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レ・ミゼラブル(2012)

レ・ミゼラブル(2012 イギリス)

レ・ミゼラブル原題   LES MISERABLES
監督   トム・フーパー
原作   ヴィクトル・ユゴー(小説)
      アラン・ブーブリル クロード=ミシェル・シェーンベルク(ミュージカル)
脚本   ウィリアム・ニコルソン アラン・ブーブリル 
      クロード=ミシェル・シェーンベルク ハーバート・クレッツマー
撮影   ダニー・コーエン
作詞   ハーバート・クレッツマー
作曲   クロード=ミシェル・シェーンベルク
音楽   アラン・ブーブリル クロード=ミシェル・シェーンベルク アン・ダッドリー
音楽監修 ベッキー・ベンサム
出演   ヒュー・ジャックマン ラッセル・クロウ アン・ハサウェイ アマンダ・セイフライド エディ・レッドメイン
      ヘレナ・ボナム=カーター サシャ・バロン・コーエン サマンサ・バークス アーロン・トヴェイト イザベル・アレン

ヒュー・ジャックマンが司会をつとめた第81回のアカデミー賞授賞式でアン・ハサウェイがステージ上にあげられ、ヒューはもちろんだが、アン・ハサウェイがかなり歌えることにびっくりし、この2人でミュージカルを作ればいいのに、とひそかに思っていた。

4:00〜5:40あたりにアン・ハサウェイが登場します!


同じことを感じた人は多かったようで、早速実現!でも、その作品は往年のミュージカル映画をほうふつさせる、明るいノーテンキなものと思いきや、あの『レ・ミゼラブル』...。一瞬、わが目を疑ってしまいました。あのヴィクトル・ユゴーの古典小説!今まで何度となく映画化され、ブロードウェイのミュージカルは16年にもわたるロングラン(その後もリバイバルされている)、日本でも毎年のように上演されていうあの、あの、あの『レ・ミゼラブル』をヒュー・ジャックマンとアン・ハサウェイで???そもそもmiserableってどーゆー意味か知ってます?「悲惨」ですよ!悲惨!悲惨(な人々)というタイトルの物語を陰りのカケラもないヒュー・ジャックマンとアン・ハサウェイで!?冗談でしょ、と思った...が、実をいうとワタクシめ『レ・ミゼラブル』を全く知らないのであります。長ったらしい原作本はもちろん、山のような映画化作品も、そして何度となく上演されていうミュージカル舞台も全く見たことなし。『レ・ミゼラブル』.がどんな話かすらよく知らなかったわけです。「悲惨」なんてタイトルの話をわざわざ観に行きたいとは思わないわけで...。かといって興味がなかったわけではなく、舞台のミュージカルは一度観たいと思っていたけどお値段高いし。というわけでミュージカル版『レ・ミゼラブル』ひそかに映画化を待ち望んでおりました。



ミュージカル版『レ・ミゼラブル』は1980年パリで始まりました。世界的に人気を博すきっかけとなったのは1985年ロンドン版が上演されてから。パリ公演のレコーディング版を聞いた演劇プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュがロンドンでの公演を企画、フランス人向けにかかれていたオリジナル版を改変して1985年10月28日に初上演。たちまち大人気となりました。ブロードウェイでも1987年3月12日より開幕。2003年3月18日まで16年間ものロングランとなり、その後も2006年11月から2008年1月まで14カ月ものリバイバル公演、その後、世界43カ国、21国語で上演され続けています。

映画化の話も早い段階ですすみ、1988年にアラン・パーカー監督で企画されましたが、キャメロン・マッキントッシュが「5年くらいは舞台版をじっくり育てたい」と主張、アラン・パーカーは「そんなに待てない」として降板(もったいない、アラン・パーカーって音楽映画を手掛けさせたら右に出るものはいないくらいうまいのに)1991年、ブルース・ベレスフォード監督に決まりました。だが、この企画は挫折。2005年に復活し、『Les Miserables: 25th Anniversary Concert』のDVD化の際、映画化が発表されました。



さて、本題です。
この映画の特徴は何と言っても俳優たちの"生歌!がそのまま収録されていること!
通常、ミュージカル映画では歌を前もって録音し、その後"口パク"で演技をするというのが定番の撮影方法ですが、映画版「レ・ミゼラブル」では俳優たちが演技しながら謳っているのをそのまま収めています。これは本来の姿ですね。ミュージカルでは歌うことが演技ですから。昔、「エビータ」のマドンナに対し、「歌は上手いが、登場人物の内面が表現されていない」という批評を見たことがありますが、ミュージカルでは歌が演技そのもの。歌であれほど表現しているのにそれ以上何を望むのか?と疑問に思ったことがあります。

ミュージカル映画において生歌を収録するのははじめての試みではなく、最近では『バーレスク』(2010)でシェールの"YOU HAVEN'T SEEN THE LAST OF ME"は生歌ですし、「マンマ・ミーア!」でもレコーディングと生歌を2タイプ収録、よい方を採用する方法をとっています。その結果、生歌の採用率のほうが高かったそうです。やっぱりミュージカルは歌うこと=演技なので口パクだと今ひとつ伝わらないのは当然。ミュージカル映画でも生歌で!は今後定着して欲しい方式です。

生歌同様、トム・フーパー監督がこだわったのが台詞は全部歌にすること。当初脚本では台詞と歌は半々くらいの割合だったのですが、全部歌に書き換えさせたのだそーです。ただ...この試みは100%成功しているとはいいがたく、「こんな短い台詞までわざわざ歌わんでよかろーに」と思った箇所がいくつもありましたね。

主演のヒュー・ジャックマンは舞台経験も豊富なトニー賞俳優のため、出演依頼があったのかと思いきや、3時間ものオ−デションを受けて役を勝ち取ったそうです。ミュージカル映画に出たかったヒューはかなり熱心に売り込んだとか。これは意外でした。歌はさすが、とくに「Bring Him Home」は圧巻でした。役のイメージにはぴったりですが、ドラマ的には「もっと陰影のある俳優のほうが...」と思わなくもありませんでした。でも、これだけ歌える人は他にいないでしょう。ヒュー・ジャックマン、運がよければオスカーが転がり込んでくるかもしれません。

運に頼らなくてもオスカーが転がり込みそうなのは、ファンティーヌ役のアン・ハサウェイ。2012年度アカデミー助演女優賞の大本命です。予告編で彼女が「夢やぶれて (I Dreamed a Dream)]を歌うのを耳にしたとき、近年、スーザン・ボイルのイメージがこびりついていたこともあり、"こんな...中島みゆきの「化粧」みたいな歌い方していいんだろうか?"と不安をおぼえましたが、映画を見るとバッチリはまっていました。部分的にだけみて「オーヴァーアクト!」と口をとがらせるのは映画マニアの悪癖です。改めましょう(爆)。ちなみにアン・ハサウェイは『オペラ座の怪人』(2004)でもクリスティーヌ役の候補でしたが彼女には『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』が控えていたため実現しませんでした。

アンが歌う「夢やぶれて」はもちろん、サマンサ・バークスが歌う「On My Own」もよかった。(この歌は本田美奈子.さんの歌で知っていました)。

「夢やぶれて」「On My Own」2曲続けてどーぞ♪


登場人物それぞれの思いが交差する「One Day More」、まさにこれぞミュージカルの醍醐味ですね。

コゼット役のアマンダ・セイフライドも歌えることは「マンマ・ミーア!」で証明済みだったため歌はばっちりでした。ただ、時々彼女がケイト・ウィンスレットに見えて...(^^; ケイトに見えちゃうと「こんな女、ほっといてもたくましく生きていくよ!守らんでよろしい」って気分になるんです、はい。

キャスト陣、歌はばっちりだったのですが、ひとりだけ残念だったのがラッセル・クロウ。ヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイと違ってラッセル・クロウのジャベールは適役じゃねえか、ラッセル・クロウにストーカーなんかされたら怖くて夜も眠れねえぞ、と思ったものでしたが...。怖くないんですね、これが。お騒がせスター、ラッセル・クロウの威圧感だけで何とか持っている感じ。歌は思ったより上手かったけど、声質の良さに助けられている感ありあり。歌うのが精いっぱいで感情表現までは手が回っていない。決して下手ではないのだが、ラッセルが歌う場面になると妙にテンションが下がる。ラッセルなりの役の解釈なんだろうけど、ただの気の抜けたおっさんでした。前述のとおり、自分は『レ・ミゼラブル』自体がはじめてなので、歴代ジャベール役の俳優がどんな演技をしてきたのか知らないけど、うーんちょっと違うなという感じ。こんなにも精彩を欠くラッセルは見たくなかった。『レ・ミゼラブル』物語のテーマは赦し。法という大義名分のもと、赦すという感情を知らなかったジャベールはヴァルジャンとフォンティーヌの人生を無駄に狂わせる。その男の心の軌跡を描くのは作品の主題のひとつで、この物語において最も難しい役。だからこそ、歌唱力以上に演技力のある俳優が起用されたはずだが。ラッセルがその期待に応えていたとはいいがたい。

監督のトム・フーパーの前作は、いわずと知れたアカデミー作品賞『英国王のスピーチ』。『レ・ミゼラブル』も前作同様、映画的というよりは演劇的な作風。トム・フーパーはTV出身なんですけどね。(当作の場合、元ネタが舞台なんだから当然かもしれませんが)。かつ前作同様、実に手堅い作りです。テンポも早く、158分の長丁場を退屈させない力量はさすが。個人的には「英国〜」よりこっちのほうがずっと好きだな。何はともあれ『レ・ミゼラブル』ミュージカル映画ファンにはうれしい映画化。期待を裏切らない秀作です。
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2018.11.21 Wednesday | 01:26 | - | - | - |

コメント

レ・ミゼラブルを試写会で観てから、moviepad様が記事にしてくださるんじゃないかと、楽しみに待っていました。

>ケイトに見えちゃうと「こんな女、ほっといてもたくましく生きていくよ!守らんでよろしい」って気分になるんです
>ラッセル・クロウ〜声質の良さに助けられている感ありあり
>個人的には「英国〜」よりこっちのほうがずっと好きだな

「On My Own」もとてもよかったです。
同感!と思うことばかりです。

小説を読んだ若い時には、「悲惨」しか感じることができませんでした。コゼットについては、ちょっとかわいいだけの軽い女の子にしか感じられませんでした(笑)。
年を取って、ジャン・ヴァルジャン「神」への思いが少しは分かるようになったのかもしれません。
ヒュー・ジャックマンは“『X-MEN』シリーズの”ではなく“レ・ミゼラブルの”といわれるようになるのでしょうね。

これからも、moviepad様の記事を楽しみにしています。
2012/12/23 7:41 PM by パール
パールさん、お久しぶりです!
というか、このサイトの更新が久しぶりなんですが...(^^:

ミュージカルは好きなので、新作は原則として記事を書きます。(「ロック・オブ・エイジズ」は見損ねてしまいました...)

丁寧なつくりで概ね、満足!

コゼットがケイト・ウィンスレットに見えるとさすがに興ざめ。アマンダと顔がよく似てるんですよね。少し軽いイメージの役だということは知っていましたが、子役がかわいかったので...。

ヒュー・ジャックマンのヴァルジャンは、もう少し深みのある俳優に演じてほしかった気もしますが、ヒューのが持つ誠実な雰囲気と歌唱力で補った感じですね。彼より役に適した俳優は何人もいると思いますが、彼より上手く歌える人はいそうにないので。

ラッセル・クロウはどうしちゃったのかな?こんなにも演技がダメダメな彼を見たのは初めて。ちょっとショックでした。最初の場面からラストまで同じ表情、雰囲気のまま。これでOKなら、この役誰でもできる。

話は変わりますが、何と今年は年内に来年のアカデミー賞ノミネート予想記事をUPします。ノミネート発表が来年の1月10日と早まったのが理由。期待しないでお待ち下さい。





2012/12/23 8:49 PM by moviepad
>何と今年は年内に来年のアカデミー賞ノミネート予想記事をUPします

なんとうれしいお言葉!
ここ数年、私の中で、moviepad様の記事とアカデミー賞はセットになっております。楽しみにせずにはいられません。


ところで、書き方が悪くてすみません。
小説のコゼットは軽いイメージだったのですが、この映画の中では、子役がとてもかわいらしく、アマンダも軽くなり過ぎないように踏ん張っていたと思います。
moviepad様はケイトがあまりお好きではないのですね。私はとても苦手です。上手な方なのでしょうが…
2012/12/23 10:30 PM by パール
ははは、ここ2年くらいアカデミー賞がらみの記事しか書いてませんからね(^^:
「レ・ミゼラブル」も予想リストに入ってますよ!

はい、ケイト・ウィンスレット最近、苦手なんです。ドヤ顔気味だし。
それに同じような役ばっかりやるでしょう?
いかにも賞狙いの、ちょっと病んだ(笑)
2012/12/23 11:49 PM by moviepad
アン・ハサウェイがここまで人の心を打つ演技ができる女優になるなんて「プリティ・プリンセス」を見ていたときは想像できませんでした。
高校時代に合唱部だった時から歌のレッスンを本格的に続けているだけあって、歌声も澄んでいてすごいなと思いました。

ヒュー・ジャックマンもミュージカル経験が豊富だとは知っていましたが、ここまでできるとは思いませんでした。鹿賀丈史さんやリーアム・ニーソンが演じたジャン・バルジャンに勝るとも劣らない好演だったと思います。

オスカーレースではホアキン・フェニックスやダニエル・デイ=ルイスに出遅れていますが後半戦で盛り返してもらいたいです。
アン・ハサウェイはこのままいくと受賞確実なようですがサリー・フィールドやマギー・スミスといったベテランの追撃をかわせるのかと思っています。

(個人的にはマギースミスの受賞を期待しているのですが。)


※前回のコメントが変な文章になってすいませんでした
2012/12/24 11:21 AM by 1192
1192さん、お久しぶりです。
アン・ハサウェイは「プリティ・プリンセス」続編撮影のために
「オペラ座の怪人」を断らざるをえなかった過去があるので
今回、やっと映画で歌えた!って感じでしょうね。
彼女は顔立ちが派手なので、激しい演技がよく似会います。

数年前、ジュディ・ガーランドの伝記映画にアン・ハサウェイが出演するという話を伝え聞き
「オスカー、狙ってきたな」と思ったものでしたが
ぽしゃったのかな?(>ライザ・ミネリが圧力をかけてたりして(爆)
まあ、「レ・ミゼラブル」でとれるでしょう。

ヒュー・ジャックマンは棚ボタで受賞できるかも、です(謎)
アカデミー賞ノミネート予想記事を今、準備中。
1192さんと私の予想はかなり違いそうですが(^^;
2012/12/24 1:26 PM by moviepad
こんにちは^^
お久し振りです!
本当にお久し振りで・・・時々記事をupされていないかな〜とお邪魔していました。
今回は記事になってらして、その事が嬉しかった(笑)

予告でアン・ハサウェイのシーンを観て聴いただけで泣けました。とても楽しみにしていた作品です。
良かったです〜〜
やはり大穴はサマンサ・バークスが歌う「On My Own」ですね。
彼女がお気に入りです。映像も素晴らしかったです。
2012/12/24 7:41 PM by zukka
zukkaさん、お久しぶりです♪
すいませんね、さぼってばっかりで。

予告編でアン・ハサウェイの歌声を聞いたとき、「この映画大丈夫かな。ホラー?カルト映画?」と秘かに思っていたことはここだけの話にしておいてください。(笑)。映画をみるとよかったですね。やっぱり映画音楽はちゃんと作品の中で聞かなければだめです。

サントラも買う予定ですが、音だけで聞くのはちょっと怖いかも...。
2012/12/25 1:49 AM by moviepad

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