映画のメモ帳+α

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レベッカ

レベッカ(1940 アメリカ)

レベッカ原題   REBECCA
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ダフネ・デュ・モーリア
脚本   ロバート・E・シャーウッド ジョーン・ハリソン
撮影   ジョージ・バーンズ
音楽   フランツ・ワックスマン
出演   ローレンス・オリヴィエ ジョーン・フォンテイン
      ジョージ・サンダース ジュディス・アンダーソン
      グラディス・クーパー レオ・G・キャロル
      ナイジェル・ブルース



第13回(1940年)アカデミー賞作品、撮影賞(白黒)受賞。監督、主演男優(ローレンス・オリヴィエ)、主演女優(ジョーン・フォンテイン)、助演女優(ジュディス・アンダーソン)、脚色、編集、作曲、室内装置、特殊効果賞ノミネート

レベッカ』はアルフレッド・ヒッチコック監督がデヴィッド・O・セルズニックに請われてハリウッドにわたった後、はじめて手掛けた作品。ハリウッドでは当初、タイタニック号沈没をテーマにした映画を撮る予定だったが中止となり、その代わりに『レベッカ』の企画を提示された。ヒッチコック自身、英国時代に原作の映画化権を自分で買おうとしたが、高くて買えなかったといういきさつがあり、企画変更をあっさり承諾。『レベッカ』はアカデミー賞作品賞を獲得し、ヒッチコックのハリウッドデビューは大成功で幕を開けた。



物語
ホッパー夫人(フローレンス・ベイツ)の話し相手兼世話係としてモンテカルロにきていた若い女性(映画の中で、名前はつけれれていない)ジョーン・フォンテイン)は、若い英国紳士マキシム・ド・ウィンター(ローレンス・オリヴィエ)と出会った。マキシムは妻レベッカを亡くし意気消沈していたが、女を後妻として迎えることに決め、マンダレーの屋敷に連れ帰った。だが、屋敷を取り仕切っていたダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)は、今でも前妻レベッカを崇拝し続けており、レベッカのいとこと称するファヴェル(ジョージ・サンダース)がマキシムの留守中に屋敷にやって来るなど、レベッカの亡霊がすみついているかのような屋敷生活に女息苦しさを感じていた。そんな最中、既に埋葬されていたはずのレベッカらしき女性の死体とボートが発見されて...

"人里離れ、周りを自然に囲まれた屋敷"という舞台設定のもと、『レベッカ』はいつも以上に光と影、特に"ヒッチコックシャドウ"と言われる影の使い方に目を見張ります。亡くなった前妻、レベッカの亡霊が屋敷にすみついている...そんなことをイメージさせるような影の使い方です。
レベッカ シャドウ1レベッカ シャドウ2レベッカ シャドウ3

そして、ダンヴァース夫人がヒロインに肖像画を紹介する場面。
レベッカ 肖像画シーン
肖像画をななめ横切る影は、不吉な予感を示しています。この映像だけで、観客は"この衣装はかつてレベッカが着たものに違いない"と推測でき、その後、ヒロインがマクシムから怒鳴られる場面をひやひやしながら待ちうけることになります。どやしの場面は比較的あっさりしているので、やや拍子抜けするのですが、その後...

レベッカ ダンヴァース夫人1
もっと強烈なサスペンスを用意する。うまいですね〜。

まるでレベッカの亡霊のごとく、屋敷内に映し出される影もこわいのですが、
もっとこわいのがこれ。
レベッカ ダンヴァース夫人2
そう、まるで影のような人間、ダンヴァース夫人です。
ヒッチコックは極力、彼女の"歩く場面"を撮らないようにしていたという。そう、幽霊のごとく、気が付いたらレベッカの側にぬ〜と立っている。
背筋をぴんと伸ばして立ちすくむ。"生きた影"のほうがずっと怖い。
レベッカ ダンヴァース夫人3

まあ、最後はこうなるんですが...。
レベッカ ダンヴァース夫人4

最後まで影ですね。怖い、怖い。亡きレベッカと生きているダンヴァース夫人の"2つの影"でヒロインを包み込んで、羽交い絞めにしているような映像の連続です。結局、レベッカ本人の映像は一度も出てこない。"怖いものの姿をあえて見せない"のはサスペンスではよく使われる手ですが、当時は新鮮だったのでは?ヒッチコックの撮影技法をかなり研究したといわれるスピルバーグは『レベッカ』を参考にして『ジョーズ』を作ったのかも。

ヒッチコックはこの作品にたいして思い入れがないようで、トリュフォーからアカデミー賞作品賞のことを言われても「あれはセルズニックがもらった賞。監督賞はジョン・フォードが撮ったし」とそっけない。また、「ヒッチコック映画とは言えない。原作は女性向けの古臭いメロドラマだし、ストーリーにユーモアがかけているのが致命的」とばっさり。トリュフォーが今見直しても素晴らしいと力説すると「なぜこの映画が年月に耐えられたのか不思議でしょうがない」と言いはなつ始末。そこでトリュフォーが「ストーリーはあなたの得意とするスリラーでもサスペンスでもなく心理ドラマだった。この人物間の葛藤だけからなるドラマにサスペンスの要素を持ち込んだことがあなたに大きなプラスとなったのでは?」と指摘されると「そのとおりだ」とようやく認める有様。

『レベッカ』はヒッチコック唯一のアカデミー作品賞受賞作にもかかわらず、ヒッチコックの代表作と考える人は意外と少ない。批評家やファンがヒッチコック作品のランキングづけをした場合、だいたいベスト3は『裏窓』、『サイコ』、『めまい』、その後は『北北西に進路を取れ』、『』あたりであとは結構ばらばら。『レベッカ』は3〜5位くらいに入ることもあれば、ベスト10にも入らないこともある。ヒッチコック本人の言葉を借りるまでもなく、一見、文学チックなメロドラマなせいか、ヒッチコックらしい作品に見えないことが理由かもしれません。原作の文章そのままのナレーションに乗せて、マンダレーの屋敷までの道をなぞるような冒頭シーンなど文学チックな映像もあります。でも、全体的に観ると、『レベッカ』はヒッチコックサスペンスそのもの。前述の"影"の使い方など、随所にヒッチコックらしい映像表現にあふれている。ゴシックロマン風の物語から突如現代ミステリー風に変わる。そして最後、ゴシックの世界に戻っていく。この流れも見事。メロドラマっぽい出だしからミステリーへ...後の『サイコ』をほうふつさせるストーリー構成です。

ヒッチコック カメオ出演場面「レベッカ」でのヒッチコック・カメオ出演場面!
ラスト近く、2時間3分ごろ、ファヴェル(ジョージ・サンダーズ)が公衆電話ボックスから出てきて、警官と話しているとき、後ろを横切る。わかりづらい!
レベッカ ヒッチコック カメオ
他にヒッチコックが公衆電話の横でもろに顔を見せている場面写真をみたことがあります。某書でこの場面は日本公開時にカットされたと書かれていますが、"宣伝用のスチール写真で、最初からあんな場面はない"説のほうが信憑性高し。

この映画、観終わったら、ダンヴァース夫人がレベッカに執着するのはなぜなのか?とか(「私たち2人の幸せを観たくないんですって」という台詞は余計でした)ラストのベイカー医師(レオ・G・キャロル)の話は本当なのか、マキシムの執事が前もって仕込んでおいたんじゃないのか?などいくつかの疑問が残るのですが、不思議とそれがドラマ的余韻を醸しださない。そのかわり、静寂の中で耳元にそっと息を吹きかけられるような怖さがある。そして観終わると余韻がそっとフェイドアウトしていく。残り火がかすかにともり、それもやがて消えていく。記憶に残りにくい映画です。筆者も久しぶりに再見したのですが、細かい内容はすっかり忘れていたのではじめて観たかのように楽しめました。しばらくすれば、また忘れてしまうかもしれません。でも、それでいいんです。見直せば、また新鮮な気持ちで楽しめるのですから。『レベッカ』はふっと現れてそっと消えゆく影のような映画。個人的にはかなり好きです。
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1000 Frames of Rebecca (1940)


2014.07.24 Thursday | 00:10 | A・ヒッチコック | comments(2) | trackbacks(0) |

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2017.03.29 Wednesday | 00:10 | - | - | - |

コメント

大好きな映画です。
初めて観たのは小学生だったでしょうか?
こんなに可愛らしくて美しいヒロインに名前がないのに、一度も出てこない前妻の名前が映画のタイトルになっている ということに おおっと思った記憶があります。

ローレンス・オリヴィエとジョーン・フォンテイン。
当時は、かなり中年のおじさんと若い娘と思い込んで入ましたが、二人の俳優は思ったほどの年齢差ではないのですよね。
ロマンス映画といえば、中年のおじさんとうら若い娘…の作品ばかり思い浮かべてしまうのですが…

でもなんといっても、ダンヴァース夫人。
途中、ダンヴァース夫人がマンダレー屋敷そのもので、ヒロインを飲み込もうとしているように思えました。

最期は、ハッピーエンドだったのでしょうか、それともダンヴァース夫人を操って、マキシムが守り大事にしていたマンダレー屋敷を燃やすことで、レベッカが勝利したのでしょうか。
2014/07/24 8:13 PM by パール
はい、自分もこの映画大好きです。「レベッカ」がヒッチコックの最高傑作と主張する人にお目にかかったことがありませんが、そう言われるとそうかもしれない、と思えるほど。

思うことは記事の中に書いてしまったのですが、まさに"影のような映画"。すぅーと現れてすぅーと消える。そんなおぼろげなイメージです。

ラストに関しては何ともいえませんね。そこがまたいいんです。
2014/07/24 8:37 PM by moviepad

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