映画のメモ帳+α

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デモンズ'95

デモンズ'95(1994 イタリア・フランス)

デモンズ95原題   DELLAMORTE DELLAMORE
英語題  CEMETERY MAN
監督   ミケーレ・ソアヴィ
原作   ティツィアーノ・スクラヴィ
脚色   ジャンニ・ロモーリ
撮影   マウロ・マルケッティ
音楽   マヌエル・デ・シーカ
出演   ルパート・エヴェレット フランソワ・ハジー・ラザロ
      アンナ・ファルチ

呪われた映画というのは何時の世にも存在する。高いクオリティを誇りながら、興行的にも成功せず、正当な評価を得るのにも多くの年月を費やした...。あのダリオ・アルジェントに師事し、テリー・ギリアム監督『バロン』(1988)で第2班監督をつとめたミケーレ・ソアヴィ監督の『デモンズ'95』はまさにそんな作品です。劇場公開時、本国イタリアでも、そしてアメリカでも興行的不発、批評もよくなかったが、年月とともにカルト人気を博してきた。あのマーティン・スコセッシが"90年代イタリア映画最高の一本"と評するなど、知る人ぞ知る傑作ホラー映画です。



物語
北イタリアの村バッファロラで墓守をしているフランチェスコ・デラモルテ(ルパート・エヴェレット)は埋葬の他、死後7日間たつと甦る死者(リターナー)を再び葬る仕事もしている。周囲の人はこれを彼の作り話だと一蹴している。助手のナギ(フランソワ・ハジー・ラザロ)とともに、夜な夜なゾンビと戦う彼の前に、美しい未亡人(アンナ・ファルチ)が現れるが、彼女はあっさりゾンビの餌食となってしまう。精神的に疲れ果てているフランチェスコには「死者ではなく、生あるものを殺せ」と死神からの声が毎夜届く。死んだ女とそっくりの女が、彼の前に次々と現れる。死神の助言にしたがい、彼は罪を犯したが、その犯罪すら他人に盗まれ、彼は疑ってもらえない。フランチェスコはナギとともに村を出る決意をする

冒頭、いきなりこの映像に魅せられます。
デモンズ 人形

フランチェスコとナギの人形が水晶玉のようなものに入っている。
わー、何てファンタジック!と思っていたら、ラストでもう一度出てきて...うまいなあ。

『デモンズ'95』は、墓地、納骨堂などホラー映画にふさわしい舞台設定でありながら
アート映画といってよいほど美しい映像が存分に楽しめます。

この映画はティツィアーノ・スクラヴィのコミック「DELLAMORTE DELLAMORE」を原作としていますが、映像的モチーフはアーノルト・ベックリンの「死の鳥」らしい。この「死の鳥」という絵は、アーノルト・ベックリン本人は何も説明しておらず、美術商のフリッツ・グルリットがつけたタイトル。テーマが明確であるため、幅広く人気があり多くの芸術作品に影響を与えています。

ベックリンは同様のテーマで何度も絵を描いており、
・船のこぎ手はギリシア神話において死者の魂を冥府へと案内するカローン
・白で覆われた船客は死後の世界に連れて行かれる亡くなったばかりの人間の亡霊
という解釈がなされています。

なるほど、船の漕ぎ手はフランチェスコで白で覆われた船客はリターナー(死後7日間たつと甦る死者)なのか...

アーノルト・ベックリン 「死の鳥」
 1883年に描かれた3枚目の「死の島」

フランチェスコと"彼女"が納骨堂でキスをする場面は
デモンズ 納骨堂

ルネ・マグリットの"The Lovers"の真似らしい。
ルネ・マグリット The Lovers

ミケーレ・ソアヴィ監督はなかなかアートに造詣の深い人のようですね。
ちなみにこの納骨堂は本物らしいですよ、映画撮影のため骨をいくつか拝借して...いや〜怖い!
墓地はセットですが、そのセットは実際、イタリアにある、今使われていない墓地の上に建てられたそーです。
こんなことしているから、映画が呪われるんじゃ〜!

墓守が主人公で、死者が死後7日間たつと甦るという発想(リターナーとはフランチェスコが勝手に命名した名前です)。
従来のホラー映画とは一線を画した物語設定が独創的でよい!
映像命のホラーは、アート映画とは本来、相性がいいはず。
(ましてゾンビ映画はSFともコメティともアクションとも相性がいい。なんて融通のきくジャンルなんだ!個人的にはアクション系ゾンビ映画は苦手ですが...)
ただ、ホラー映画ファンにはアート映画を馬鹿にしている人が少なからずいるのが残念。
エロ、グロ万歳のホラー映画ファンはこの映画をどう観ているのでしょうか?
『デモンズ'95』、エロはそれなりにありますが、

デモンズ95 墓地
墓の上で...ケシカラン!

グロ、そして流血は不足気味でホラー映画ファンには物足りない。
かつ、アート映画としては、物語がホラーすぎる...。
このあたりが興行的にヒットせず、作品評価が伸び悩んだ理由でしょう。
ぼくのエリ 200歳の少女』のようにホラー要素を物語の基軸にすえたうえで、残りは普通っぽくみせるとよかったんですけどね。

主役が『アナザー・カントリー』(1983)で有名になったルパート・エヴェレットというのもポイント。ルパートは父親は政治家、母親はスコットランド貴族の出という上流階級出身ながら15歳で学校を中退してロンドンへ。生計のため男娼をしていたこともあるという経歴の持ち主。彼のノーブルかつどこか虚ろな雰囲気はフランチェスコ役にぴったりです。アメリカのスタジオは"もしマット・ディロンを主役にするなら喜んで出資・配給する"と言ったらしいですが、彼じゃねえ....。ルパートは1989年にゲイをカミングアウトしてから一時期、仕事を干されてしまい、この『デモンズ'95』が"復帰作"。その後、『プレタポルテ』、『英国万歳!』、『ベスト・フレンズ・ウェディング』、『恋におちたシェイクスピア』など話題作の出演が続き、人気を博しました。このころ、ルパートはミケーレ・ソアヴィ監督に『デモンズ'95』のアメリカ向けリメイクを作ろうと持ちかけたという。この作品を気に入っているんですね。

それにしても、日本では何で『デモンズ'95』なんて邦題をつけたんでしょう。あの『デモンズ」とは全く関係ないのに!監督のミケーレ・ソアヴィが『デモンズ3』、『デモンズ4』を手掛けているためか?でも、『デモンズ」は実質的に2までで、3以降も邦題が変なだけ。ただ『デモンズ3』(La Chiesa)、製作予定はあったが、ランベルト・バーヴァが降板したため、監督はミケーレ・ソアヴィに交代、内応も一新したという経緯があるため,全くの無関係という訳でもない。要は『デモンズ3』をきっかけにダリオ・アルジェント製作、ミケーレ・ソアヴィ監督作品の邦題はみんな「デモンズ〜」になってしまったんですね。ソアヴィは関係ないのに。『デモンズ'95』は今日本でDVDを入手するのは相当困難でしょう。レンタル店でもほとんど置いていない。この嘆かわしい現状は、劇場公開時のアホな邦題が大きく影響していると思われます。※ 2015/5/13追記 DVDリマスター版の発売が決まりました!

ゾンビ映画とは"死者は敬わなければいけない"という既成概念をひっくり返したところで成り立っています。
「デモンズ'95」でも死神がフランチェスコにこのような言葉をいいます。

死人を殺すのはやめろ!生きているものを殺せ

ホラー映画マニアは素通りしそうな台詞ですが、一般人の感覚からすればとんでもない感覚です。
かつフランチェスコは「甦った死人と、死にゆく生者は同じ穴のムジナだ。でも死人を葬ることは公共サービスであり、生きているものを殺すと犯罪になる」とのたまわっています。死人を葬り、甦った死人と格闘する毎日。同じことの繰り返しでフランチェスコは死んだような生活、ある種のゾンビ状態です。彼は生と死の違いが感覚的に理解できなくなっているのです。ラスト、フランチェスコは"唯一の友達"ナギを連れて、村を飛び出します。生きているとは何なのか?その意味をつかむために。

『デモンズ'95』は生と死の(肉体的にではなく、感覚・精神的な)観念にゆさぶりをかける傑作です。
2011年、ミケーレ・ソアヴィ監督は続編製作の構想を明かしていますが、
その前に、まずこの作品がもう少し"この世"に流通することを望むばかりです。
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2013.06.03 Monday | 00:11 | ゾンビ映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2019.09.05 Thursday | 00:11 | - | - | - |

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