映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※コメントは承認制とさせていただいております

<< デモンズ'95 | TOP | ショーン・オブ・ザ・デッド >>

28日後...

28日後...(2002 イギリス・アメリカ・オランダ)

28日後...原題   28 DAYS LATER...
監督   ダニー・ボイル
脚本   アレックス・ガーランド
撮影   アンソニー・ドッド・マントル
編集   クリス・ギル
音楽   ジョン・マーフィ
出演   キリアン・マーフィ ナオミ・ハリス  クリストファー・エクルストン ミーガン・バーンズ
      ブレンダン・グリーソン レオ・ビル リッチ・ハーネット スチュワート・マッカリー    

ゾンビ映画ファンの中で意見がはっきり分かれるテーマがあります。

走るゾンビはありか?

是非はともかく、今や"走るゾンビ"はゾンビ映画の主流をなしています。
そのきっかけを作ったのが、この「28日後...」です。

物語
ある研究所内でチンパンジーが、感染すると凶暴性がむきだしになってしまうウイルスに冒されていた。動物愛護活動家が研究所を襲ったことをきっかけにチンパンジーが解放されてしまったことをきっかけに、ロンドンの街は感染者であふれた。ウイルスは数秒で人間の精神を破壊する。感染者はすぐに殺さなければ自分が殺されてしまう運命となる。ウイルスの感染がロンドンを襲ってから28日後、自転車メッセンジャーのジム(キリアン・マーフィ)は昏睡状態から目を覚まし、廃墟となりはてたロンドンの街をさまよう。ジムはセリーナ(ナオミ・ハリス)、フランク(ブレンダン・グリーソン)とその娘ハナ(ミーガン・バーンズ)といった生存者と出会い、特効薬を見つけたと報じるラジオ放送を頼りに軍隊基地に向かうが...




アレックス・ガーランドは、ジョン・ウィンダムのSF小説「トリフィド時代」(The Day of the Triffids)とジョージ・A・ロメロのゾンビ3部作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)、「ゾンビ」(1978)、「死霊のえじき」(85)、「地球最後の男オメガマン」(1971)に着想をえて脚本を執筆しています。具体的には、ジムが目覚めるところは「トリフィド時代」、生存者が誰もいないスーパーマーケットで食糧を調達する箇所は「ゾンビ」、軍隊や、研究のため感染者を鎖でつないでいる描写は「死霊のえじき」...ビジュアル的に「ナイト〜」や「地球最後の男オメガマン」をほうふつさせる場面も出てきますね。

アレックス・ガーランドと監督のダニー・ボイルは人々の脳を欲しがるというゾンビの概念(一般的には人肉じゃないのかな、脳をほしがっていたのは「バタリアン」しか記憶にないんですが...)は古いと感じていた。2人は"これまでのゾンビ映画ではその背後に核兵器への恐怖が隠されていたが、現代社会で人々が最も恐れているのはエボラ出血熱のようなウイルスである"と考え、ロンドンで起こった狂牛病などの拡大やルワンダ、シエラレオネなどの社会不安などもリサーチしながら物語を作り上げていったという。まあ、随分志が高いですね。「ゾンビ3部作」+「地球最後の男オメガマン」+「アウトブレイク」+「ホテルルワンダ」...一体、どんな映画なんじゃ!?(爆)



感染者をゾンビのように描いたのが「28日後...」の新しくも怖いところであります。ダニー・ボイルはゾンビ映画とのたまわっているようですが、ビジュアルがゾンビっぽいだけで、厳密な意味でゾンビ映画とは呼べない。感染しただけで死んでないし。"本当はゾンビ映画ではないゾンビ映画の名作TOP10"3位に選ばれてます。ゾンビ映画ファンはお仲間をつくるのが大好きなので、それっぽい映画はみんなゾンビ映画にカテゴライズしたがります。「永遠(とわ)に美しく… 」をゾンビ映画に分類するのはかなり無理があると思うんですけどね...。

映画の冒頭40分はダニー・ボイル節が炸裂だ。
スタイリッシュでスピーディ、音楽の使い方の上手さ
従来のゾンビ映画とは一線を画す雰囲気を作り出している。
ゾンビ映画では冒頭にゾンビが登場し、掴みはOKとするパターンが多い。
「28日後...」ではまずフッテージ映像で観客を錯乱させ
その後、キリアン・マーフィの"フリ××"を見せるという手法がとられている。これで掴みはOK?(爆)
舞台が大都会であることがポイント。
荒廃したロンドンの街、黄色い空、そして夜明け。
退廃感よりもどこか美しさを残しているのがダニー・ボイルっぽい。

だが、中盤にさしかかりドラマ要素が強くなると勢いが一気に減速する。
まず、ナオミ・ハリス演じるセリーナのキャラがぶれすぎなのだ。
人生に計画をたててどうするの?生き残ることだけが重要よ
自分たちをかくまってくれたフランクに対し
「彼はいずれ私たちの足をひっぱるわ」
と非情ハードボイルド姉ちゃんぶりを発揮しておきながら
中盤になって「私が間違っていた」...ころっと変わってしまう。

フランクの娘ハナ...この子は最後のほうで何らかの強さを発揮するそぶりを醸しだしながら
結局、存在感を発揮できない置物キャラで終わってしまっている。
また軍隊の描写も「死霊のえじき」ほど漫画チックでない半面、どこか描き方が中途半端。

何よりも主役ジムの感情の流れがきちんと描かれていない。
過去"少年をひとり殺した"ことでトラウマをかかえていた彼が、追い詰められて気弱なコックをあっさり刺し殺す。
そして、実験用に捕獲されていた黒人兵士を解き放ってしまう。
冒頭、動物愛護家がチンパンジーを解き放つ場面とイメージが重なるが、
その時のジムの、理屈で説明がつかない"衝動"が上手く描かれているとはいいがたい。

この映画には2種類のラスト場面で公開されている。(実際は5種類あるらしい)
劇場公開途中で、別エンディングバージョンに変更されるという異例さ。
ひとつは「死霊のえじき」もどき、ひとつは悲劇のドラマモード。
もとのドラマが弱いため、どちらのエンディングを観ても映画の印象はあまり変わらない。

この映画の肝は、"走るゾンビ"の仮面をかぶった人間の凶暴性である。
「28日後...」について、結局怖いのはゾンビより人間という感想をよく見かけるが
そもそもこの映画に登場するのはゾンビではない。
ウイルスに感染し、凶暴性以外の全ての要素をそぎ落とされた人間である。
だから、この映画のゾンビは黒い影のように見えるし、他のゾンビ映画ほど特殊メイクに凝ってはいない。
ゾンビが走っているわけではなく、人間の凶暴性のみが突っ走っているのである。

「28日後...」は突進してくる"黒い影"が印象に残る映画。
凶暴性だけを残した人間に、凶暴性以外の何を持って立ち向かえるのだろうか?
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

<関連記事>
28週後...

2013.06.04 Tuesday | 00:11 | ゾンビ映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

スポンサーサイト


2019.08.18 Sunday | 00:11 | - | - | - |

コメント

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://moviepad.jugem.jp/trackback/549

トラックバック

▲top