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第83回(2010年)アカデミー賞

第83回(2010年)アカデミー賞

83回アカデミー賞作品賞「英国王のスピーチ」第83回アカデミー賞trivia〜サプライズなし、視聴率大幅ダウン、授賞式は酷評〜

2010年のアカデミー賞授賞式司会に、アン・ハサウェイジェームズ・フランコという若手俳優2人の起用が発表されたとき、ちょっとしたどよめきが起こった。アカデミー賞授賞式は、世界中で放送されるエンタメ業界屈指のビッグイベントゆえ、司会は百戦錬磨のコメディ俳優やTV司会者、というのが定番だったからだ。報道によると彼等は第一候補ではなく、ヒュー・ジャックマン、ウィル・スミス、ロバート・ダウニー.Jrなどそうそうたるメンツが断ったため、彼らにオハチがまわってきたという。若手視聴者を獲得するための人選だが、司会経験のない、若手のアン・ハサウェイとジェームズ・フランコにビッグイベントの司会が務まるのかという不安の声も多々聞かれた。アン・ハサウェイは「私たちは誰かをいじるユーモアがないし、それができる立場にもない」、フランコは「司会が本業じゃない僕たちに、周りはそんなに多くを望んでいないはず」と語っていたが...世間はそう甘くはなかった。






いざ授賞式が終わると各メディアで

Worst. Oscars. Ever.(史上最悪のアカデミー賞)
「若い視聴者層に迎合しようとしているのは、痛々しいだけだ」
「夢の世界に誘われるはずだったのだが、授賞式が終わるころには悪夢で終わった」

という近年稀にみるほどの酷評が乱れ飛んだ。視聴率も平均視聴者数は4130万人から3790万人と大幅ダウンで史上4番目の低視聴率となった。しかも期待をかけていた18歳〜49歳までの年齢層における視聴率も去年の13.3パーセントから今年11.7パーセントに減少。目も当てられない結果となってしまった。非難のほこ先は司会のアン・ハサウェイとジェームズ・フランコにむけられ、アンとフランコの不仲説、あまりの脚本のダサさにフランコがやる気をなくしたなどさまざまなゴシップがとびかった。

私的な感想をいえば、司会がどうのこうの、というより演出や受賞結果がつまらなさすぎた。ノミネート作品も全体的に地味で盛り上がりにかけ、結果もサプライズなし。受賞者のコメントも感謝人の羅列に終始する退屈なものばかりだった。プレゼンターの顔触れも小粒。昔のアカデミー賞だったら「ソーシャル・ネットワーク」の紹介にマーク・ザッカーバーグを担ぎ出すくらいのことはしただろう。トリビュートコーナーも(復活した)歌曲賞候補のパフォーマンスもすべて中途半端。プレゼンターのジョシュ・ブローリンとハヴィエル・バルデムが踊りながら登場し、最後にキスをするというハプニングがあったが、カメラはそれを写さなかった。「台本になかったから」だそうだ。とほほ。そして、最後は子供たちが登場し、合唱...。日本の映画ファンからは「まるで紅白歌合戦みたい」と揶揄される有様。退屈な受賞結果とださい演出プラン...誰が司会をしても失敗確実だった。

アン・ハサウェイは「批判はつらかったけど、映画界の歴史の一部になれて嬉しい。孫にも話せるしね」と前向きなコメントを残している。一方、ジェームズ・フランコは「プロデューサーには、何も演出してもらえないし、どうして僕を司会にしたのかわからない、この見せ物がうまくいくとは思えない、って(スタッフに)話したよ」と不満をのべた。後日フランコは「レイト・ショー・ウィズ・デビッド・レターマン」に出演し、「最近では、僕のことを“石”と言わなくなった」と自虐的なコメント。フランコ同様、アカデミー賞司会をして、酷評された経験をもつデビッド・レターマンは、「僕のときは、映画界は終わったという話が出ていたほどだったよ」とフランコに同調し、アカデミー賞司会の難しさを語るとフランコは、「でもあなたは大麻でハイになっているとまではと言われなかったよね」と切り返した後、「もしかしたら僕は気力が落ちていたのかもしれないが、全力を尽くしたと思っている」と語った。

ちなみに、アカデミー賞とは対照的に、ゴールデングローブ賞授賞式が毒舌コメディアン、リッキー・ジャーベイスを司会に起用して視聴率をアップさせた。連続登板となった2010年度は、ゴールデン・グローヴ賞の審査員がワイロを受け取ったことをジョークにするなどやりたい放題。ゴールデン・グローヴ賞事務局は激怒したが、それでも彼は来年も司会をすることが決定している。テレビで放映されるイベントにとって視聴率は何より大事なのだ。実は、リッキーがアカデミー賞授賞式直前、若手2人を心配して?架空台本を公開していた。「アカデミー賞はハリウッドの生きる伝説と、3〜4月に全米公開予定の映画に出演する凡庸な俳優たちのパーティ」...こんな台詞がいえる度量がふたりにあれば....(笑)


 コリンファースが主演男優賞!Fワードコンビが助演賞

主演男優賞は『英国王のスピーチ』のコリン・ファース。作品の勢い、2年連続のノミネートだった点、アカデミー賞をとりやすい役柄であったのに加え、ライバル2人は若手、残り2人は受賞経験者という有利な条件が出そろい、ほぼ無風状態での受賞となった。ちなみに、この年の主演男優賞例年にない不作と言われていた。コリン・ファースは嫌いじゃないけど、オスカー受賞するほどの演技だったかな?とひそかに思ってます。



助演賞はともに『ザ・ファイター』からクリスチャン・ベイルメリッサ・レオが下馬評どおりの受賞。メリッサ・レオは、自腹で業界紙にFYC広告(For Your Consideration)を出したことが顰蹙を買っていたため『トゥルー・グリット』のヘイリー・スタインフェルド(どうみても主演...子役だから助演というカテゴリー分けはよくない)が逆転受賞をはたすとみる人も多かったが、なんとか逃げ切った。ところが、メリッサは受賞スピーチで「スピーチって難しいのね。2年前、ケイト(・ウィンスレット)が受賞しているのを見てたときはクソ(f××king)簡単そうに思えたのに}とこともあろうにFワードを口にしてしまい、またしても不評をかった。映画ファンからも「しらじらしい」「目立つためにわざとやった」とブーイングの嵐だった。



脇役女優として地道に活動を続け、50歳でようやくあたったスポットライト。ちょっとくらい舞い上がったっていいじゃないの?と個人的には思いますが...。メリッサは舞台裏で謝罪コメントを出した。ちなみにケイト・ウィンスレットはこの様子を面白そうに観ていたそうだ。感想を聞かれたとき、「私の責任じゃないわよ(笑)」と前置きしたあと、「彼女はクールよね、授賞式の後、メリッサにメールを送ったの。‘Is that f××king you, Melissa? You motherf××king cow’ と。ビッチ(メリッサのこと)は返信してこなかったわ」と語っている。メリッサとケイトはTVシリーズで最近、共演したばかりだった。ちなみに、メリッサが演じたアリス・ウォードさんは2011年4月27日心臓停止で亡くなっている。

メリッサに続いて受賞したクリスチャン・ベイルは「私はメリッサのようにFで始まる言葉は使いませんよ」と語り笑いを誘った。クリスチャン・ベイルは『ターミネーター4』の撮影時、スタッフをFワード全開で怒鳴りつける音声が流出、youtubeで大ヒットしてしまったことがある。ちなみに、舞台裏で一番はしゃいでいたのは意外にもクリスチャン・ベイルだったそうだ。2人の受賞作『ファイター』でベイルが演じたドラッグ中毒の兄は、マット・デイモンとブラッド・ピットが断ったため、ベイルにまわってきた役。監督も『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキーが降板したため、デヴィッド・O・ラッセルが務めることになったいきさつがある。同作品からの助演賞W受賞は第59回(1986年)「ハンナとその姉妹」以来24年ぶりのことである。



余談だが、『英国王のスピーチ』で助演女優賞にノミネートされていたヘレナ・ボナム=カーターは受賞スピーチを準備しており、白いハンカチにそれを書き込んで持参していた。受賞後のアフター・パーティでそのハンカチを見つめながら「もうこれで2度と陽の目を見ることはないわね」とさみしそうに語っていたとか...。

 幸せいっぱいのナタリー、受賞前後にトラブル

主演女優賞は『ブラックスワン』のナタリー・ポートマンが本命だった。4回目のノミネートとなった『キッズ・オールライト』のアネット・ベニングを推す声も強かったが、下馬評どおりナタリーが受賞。"アカデミー主演女優賞は、若手スター女優が受賞する"というここ10数年のトレンドは今年も崩れることがなかった。スピーチは文字通り感謝人の羅列に終始、近年稀に見るほどつまらないものだったが、そんなのどーでもいい?彼女は『ブラック・スワン』の振付師であるベンジャミン・ミルピエとの子供を妊娠中、マタニティ・ドレス姿でオスカーを手にし、まさにこの世の春といった感。



だが、そんな彼女の幸せを妬むかのように、厄介ごとがナタリーにふりかかった。授賞式直前、ディオールの看板デザイナー、ジョン・ガリアーノがパリのカフェでユダヤ系女性とアジア系男性のカップルに「汚いユダヤ顔め、死ね。」「アジア人のばか野郎。」と罵倒し、暴行をはたらいたとして警察に一時身柄を拘束されるという事件がおこった。その後も、同じパリのカフェで「ヒットラーが好きだ」と語り、居合わせた客に「あなたのような人は死んだほうがいい。両親も毒ガスで殺されたほうがいい。」と暴言をはいていたビデオが英紙「The Sun」電子版に掲載されてしまった。ナタリー・ポートマンはクリスチャン・ディオールの香水ののCMモデルをつとめていることから、授賞式でもディオールのドレスを着用するとみられていた。だが、イスラエル出身のユダヤ系アメリカ人で、父方の曾祖父母はアウシュビッツで亡くなっているナタリーはこの発言に激怒。ディオールではなく「ロダルテ」のドレスで登場した。授賞式直後のインタビューである記者が「高額のギャラをもらってディオールの広告に出ているあなたが、なぜ今日はロダルテを着ているの?」と、ナタリーを直撃。だがナタリーが答える間もなく、アカデミーの広報担当が質問を遮った。アカデミー協会が、会見後に配布した記者会見公式スクリプトにも、この質問は「なかったこと」として削除されている。ユダヤ人社会といわれるハリウッドの一面がよく表れているエピソードだ。ナタリーが受賞スピーチで"余計なこと"を言わなかったのは、この問題が背景にあったのかもしれない。

ナタリーは受賞後もゴシップに巻き込まれた。
受賞作「ブラック・スワン」のダンス場面に"吹き替え"疑惑が持ち上がったのだ。
発端はダンス業界ブログに「ナタリーがバレリーナに変身できたのはデジタル合成のおかげ」という内容の記事が掲載され、その記事の中に『ブラック・スワン』の未編集ダンスシーンのビデオリンクが貼られたことだった。、ナタリーの婚約者で振付師であるベンジャミン・ミルピエ(33)が、ロサンゼルス・タイムズ紙で「85%はナタリーが躍った」と反論。それを受けて撮影中、ナタリーのボディダブル(代役)をつとめたアメリカン・バレエ・シアター所属のプロバレリーナ、サラ・レーンがEntertainment Weekly誌に対し、「体全体が映る場面では、ナタリーが実際に踊っているのは5%。他の難しいバレエを踊ったのはすべて私。」というショキングな告白をしたのだ。

サラはインタビューの中で「製作スタッフは、ナタリーにオスカーを獲らせるために、ナタリーが、1年半練習を積んだだけでバレリーナになりきった天才だ、と人々に思い込ませたかった」映画制作会社の重役に、ナタリーの吹き替えをしたことをメディアに話さないよう固く口止めされていたという。「私が22年やっているバレリーナという職業に、ナタリーが1年半くらいでなれたら、侮辱的。バレリーナに失礼だわ。映画スターが1年半でピアニストになってコンサートが開けると思う?それと同じことよ」「ナタリーのダンスはアマチュアの域を出ない。トウシューズで踊れないし、体も固い」

20/20 from ABC News: 'Black Swan' Dance Double Speaks Out

これに対し、ダーレン・アロノフスキー監督が「編集担当に撮影したダンス場面を数えさせたところ、139のダンス場面のうち、111場面はナタリー、残りの28場面がサラ・レインのダンス。トウシューズもちゃんとはいている」「吹き替えで撮った場面を実際に採用したのは2つ。複雑な長いダンスシーンがあり、そこだけ顔をナタリーに差し替えた。時間にすると1秒にもみたない。劇中でのダンスは90%以上ナタリーが実際に踊っている」「彼女は大変な努力をして素晴らしい演技をしてくれた。観客にあれが彼女でない、と思ってほしくない」と反論し、ことは一応終息した。

サラの告白は、ナタリーがアカデミー賞スピーチでサラの名前を挙げなかったこと、DVDの特典映像にサラの映像が削除されてしまったことなどへの逆恨みとみられている。だが、"ダンスの吹き替え担当"を単なるエキストラとしてクレジットした製作サイドに対する批判もあがっている。

騒動の最中、ナタリーは沈黙を守ってきたが、新作映画のPRの場でようやくコメントを出した。
"I had a chance to make something beautiful with this film, and I don't want to give in to the gossip."
(私はこの映画で美しいものをつくる機会に恵まれました。ゴシップには負けたくありません)

バレリーナが有名になりたいがために、虚言をはいたと解釈するのが一番すっきりするが、口止めされていなかったのならオスカーの受賞前に告白をしただろう。立場的にも映画製作側のほうが圧倒的に強い。真相は闇の中、後味の悪いエピソードである。


アカデミー作品賞は時代を写す鏡ではない?

アカデミー賞以前に発表される各映画賞(以降、前哨戦と記す)の作品賞は、『ソーシャル・ネットワーク』がほぼ独占状態。このままアカデミー賞まで突っ走ると思われていた。だが、"本番"アカデミー賞は『英国王のスピーチ』を作品賞に選んだ。



前哨戦の作品賞を総ナメしていながら、"本番"で負けた例は最近では2件ある。
まずは、第70回(1997年)。前哨戦では『L.A.コンフィデンシャル』が圧勝していたが、オスカーは『タイタニック』の手に渡った。だが、このとき『タイタニック』は過去の興行成績を大きく塗り替えるメガヒット中。関心は『タイタニック』が作品賞をとるかどうかというより『タイタニック』が何部門受賞できるか?『L.A.コンフィデンシャル』が作品賞をとるなど誰も思っていない状況であった。

次は第78回(2005年)。前哨戦では『ブロークバック・マウンテン』が圧倒的強さを見せていた。
『ブローク〜』は同性愛を真正面から描いた作品。アカデミー賞は過去、同性愛映画に作品賞を与えたことはなく、その点が危惧されていたがこの年は対抗馬が弱かったこともあり、"本命"がひっくりかえることはない、という見方が支配的であった。だが、オスカーは『クラッシュ』の手に渡る大逆転。監督賞は下馬評どおり『ブローク〜』のアン・リーに渡ったことをみても『クラッシュ』が"保守的なアカデミー会員が同性愛映画に作品賞をあげたくないため、無理矢理まつりあげられた"ことは明らかだった。メディアは『クラッシュ』の受賞よりも"なぜ『ブロークバック・マウンテン』は作品賞を逃したか?”について熱心に論じた。

今回は上記2点を組み合わせたようなパターンだ。保守的なアカデミー賞老会員は、『ソーシャル〜』で題材とされたFACEBOOKを知らないし、興味もない。また、映画の中で、主人公はあまり好感のもてない人物として描かれていることからアカデミー賞において『ソーシャル・ネットワーク』は苦戦するのでは?という声も多々聞かれた。その不安はアカデミー賞の発表を待たず、ノミネートの段階で的中した。最多ノミネートは『英国王のスピーチ』の12部門、続いて『トゥルー・グリット』の10部門、本命だったはずの『ソーシャル・ネットワーク』は8部門ノミネートと3番手に甘んじた。また、アカデミー賞ノミネート直前に発表された全米製作者組合賞でも『英国王のスピーチ』が受賞、ノミネート発表後の全米監督組合賞でも、『英国王のスピーチ』のトム・フーパーの手にわたった。各組合賞はアカデミー賞と投票母体が重なるため、『英国王のスピーチ』の優勢は誰の目からみても明らか。アカデミー賞でも"下馬評どおり"『英国王のスピーチ』が受賞した。

厳密に言うと、ノミネート発表時に"大逆転"が起こったわけではない。アカデミー賞会員の中では最初から『英国王のスピーチ』が本命だったのだ。前哨戦の選考に携わる批評家に比べ、アカデミー会員はが平均年齢で10歳以上高いという。その年齢差が新メディアfacebookを描いた『ソーシャル・ネットワーク』への評価を変えてしまった。

日本において、アカデミー賞授賞式は例年どおりWOWOWで生中継されていたが、番組内のゲストコメンテイター、中島由紀子氏は「『ソーシャル〜』は観終わった後、他の人と議論したくなる映画。『英国王のスピーチ』にはそういうのが全くない」「まるで大衆賞みたい。アカデミー賞はプロが選んでいるだからもっと深く見極めてほしい」

...筆者も全く同感なのであります。『英国王のスピーチ』は表向きはアート映画っぽいが、中身は100%娯楽映画。そう、シネコンでかかっているソレと対して変わらない。悪い人も出てこないし、観客の期待どおりに物語は進み、期待どおりに終わる。日本の映画館には「今、上映している映画ってハッピーエンドなの?ハッピーエンドじゃないと私観ないわよ」と前もって探りの電話を入れるオバサマがいるらしいが、その手のオバサマを大喜びさせそうな映画である。そんな作品に天下のアカデミー作品賞をあげちゃっていいの?

もっと納得いかないのは監督賞。日本の映画ファンの間でもデヴィッド・フィンチャー監督が受賞を逃したことに対する失望の声が多々聞かれた。個人的にも『ソーシャル・ネットワーク』はデヴィッド・フィンチャー監督のスピーディな演出でもっている作品なのに対し『英国王のスピーチ』は特に演出面で際立った要素が感じられず、映画というより舞台っぽい仕上がりで、監督賞まであげるほどいいか?と思ってしまう。

監督賞のプレゼンターに登場したのはヒラリー・スワンク。過去、トム・フーパー監督作品『Red Dust』(2004)(邦題は『ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト』(^^;)に出演している。結果を前もって知っていたかのような、このプレゼンター人選。メディアにおいて監督賞は接戦と報じられていたのに...。ああ、いやらしい。

社交的で礼儀正しいトム・フーパーに対し、気難しく業界人とはあまりつきあわないデヴィッド・フィンチャー..."人徳"の差が結果に表れたとも評された。




受賞発表後、あるメディアは「アカデミー会員は今でも『我が道を往く』(1944)のようなヒューマニズムが大好きなのだ」と皮肉った。『我が道を往く』も悪人がまるで出てこない"教科書映画"だけど、『英国王のスピーチ』よりは遥かに"余白が多い"作品だったぞ。『英国王のスピーチ』は行間もへったくれもない、ストーリーを追っていればOKな映画。『我が道を往く』と一緒にするな!ああ、不満たらたら(爆)。

こんな声をよそに、アメリカTIME誌電子版は『英国王のスピーチ』を

1, 事実に基づくストーリーである。
2, 時代設定は1925〜39年、第二次世界大戦直前である。
3, 舞台設定は英国王室。
4, 主人公のジョージ6世は、彼を愛する者の協力を得て吃音を克服する。

これらの要素が「アカデミー賞のツボをよく押さえている」ことが受賞理由と分析する。

TIME誌によると、2000年から09年のアカデミー作品賞候補は、

・約60%が事実に題材。
・50本中15本は、史実に基づく人物が主人公になっていて、そのうち6本はイギリスが舞台。7本は第二次世界大戦中あるいはその直前を描いている。

そして、主人公は身体的または精神的な障害をもち、近親者の助けによって障害を克服するというパターンはまさにアカデミー賞好み、だそうだ。(筆者注:これは作品賞というより演技賞を受賞しやすいパターン)

ツボを押さえている作品ばかりが受賞し続けたらアカデミー賞は超マンネリになってしまう。

『英国王のスピーチ』と『ソーシャル・ネットワーク』の興行収入を比較してみると
アメリカでも日本でも『英国王のスピーチ』が圧勝だ。
(参考 『英国王のスピーチ』米 $135,453,143 日 $21,400,881 『ソーシャル・ネットワーク』米 $96,962,694  日 $16,985,483 参照BOX OFFICE MOJO
観客の目からみると、この受賞は"妥当"なのかもしれない。
だが、前述のとおり、アカデミー賞は"大衆賞"であるべきではない。

その年で最も優れた映画=作品賞、でいいではないか?と単純に考える人も多いだろう。
確かにその通りだが、過去の受賞作品をひもといていくとこの公式どおりに受賞した例はほとんどない。作品の質だけでない、何かのプラスαが働いた結果が受賞につながっている。今回はそのプラスαが全く感じられない。

プラスαのひとつとして、アカデミー賞には時代を映す鏡の役割もある。その年に時代を反映した作品がなかったのであれば、『英国王のスピーチ』のような作品が受賞しても構わないと思う。だが、今年はまさに"時代を切り取った"作品があった。もちろん『ソーシャル・ネットワーク』のことだ。お世辞にも映画向きとは言えない題材に果敢に挑み、IT業界のもつ(良くも悪くも)スピード感を見事に表現。『ソーシャル・ネットワーク』は2010年を代表するにふさわしい作品だった。授賞式直前、リビアなどの市民革命にfacebookが大きな役割を果たした、という報道もなされた矢先だったのに...。

にもかかわらずアカデミー賞は50年前でも十分通用する、新鮮味に乏しく、内容的にもまったくフックのない無難な映画を"2010年を代表する映画"として選出してしまった。2010年の作品賞は,時がたつにつれ、「アカデミー賞のミスチョイス」のひとつに数えられてしまうに違いない。
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第83回(2010年)アカデミー賞ノミネート一覧

※ ★マークは受賞作品。リンクは当サイト記事もしくはamazon

作品賞
英国王のスピーチ」   
  「ブラック・スワン
  「ザ・ファイター
  「インセプション
  「キッズ・オールライト
  「127時間
  「ソーシャル・ネットワーク
  「トイ・ストーリー3
  「トゥルー・グリット
  「ウィンターズ・ボーン

主演男優賞
コリン・ファース 「英国王のスピーチ」
  ハヴィエル・バルデム 「Biutiful ビューティフル
  ジェフ・ブリッジス 「トゥルー・グリット」
  ジェシー・アイゼンバーグ 「ソーシャル・ネットワーク」
  ジェームズ・フランコ 「127時間」

主演女優賞
ナタリー・ポートマン 「ブラック・スワン」
  アネット・ベニング 「キッズ・オールライト」
  ニコール・キッドマン 「ラビット・ホール
  ジェニファー・ローレンス 「ウィンターズ・ボーン」
  ミシェル・ウィリアムス 「ブルーバレンタイン

助演男優賞
クリスチャン・ベール 「ザ・ファイター」
  ジョン・ホークス 「ウィンターズ・ボーン」
  ジェレミー・レナー 「ザ・タウン
  マーク・ラファロ 「キッズ・オールライト」
  ジェフリー・ラッシュ 「英国王のスピーチ」

助演女優賞
メリッサ・レオ 「ザ・ファイター」
  エイミー・アダムス 「ザ・ファイター」
  ヘレナ・ボナム=カーター 「英国王のスピーチ」
  ヘイリー・ステインフェルド 「トゥルー・グリット」
  ジャッキー・ウィーヴァー 「アニマル・キングダム

監督賞
トム・フーパー 「英国王のスピーチ」
  ダーレン・アロノフスキー 「ブラック・スワン」
  デヴィッド・O・ラッセル 「ザ・ファイター」
  デヴィッド・フィンチャー 「ソーシャル・ネットワーク」
  ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 「トゥルー・グリット」

オリジナル脚本賞
「英国王のスピーチ」
  「家族の庭
  「ザ・ファイター」
  「インセプション」
  「キッズ・オールライト」

David Seidler winning Best Original Screenplay for "The King's Speech"
   
脚色賞
「ソーシャル・ネットワーク」
  「127時間」
  「トイ・ストーリー3」
  「トゥルー・グリット」
  「ウィンターズ・ボーン」

Aaron Sorkin winning Best Adapted Screenplay for "The Social Network"

撮影賞
「インセプション」
  「ブラック・スワン」
  「英国王のスピーチ」
  「ソーシャル・ネットワーク」
  「トゥルー・グリット」

"Inception" winning Best Cinematography

美術賞
アリス・イン・ワンダーランド
  「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1
  「インセプション」
  「英国王のスピーチ」
  「トゥルー・グリット」

"Alice in Wonderland" winning the Oscar® for Art Direction


音響賞(録音賞)
「インセプション」
  「英国王のスピーチ」
  「ソルト
  「ソーシャル・ネットワーク」
  「トゥルー・グリット」

編集賞
「ソーシャル・ネットワーク」
  「ブラック・スワン」
  「ザ・ファイター」
  「英国王のスピーチ」
  「127時間」
   
"The Social Network" winning Film Editing


作曲賞
「ソーシャル・ネットワーク」
  「ヒックとドラゴン
  「インセプション」
  「英国王のスピーチ」
  「127時間」

"The Social Network" winning Best Original Score 
  
歌曲賞
"We Belong Together"(トイ・ストーリー3)
  "Coming Home"(カントリー・ストロング
  "I See the Light"(塔の上のラプンツェル
  "If I Rise"(127時間)

"We Belong Together" winning Best Original Song
   
衣装デザイン賞
「アリス・イン・ワンダーランド」
  「ミラノ、愛に生きる
  「英国王のスピーチ」
  「テンペスト
  「トゥルー・グリット」

"Alice in Wonderland" winning the Oscar® for Costume Design

メイクアップ賞
ウルフマン
  「バーニーズ・バージョン ローマと共に」
  「The Way Back」
   
"The Wolfman" winning the Oscar® for Makeup

視覚効果賞
「インセプション」
  「アリス・イン・ワンダーランド」
  「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」
  「ヒア アフター
  「アイアンマン2

"Inception" winning the Oscar® for Visual Effects

音響編集賞
「インセプション」
  「トイ・ストーリー3」 
  「トロン:レガシー
  「トゥルー・グリット」
  「アンストッパブル

短編賞
<アニメ>
「The Lost Thing」
  「デイ&ナイト」
  「The Gruffalo」
  「Let's Pollute」
  「マダガスカル 旅の日記」

"The Lost Thing" winning Best Animated Short Film

<実写>
「God of Love」
  「The Confession」
  「The Crush」
  「Na Wewe」
  「Wish 143」

"God of Love" winning Best Live Action Short Film

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
「Strangers No More」
  「Killing in the Name」
  「Poster Girl」
  「Sun Come Up」
  「The Warriors of Qiugang」


<長編>
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実
  「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
  「Gasland」
  「レストレポ アフガニスタンで戦う兵士たちの記録」
  「ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡」

"Inside Job" winning Best Documentary Feature


外国語映画賞
未来を生きる君たちへ」 (デンマーク)
  「Biutiful ビューティフル」 (メキシコ)
  「籠の中の乙女」 (ギリシャ)
  「灼熱の魂」 (カナダ)
  「Outside the Law」 (アルジェリア)

"In a Better World" winning Best Foreign Language Film

長編アニメ賞
「トイ・ストーリー3」
  「ヒックとドラゴン」 
  「イリュージョニスト
   
"Toy Story 3" winning Best Animated Feature

アービング・G・タルバーグ賞
フランシス・フォード・コッポラ

名誉賞
ケヴィン・ブラウンロー
ジャン=リュック・ゴダール
イーライ・ウォラック
2011.12.25 Sunday | 01:05 | アカデミー賞の軌跡 | comments(4) | - |

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2017.03.12 Sunday | 01:05 | - | - | - |

コメント

moviepad様
お久しぶりです。
一年経って思い返すと、「トイ・ストーリー3」が一番楽しかったあなあ…と何だかずっと前のことのようです。
しかし、今年はシネコンで、超大作お金かけました〜映画しか観ておりません。トム・クルーズはやっぱりスターだなあと思いました。

年内に新しい記事を読むことができて、うれしいです。クリスマスプレゼントのようです。
2011/12/25 2:36 PM by パール
パールさん、ご無沙汰しております。

>今年はシネコンで、超大作お金かけました〜映画しか観ておりません。

あらら...といっても自分も似たようなものです。
近所のミニ・シアターがとうとう1件になってしまいました。
シネコン系の映画で食指をそそるのが少なく、今年面白かったのは、「ソーシャル・ネットワーク」と「マネーボール」ぐらいかな...。そもそも劇場で映画を観た数が少なすぎて、何を観たのかも思い出せない(^^;

>年内に新しい記事を読むことができて、うれしいです。クリスマスプレゼントのようです。>

こんな文句ばっかりの楽しくない記事ですいませんm(_ _)m
そもそもこれは3月に仕上げる予定の記事でしたが、今年のアカデミー賞があまりにも面白くなかったのですっかり放置していました。来年になると次のアカデミー賞シーズンがきてしまうのでその前に片づけておこう、って感じです。


これが今年最後の記事。今年は何と映画記事、2つ、アカデミー賞記事7つ全部で9個しか記事書いてない(^^;来年はしばらくアカデミー賞記事が中心になりますが、新作映画記事も少しは書こうと思っています。

少し早いですが、来年もよろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。
2011/12/25 9:52 PM by moviepad
moviepad様

『英国王のスピーチ』は期待が大きかったせいか、正直、そんなに良い作品?と思ってしまいました。
>コリン・ファースは嫌いじゃないけど、オスカー受賞するほどの演技だったかな?とひそかに思ってます。
全く同感です。
ヒュー・グラントなら、もうちょっと面白くなったかも…

第84回については、今のところ、『アーティスト』とか『戦火の馬』とかの名前が挙がっているようですが、もしかして、よくできました〜タイプの優等生作品なのかもしれない…とちょっと不安も抱きつつ、それでもやっぱり アカデミー賞の授賞式は楽しみです。
moviepad様の記事もたくさん読ませていただけたらうれしいです。

新しい年がよい年であるようにと、こんなに願った年の暮れはありませんでした。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
心より願っております。
2011/12/30 11:04 PM by パール
パールさん、こんばんわ

『英国王のスピーチ』は、ヒューのほうが適役ですよ。だた、あのお目目パチクリ演技を多用されたら困るけど。(笑)

84回、『アーティスト』はちょっと期待してるんですけどね。『戦火の馬』は良くも悪くもスピルバーグドラマって感じらしいです(^^;前評判は高かったのですが、オスカーノミネートは微妙。まあ、詳しくは来年。でも全体的にことしよりは面白くなりそうです。

>新しい年がよい年であるようにと、こんなに願った年の暮れはありませんでした。

本当、そうですね。
パールさん、そして更新ないにもかかわらず当サイトに遊びにきてくださった皆様、よいお年をお迎えください。


2011/12/31 9:41 PM by moviepad

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