映画のメモ帳+α

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断崖

断崖(1941 アメリカ)

断崖原題   SUSPICION
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   フランシス・アイルズ
脚本   サムソン・ラファエルソン アルマ・レヴィル ジョーン・ハリソン
撮影   ハリー・ストラドリング
音楽   フランツ・ワックスマン
出演   ジョーン・フォンテイン ケイリー・グラント
      ナイジェル・ブルース セドリック・ハードウィック
      レオ・G・キャロル

第14回(1941年)アカデミー賞主演女優賞(ジョーン・フォンテイン)受賞。作品、劇映画音楽賞ノミネート

断崖』は、アルフレッド・ヒッチコック監督がケイリー・グラントジョーン・フォンテインの2大スターを主演に迎えた映画です。原作はフランシス・アイルズアントニー・バークリーの別名義)の『レディに捧げる殺人物語』。ヒッチは当初、同じ作家の『殺意』を映画化しようと考えていました。だが、『殺意』は医者が妻を殺そうと策略を練る物語で「私がつくるとあまりにも恐ろしいものになってしまう」とあきらめ、『レディに捧げる殺人物語』に変更されました。『レベッカ』につづく2度目のヒッチコック作品出演となったジョーン・フォンテインは、この作品でアカデミー主演女優賞を獲得。ヒッチコック映画出演による、唯一の演技賞受賞となっています。




物語
イギリス社交界で名をなすジョニー・アイガース(ケイリー・グラント)は金持ちの娘リーナ(ジョーン・フォンテイン)と結婚する。リーナは結婚後、ジョニーがろくに仕事をしたことがない無一文の詐欺常習者であることを知り、彼に仕事をもつことをすすめる。知り合いの会社に就職するが、会社の金を使い込み、解雇。その後、友人のビーキー(ナイジェル・ブルース)に土地を投資させるが...。ずさんな財産管理、ミステリー作家に対し、熱心に毒薬を秘密をさぐりだそうとする姿をみて、リーナはしだいに夫が自分を殺そうとしていると思いこむようになる。実家に戻ろうとするリーナを無理矢理車にのせて送ろうとするジョニー。車は断崖をつきすすむ...。

相変わらず、見せ方はうまいです。
まず、夫ジュニーがビッキーを殺すのでは?とヒロインが妄想。
まずは文字で。
MUDDER(重馬場に強い馬)をMURDER(殺人)に...。
断崖 mudder断崖  murder

映像化です。
断崖 妄想2断崖 妄想1

そしてジョニーが妻のためにミルクをもって階段をのぼる。
あのミルクには私を殺すための毒が入っているに違いない...。
断崖 ミルク1断崖 ミルク2断崖 ミルク3
豆電球をミルクの中にいれて暗闇に浮かび上がらせた演出は有名です。
でも、この時代、ミルクに豆電球ってどうやっていれたの?
特殊な電球でもあるのでしょうか?
ヒッチコック特有のホラ話説もあります。(笑)

映画は徹底的にリーナ側、つまり被害者の視点で描かれているので、リーナの心理はたっぷり描かれているのですが、ジョーンは100%怪しい人にしか見えない。だから、ラストのオチは唐突で、致命的なほど無理がある。

ヒッチコックははじめ、別のエンディングを考えていたそうです。妻リーナは母親に"私の夫は殺人犯だし、夫は自分も殺そうとしている。でも私は彼を絶望的に愛している。だから私は死のうと思う"という手紙を書き、出してきてくれるよう夫に頼んだあと、毒薬が入っているとわかっていてミルクを飲み、死んでしまう。その後、夫は手紙をポストに何くわぬ顔で投函するという、原作に近い内容。だが、映画会社は大スター、ケイリー・グラントを悪役にするなんてとんでもない!とその案を却下。さらにプロデューサーはケイリー・グラントが殺人犯のようにみえるシーンを全部カットしたため、残りは55分しかなかったとか。でも、これでは映画が成り立たないという映画会社社長の口添えで大部分が元に戻されたという逸話があります。何はともあれ、こういう点がスターをキャスティングする最大のデメリットですね。ケイリー・グラントが悪役のまま終わるわけないよな...先が読めてしまう。

原作ファンからの評判はかなり悪く、当時ちょっとした物議を醸したようです。でも映画は大ヒットしました。もっともトリュフォーは"映画ではヒロインが夫が自分を殺そうとしていると思いこむ。小説はヒロインが夫が自分を殺そうとしていることを発見する。まったく別の物語。映画のほうがありきたりなシチュエーションゆえ、人物に深みが出る"と作品を擁護していますが...深み???

ジョーン・フォンテイン演じるリーナという女性。気位の高い知的な金持ちの娘という設定ですが、前半はどうみてもただのアホの子。あんな怪しい男と結婚せんだろー。今までいわれたこともない「モンキー・フェイス」なんていう男(映画内で17回いっているそうです。)が物珍しくてころっといっちゃった!?ちょっとしたことですぐ彼を疑い、かつ信じようとする。物語の都合にあわせてキャラクターがころころ変わる。映画のテーマソングのような、ヨハン・シュトラウス2世の『ウイーン気質』が状況に応じて明るくなったり激しくなったり。『ウィーンからのワルツ』での経験が生きた?

こういう、よ〜くみるとツッコミどころ満載な登場人物はヒッチコック映画の常。本来、俳優がヒッチコック映画でアカデミー賞なんてとれるわけがないんです。グレース・ケリーもイングリッド・バーグマンもジェームズ・スチュワートもケーリー・グラントもヒッチコック映画ではアカデミー賞に一度もノミネートすらされていない。ジョーン・フォンティンは『レベッカ』でも主演女優賞にノミネートされ、作品賞をもたらした。そしてこの『断崖』で主演女優賞を受賞!ヒッチコック映画でアカデミー賞を受賞した俳優は彼女のみ。こういう観点でみると最強のヒッチ女優はジョーン・フォンティン

ヒッチコック カメオ出演場面「断崖」でのヒッチコック・カメオ出演場面!

断崖 ヒッチコック
46分ごろ、ポストに手紙を投かんするオッサン!

もうひとつあるようです。はじまりから4分ごろ、画面を横切るオッサン。
断崖 ヒッチコック カメオ2
ただし、これはヒッチコックと別人という声もあるようです。

『断崖』は1942年から1949年にかけてラジオドラマとしてで何回かで放送されている。
一部オリジナルキャスト出演のものをご紹介。
Suspicion on Lux Radio Theater: May 4, 1942 ジョーン・フォンテイ ナイジェル・ブルースン再演
・Suspicion on Screen Guild Theater: January 4, 1943 ジョーン・フォンテイン ナイジェル・ブルース再演
・Suspicion on Screen Guild Theater: January 21, 1946 ケイリー・グラント ナイジェル・ブルース再演
Suspicion on Academy Award Theater: October 30, 1946  ケイリー・グラント再演
・Suspicion on Screen Guild Theater: On November 24, 1949 ケイリー・グラント ジョーン・フォンテイン ナイジェル・ブルース再演

『断崖』はヒッチコックもあまり気に入っていないようです。ラストが残念すぎる。
"原作のエッセンスがハリウッドによってずたずたにされる、わかりやすい実例"という評価をしている人がいます。
あのラストで一気にどっちらけ感がでちゃいまいましたね。
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1000 Frames of Suspicion (1941)

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2017.04.26 Wednesday | 03:33 | - | - | - |

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