映画のメモ帳+α

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救命艇

救命艇(1944 アメリカ・イギリス)

救命艇原題   LIFEBOAT
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ジョン・スタインベック
脚本   ジョー・スワーリング
撮影   グレン・マックウィリアムズ
音楽   ヒューゴー・フリードホーファー
出演   タルーラ・バンクヘッド ウィリアム・ベンディックス
      ウォルター・スレザック メアリー・アンダーソン
      ヘンリー・ハル ヘザー・エンジェル ジョン・ホディアク
      ヒューム・クローニン カナダ・リー

(日本劇場未公開)

第17回(1944年)アカデミー賞監督、脚本(原案)、撮影(白黒)賞ノミネート

アルフレッド・ヒッチコックの『救命艇』は遭難した船の上での人間模様を描いた1944年の作品。『ロープ』、『裏窓』などと同じく"限られた空間"での群集劇である。戦争は、ヒッチコックにたいし、"単なるサスペンス"以上の何かを撮りたいという欲望をかきたてたのだろうか?原作は『怒りの葡萄』『エデンの東』の原作者、『革命児サパタ』の脚本など映画界にもなじみの深いジョン・スタインベック。当初、彼が書いた脚本にヒッチコックが満足せず、別の脚本家で2回ほど書き直された。

物語
第二次世界大戦下、イギリスに向かっていた客船がドイツ軍のUボートの魚雷攻撃を受け沈没してしまう。生存者たちが一隻の救命艇に乗り合わせる。攻撃したUボートも撃沈したが、その乗組員と思われるひとりのドイツ人が救命艇にやってきて...

映画はコラムニスト、コニーを演じたタルーラ・バンクヘッドのふてぶてしい存在感が光る程度で、あとの登場人物は皆、ステレオタイプ。個人的に群集劇が苦手なこともあり、この作品に最後までのめりこめなかった。船長コバックの薄っぺらさときたら!片足を切断するガス(ウィリアム・ベンディックス)のエピソードも今いち。途中で加わったナチの男ウィル(ウォルター・スレザック)が信用できる人物かどうかが、わずかにサスペンス性を醸しだすが、最後まで見るとああ、何だかなで終わってしまう。ヒッチコックにしては珍しく、無意味なディテールもある。無理矢理船長に就任したコバック(ジョン・ホディアク)の胸にあるBMというタトゥーが一体何を示すのかも語られずじまい。(単なる過去の女?)コニーの持ち物、カメラ、毛皮のコート、タイプライター、ブレスレットもただ海に落ちていくだけ。面白くもなんともない。

ただ、これは今観るからそう思うのであって、当時リアルタイムで観たらそれなりに思うところがあるようだ。
ヒッチコックは、この物語について、例のトリュフォーとの対談集『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』の中でこう語っている。

「当時、世界には民主主義と全体主義という二大勢力があって、激しく競い合っていたわけだが、民主国家のほうは完全にバラバラになっているのに反して、ナチス・ドイツは見事に組織化されて蔓進していた。だから、民主勢力は各国家の差や利害にこだわらずに一致団結して力を合わせ、この恐るべき統率力と組織力と決断力を持った共通の敵に立ち向かう必要があるということを言いたかったわけだ。」

ドイツ人は自分の立場をわけまえ、狡猾でドライなふるまいをしているのに、他の人たちは"彼を殺すべきかどうか"で迷い、誰ひとり明確な結論を出すことができない。信用できるかどうか、お互い胸の内をまさぐっていたはずが...ドイツ人が2枚も3枚も上手だった!ドイツ人はアメリカ人や英国人よりはるかに優秀であると描写したとして一部の批評家からはこっぴどく叩かれ、『救命艇』は論争を巻き起こした。

こんなカメラワークやら
救命艇1

こんな描写が
救命艇2
逆鱗にふれた?見下しているみたいですからね。

コラムニストのドロシー・トンプソンは「10日以内にこの映画を町から叩きだせ(wikiには3日と書いてあります。まあ、どっちでもいいですが)となじったそうだ。ニューヨーク・タイムズ誌のボズレー・クラウザーも「奇妙なくらい非民主的な映画。許容できる根拠がない」と罵倒した。バッシングにおそれをなしたジョン・スタインベックはヒッチコックを批判し、自分の名前を映画に使わないように要求。映画会社も論争を嫌い『救命艇』を拡大公開しなかったため、興行的に失敗に終わった。批評は全般的にみると良好だったのだが...

ヒッチコック カメオ出演場面「救命艇」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

0:25 新聞の「やせ薬」広告モデルで、使用前、使用後の写真で登場。これは誰もが気付いたでしょう。ヒッチコック自身が150キロ!から100キロへ50キロ減量したため、その写真をそのまま使ったそうですが...イラストだと思った(笑)。映画を観た人からこの「レドゥーコ」という痩せ薬はそこで手に入るのか教えてくれという手紙が殺到したそうです。実在しない、架空の薬なんですが。うーん、例え戦争中でも人間、ダイエットへの関心はあるんですね(笑)。

救命艇 ヒッチコック カメオ

『救命艇』、つまらない映画とまでは言いきりませんが、個々の登場人物も、"割り振られたキャラ"って感じで今ひとつ味気ない。ラストあたりのドタバタは興ざめ。ナチをみんなで海に突き落とす場面ですら全然怖くない。やっぱり海ものはサスペンスに不向きなんだなあ。一番面白かったのは...やせ薬でした(笑)。
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1000 Frames of Lifeboat (1944)


2014.07.30 Wednesday | 00:16 | A・ヒッチコック | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.09.24 Sunday | 00:16 | - | - | - |

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