映画のメモ帳+α

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ウィーンからのワルツ

ウイーンからのワルツ(1934 イギリス)

ウィーンからのワルツ原題   Waltzes from Vienna
監督   アルフレッド・ヒッチコック
原作   ガイ・ボルトン
脚本   アルマ・レヴィル ガイ・ボルトン
撮影   グレン・マック・ウィリアムズ
音楽   ヨハン・ストラウス
出演   ジェシー・マシューズ エズモンド・ナイト エドマンド・グエイン フェイ・コンプトン
      
(日本劇場未公開)

ウィーンからのワルツ』はアルフレッド・ヒッチコック監督いわく"キャリアのどん底"時期に撮影された。当時、本人には自覚がなかったらしいが、『リッチ・アンド・ストレンジ』、『第十七番』と2作連続で批評も悪く、興行的にも失敗。"もうあいつは終わりだ"と思われていたようだ、とヒッチは言う。『ウィーンからのワルツ』はヨハン・シュトラウス2世によって作曲されたワルツの名曲「美しく青きドナウ」の誕生秘話を題材とした映画。ヒッチいわく"ひどい出来の映画"、"音楽なしの音楽劇"と酷評するが、当時流行していたオペレッタ題材を手堅くまとめている。

物語
ウイーンのレストランで火事が起こり、客があわてて外へ飛び出す。しかし、イベントを楽しむかのように悠然としている人たちもいる。そのレストランの2階では、シャニ・シュトラウス(エズモンド・ナイト)のピアノに合わせて、ラジ(ジェシー・マシューズ)が歌っている。ラジはそのレストランのオーナーの娘。ラジはレストランの同僚から救い出され、シャニもはしごで逃げ出した。やがて、シャニは伯爵夫人(フェイ・コンプトン)にみそめられ、夫人はシャニのパトロンになる。シャニはラジの父親が経営するパン屋で働くようになる。パン調理場で職人たちが働いているときのリズム感にインスパイアされ、シャニは曲の着想が浮かぶ。ラジはシャニと伯爵夫人の関係に嫉妬するばかり。シャニは曲作りにいそしむが、父ヨハン・シュトラウス(エドマンド・グエイン)は息子の才能を認めず、一切協力してくれない。シャニをみかねた伯爵夫人と楽団のマネージャーが彼のためにチャンスを用意した。ヨハンの指揮で演奏する予定だった屋外イベントがあった。2人は策略して、楽屋でヨハンをひきとめ、ステージ出演を遅らせた。そして予定時間になると、シャニが指揮台にあがり、父のオーケストラをバックに「美しく青きドナウ」を披露。観客はおしみない喝采を送った。ラジはシャニが伯爵夫人にとられたと思いこむが、それは誤解で元の鞘におさまる。父ヨハンも息子シャニの才能を認めざるをえなくなった。

まあ、ありがちな話ですね。シュトラウス父子がライバル関係にあったのは本当ですが、これがどこまで事実に即したものかはわかりません。ほとんど創作では?と思っています。当時の批評にこんなものがあります。The Times (05/Mar/1934)
"ヒッチコックは舞台をなぞるようなことはしておらず、カメラを絶えず動かし続ける。だが、内容は他のオペレッタと大差ない。シャニは単なるミュージカルロマンスを超えた、真面目なキャラクターとして描いて欲しかった"という内容。まあ、そうでしょうね。これが、フィクションだったらそこまで気にされなかったかもしれませんが。登場人物が物語を進めるためのコマにしか見えないのが、ちょっと悲しい。まあ、オペレッタとかミュージカル映画なんてのはそれくらいシンプルにしないと、音楽が映えないんですけど。かつ、肝心の「美しく青きドナウ」披露の場面も今いちもりあがらず、平坦な印象。というか、この曲自体ワルツであり、ドラマ的な盛り上がりにかける。映画の肝に据える曲じゃありません(笑)。

ウィーンからのワルツ ヒッチコック 演奏場面

まあ、強いて言えばシャニがパン調理場で曲の着想を得る場面がちょっと楽しいかな。まあ、これも今ならミュージカル風にはじけて作ることができる箇所ですけどね。とはいっても、『ウィーンからのワルツ』、害にも毒にもならず、そつなくまとまっています。『シャンパーニュ』と同列の駄作と評したものも見かけましたが、とんでもない(爆)。まあ、筆者はいつも音楽物に甘いんですが...。

この作品からわずか4年後、同じ題材で『グレート・ワルツ』(1938)という映画が作られています。フランス映画の巨匠ジュリアン・デヴィヴィエ監督が渡米後、ハリウッドで作った最初の作品ですが...正直言って面白くない。タイトルからしてださい(爆)。予算はたっぷりかけられたのか音楽シーンは頻繁にありますが、ヨハン・シュトラウス2世の名前と曲以外ほとんど創作じゃないかと思えるような話。商業的にも失敗しており、この題材が映画向きでないことがよくわかります。個人的にはヒッチコック版のほうが好き。音楽をより楽しみたい人は『グレート・ワルツ』のほうが良いかもしれません。デヴィヴィエでもハリウッドで作るとこんなになっちゃうんだ...という悪い見本のような映画でしたけどね。

この作品を最後に、次作『暗殺者の家』からヒッチコックは"スリラー専門"になったと評されています。(厳密にいえば『スミス夫婦』とかコメディが混ざってたりするんですが) 世間一般がイメージする"サスペンスの神様"ヒッチコックの世界は次作から本格的にスタートするわけです。ここまで"非サスペンス映画"を何本かみて思ったことは、"ヒッチコックは何でも撮れるんだな"ということ。天分であるスリラーにいたるまで10本以上の作品をへなければいけなかったのは、ある種の"器用貧乏"がなせる業でしょう。もし、この『ウィーンからのワルツ』が大成功してしまったらヒッチコックはミュージカル映画をたくさん撮らされたかもしれませんよ!失敗に感謝しましょう(爆)。かつ、この作品での経験が、次作『暗殺者の家』のオーケストラ場面につながったのでしょう。
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1000 Frames of Waltzes from Vienna (1934)

2014.07.16 Wednesday | 00:03 | A・ヒッチコック | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.07.23 Sunday | 00:03 | - | - | - |

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