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マリリン 7日間の恋

マリリン 7日間の恋(2011 イギリス・アメリカ)

マリリン 7日間の恋原題   MY WEEK WITH MARILYN
監督   サイモン・カーティス
原作   コリン・クラーク
脚色   エイドリアン・ホッジス
撮影   ベン・スミサード
音楽   コンラッド・ポープ
出演   ミシェル・ウィリアムズ ケネス・ブラナー
      エディ・レッドメイン ドミニク・クーパー
      ジュリア・オーモンド ゾーイ・ワナメイカー
      ダグレイ・スコット エマ・ワトソン
      ジュディ・デンチ

第84回(2011年)アカデミー賞主演女優(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優(ケネス・ブラナー)ノミネート

マリリン・モンローといえば、アメリカ最高のセックス・シンボル"。36歳の若さで亡くなり、50年たった今も彼女を超える存在は登場していない。ビジュアル以外の面では、不幸な生い立ち、3度の離婚、ケネディ兄弟など数多いスキャンダル、今なお疑問の多い死因など"悲劇の人"として語られることが多い。セックス・シンボルと悲劇の人の2面以外で彼女が語られることは少ない。だが、日本のマリリンファンに聞くと、好きな理由は「セクシー」より「可愛いから」のほうが圧倒的に多いという。映画『マリリン 7日間の恋』はそんなマリリンの可愛らしさに焦点を当てた作品だ。



コリン・クラーク原作は、コリン・クラークの「王子と踊り子と私」(1995年発売)、「マリリン 7日間の恋」(2000年発売)の2冊。コリン・クラークは23歳のとき、ローレンス・オリヴィエのコネで「王子と踊り子」の第3助監督(要は使いっぱしり)を務めた。そのときの製作舞台裏を日記形式で書きとめたのが「王子と踊り子と私」だった。期間は1956年6月3日から11月20日までだが、その本にはなぜか空白期間があった。その空白を描いたのが、「マリリン 7日間の恋」である。天下のマリリンとのロマンスは信じてもらえないと思ったのか、当初公開するのをためらったようだ。コリン・クラークという人については今なお詳しいことはわかっていない。1939年10月9日生まれ。「王子と踊り子」以降はローレンス・オリヴィエの舞台仕事を何回か手伝った後、TVや映画でのドキュメンタリー制作の仕事をしていたようだ。1987年に引退、その後に上記2冊の執筆...といったところか?彼は2002年12月17日に亡くなっている。


だが、この映画はお伽噺としてとらえたほうがいい。映画(もしくは原作本)をもとに事実関係をごちゃごちゃ言うのはナンセンスだろう。主要な事実関係は本当のことだろうが、マリリンとコリンの会話内容などはかなり創作が含まれている可能性が高い。何せマリリンの死後38年後に出版されているのだ。いくら"話を盛った"ところでマリリンはとっくの昔に亡くなっているため、誰もその間違いを指摘できる人がいない。美しい思い出は年月とともに美化されていくものだ。




マリリン・モンローを演じるとなれば、誰がやっても不満が残るだろう。何しろマリリンは"最高のセックス・シンボル"なのだから。それでも、この映画の製作が発表されると誰がマリリン役を演じるのか?当然、皆が知りたがる。ある業界紙は"マリリン役の第一候補はスカーレット・ヨハンソン。ケイト・ハドソン(胸やばくない?)、エイミー・アダムス、ミシェル・ウィリアムズも候補にあがっている"と報道した。やがて、ミシェル・ウィリアムズのキャスティングが発表されたが、この時サイモン・カーティス監督は「キャスティングにあたって、面接したのはミシェルだけ」ときっぱり言い放った。ミシェル・ウィリアムズは顔はそれほど似ていないが、仕草などまさに"マリリンってこんな人だったんだろうな”と観客に信じ込ませることができる好演。マリリン役で批評家、観客ともに納得させる演技をするのは半端じゃなく難しいと思う。ちなみに1996年に「ノーマ・ジーンとマリリン」というTV映画がつくられている。(日本では映画館で公開された)。オスカー女優ミラ・ソルヴィーノがマリリンを演じたが、ほとんど話題にならなかった。ローレンス・オリヴィエ役を同じシェークスピア役者のケネス・ブラナーが演じるというのは、誰でも考えつきそうな、いわゆるタイプキャストだが、ヴィヴィアン・リー役をジュリア・オーモンドっていうのはどーよ?最初、キャサリン・ゼタ=ジョーンズにオファーしたらしいが、ちょい役だから夫マイケル・ダグラスの看病を理由に断ったため、オーディションで決めたらしいが。


 マリリンはなぜ遅刻ばかりする?

ローレンス・オリヴィエとマリリン・モンロー王子と踊り子』は1953年イギリスの劇作家テレンス・ラティガンによる戯曲で、ローレンス・オリヴィエ、ヴィヴィアン・リー主演で大当たりした舞台作品。マリリンがミルトン・グリーン(この映画ではドミニク・クーパーが演じている)と組んで設立した「マリリン・モンロー・プロダクション」の第1回作品。オリヴィエと共演すれば自分も俳優として認められるというマリリンの思惑と映画スターになりたかったローレンス・オリヴィエの意図が一致し、"水と油"の共演が実現した。ただ、実際は映画で見たとおり、ふたりの性格や演技法の違いなどもあり現場は険悪な雰囲気につつまれる。マリリンが撮影現場をすっぽかしたり遅刻したりするのはいつものこと。ドル箱スター、マリリン・モンローだからできたこと。こんなことを続けていては、普通の女優なら仕事がなくなる。


『七年目の浮気』『お熱いのがお好き』とモンローの代表作2本の監督、ビリー・ワイルダーはこんなことを言っていた。「300人のエキストラを用意して、午前9時からミス・モンローのお出ましを待っている。彼女が現れたのは夕方の5時。"ごめんなさい、道に迷っちゃったの"。7年間通っている撮影所にやってくるのに道に迷っただって?」

それにしてもマリリンはなぜ遅刻ばかりするのだろうか?

死の2年半前からほぼ毎日マリリンを面接していた精神科医ラルフ・グリーンソンに関する2008年フランス製作のTVドキュメンタリーがある。『マリリン・モンロー 最後の告白』という作品だ。日本ではNHKで放送され、DVD発売もなされている。ここで精神科医に語ったとされるマリリンの言葉からいくつかピックアップしてみる。




面接に30分遅刻したマリリンをラルフは責めた。するとマリリンはこう答えた。

「私は相手が誰でも遅刻するの。あなただけじゃない」
遅れるのはね、私を待っている人がいることを確かめるため。他の誰でもない、この私を。
「遅刻するのは怠けているからではない。自分のイメージを損なわないように着る物や言うことを念入りに選んでいる」
大スターらしいコメントだが、これは半分正解、それだけじゃないと思う。残り半分はおそらく"恐怖"。何についての恐怖かはおそらくマリリン自身もわかっていない。

「私は何を恐れているの。演じること?ちゃんとできるのはわかっている。恐れる必要なんてないのに恐れずにはいられない」
「カメラの前に立つのが怖くて隠れたくなる。言葉を発するのがつらいの。体を見せるだけならずっと楽」

マリリンはセックス・シンボルとして性欲の対象としか見られないことへの嫌悪感、他人の侮蔑的な視線、無教養と思われることへの恐れ、他人が常に自分を見下しているという、強迫観念のようなものを常に抱えていた。スターならではの「いずれ見向きのされなくなる」という不安も内包していた。

精神科医ラルフはマリリンに「遅れるのは(相手に対して)あなたが嫌い、あなたとは会いたくないという意味になる」と諭した。その結果、マリリンは(ラルフとの面談には)一切遅刻しなくなったという。彼女が納得する形で不安を取り除いてやれば、ちゃんと時間通りに現れるのだ。

オリヴィエは微笑むときですら嫌悪感をにじませた。いやいや私に近づき、腐った魚の臭いをかぐような顔をした
マリリンはラルフに「王子と踊り子」の撮影時のことをこう話していたという。マリリンはオリヴィエの悪意におびえていた。映画ではこの辺りの描写が薄い。意図的にやったと思われるがここはもう少しきっちり描いたうえで、"コリンとのデート場面"の天真爛漫ぶりをもたっぷり見せてくれたほうが、より人間マリリン・モンローの多面性を表現できたのでは?と思う。


マリリンが映画を支配

ラスト、ローレンス・オリヴィエがひとり映画のラッシュを観ながらモンローを褒める場面がある。ここはおそらく創作だと思われる。だが、かなり後にあってオリヴィエがモンローの演技を認める発言をしたのは事実のようだ。

『王子と踊り子』は映画としては凡作。あまりにも舞台的でしかも古めかしい。
マリリン・モンローが放つ強烈な存在感で何とかもっている映画だ。
実際、この映画の彼女は、壮絶な舞台裏を全く感じさせないほど輝いている。




マリリンの出演作は数本観ているが、正直いってどの映画も(名作「お熱いのがお好き」ですら)マリリンが出ていた、という印象しかない。マリリンが出演すれば撮影現場も振り回されるが、観客も同様。他のものは一切目に入らず映画は彼女に支配される。これこそ(良くも悪くも)本物のスター!『王子と踊り子』も例外ではなく、マリリンはローレンス・オリヴィエを完全にかすませてしまっている。




彼女はカメラに愛されている。ハワード・ホークスもビリー・ワイルダーも同様のことを言っている。

ワイルダーは「彼女のように説明不能のやり方ですばらしい演技を見せる女優は前代未聞。一緒に仕事をするには厄介この上ないが、何とかフィルムに収めてしまえば、スクリーン上の彼女は目を見張るばかりだ。台詞に対するカンも超一流だった。笑いのツボもちゃんとわかっている。」

またハワード・ホークスは次のように語っている。
彼女には現実的なところが何もなかった

コリン・クラークは著書のなかで「ヴィヴィアン・リーも素晴らしいが、彼女はしょせん人間。マリリンは別格でまさに女神なのだ」と書いている。『マリリン 7日間の恋』はミシェル・ウィリアムズという"人間"が演じてしまったために普通のドラマのように見える。コリンと恋人とのどうでもいい話や(エマ・ワトソンの役は不要)、突然シャンソンのスタンダード"枯葉"(ナットキング・コール版、イヴ・モンタンバージョンにしなかったのは製作サイドの優しさか)が流れるダサイ演出もある。マリリンを普通の人として描こうとするばかり、いろいろ配慮しすぎて個々の描写がやや弱い。デート場面なら"ああ、マリリンとこんなデートができたら死んでもいい!”と男をもだえ狂わせるくらいチャーミングに描いてほしかったし、マリリンの"出勤拒否"ももう少し踏み込むべきだった。コリンとマリリンとの会話も原作に比べるとずいぶんあっさりしている。原作の"創作っぽい会話"を観客が本当だと信じ込むことを恐れたのかもしれないが、ここを強調しないと映画化した意味がない。たとえ事実に基づいていたとしても、物語の本質は現実感のない女=女神が普通の男をちょっとたぶらかしてみた"ファンタジー"なのだ。フィクションと割り切ってもう少し大胆に演出してほしかった。『マリリン 7日間の恋』は映画としては佳作だが、"世紀の大スター"マリリン・モンロー映画としてはこじんまりとまとめすぎた感。マリリンの熱狂的ファンなら楽しめるだろうが、それ以外の人にはやや物足りないかもしれない。派手な人はちゃんと派手に描かないと!
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2012.03.25 Sunday | 02:17 | 映画 | comments(0) | trackbacks(6) |

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マリリン 7日間の恋/My Week with Marilyn
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『マリリン 7日間の恋』
□作品オフィシャルサイト 「マリリン 7日間の恋」□監督 サイモン・カーティス □脚本 エイドリアン・ホッジス□キャスト ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ドミニク・クーパー、      ジュリア・オーモンド、ゾー・ワ
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(映画的・絵画的・音楽的 2012/04/10 10:10 PM)
マリリン 7日間の恋
2011年 アメリカ/イギリス作品 100分 角川映画配給原題:MY WEEK WITH MARILYNSTAFF監督:サイモン・カーティス脚本:エイドリアン・ホッジス 原作:コリン・クラーク『マリリン・モンロー 7日間の恋』CASTミシェル・ウィリアムズ ケネス・ブラナー エディ・レッドメ
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