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アーティスト

アーティスト(2011 フランス)

アーティスト原題   THE ARTIST
監督   ミシェル・アザナヴィシウス
脚本   ミシェル・アザナヴィシウス
撮影   ギョーム・シフマン
音楽   ルドヴィック・ブールス
出演   ジャン・デュジャルダン ベレニス・ベジョ
      ジョン・グッドマン ジェームズ・クロムウェル


第84回(2011年)アカデミー賞作品、監督、主演男優(ジャン・デュジャルダン)、作曲、衣装デザイン賞受賞。助演女優(ベレニス・ベジョ)、脚本、編集、撮影、美術賞ノミネート

映画「アーティスト」は今のご時世にあえてサイレント映画を作るという暴挙が功を奏し、アカデミー賞をはじめ世界の映画賞を制覇した。監督のミシェル・アザナビシウスはPR来日でのインタビューで「特殊効果や3D全盛の時代に、映画様式の原点に戻ったシンプルさが感動をよかったのでは」と語っているが、個人的にはこの映画の魅力を伝えようとしても上手く言葉がみつからない。何しろ映像ですべてを語ってるのだから。ただ観ればよい、そんな映画です。


見終えた後、ふと思った。"ああ、淀川長治氏が生きていたらこの映画をどう解説しただろうか?”この映画の節々に(トーキー映画も含む)古き善き映画のニュアンスが散らばっている。サイレント時代から映画を見続けていた淀川氏なら「アーティスト」のネタ元など全部看破してしまうでしょう。自分の乏しい映画体験では残念ながらそれはかなり限られてくる。それでも思いつくままに書き連ねてみます。

・フィルムを燃やし家が火事になる場面はどことなく「市民ケーン」をほうふつ。まあ、ホラー映画っぽくもありますが。

・ジョージ(ジャン・デュジャルダン)がバーで酔っぱらう場面は「カサブランカ」?また酔っぱらっているジャンのもとに小人が出てくる場面はなぜかビリー・ワイルダーの「失われた週末」を思い出した。話はそれるが、アル中になるとピンクの象の幻覚をみるというのは俗説で、実際は「失われた週末」で描かれていたネズミのように小動物の幻覚を見るという話を聞いたことがある。この"小人"がその小動物じゃないか、と。まあ、この場面をみてそんなこと考えていたのは自分だけでしょーね(^^;

・大スターになったペピー(ベレニス・ベジョ)の自宅...何かこの部屋の雰囲気、どっかで見たことあるな。そうここで見たんです。

Mary Pickford receiving an Honorary OscarR

まさかと思ってちょっと調べてみたらそのまさか!このペピーの家はメアリー・ピックフォードの家で撮影していたのです!ジョージが寝ていたベッドは実際にメアリーが寝ていたものとか!クラッシック映画ファンはじゅるじゅるもの(笑)。このペピーの役は、サイレント映画の大スターで「アメリカの恋人」と呼ばれたメアリー・ピックフォードを参考にしていると思われます。となるとジョージ役はダグラス・フェアバンクス ?うーん、ダグラスというよりはむしろジョン・ギルバートだな。

クラッシック映画ファンなら誰でも知っていると思いますが、ジョン・ギルバードはサイレント映画の大スター。ただ、男性としては声が甲高く、トーキーになって失速。一方、グレタ・ガルボはサイレント時代、ギルバートの相手役に抜擢されたことでブレイク、2人は恋愛関係にあったと言われている。彼女はハスキーな声質を生かして、トーキー時代を生き残った。グレタ・ガルボはギルバードを『クリスチナ女王』の共演者に指名し、再起を手助けしようとしましたがうまくいきませんでした。そういえば、ペピーがあの「グランド・ホテル」の名セリフ「私をほっといて(I want to be alone.)」を言う場面がありますね。もちろん"字幕"のみですが...。

ジョージ&ペピーのモデルは、メアリー・ピックフォード&ダグラス・フェアバンクス?それともジョン・ギルバート&グレタ・ガルボ?映画のストーリー的にはジョン・ギルバート&グレタ・カルボのほうがしっくりきます。映画「アーティスト」はどーでもいい、されども楽しい妄想をかきたててくれる作品です。

サイレントからトーキーへの移り変わりを描いた作品として誰もが思い浮かべるのは「雨に唄えば」。この映画のラスト、タップダンス場面のため、ジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョは5カ月間、ほぼ毎日リハーサルをしたそうです。そこで使用した場所は「雨に唄えば」でジーン・ケリーとデビー・レイノルズがリハーサルをしたのと同じスタジオだったとか!いろいろこだわってますね。



この映画の予告編を最初みたとき、ネタバレなんてもんじゃない、ストーリーが全部わかってしまう...。
まあ、物語設定を小耳にはさんだだけでも予想できる実にシンプルなつくりです。

最初、タイトルバックを観たとき、「これって単なる昔のハリウッドのコピーじゃないか」と思った。その後のストーリーもどこかで観たような懐かしさいっぱいであったが、しばらくすると飽きてきて(というか慣れてきて)少し退屈、眠気も漂いはじめた。だが、ジョージがトーキー映画を拒否し、落ちぶれはじめてからぐ〜っと面白くなる。眠気も吹っ飛びました(笑)。そしてラスト、ペピーが「いいアイデアがあるの」と言った後で続くタップダンス...。トーキー初期をへて、ミュージカル映画の全盛期がはじまる。そんなことを思いながら観ていると、何か熱いものがこみあげてきました。

見終わった後、サイレント映画を見たという印象が不思議とない。こびりついているのは映画のイメージ。そう、数々の映像です。過去、見た映画を思い出すとき、台詞よりも映像を覚えている人のほうが多いでしょう。豊かな映像体験を重ねる。それが映画を見ることだと思う。決め台詞なんかを売りにしている映画にロクなものはありません(爆)。台詞のほうを覚えていることが多い人には、この映画はお勧めできないかもしれない。まあ、サイレント映画だから当然ですが(^^;

それにしてもジョージを演じるジャン・デュジャルダンって本当、古い顔だな。ジーン・ケリーとジャック・レモンを足して割ったような。もちろん、この映画にはぴったり。スターから落ちぶれ、だんだん自尊心を失っていく過程を台詞なしで見事に表現している。犬のアギー君をつれて、ペピーの主演映画を観に行く。映画を楽しみながらも...この微妙な泣き笑い、うまいなあ。「トーキーを芸術ではないとみなし、拒否し続けた」というジョージのキャラ設定はいうまでもなくチャーリー・チャップリンですね。

犬のアギー君も名演です。警官を呼びに行く場面(ありえないけど突っ込むのは野暮)、そしてラスト、ジョージに向ってほえる場面、泣かせますね。ジョージがさびれてからも常に彼のそばにいる。

あと、ジェームズ・クロムウェルが演じたクリフトンという運転手。クロムウェルはどちらかというと悪人顔なので、こういう役をすると媚びた感じがしなくて良い。昔お世話になった人が経済的に破綻。給料なしでもその人のもとで働き続けている...そういう人に実際会ったことがあります。

「アーティスト」は第84回アカデミー作品賞受賞作ですが、物語的には前年の作品賞「英国王のスピーチ」と似ている。シンプルで予定調和なストーリー、悪人が全く出てこない。でも鑑賞後の印象は全く違う。具体的にいえば「アーティスト」はお気に入り、「英国王〜」は(個人的には)いまひとつ。その差はどこだろう?「英国王〜」は舞台チックなつくりで映像的に楽しめる要素は少ない。一方、「アーティスト」は映像ですべてを語っている。同じような話でも映像で語ってくれたほうがはるかに豊かな気持ちになれる。

よく「この映画は映画館(大スクリーン)で観るべきだ」という言い回しを耳にする。"この映画"とは「タイタニック」とか派手な特撮効果を用いた映画であることが多い。この映像の迫力をぜひ大きなスクリーンで、という感じだ。さて、そういうものが"大スクリーンで観る価値がある”ものなのだろうか?自分の意見は少し違う。大スクリーンは映像の迫力よりむしろささいな感情の機微を伝えるのに適している。映画の一番の利点は「台詞に頼る必要がないこと」。TVドラマは沈黙の場面など作れば放送事故になるといわんばかりにひたすら台詞の積み重ねで物語を語る。舞台も大げさな言い回し、おおげさな動きをする。それは一番後ろの席の観客にもちゃんと伝えるためだ。映画では感情は映像だけで表現できる。俳優のクローズアップひとつでも、ほんの小さな間(ま)でも大スクリーンはそのニュアンスをきちんと醸しだしてくれる。そもそも映画はサイレントからスタートした。台詞がなくても成り立つのが映画。「アーティスト」はそんな映画ならではの魅力にあふれた作品。ただ観ればそれでいいんです!
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2012.04.08 Sunday | 01:46 | 映画 | comments(0) | trackbacks(8) |

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2019.09.05 Thursday | 01:46 | - | - | - |

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