映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< 第84回アカデミー賞受賞結果! | TOP | マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 >>

ヒューゴの不思議な発明

ヒューゴの不思議な発明(2011 アメリカ)

ヒューゴの不思議な発明原題   HUGO
監督   マーティン・スコセッシ
原作   ブライアン・セルズニック『ユゴーの不思議な発明』
脚本   ジョン・ローガン
撮影   ロバート・リチャードソン
音楽   ハワード・ショア
出演   ベン・キングズレー ジュード・ロウ
      エイサ・バターフィールド クロエ・グレース・モレッツ
      レイ・ウィンストン エミリー・モーティマー
      ヘレン・マックロリー マイケル・スタールバーグ
      クリストファー・リー フランシス・デ・ラ・トゥーア
      リチャード・グリフィス サシャ・バロン・コーエン

第84回(2011年)アカデミー賞撮影、美術、視覚効果、音響編集、録音賞受賞。作品、監督、脚色、編集、作曲、衣裳デザイン賞ノミネート

人気スター、レオナルド・ディカプリオと初タッグを組んだ『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)から"現代アメリカ最高の映画監督"マーティン・スコセッシの作風に変化が起こった。アクがなくなり、商業的側面への配慮が見え隠れするようになった。そのおかげで『アビエイター』(2004)、『ディパーテッド』(2006)、『シャッター アイランド』(2009年)は全米興行収入1億ドルを超えるヒットとなり、『ディパーテッド』では念願のアカデミー賞も手に入れた。だが、スコセッシが構想に30年を費やしたといわれる『ギャング・オブ・ニューヨーク』が興行的にも批評的にも今ひとつだったせいか、それ以降のスコセッシ映画は単なる"雇われ監督"の作品群と化してしまった。"現代アメリカ最高の映画監督"ですら商業的要素を優先しなければ厳しい映画業界を生き抜いていけないのか?スコセッシ自身もストレスがたまっていたのか、ここ数年、一本"商業映画"を撮り終えた後、音楽ドキュメンタリーを制作するというパターンを繰り返している。音楽ドキュメンタリーに"逃避"することがスコセッシのセラピーになっていたのかもしれない。

興行成績やアカデミー賞受賞など表向きの成功はさておき、作品的に迷走状態が続いていたマーティン・スコセッシの新作は『ヒューゴの不思議な発明』。原作はブライアン・セルズニックのファンタジー小説。なんと3D映画である。ファンタジー、3D...スコセッシらしからぬ響きに期待と不安が入り混じったが、その仕上がりは映画愛にあふれる、スコセッシの個人的想いに満ちた快作であった。

 3D映画の新基準

あのスコセッシが3D映画にチャレンジ!その出来はかのジェームズ・キャメロン御大をして
「間違いなく今までで最高の3D映像だ」と言わしめた。

モンパルナス駅、行き交う人々、街並み...オープニングは3D映像ならではの立体感で迫ってくる。少年ヒューゴの夢の中で列車が脱線するなど「飛び出す絵本」的効果もあるが、それ以降は基本的に落ち着いた映像。3Dにする必要あったの?と一瞬思いたくなる。だけどやはり何かが違う。映像が無理なく身近に感じられる。3D映像の難点だった「目の疲れ」も感じられず、実に心地よく映画の世界に浸ることができた。まあ、サシャ・バロン・コーエンを身近に感じることができてもチト困るな、と思わなくもなかったが(笑)。

 映画の中では夢なのだが、この場面は1895年10月22日にモンパルナス駅で実際に起きた鉄道事故(Gare Montparnasse railway derailment)をモチーフにしていると思われる。

「駅舎、時計の中、機械人形...映画の舞台そのものが空間に奥行きを与えると気づいたんだ。」
スコセッシはそう語る。ジェームズ・キャメロンも「ヒューゴの不思議な発明は他の3D映画と全く違う。新しい絵の具の色を手に入れたみたいに、3Dを芸術表現のひとつとして使っているんだ」と述べる。

3D映像において、「飛び出す絵本」的な視覚効果のパイオニアが「アバター」なら
「芸術表現として映像の奥行きを深める」パイオニアがこの「ヒューゴの不思議な発明」
"3D映画の新基準"を作りだした「ヒューゴの不思議な発明」は「アバター」についで映画史に残る3D映画となるだろう。

 ジョルジュ・メリエス、機械人形

映画の中でベン・キングズレーが演じた"SFXの創始者"、“世界初の職業映画監督”と呼ばれるジョルジュ・メリエスのエピソードはほぼ事実に即しているという。メリエスはもともと手品師でおもちゃ職人だったが1895年、リュミエール兄弟の映画を見て映画に関心を抱く。作品を作り続けるが、やがて彼は破産し、モンパルナス駅でおもちゃのセールスマンとなる。代表作は「月世界旅行」(1902)。科学者ご一行がロケットで月にたどりつく。彼等は王の前に差し出されるが、王をやっつけロケットに乗って地球に還るという12分強の短編。荒唐無稽極りないが、愛すべき作品。著作権が切れているため、作品はyoutube動画などで見ることができる。


Le Voyage Dans la Lune(月世界旅行)




また、映画の中に登場する機械人形は、the Jaquet-Droz automaton "the writer"にインスパイアされたもの。こういうのファンタジーらしくていいですね〜。



「主人公ヒューゴと最も強いつながりがあるのは“機械人形”。この人形が、物語を動かしている」
スコセッシは原作を読んで、機械人形を直すことで父親とつながろうとする主人公ヒューゴにすぐ共感できたという。小さいころ強い喘息持ちだったスコセッシは、父親と一緒に映画を見ることしか楽しみがなく、そのときの体験が今のスコセッシを形づくっている。

また、映画でのジョルジュ・メリエスの姿が、妙にスコセッシに似ていると思った人も多いのではないか?実際、ベン・キングズレーもスコセッシをモデルに役作りをしたという。この映画への情熱はスコセッシそのもの。ヒューゴもメリエスもスコセッシの分身のような存在。「ヒューゴの不思議な発明」はまさにマーティン・スコセッシの私映画なのだ。

「ヒューゴの不思議な発明」は映画への愛情に満ち溢れている。
個人的には映画愛をうたった映画は苦手。そりゃ、業界関係者や映画評論家、映画マニアは大喜びさ、でも他の人はどーなの?と、うがった気持ちがわきあがってくる。だが、「ヒューゴの不思議な発明」を見たあとそんな邪念は浮かばなかった。正直言うと、物語の語り口はそんなにうまくない。部品がどーのこーのとかいろいろ語れる要素もあるが、後半、突如台詞をたたみかける場面などいただけない箇所もある。物語のテーマが見えにくく、結果として"映画愛"だけが浮かび上がるという印象。でもそんなのどーでもいいじゃん!3D映像による、ほどよい視覚効果が醸し出す映像世界にひたすらうっとり。ただ観てるだけで幸せ。そして何よりも、本当久しぶりにスコセッシが自分の撮りたいものを獲った!という喜びが映像の節々から伝わってくる。数多いスコセッシの代表作がまたひとつ加わった。

「ヒューゴの不思議な発明」は映画史の中でもマイルストーン(Milestone) となりうる作品だ。当作のような3Dの使い方が主流になっていけば、芸術としての映画はいっそう奥深いものになる。この作品をきっかけに映画芸術が進化していくことを1映画ファンとして願わずにはいられない。
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!





2012.03.04 Sunday | 11:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(7) |

スポンサーサイト


2017.07.23 Sunday | 11:59 | - | - | - |

コメント

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://moviepad.jugem.jp/trackback/493

トラックバック

ヒューゴの不思議な発明/Hugo
巨匠マーティン・スコセッシが初めて3Dで送るヒューマンファンタジー。ブライアン・セルズニックの小説を原作に、父の形見の機械人形に隠された謎を探る少年の姿を描く。主演は『縞模様のパジャマの少年』のエイサ・バターフィールドと、『モールス』のクロエ・グレー
(LOVE Cinemas 調布 2012/03/04 3:31 PM)
ヒューゴの不思議な発明
1930年代のパリ。 駅の時計台にひそかに住む少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、亡き父が残した機械人形の修理を心の拠所にしながら毎日を送っていた。 壊れたままの人形の秘密を探る過程で、...
(心のままに映画の風景 2012/03/04 11:56 PM)
『ヒューゴの不思議な発明(2D字幕)』
□作品オフィシャルサイト 「ヒューゴの不思議な発明」□監督 マーティン・スコセッシ □脚本 ジョン・ローガン□原作 ブライアン・セルズニック □キャスト エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、ジュード・ロウ、     サシャ・バロン
(京の昼寝〜♪ 2012/03/06 8:50 AM)
ヒューゴの不思議な発明
機械人形。夢が現実に。Phantom of  Lyon Station。
(悠雅的生活 2012/03/09 3:56 PM)
映画という夢〜『ヒューゴの不思議な発明』 【3D・字幕版】
 HUGO  少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、パリ駅構内の時計台裏に住み、 亡き父(ジュード・ロウ)が遺した機械人形を修理する日々。ある日彼は、イザ ベル(クロエ・グレー...
(真紅のthinkingdays 2012/03/12 3:30 PM)
ヒューゴの不思議な発明
素晴らしきかな世界。  
(Akira's VOICE 2012/03/15 5:57 PM)
ヒューゴの不思議な発明
 『ヒューゴの不思議な発明』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。 (1)この映画については、『サラの鍵』や『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を取り上げたエントリにおいて大いなる期待を表明していたところ、その期待以上の優れた出来栄えだと思います。  そ
(映画的・絵画的・音楽的 2012/03/20 10:05 PM)

▲top