映画のメモ帳+α

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ゾンビーノ

ゾンビーノ (2006 カナダ)

ゾンビーノ FIDO原題   FIDO
監督   アンドリュー・カリー
原案   デニス・ヒートン
脚本   アンドリュー・カリー ロバート・チョミアック デニス・ヒートン
撮影   ジャン・キーサー
編集   ロジャー・マティアシ
音楽   ドン・マクドナルド
出演   キャリー=アン・モス ビリー・コノリー
      ディラン・ベイカー クサン・レイ ヘンリー・ツェーニー
      ティム・ブレイク・ネルソン ソニヤ・ベネット
      ロブ・ラベル アレクシア・ファスト ティファニー・リンドール=ナイト

カナダ映画『ゾンビーノ』はSFの短編小説風の、奇妙な持ち味のゾンビ映画です。
ゾンビ映画ではあれど、ホラー映画とは言い難い。
強いて言えば、ゾンビ+SF+ブラックコメディと言ったところでしょうか?
舞台は1950年代のアメリカ風。ゾンビとの戦争を終えた人間がゾンビを召使やペットのように使う世界を描く、
いわばパラレル・ワールドっぽい設定となっています。
原題の"FIDO"とは、英語圏において、犬をペットとして飼うときによくつけられる名前。日本で言うポチ?
ちなみに、Zombino(ゾンビーノ)というタイトルで劇場公開された国はフランス、シンガポール、日本だけです。



地球が放射能の雲に覆われ、その粒子の影響で世界中の死者がゾンビとして甦り、人々を襲い始めた。人間とゾンビとの戦争は長期化したが、ゾムコン社が人肉を食べたくなくなる特殊な首輪を開発し、地球に平和が戻った。その後、ゾムコン社は巨大な権利を有するようになり、ゾンビは家事もできるペットとして飼われるようになった、という舞台設定。"ペットとして飼われるようになった"という点がこの映画の肝です。

まず、冒頭のゾムコンのCM映像。
これがなかなかいい!実際にありそうな、いかがわしさです。

ゾンビセキュリティー会社ゾムコンが支配する社会では、葬式ができるのは一部の金持ちの特権となり
残りの人は皆ゾンビとされてしまいます。この映画のもうひとつの肝です。

ビル(ディラン・ベイカー)は自分と、ヘレン(キャリー=アン・モス)と、子供のティミー(ヘンリー・ツェーニー)...
3人分の葬式ローンであっぷあっぷの生活。

「子供にまで葬式ローンを組まなくても」と問い詰めるヘレンに
「あの子は学校で嫌われているんだぞ」と言い放つビル。
ヘレンが妊娠したことをビルにつげても(主演のキャリー=アン・モスが妊娠中だったため、付け加えられた設定だそうです)
「僕の給料じゃ葬式ローンの追加は無理だ」とそっけない。
ゾンビ戦争を経験し、ゾンビ恐怖症となったビルは、人間としてきちんと葬式をしてもらうことが人生の価値だと信じ込んでいる
「家は3人とも葬式をするぞ」息まくビルにヘレンは「私とティニーはゾンビになるわ」と言い放ちます。

そして、ゾンビを家で飼うことがステータスのように描かれます
隣に引っ越してきたゾンビ会社の社長に「家はゾンビを6匹飼っている。お宅は何匹?」と聞かれ
ヘレンは痛くプライドを傷つけられる。
ついにゾンビ嫌いの夫を説き伏せ、ゾンビを買うのです。
そのゾンビを犬のように、ファイド(FIDO)と名付けます。

ゾンビと共存する社会では、しだいに人間どうしの愛情・友情も希薄となっていき
ティミーのように、"ゾンビが唯一の友達"の人も増えていく。
ゾンビに恋してしまったために、ゾムコンを首になった男も出てきます。

そのゾンビの中にも格差が出てきます
優秀なゾンビは殺されない。
家で召使のように、ペットのように飼われるゾンビ。
工場で働かされるゾンビ。
そして、ゾーンと名付けられた姥捨て山のような場所にほおりこまれるゾンビ。

この映画ではペットという要素を導入したことで既存のゾンビ像が微妙に崩壊しています。
センサーを解かれて、ファイドがばりばりのゾンビに戻っても
ヘレンとティミーは食べないのです。
飼い主の姿をちゃんと識別しているんですね!

ちなみにヘレンは生前のファイドを知っているという設定のようです。
「あら、私を食べないの。まあ、ファイドったら」
勝手にやっとくれ!って感じですが、その部分を膨らませてドラマを盛り上げようとしていないため、ひと安堵。
自分の子供よりゾンビを愛してそうなヘレンのキャラクターは思いっきり分裂しているのですが、「マトリックス」でおなじみキャリー=アン・モスがカッコよく決めているのでチャラになっています。(爆)

ちょっと話はそれますが、
最近、猫が飼い主の声を聞き分けているという研究結果が発表されたというニュースを観ました。
猫を飼っているワタクシとしては、そんなの当然だと思っていましたが...
東京大学が研究結果として発表するほどのものだったんでしょうか?

ゾンビ映画ファンの中には「こんなのゾンビじゃない!」と憤るお方も多数いるでしょう。
この映画のDVDはファミリー映画風のパッケージなので、レンタル店を探しても
ホラー映画の棚には置いていないのではないでしょうか?
家の近くのレンタル店ではコメディの欄におかれていました。
日本公開時のチラシもこんな感じだし。

ゾンビーノ チラシ

筆者もロメロが定義した既存のゾンビ像に結構縛られており
・走るゾンビ
・武器をもつゾンビ
・個性をもつゾンビ
(「ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春」のように話すゾンビとか
処刑山 -デッド卐スノウ-」のように集団の中にゾンビのリーダーがいるとか...)
はどーも受け付けないのですが
この映画や「コリン LOVE OF THE DEAD」のようにわずかな知覚を残しているゾンビは、ぎりぎりセーフ...?

「ゾンビーノ」の中でゾンビは全然怖くない。
でも、最初に登場するおばあちゃんは「ブレインデッド」をほうふつさせるし、ヘレンの名前は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」から拝借している。過去のゾンビ映画へのオマージュもわずかに感じられます。ラスト近くに、グロい描写がちょっとありますが、あの程度ではゾンビ映画ファンにとっては物足りないかもしれませんね。

そもそも、ゾンビ映画とは死者を敬うという既存の価値観をひっくりかえしたところで成り立っているジャンル映画です。この映画では、その特性をさらに強め、死者は生前の姿より遥かに貶められて生者と共存するはめになる。ラスト場面は強烈な皮肉です。映画「ゾンビーノ」は死者をペットとして、もしくは愚物として扱う、末恐ろしい未来社会を扱った作品。ある意味においては、ホラー映画なのかもしれません。
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2013.06.07 Friday | 00:07 | ゾンビ映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2019.09.05 Thursday | 00:07 | - | - | - |

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