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オンリー・ゴッド

オンリー・ゴッド(2013 デンマーク・フランス)

オンリー・ゴッド原題   ONLY GOD FORGIVES
監督   ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本   ニコラス・ウィンディング・レフン
撮影   ラリー・スミス 
編集   マシュー・ニューマン
音楽   クリフ・マルティネス
出演   ライアン・ゴズリング クリスティン・スコット・トーマス
      ヴィタヤ・パンスリンガム ラータ・ポーガム
      ゴードン・ブラウン トム・バーク

オンリー・ゴッド』はニコラス・ウィンディング・レフン監督前作『ドライヴ』同様、主演ライアン・ゴズリング、音楽クリフ・マルティネスで製作された。『ドライヴ』は音楽の使い方の絶妙な巧さが光ったが、監督はクリフ・マルティネスに対し、"どうしても『ドライヴ』と比較されてしまうので、音楽は極力『ドライヴ』とは違うものにしてほしい、と要望したという。この『オンリー・ゴッド』の音楽は、メロディというよりはてしまく音響に近い。外からの雑音とブレンドされたような、ささやかな、やや耳触りな音。『オンリー・ゴッド』はその音楽が示す通り、感情を押し殺したような無機質な裏社会に不気味な音がかすかに響きわたる、そんなイメージの映画である。

まず、この物語は、無の世界である。
登場人物は誰ひとり笑顔を見せることがない。
普段は感情を表に出さない。
だが、何かが起こると行動基準は感情のみ。
気に入らない奴は殺す。

元警官で、裏社会を仕切っているチャン(ヴィタヤ・パンスリンガム)
歌の内容はわからないが、メロディなどから推測すると
やや感傷的な歌のようにみえる。
それを姿を黙ってきくだけの手下たち。
ひたすら不気味である。
感情はカラオケの歌世界の中だけで繰り広げられる。

クリスティン・スコット・トーマス演じる母親は物語の象徴のような人物。
2人の子供のうち、兄は溺愛し、弟は"何か自分と違う気がする"といって放置。
そして、兄が殺されると、"関係者は皆殺し"にしろとなじり
今まで冷たくしていた弟に対し、「私を守って」と言いはじめる。
自分のわからないものにはふたをする。むかつけば殺す。
極めて単純だ。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督は、西部劇風スリラーをイメージして当作を手がけたらしいが、正直いってサスペンス描写はあまり巧くない。ヒッチコックならこういう見せ方はしないだろうな、と思う箇所がいくつかあった。兄を殺した男をジュリアン(ライアン・ゴズリング)が追い詰める。ここで男は何かしら理由を叫ぶ。ここを"口パク"にしたのはヒッチコック的。兄が男の娘をレイプしたあと、殺した、だから復讐したんだ!と言っただろうと推測がつくが、ここでだらだら台詞が入るとうっとおしいだけでなく、ジュリアンの行動に関するイメージが膨らまない。

話が進むにつれて、ジュリアンが自分の父親を殺した過去をもつことがわかってくる。父を殺し、母に軽んじられ....

映画の原題は"ONLY GOD FORGIVES" 神のみが赦す。

神の創造物が人間とすると、その人間から生まれたジュリアン、だが、生んでくれた親は信頼できない。
となると、ジュリアンは何をよすがに生きてきたのか?
映画ではそのあたりのことは全く語られない。
神がどーのこーのなどという台詞も全く出てこない。
強いて言うなら、この裏社会においてチャンが"神にかわって復讐するような存在"として描かれている、ぐらいか。
ジュリアンは殺された母親の胃を切り開く。これはライアン・ゴズリングのアイデアらしいが、ジュリアンが母親に"何か"を見ようとしたことを示したかったのか。

ジャリアンはボクシング・ジムを経営しており、ジムには自分の像らしきものが飾られていた。
そして、チャンに戦いを挑む時、寡黙な彼が「俺と勝負する気か」とやや嫌みな口調でいう。
彼は"自分の強さ"を信じていた。チャンにあっさり負かされる。自分より強いものがこの世にいた。
"自分より強いもの"が彼にとっての神なのか?
ラスト、ジュリアンはチャンに両手を差し出す。
だが、ここを深く追求せねばならぬほど物語に奥行きはない。

『オンリー・ゴッド』はニフン監督の前作『ドライヴ』に比べて批評もよくなく、興行成績もガタ落ちした。
前作以上に賛否両論と言われているが、どちらかというと"否"のほうが多い。Only God Forgives - Rotten Tomatoes 
批判の多くは、"ろくに会話もなく、全くドラマ性がない"、"物語にオリジナリティがない"といった内容のようだ。
そもそも『ドライヴ』もストーリーは極めて凡庸。ストーリーを追いかけるだけでは楽しめない作品だった。
『オンリー・ゴッド』はその特徴をさらに押し進め、"復讐"以外の人間的感情は何もない世界を描いた

筆者は前作『ドライヴ』を"俳優の演技が達者すぎる長篇ミュージック・ビデオ"と評したが(これは褒めているんです)、『オンリー・ゴッド』は、音楽の比重は"一見"それほど高くない。だが、今回のクリフ・マルティネスの音楽には、油断したすき間に忍び寄ってくるような、独特の魔力がある。『オンリー・ゴッド』の世界を無理矢理評するなら"何もない空虚な世界を表現した長篇イメージビデオ"といったところだろうか?

自分の映画の好みの基準は、ストーリーでもテーマでもなく、役者の演技、音楽などを含めた映像の質感なので『オンリー・ゴッド』も十分楽しめた。『ドライヴ』をストーリーではなく、映像全体のイメージとしてとらえた人なら『オンリー・ゴッド』もそれなりに楽しめるだろう。ストーリーは本当に"何もない世界"なので、映像や音楽の質感が、自分とマッチするかどうか...『オンリー・ゴッド』が気に入るかどうかはそれが全てだと思う。




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2014.01.25 Saturday | 19:52 | 映画 | comments(0) | trackbacks(7) |

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