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恐喝 (1929)

恐喝(ゆすり)(1929 イギリス)

恐喝(ゆすり)原題   BLACKMAIL
監督   アルフレッド・ヒッチコック
脚本   ベン・レヴィ
撮影   ジャック・コックス
音楽   キャンベル・コネリー
出演   アニー・オンドラ サラ・オールグッド
      ジョン・ロングデン ドナルド・カルスロップ
      シリル・リチャード

(日本劇場未公開)

アルフレッド・ヒッチコック監督『恐喝(ゆすり)』は当初これまでどおりサイレントで撮影されていた。だが、『ジャズ・シンガー』(1927)以降、世界的に進む流れを受けてトーキーに変更。イギリス初のトーキー映画はヒッチコックの手にゆだねられた。ふさわしい人選と感じる人も多いだろうが、ヒッチコックといえば極力、台詞ではなく映像で物語を語ることに人一倍こだわる監督。その彼がイギリスでのトーキー第一号を手掛けるとは何ともいえない皮肉であります。

物語
刑事のフランク(ジョン・ロングデン)とアリス(アニー・オンドラ)は恋人どおし。レストランでささいな喧嘩をして、別れた。だが、その後、アリスがレストランにいた男と一緒に店を出るところを目撃し、後を追う。男は画家(シリル・リチャード)で自分のアパートにアリスを誘う。アリスは絵のモデルになってほしいと言われ、部屋にあった踊り子の衣装に着替えた。帰ろうとして踊り子の服を脱ぐと、画家はアリスが着ていたワンピースを隠し、アリスにキスをしようとした。アリスは抵抗し、近くにあったナイフで画家を刺し殺してしまう。事件はたちまち報道され、フランクが事件の担当となった。自首する勇気のないアリスと、彼女が犯人であることを知っているフランク。対応に苦慮していた2人の前に、当日アパートの周りをうろついたいた男(ドナルド・カルスロップ)が現れ、"ゆすり"をはじめる

サイレントで撮っていたのを途中からトーキーに変更したため、『恐喝(ゆすり)』はサイレント技法とトーキー技法が混在している作品と言われている。アリスを演じたアニー・オンドラは前作『マンクスマン』に続く出演だが、チェコ訛りがひどいため、イギリスの女優ジョーン・バリーが吹き替えた。その手法とはカメラの側に彼女がいて、オンドラの口パクに合わせて、ジョーンが台詞を話す。それを同時録音したというから、当時の混乱ぶりがよくわかる。カーテンの動きだけでアリスが画家を殺すのを表現する場面などサイレント手法もまだ健在(というよりヒッチコックはこの後も映像でわからせるのを好んだ)だが、近所のオバハンが無意味に「ナイフ!ナイフ!ナイフ!」と叫び出し、アリスの不安をより高める、明らかにトーキーを意識した場面もある。このオバハン、ナイフという言葉を"13"回叫び、だんだん声のトーンをあげていった。今、観るとやや滑稽な場面だがヒッチコックなりに言葉の可能性を試していたのだろう。「なるべく単純な方法で試してみたかった」とヒッチは語っている。

サウンドテストをしている貴重な映像です!


『恐喝(ゆすり)』はイギリス映画トーキー第一号となったが、これは"オール・トーキー"という意味であり、部分的に音が入った作品はそれ以前にもいくつか存在する。また、"オール・サイレント"バージョンも劇場公開されており、こちらのほうがより人気で、長く上映された。当時はまだ、英国の映画館の多くはトーキーに対応できていなかったからである。

トレイシー(脅迫者)を警官が追いかけるアクション場面も今いち迫力にかけるが、大英博物館でのこの場面は評価が高い。実際に博物館内で撮影したのではなく、シュフタン・プロセスという技法で鏡と写真を使った。
恐喝(ゆすり)1

また、アリスが自首を決意する場面では顔の周りに、首つりの輪を連想させる影が...
恐喝(ゆすり)2
恥ずかしながら、私めはこれに気づかず、『ヒッチコックに進路を取れ』を読んでうなりました。

エンディングは今ひとつ切れが悪い。ヒッチコックは当初、違うエンディングを考えていた。独房にいれられたアリスの前をフランクと年配の刑事がとおりかかる。そこで刑事がフランクに「今日も恋人と会うのかね」と聞く。フランクは「いいえ、今日はまっすぐ家に帰ります」と答えるという内容。こっちのほうがいいと思うが、商業的な理由で変更せざるをえなかったという。ただ、この時代なら"悪人が罰せられないなんて!"と憤慨した人もいたでしょうね〜。

ヒッチコック カメオ出演場面「恐喝(ゆすり)」でのヒッチコック・カメオ出演場面!
始まって10分過ぎの電車の場面、少年に頭を殴られるおっさんの役で約20秒登場!ヒッチコックカメオ登場としてはもっとも長い!


『恐喝(ゆすり)』は『下宿人』に続いて、ヒッチコック2作目のサスペンス映画。批評もよく興行的にも成功をおさめている。最初はアリスと画家の会話が無駄に長く、階段の場面も凡庸。小道具である"絵"も効果的に使われているとはいいがたく、"あれ、ヒッチコックどうしちゃったのかな"と戸惑ったものの、全体的にはまずまずで、今観ても十分楽しめる。ヒッチコック映画研究にあたっては外せない作品だ。
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1000 Frames of Blackmail (1929)

2014.07.10 Thursday | 18:22 | A・ヒッチコック | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.07.23 Sunday | 18:22 | - | - | - |

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