイケル・ワイルディング)がやってきた。アデアーは町の実力者フラスキー(ジョセフ・コットン)と知り合い、彼の妻ヘンリエッタ(イングリッド・バーグマン)に惹かれていく。ヘンリエッタは夫婦仲がうまくいかず、酒びたりの日々。フラスキー家は家政婦のミリー(マーガレット・レイトン)が仕切っていた。アデアーは姉の友人でもあったヘンリエッタを立ち直らせようとするが、やがてフラスキーがヘンリエッタの兄を殺して7年間オーストラリアに流刑になり、妻ヘンリエッタが彼を追ってそのまま居ついているという暗い過去を知ることになる。

ヒッチコック映画のレビューにつきものの、"ヒッチコックらしい"とか"らしくない"とか、そういうこと以前の問題として、『山羊座のもとに』の前半部のつまらなさはただ事ではない。初期の英国時代作品でも前半部がこれほどつまらない映画はなかったように思う。肝心のバーグマンもなかなか出てこないし。つまらない大きな原因は、アデアー役のマイケル・ワイルディングが魅力に乏しく、とても貴族には見えないことだ。英国俳優がみんな上品に見えると思ったら大間違い(爆)。なんでこの人があのエリザベス・テイラーの2番目の夫だったのだろう...。バーグマン、ジョセフ・コットンも持ち味を十分に発揮しているとはいえない。キャストで印象的だったのは怪しげな家政婦を演じたマーガレット・レイトンくらい。もっともイギリスで"彼女のような美人を何であんな役で使うの?”と言われたらしいが。そんな美人かな....。

特徴としては、台詞が長いこと。バーグマンにもマーガレット・レイトンにも長ったらしい台詞が容易されており、前作『ロープ』で使われた"ワンショット撮影"がここでも使われている。だが、今回はただでさえかったるい物語を余計かったるくしているだけ。物語も後半になって多少は面白くなってくるが、サスペンスでもスリラーでもなく、単なるメロドラマのまま。かつラストの"帳尻合わせ"感が半端ない。上手く作ればそれなりに奥の深い物語になるはずなのだが...。脚本が『パラダイン夫人の恋』を手掛けたジェームズ・ブリディじゃね。前回失敗しているのに、なぜまた頼んだ?映像的な見せ場は、まるでホラー映画の舞台のような、フラスキー家の映像のみ。

山羊座のもとに

ヒッチコック カメオ出演場面「山羊座のもとに」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

山羊座のもとに ヒッチコック カメオ1
0:04 総督のレセプションで青のコート、茶の帽子をかぶり、話を聞いているオッサン。

山羊座のもとに ヒッチコック カメオ2
0:14 総督官邸の外階段にいる3人のうち、真ん中にいるオッサン。

『山羊座のもとに』を観ながら、奇妙に感じたのはヒッチコックとバーグマンの相性である。この2人は『白い恐怖』、『汚名』でもコンビを組んでおり、当作がラスト。この3本はヒッチコック、バーグマンどちらの代表作にもならなかった。ジェームズ・スチュワートやグレース・ケリーとは傑作を作っているだけにこのバーグマンとのコラボがうまくいっていないのはもったいなく思える。過去、ヒッチコックはバーグマンを「ものすごくきれいだが、ものすごくアホだ」と語り、トリュフォーとの対談でも「たとえ上手くいったとしても"この次はもっといいものに出たい"という。傑作にしか出たがらない女優。映画なんて作ってみなければ傑作になるかどうかわからないのに!"たかが映画だよ"と彼女によく言ったんだけど。彼女にとって最高の役はジャンヌ・ダルクらしい」と語っている。バーグマンも"『山羊座のもとに』の撮影は最悪だった"とこぼしていたという。映画に対する根本的な考え方が違うが、かと言って不仲でもなさそうだ。バーグマンがロッセリーニを追ってハリウッドを飛び出したとき、ヒッチコックはかなり失望したが「世間はすぐ忘れてくれるよ」という激励の手紙も送っている。死が近いヒッチコックの病床にバーグマンは見舞いに訪れている。AFIのヒッチコックトリュビートイベントでバーグマンはホストを務め、ヒッチコックを"Adorable Genius"とほめたたえている。考え方は全然違うが、仲はよかった。ヒッチコックとバーグマンは不思議な関係です。



バーグマンが監督と演技プランで衝突するたびに、ヒッチコックに何度も言われた”Ingrid, Fake it!”(たかが映画だよ)の声が聞こえてくるように感じた。人生最高のアドバイスだったわという内容。なんかほっこりしてきたのでこれ以上悪口かくのやめます(笑)。

ヒッチコック×バーグマンのコンビ、代表作はないと書きましたが、『白い恐怖』『汚名』はそれなりの佳作ですからね。特に『汚名』は玄人筋の評価が高い!まあ、『山羊座のもとに』は今イチなことはどうしても否めませんが(笑)
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1000 Frames of Under Capricorn (1949)


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2017.05.25 Thursday | 00:23 | - | - | - |

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