映画のメモ帳+α

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海外特派員

海外特派員(1940 アメリカ)

海外特派員原題   FOREIGN CORRESPONDENT
監督   アルフレッド・ヒッチコック
脚本   チャールズ・ベネット ジョーン・ハリソン
撮影   ルドルフ・マテ
音楽   アルフレッド・ニューマン
出演   ジョエル・マクリー ラレイン・デイ
      ジョージ・サンダース ハーバート・マーシャル
      アルバート・バッサーマン

第13回(1940年)アカデミー賞作品、助演男優(アルバート・バッサーマン)、脚本、撮影(白黒)、室内装置、特殊効果賞ノミネート

海外特派員』はアルフレッド・ヒッチコック監督のハリウッド進出第二段。プロデューサー、ウォルター・ウェンジャーから"外国の政治的陰謀"を描いた映画を作りたい、と依頼を受けて制作された。もともとジャーナリストVincent Sheean著『personal history』の映画化として企画されていたが脚本がうまくまとまらず、"海外特派員"という設定以外ストーリーは映画オリジナルになった。ヒッチコックからの出演依頼に対し「単なるスリラーなんか出ない」と断ったゲイリー・クーパーが作品を観た後、それを悔やんだというエピソードは有名です。

 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

物語
時は1939年。アメリカの新聞記者ジョーンズ(ジョエル・マクリー)は、戦争勃発の危機にあるヨーロッパへ"海外特派員"として派遣される。彼はロンドンに到着すると、ヨーロッパ和平の鍵をにぎる、オランダの元老ヴァン・メア(アルバート・バッサーマン)に会うが、ヴァンはアムステルダムの平和会議会場前で射殺される。ジョーンズは犯人を追跡していくうち、射殺されたのは偽物で、ヴァン本人はナチに誘拐されていることを把握。ヨーロッパ平和運動の要人フィッシャー(ハーバート・マーシャル)とその娘キャロル(ラレイン・デイ)の助けをかりてヴァン老人の行方を探すが、実はフィッシャーこそヴァン誘拐の張本人だったことを知る...



それにしても派手な見どころの多い作品です。前作『レベッカ』に比べると、かなりハリウッドっぽくなってきたと評されるのもうなづけます。ただ、これは英国だ、ハリウッドだ、というよりは(使える予算の違いはあるでしょうが)、脚本が実質オリジナルだったことが大きいのではないでしょうか?ヒッチコックいわく"チャールズ・ベネットと自分が脚本を書いた"らしいので(クレジットはされていない)、映画として見栄えがする場面を考えストーリーとしてつなげていったのではないかと思ったりします。

まず、冒頭、ヴァン老人が殺される場面。
海外特派員 暗殺 傘1

暗殺犯が傘をさす人の群れをかいくぐるというシチュエーションが秀逸。
周りの傘の動きで犯人がどこにいるかをみせる。
海外特派員 暗殺 傘2海外特派員 暗殺 傘3

そして風車の場面。
まるで砂漠のように殺風景な場所に風車がぽつり。これだけで不気味です。
海外特派員 風車

可能な限り主人公の目線に近づけたカメラワークはいつもながら見事。
海外特派員 風車1海外特派員 風車2海外特派員 風車3

風車シーンではコートがひっかかったり、ヴァン老人がふっと新聞記者のいる方向に目線を向けると彼が素早く隠れる、よって一味には鳩だけが見えるといった細かいネタをまぶしているのですが、極めつけはこれ!
風車の材木がまるでヒットラーの顔のように見える!
 海外特派員 ヒットラー

続いて新聞記者が殺し屋に狙われ、ホテル・ヨーロッパの窓ごしに逃げる場面。
途中で看板文字がはずれ
海外特派員 HOTEL EUROPA 海外特派員 HOT EUROPA 

HOTEL EUROPAがHOT EUROPAに!戦争直前のヨーロッパを暗示する。
よくこんなこと考えるよ!

そして新聞記者ジョーンズはフィッシャーによって怪しげな警備をつけられるのですが、こいつが実は殺し屋で...。
ウェストミンスター大聖堂にある塔から突き落とされそうになります。
海外特派員 ウェストミンスター大聖堂
それにしても、プロの殺し屋が手で突き飛ばすなんて原始的な手法を...これはリアリティでしょうか?それともギャグ?

さて、この映画ストーリーはいつものごとく...なんですが、トリュフォーとの対談でヒッチコックが面白いこといってました。
「プロットのための口実が大きくリアルになりすぎると、シナリオとしてはおもしろくても、映画としてはややこしくてわかりにくくなってしまう。映画としておもしろくするためには、すべてをできるだけ単純にしなければならない。」そのとおりでございます。単純にしすぎると手抜きとかご都合主義とか言われるんで、その辺りのバランスは難しいでしょうね。

最後、飛行機が海に落ちる場面!
どうやって撮影したかはヒッチ先生が例の本でトリュフォー相手に自慢げに語ってくれています。
 海外特派員 飛行機
まあ、ヒッチコックの映画で、飛行機だの海だの出てきたら、大体こーゆー目に会うと思ってください(笑)。

ヒッチコック カメオ出演場面「海外特派員」でのヒッチコック・カメオ出演場面!
開始13分ごろ ホテルを出た新聞記者ジョーンズ(ジョエル・マクリー)の目の前を、新聞を読みながら通り過ぎる。
海外特派員 ヒッチコック カメオ


この『海外特派員』、アメリカでは1940年8月16日に公開されているのですが、日本での劇場公開は何と1976年9月11日!(その前に何度もTV放映されているようですが)。理由は明確。この作品はいわゆるプロパガンダ映画だからです。まだアメリカは戦争に加わっていない時期ですし、プロデューサーの意向で作ったんでしょうけど。同時期のプロパガンダ映画としては『マンハント』(1941 フリッツ・ラング監督)や『ヨーク軍曹』(1941 ハワード・ホークス監督)、『A Yank in the R.A.F. 』(1941), 『The Mortal Storm』 (1940),『Confessions of a Nazi Spy』(1939)などがあるようです。ヒッチコックなんて無思想の極みで、政治は映画のネタにすぎないみたいなイメージなんですが....実はヒッチコック、中編のプロパガンダ映画を2本とっています。『闇の逃避行(1944 Bon Voyage)』と『マダガスカルの冒険(1944 Aventure Malgache)』です。後者は結局、内容がプロパガンダにふさわしくないということで公開が見送られたようですが。ヒッチコックいわく「戦争でみんな苦労しているのに、私だけ何もしないわけにはいかないと思ったんだよ。兵士になるには年をとりすぎていて、太り過ぎているし」とのこと。う〜ん、これは意外。「頼まれたから作っただけ」とうそぶいていたのかと思った。『意志の勝利』を撮ったレニ・リーフェンシュタールは、映画監督としてのキャリアが閉ざされただけでなく死ぬまでバッシングされ続けたのに、この違いは?戦勝国と敗戦国、劇映画とドキュメンタリー、娯楽映画とアート映画....。同じプロパガンダ映画では立場、表現形式が違うとこうも扱いが変わるのか?もっとも今、この『海外特派員』をみてプロパガンダうんぬんと思う人はほとんどいないでしょう。ヒッチコック映画においてスパイなんて当たり前のように出てくるし。ゲッベルスがこの映画を"とっても楽しんで観た"という逸話が伝わっています。『海外特派員』はプロパガンダ映画として最低レベルの作品ということになります。(爆)

『海外特派員』はサスペンスというよりはアクション映画に近い出来。見どころはてんこ盛りだし、気軽に観ることができる作品。気軽にみれるプロパガンダ映画なんてあり?...まあ、未見の方はぜひ!
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1000 Frames of Foreign Correspondent (1940)


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2017.04.26 Wednesday | 01:38 | - | - | - |

コメント

>映画として見栄えがする場面を考えストーリーとしてつなげていった

おもいつきで繋げていった?所もあるってことなのでしょうか。それでも、私には見どころ十分でした。
すばらしい原作があっても、つまんない以上に激怒したくなるような作品もあるので、そこは監督の手腕なのでしょうか。

ジョエル・マクリー演じる主人公の、誠実でちょっと頼りない感じと、風車のシーンや大聖堂のシーンのカメラワークが、ぴったりだと思っていたのですが…
ゲイリー・クーパーだと、また違った雰囲気の作品になったと思います。
(共通点は背の高さですか?)
2014/07/25 10:04 AM by パール
うーん、"思いつき"とは微妙にニュアンスが異なります。

まず、ストーリーありきではなく
まず撮りたい場面ありき、といいましょうか?

こういう場面を撮りたいというイメージが先にあって、それが撮れるようにストーリーを考えていくという意味で書きました。

まあ、あくまで推測なのであまり気にしないでください(笑)
2014/07/25 6:35 PM by moviepad

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