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ソーシャル・ネットワーク

ソーシャル・ネットワーク(2010 アメリカ)

ソーシャル・ネットワーク原題   THE SOCIAL NETWORK
監督   デヴィッド・フィンチャー
原作   ベン・メズリック 「facebook」
脚本   アーロン・ソーキン
撮影   ジェフ・クローネンウェス
音楽   トレント・レズナー  アッティカス・ロス
出演   ジェシー・アイゼンバーグ 
      アンドリュー・ガーフィールド
      ジャスティン・ティンバーレイク
      アーミー・ハマー マックス・ミンゲラ
      ブレンダ・ソング ルーニー・マーラ

第83回(2010年)アカデミー賞脚色、編集、作曲賞受賞。作品、監督、主演男優(ジェシー・アイゼンバーグ)、撮影、録音賞ノミネート

世界最大のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)facebookの創設者、マーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学中退後、24歳で史上最年少のBillionaire(10億ドル)長者)になったが、強引な経営により訴訟に巻き込まれた。デヴィッド・フィンチャー監督最新作映画『ソーシャル・ネットワーク』はそのfacebookの創業とその後の2つの訴訟をめぐる物語である。「現代的な舞台で友情、裏切り、権力、階級、嫉妬といった古典的な要素が全部含まれていたことに惹かれた」と脚本のアーロン・ソーキンが語るとおり、ストーリー自体に新味はないが、シリコンバレーを描いた初の本格的映画ということで注目度も高く、映画公開後、絶賛が相次ぎ、2010年度映画賞の作品賞をほぼ総ナメ状態、アカデミー賞でも受賞本命とされている話題作である。



映画はベン・メズリックが出版社に持ち込んだ14Pの企画書が映画化のきっかけ。出版社がその企画書をハリウッドに持ち込み、アーロン・ソーキンのもとに脚本の依頼があった。原作と映画脚本がほぼ同時進行で進められたという。まるでIT企業のようにスピーディ(笑)。だがともにマーク・ザッカーバーグをはじめとするフェイスブック側の強力は得られていない。よって彼らを描きたくても描けないのだ。映画の中で「陪審員はあなたに好感を持たない」という台詞があるが、まさに第3者、とくにフェイスブックを利用していない側から観たフェイスブックストーリーと言える。映画ではマーク・ザッカーバーグを持ち上げてもいないし、批判的に描いているわけでもないが、本心がどちらにあるかは明確だ。




マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)が恋人エリカ(ルーニー・マーラ)の と口論する場面から映画はスタート。マークの「俺は頭がいいんだぜ」といわんばかりの話し方に辟易する。(これはいわゆる"ハーバード流マシンガントーク"で、1999年から2003年までハーバードに在学していた女優ナタリー・ポートマンが監修しているらしい。) "中身がありそうにみえるだけ"の会話のオンパレードがうんざりするが最後、エリカが強烈な一言を放つ。「あなたがモテないのは、おタクだからじゃないわ。最低の人間だからよ」物語はこの言葉が本当かどうかを観客に検証させるように進んでいく。

実際のマークは現在の恋人とファイスブック立ち上げ以前からずっと交際しており、この箇所(およびラスト)は創作のようである。この創作箇所に製作サイドの主張が隠されているのは確かだろう。だが、映画『ソーシャル・ネットワーク』は人間ドラマととらえるのは無理がある。映画の登場人物の"好き"とか"嫌い"などの人間的感情は描かれていないからだ。"自分をひとかどの人物に見せたい"、"金をもうけたい"、"組織を大きくしたい"といった欲望だけで事は運んでいく。すさまじいスピードで展開していくため、感情は昇華するゆとりを与えてもらえない。欲望だけが前を突っ走り、その奥に潜む感情は置き去りにされたままなのである。その"置き去りにされた感情"の象徴としてラスト場面は創作されたのであろう。

フェイスブックはどういう目的で作られたのか?この作品に関心がある人なら誰でも知りたいことだろう。だが映画を観ると「女の子にふられた腹いせでなんとなく作ってみたら成功して後にひけなくなった」みたいな印象しかなくく、どうしてこれだけの人がフェイスブックにはまったのか?という社会現象に対する考察もない。製作サイドは"ネットの世界でたくさんの友達を得ても、リアルの友達を失っては意味がない。リアルの友達をもっと大切にしろ"などと主張したかったのかもしれないがそれを映画のメインテーマととらえるには無理があるし、もしそうであればこの作品は失敗であろう。だが、この映画は成功している。ネット社会に強く求められるスピードが何をもたらすかを見事に表現しているからだ。いわば"空気"のようなものを映像化することが目的だと思われるため、映画においてどこまでが事実か?どこが脚色か?物語の内容などはそれほど重要ではないと思われる。

ではその"空気"とやらを少し見ていくことにする。

 アイデアは誰のもの?
マークはハーバード大学のシステムをハッキングして女の子の品定めサイトを作った。アイデア自体はそれほど目新しい発想ではない。筆者がネットをはじめた2000年ごろ、若い(一般人の)男女の写真が次々と映し出され、COOLかそうでないかを投票させるサイトを見つけたことがある。ひっどいサイトだと思いつつも、面白いのでつい....。(たぶんhot or notだと思う)マークがこのサイトを作った2003年ごろ、同じようなアイデアのサイトはおそらくどこかにあっただろう。

2000年ごろ、ネットビジネスでの1年は通常のビジネス分野の7年に相当するスピードで進んでいるという話を聞いたことがある。まさにネット社会ではスピードが命。この映画でのウィンクルボス兄弟のようにアイデアはもっていてもそれを実行する力がなければ出し抜かれてしまうのである。ネット社会では"誰が最初にそのアイデアを出したか?"はさほど重要視されない。"誰がイチ早くそのアイデアを実行したか?"で勝負なのだ。例え有益なアイデアを出したとしても、後発組がそれを上回るスキルとスピードでそのアイデアを追髄すれば、先発組をあっさり抜いてしまう。IT関連で働いている人はもちろん、アフィリエイトなど何らかの形でネットビジネスを試みたことのある人にとってはこんなことは常識。ウィンクルボス兄弟が"パクリ"と主張することは、(オリジナリティの主張ではなく)単なる金目当てにしか見えない人も多いのではないか?

 スピード勝負!
ハーバードのサイトセキュリティ担当者は「ハッキングは4時間でつきとめた」と胸をはる。それに対しマークは「4時間もかかったのか...」まさにこの感覚の差。セキュリティ担当者の感覚は旧世代の遺物だ。今のネット社会、サーバーにトラブルがあり原因解明に4時間もかかっていたら致命傷と言えるかもしれない。

映画『ソーシャル・ネットワーク』の展開は、このネット社会のスピード感を見事に体現している。この映画に対して、"この薄っぺらさが現代社会の象徴"と褒めているのか貶しているのかよくわからない評をしている人を複数見かけた。年配の人になればなるほどこのような所感を抱くだろう。筆者も半分くらいは共感しそうになるが、やっぱり違うなと思う。確かに薄っぺらいといえば薄っぺらい。だがこれが"薄っぺらく"見えるのは物事が機能するスピードが速すぎるからだ。十分に時間をかけて練り上げ、発酵させるという発想がここにはない。

 イメージがすべて!
早めの広告展開をはかろうとするエドゥアルド・サベリン アンドリュー・ガーフィールド)に対し、マークは「クールじゃない」と一蹴。もう少し登録者が増えるまでは目先の利益よりもイメージのほうが大事と考えていたのだろう。他のエピソードをみてもマーク・ザッカーバーグはやたらイメージを気にしていることがよくわかる。そう、スピードが命のネット社会、即座にかけめぐるのは実態ではなくあくまでもイメージなのである。ラスト、新米弁護士から「裁判で争った場合、陪審員はあなたにいいイメージをもたないだろう」というひとこと。これはイメージ至上主義のネット企業経営者への強烈なアイロニーである。

ちなみにマーク・ザッカーバーグは、アメリカでこの映画の試写会が行われた当日、巨額の寄附行為を行うと発表している。映画によるイメージダウンをおそれた「ダメージコントロール」だという批判もあったが、結果として映画の話題作りに一役買ってしまった。

 映画の公開でイメージさがる?
フェイスブックはもともと若者からは支持されたが、大人たちは自分の人生をネット上で公開するのは危険と考える人が多く賛否両論だった。映画『ソーシャル・ネットワーク』公開後、18歳〜34歳までの層はフェイスブックに対する好感度が上昇したが、50歳以上ではやや下落したという。恩義がある人であっても今、才能のない人は切り捨てる。こういうドライで合理的な感覚を若者はcoolだと思うのだろうか?ちなみにマーク・ザッカーバーグ及びフェイスブック社はこの映画を公認していない。

ところでマーク・ザッカーバーグは当初、映画を観賞する予定はないと言っていたが実際には映画公開後、映画館を貸し切って社員全員といっしょに観たようだ。マークはスタンフォード大学で講演を行った際、「映画で正確なのは僕が来ていた衣装だけだ。女の子にふられたからとか、エリートになりたいからという理由でフェイスブックを立ち上げたわけじゃない。何かを作りたいから作ったということは映画製作者には伝わらなったようだ」と話していたらしい。ただし、自分を演じたジェシー・アイゼンバーグの演技に対しては"good job"と評価していたというが映画について詳細を語ることは避けている。オーソン・ウェルズの名作『市民ケーン』(1941)が公開されたとき、新聞王ハーストはあの手この手で映画の公開を妨害したが、今そういうのはcoolじゃない、映画の評価は高いようだし、これはイメージダウンではなく宣伝になるかも!とマークは考えているのかもしれない。 こういう状況らしいデス。→。「ソーシャル・ネットワーク」効果? 今年のFacebook広告収入は倍増か これじゃケチつけんわな〜。それにしても今の世の中ってホント話題になったもの勝ちなんですね(^^; 2 それどころか...企業価値は4兆円超に、米フェースブックが1200億円調達フェイスブックは2012年にも新規株式公開を行うとみられており、大型上場への期待から、市場関係者や投資家の注目を集めている(読売新聞より)、そーです。マーク・ザッカーバーグ恐るべし。



facebookに限らず、新しいネットサービスを作りだしたのは、有能なプログラマー、いわば理系の人だ。彼らがつくりあげたサービスの考え方というのは、自分のような100%文系人間にはドライすぎて感覚的になじめないものも多い。映画『ソーシャル・ネットワーク』は理系感覚の世界を、脚本のアーロン・ソーキンが文系感覚で皮肉り、その色を技術に明るいデヴィッド・フィンチャー監督がやや緩和して作り上げた、そんな印象だ。ラストに流れる曲はビートルズの"Baby, You're A Rich Man"。

ケレン味がかった持ち味が売りだったデヴィッド・フィンチャー監督。作風に明らかな変化があったのは前々作『ゾディアック』(2006)からだ。今もなお未解決なままの連続殺人事件に対し、警察すら舌をまくほど入念なリサーチを行った。作品のベースとなっているのは「真実を知りたい」という30年以上にわたる地道な思いだった。作品評価は高かったが、興行的に不発、6月公開ということもありアカデミー賞シーズンには忘れ去られてしまった。そんなデヴィッド・フィンチャー監督の新作は『ゾディアック』と正反対のアプローチた。事実にとらわれすぎず脚色も存分におりまぜ、内容よりもそこに横たわる空気を重視。スピーディな世界感を構築し、アカデミー賞に王手をかけている。時代が求めるものはこういうものなのか?いずれにせよ映画『ソーシャル・ネットワーク』がネット社会の空気を見事に描いた傑作であることは間違いない。
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2011.01.19 Wednesday | 00:24 | 映画 | comments(6) | trackbacks(2) |

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2018.06.13 Wednesday | 00:24 | - | - | - |

コメント

moviepad様
映画としては傑作なのだなあと思いました。

>内容よりもそこに横たわる空気を重視。スピーディな世界感を構築し
ながら、"置き去りにされた感情"にも触れているバランスの取れた作品でした。
ジェシー・アイゼンバーグの演技も良かった。

でも、映画を観た後に、面白かった!とか、余韻に浸りたくなったとか、心の揺れが伝わってきたとか、締め付けられるような気持ちになったとか、希望が胸に残ったとか…そういう映画ではありませんでした。
この数年、大作と呼ばれ、評価の高い映画にも、あまり心打たれることがありません(涙)。
2011/01/20 4:14 PM by パール
パールさん、こんばんわ

心を打たれるような映画じゃないことだけは確かです(笑)
そもそもドラマ部分に大した意味はない。
新規事業を手掛けた企業にならどこにでも起こりうるような話ですし。
人間ドラマというよりビジネス映画ですね。

強いて言えば
ラスト近くの、新米弁護士の台詞が物語の肝かな、と。
スピード勝負の世界では感情なんて気にしてたら乗り遅れてしまう。
大事なのはイメージだけ。それ以外は合理的にぱっぱと切り捨てる。
イメージを貶めることによって友人ですら切ろうとしたマークが
「陪審員はあなたによい印象をもたない」と言われ唖然とする...。
見事なしっぺ返しですね。

ネット社会で、スピード重視がもたらしたイメージ至上主義...
そういう、現代社会の"空気"がうまく表現されている作品だと思います。
余韻が残らないというのも極めてネットっぽいし(笑)

感動はしませんでしたが、無茶苦茶面白かったです!
アカデミー賞はコレで決まりでしょう。
2011/01/20 7:41 PM by moviepad
こんにちは。
お久しぶりです。
この映画、最近、やっと見ました。
自分は理系人間であることもあるし、自分の周りで起こっていることともリンクする部分があって、いろいろ考えました。
ネット社会のスピード感も出てましたよね。

自分のやりたいことをすることによって、何かを失うこともある。
そのリスクを取ることができるのか?
そんなことを問われたような気がしました。

もちろん、そんなことを考えている間に、ネットの社会では乗り遅れてしまうのですが・・・

面白い映画dした。
2011/02/04 6:30 AM by
こんにちは
やっと観てきました。
感想は好きです!
まず、早口なのがいい(笑)
映像の見せ方、音楽好み。

「製作サイドは"ネットの世界でたくさんの友達を得ても、リアルの友達を失っては意味がない。リアルの友達をもっと大切にしろ"などと主張したかったのかもしれない」
おおー私は少なからず、こう思った部分ありますよ。特にラストシーンでね。
そうなの・・・ラストは私を嵌めるために作られたのね(爆)

ネットが社会の中でかなりの存在感があると、
またも確認した作品で、理系の男子の面白さも堪能。ストーリーもリズムがあり面白かった。
むむ・・主人公であるマークの協力はなしの映画だったのですね・・・
とりあえず、私のお気に入りの一つになりました。
2011/02/05 9:46 PM by zukka
亮さん、こんばんわ

>自分は理系人間であることもあるし、自分の周りで起こっていることともリンクする部分があって

やっぱりそうなんですね(^^;

>もちろん、そんなことを考えている間に、ネットの社会では乗り遅れてしまうのですが・・・

それなんです、それ(笑)


ネットが存在する限り、スピード重視の基本姿勢はかわらない。
スピードで昇華してよい情報とそうでない情報とを受け手サイドが分別していくしかないんですね。

映画は"スピードで消化していく情報"ではないと思っているので、このサイトはこの映画で示されている価値観とは真逆のことをやり続けます(笑)。
2011/02/07 12:52 AM by moviepad
zukkaさん。こんばんわ

>まず、早口なのがいい

私は冒頭の場面でこんな奴は東京湾に沈めちまえと思いました(爆)

ネット上の友達とリアルの友達...
そういうことをわざわざ区別する必要はない、と考える人が
増えてくるのでは?と思っていますが...

こてこての理系世界をばりばりの文系脚本家が精いっぱい抑えて描きました!って感じが面白い作品でした。
2011/02/07 1:05 AM by moviepad

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ソーシャルネットワーク
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(幕張コーポ前 2011/01/28 12:14 AM)
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