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ドラゴン・タトゥーの女

ドラゴン・タトゥーの女(2011 アメリカ)

ドラゴン・タトゥーの女原題   THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
監督   デヴィッド・フィンチャー
原作   スティーグ・ラーソン
脚本   スティーヴン・ザイリアン
撮影   ジェフ・クローネンウェス
音楽   トレント・レズナー アッティカス・ロス
出演   ダニエル・クレイグ ルーニー・マーラ
      クリストファー・プラマー ロビン・ライト
      ステラン・スカルスガルド スティーヴン・バーコフ
      ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
      ベンクトゥ・カールソン ゴラン・ヴィシュニック
      ジョエリー・リチャードソン ドナルド・サンプター

第84回(2011年)アカデミー賞編集賞受賞。主演女優賞(ルーニー・マーラ)、撮影賞、音響賞、音響編集賞ノミネート

2005年に発売されたミステリー小説「ドラゴン・タトゥーの女」は「ミレニアム(千年紀)」と名付けられた3部作の第1作。スウェーデン出身のジャーナリスト、スティーヴ・ラーソンの小説デビュー作である。たちまち話題となり、第2部「火と戯れる女」第3部「眠れる女と狂卓の騎士」が次々と刊行。人口900万人のスウェーデンで(3部作合計)365万部を売り上げる大ベストセラーとなった(2011年6月まで)2009年2月7日に第1部の映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」が公開。2部、3部は当初、テレビドラマとして公開される予定だったが、スウェーデン映画を盛り上げるため劇場映画として公開された。原作は世界30カ国以上で翻訳され、2011年6月現在、3部作合計で6000万部の売上を誇る...。

この"ミレニアム現象"、カネになりそうな話題なら何にでも飛びつくハリウッドがほっとくはずがない。アメリカでもスウェーデン版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」は2010年3月、「ミレニアム2 火と戯れる女」は同年7月、「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」は10月に公開済みにもかかわらず、3作目公開のわずか1年後の2011年12月20日にハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」のお披露目となった。ちと早すぎない?ハリウッドのネタ不足ってここまで深刻なのか?と眉をひそめたが、ハリウッド版の監督はあのデヴィッド・フィンチャー、ちょっと期待したくなります。

↓8分間のロングバージョン予告編です
THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO - OFFICIAL 8 Minute Trailer - In Theaters 12/21



上映時間2時間38分。ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」を観終わって、真っ先に思い浮かんだことは「可能な限り原作に忠実にしたな」ということ。

スウェーデン版の第1作「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」では観客は既に原作を読んでいるという前提でつくられていたため、膨大な情報量のある原作をかなりはしょっていた。だが、全世界で拡大公開予定のハリウッド版ではそうはいかない。

そりゃ細かいことを言えば色々ある。あ、猫チャンが出てきた!これ原作どおりにやるの?イヤンとか、ちゃんとオーストラリアにいけよ!こんなところで製作費ケチるなとか..。ミカエルとセシリアが寝んごろになる描写はハリウッド版でもカットしていたが...。原作ではその後、セシリアが犯人と疑われるようになるという設定なのだが、あまり効果をあげているとは思えず、誰も映画でこの場面を観たいとは思っていないでしょうから、まあ妥当でしょう。スウェーデン版では1作目、リスベットの初代後見人パルムグレン弁護士は登場せず、2作目でいきなり表れる。おいおい、と思ったがハリウッド版ではちゃんと出てきています。続編ちゃんとやるつもりなんですね(笑)ただ、パルムグレンが倒れた後、リスベットはすぐお見舞いにいきチェスを一緒にしたりしている。ここは原作どおりにしたほうがリスベットの性格をきちんと表現できたような気がするが...。

オープニングのタイトルバックはリスベットの潜在意識、悪夢を表現したものらしい。数々のCMやPVをてがけてきたデヴィッド・フィンチャーならではの映像だが少し安っぽい。こんなところに金を使うのならちゃんとオーストラリアに行け!(しつこい?)ちなみに、この映画がスウェーデンにおいて過去20年間でもっとも寒い冬といわれた時期に撮影されたという。そのせいか雪、曇り、全体的に映像が暗い。

原作の情報量が膨大であるため、ストーリーを展開するだけでアップアップ状態。何とか時間を短縮しようとヘンリックじいさま(クリストファー・プラマー)まで不自然なほど早口です(笑)。それでも空疎感があまりないのはちゃんと緩急をつけているから。リスベット(ルーニー・マーラ)がレイプされる場面やミカエル(ダニエル・クレイグ)が殺されそうになる場面 (なぜかエンヤのオリノコ・フロウがかかってた。原作にないぞ、こんなの) など見せるべきものはじっくり映像で見せている。デヴィッド・フィンチャーは「ゾディアック」や「ソーシャル・ネットワーク」で培ったスピーディな情報処理能力を今回も存分に発揮している。あの原作を映画化するにあたって、おそらくこれ以上の情報量はのぞめないだろう。ゆえに、予習なしで見た場合、リスベット並みの映像記憶能力がないとついていくのはキツイかもしれない。

膨大な情報量の素材を映画としてコンパクトにまとめるのは実に難しい。台詞のみに頼って失敗するパターンに陥りがちだ。ロン・ハワード監督「ダ・ヴィンチ・コード」はまさに最悪の事例。あのクリント・イーストウッドですら最新作「J・エドガー」でコレをやってしまった。彼らのようなアカデミー賞監督でもうまくいかないのだ。デヴィッド・フィンチャー監督がいかに卓越した(映像での)情報処理能力をもっているかがよくわかる。

物語の主役、ミカエルとリスベットについて触れておく。

第1作の原作のタイトルはMAN SOM HATAR KVINNOR(女を憎む男たち
そのタイトルが示すとおり、原作者スティーヴ・ラーソンは性差別的な描写を嫌い、男性・女性という先入観をなくすためリスベットに男性的、ミカエルに女性的なキャラクターを持たせたのだという。

「ミレニアム」シリーズのファンの大部分はリスベットのキャラクターに魅力を感じるだろう。どんな理不尽な扱いを受けても自分を哀れまず、屈しない。多分に暴力的な気質をもつ。リスベットがビュルマン後見人に"復讐"をはたす場面に溜飲をさげる女性も多いでしょう。天才ハッカーで、どんなコンピューターにもハッキングして侵入、謎を解いてしまうという設定はミステリーとして反則な気もするが、今のご時世仕方ない?いろいろとご都合主義がいりまじっていてありえないキャラです。(爆)

リスベットと同じくらいありえないのがミカエルのキャラ。不屈のジャーナリストでどんな圧力にも屈しない。モテモテで仕事で関わった女はすべて彼を誘惑してくる。そのいずれともスマートに"大人の関係"を保ち続ける。ミカエルと、編集長エリカの関係なんてまさにありえない!白けてしまうくらい"夢の男"だ。映画のラストではミカエルとの"大人の関係"を続けることを拒否するリスベットの心が暗示されている。それにしても原作では2部ではじめてわかる"リスベットの秘密"をどーしてスウェーデン版でもハリウッド版でも1部でバラしてしまうのだろう?ハリウッド版はとくに露骨。フィンチャーによると「1部で物語は完結させるつもりだった。リスベットがそれほどミカエルを信頼していることを示したかった」そうだが...?

デヴィット・フィンチャー版「ドラゴン・タトゥーの女」はリスペクトとミカエルのキャラを十分に描けてるとはいえないが、"観客が感情移入しにくい非現実的な登場人物"描写に力を入れず、ストーリー展開を重視したのは賢明な判断だ。

原作者スティーヴ・ラーソンは政治雑誌『EXPO』を創刊し、やがて編集長を務めた。ミカエルは彼自身をほうふつさせるキャラクターであるがラーソンは女たらしではなく、32年ものあいだ、エヴァ・ガブリエルソンという女性パートナーとともにすごしている。周囲の人は「ラーソンはミカエルのような男に憧れていただけだろう」と語っている。

ラーソンはミステリー小説の魅力を知りつくしていた。孤島ミステリ、見立て殺人、暗号、サイコ、本格推理小説、連続殺人、警察、復讐、法廷物、ハードボイルド、スパイ、社会派....「ミレニアム」3部作にはミステリーのジャンルの全てが含まれていると評されている。「ミレニアム」は最終的には10部作の構想であった。2部までを書きあげたところでラーソンは出版社に原稿を持ち込んだ。3部を書きあげ、4部に執筆に入っていた2004年11月に心筋梗塞で急死。第1作の出版は2005年。彼は自分の成功を知ることもなく50歳の若さで亡くなってしまった。ラーソンのPCには4部の原稿が200p残っているといわれている。

映画の話に戻すと、気になるのはやはり続編。興行成績を見る限り全米で約1億ドル、世界興行収入2億(製作費は9000万ドル)で続編製作はビミョーなところです。The Girl with the Dragon Tattoo (2011)
だが、配給のソニー・ピクチャーズは作品の口コミがひろがることを想定。続編は無事製作されそうな気配だ。脚本のスティーヴン・ザイリアンは2作目を既に書き終え、3作目を執筆中。ダニエル・クレイグとルーニー・マーラの続投は既に決定しているが、デヴィッド・フィンチャー監督の再登板は未定だという。この1作目の上映時間をめぐってソニー・ピクチャーズとフィンチャーが対立、フィンチャーは続編から降板するというウワサもある。(フィンチャーは上映時間を3時間,ソニー・ピクチャーズは上映時間を2時間20分までにおさめるよう主張していたという。結局、真ん中で妥協?) だが、2作目、3作目は内容も登場人物も1作目よりさらに盛りだくさん。デヴィッド・フィンチャーが続投しなければおそらく失敗する。もし3作目までちゃんとやるとしたらアニカ・ジャンジャーニ役(ミカエルの妹、弁護士)は上手く演じればアカデミー賞助演女優賞が狙える役。本作でのアニカ役はエンベス・デイヴィッツ。彼女は3作目を待ち焦がれているでしょう(笑)。

「ミレニアム」3部作、1作目は独立した物語だが、2作目、3作目はつながっている。おそらく2作分一気に撮影し、短期間で連続公開という形になるのではないか?何はともあれデヴィッド・フィンチャーがあの2作目、3作目をどう料理するか今から楽しみ。彼が監督でなければ続編は観ません!たぶん。
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 どうも続編製作は中止になった模様。残念。





参考までにスウェーデン版映画についてご紹介。といってもスウェーデン版ポスター画像と予告編動画のみ。説明を読みたい人はリンク先のamazonページをみてください。(おいおい)

「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009 スウェーデン・デンマーク・ドイツ)
MAN SOM HATAR KVINNOR

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女








★「ミレニアム2 火と戯れる女」(2009 スウェーデン・デンマーク・ドイツ)
FLICKAN SOM LEKTE MED ELDEN

ミレニアム2 火と戯れる女









「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」(2009 スウェーデン・デンマーク・ドイツ)
LUFTSLOTTET SOM SPRANGDES

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士





2012.02.25 Saturday | 21:00 | 映画 | comments(4) | trackbacks(0) |

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2018.06.13 Wednesday | 21:00 | - | - | - |

コメント

あらら、コメント抹消ですか?
自分と意見が違ったら却下ですか?
ヒトラーかムッソリーニみたいですねぇ?
さすが映画好き。
2012/03/06 8:33 PM by ○○○
いただいたコメントは
半分くらい意見重なってましたよ

「自分と意見が違っていたら」ではなく
「単なる悪意の塊」にすぎないコメントは
内容にかかわらず削除しています。
他の方を不愉快にするだけですので。
2012/03/06 9:20 PM by moviepad
あ、そうですか。
しかし当方、良かったらほめる、良くなかったら良くないと言うだけの話で、職業評論家ではないので、何から何までベタボメしようとは思いません。
良くないものを良くないと言ったら不愉快に思うと言うのは、今の時代なんでしょうかねぇ。
意見が100%同じでないと拒絶してしまう。悲しい時代ですね。
2012/03/07 6:12 AM by ○○○
>良くないものを良くないと言ったら不愉快に思うと言うのは

私が「悪意の塊」と表現したのはそういう意味ではありません。

言いかえれば「思い込み」「偏見」「レッテル張り」

まず結論が先にあって、その後で理由を考える、そんな思考体系のことです。



○○○さんから最初いただいたコメントは

「ミュージック・ビデオを手掛ける監督が作るものは薄っぺらい」

という強烈な思い込みがまず最初にあって、そこから論理を展開している


言いかえれば

映画全体を観終えた結果として「良くない」という結論にたどりついたのではなく

極端な話、映画を観る前から「良くない」と決めていた

自分の眼にはそのように映りました。



自分の「偏見」「レッテル張り」「思い込み」「色眼鏡」...を疑うことなく、それに見合うように理由を後づけしていく

そういう思考体系からは何も生まれないと私は考えています。



「文章の書き方」にも問題がありました。

○○○さんのコメントは

(根拠に乏しい)上から目線、とでもいいましょうか?

一方的な決めつけ感にあふれ、(内容に同調できる、できない関係なく)

読んだ人の大多数を不快にさせる、であろう非常にイヤミな「文体」でした。

↑の
>あらら、コメント抹消ですか?
>自分と意見が違ったら却下ですか?
>ヒトラーかムッソリーニみたいですねぇ?
>さすが映画好き。

もまさにそんな感じ。


ちなみに悪口ONLYの記事は、当方、過去何本も書いていますよ。
他人様のことをどーこー言える立場にありません(笑)
ただ、結果として悪口にたどりついたのであって
最初から悪口を書くことを目的にして
記事を書いたことは一度もありません。


また、このサイトにおいて「意見が違う」という理由だけで
コメントを削除したことは過去、一度もありません。
反対意見はむしろ歓迎しているくらいです。

コメントを削除するのは

・何ひとつ具体的な理由をしめさない、感情的な罵倒
・当サイトの記事を読んでいないと思われる一方的な意見
そして上記のような、自分の思い込み立証型コメント

これらは反応のしようがないからです。


このサイトは中立公正をうたったポータルサイトではなく
マイナーな1個人ブログにすぎません。
よって、コメントの承認有無を管理者の主観で判断するのは
特に批判されるべきことではない、と考えます。
当サイトの考え方がお気にめさないのであれば、他のサイトに移動すればすむこと。
映画サイトは山ほどありますので。
それにたかが1個人ブログの対応ひとつで時代を語るのは思考がワープしすぎです。

ここはあくまで「ドラゴン・タトゥーの女」という映画記事に対するコメント欄ですので
これ以上の返信はお断りします。
返信されても読まずに削除しますので悪しからず。

今後、映画について何かコメントしたいときには、こんなマイナーサイトにではなく
Yahoo!掲示板あたりに書きこまれたほうがよろしいかと...
削除もされませんし、ここよりはるか多くの人にコメント読んでもらえますよ。
2012/03/08 12:33 AM by moviepad

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