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夢やぶれて / スーザン・ボイル

評価:
スーザン・ボイル
Amazonおすすめ度:

第53回グラミー賞最優秀ポップ・アルバム(Best Pop Vocal Album)ノミネート

天使の歌声をもつ田舎のオバサン...。
英国の公開オーディション番組"Britain's Got Talent"への出演により一夜にして世界的に注目を集めたスーザン・ボイル。そのオーディション風景を映し出したyoutube動画は何と1億2000万回ものアクセスを集め、2009年ユーチューブ上最も再生回数の多かった動画ランキングで堂々のトップ。まさに"時の人"となったスーザン・ボイル。待望の歌手デビューアルバムが『夢やぶれて』である。2009年11月23日に発売されるや発売1週目で英国41万枚、アメリカ70万枚を売り上げるなど、世界各国で次々とアルバムチャートN0.1を獲得。"youtubeの歌姫"から、文字通り"世界の歌姫"へと変貌を遂げている。

スーザン・ボイルのことはもちろん知っていた。例の動画も見た。ボイルが年齢をいって「私の一部にすぎないわ」と腰をふる場面、そしていざ歌声を発するとそれまでの侮蔑的な雰囲気が一変、大歓声に変わる瞬間は痛快だった。ボイル本人には好感が持てたし、48歳のさえない独身女性が一夜にしてスターになるという物語は興味深いものだった。だが、肝心の彼女の歌い方が...。確かに声はキレイだし、お上手である。だが、個人的には声を張り上げて歌う"どう、うまいでしょ?ワ・タ・シDocomo80"タイプの歌い方があまり好きではないこともあり、スーザン・ボイル現象、個人的には関心が薄かった。

そんな自分が今、彼女のCD『夢やぶれて』をBGMにこんな記事を書いている。そのきっかけは....はい、紅白歌合戦で彼女の歌唱場面を見てからでありマス。

正直いって2009年の紅白はどーでもいいラインナップ。特別出演のスーザン・ボイルと永ちゃん、そしてメガ幸子さえ押さえとけば、後は見なくてもよいと思っていた。永ちゃんとメガ幸子はしっかり見たが、肝心のボイルのほうは...風呂入っていて見逃してしまった(;_;) 仕方なくこれまで通りyoutubeで見るはめに。ああ、意味ねえ...。

Susan arrives in Japan

で、その感想である。ボイルの紅白出演はイギリスなどでもかなり話題になっていたようで、動画サイトを通して世界的に視聴されることは確実。なのに何故某タレントにエスコートさせる余計なマネを?相も変わらぬNHKの下世話演出感覚にあきれ果てたが、いざ歌が始まると...これがいいのである。日本語字幕つきで聞いたのがよかったのだろうか?

『夢やぶれて』の歌詞は、まるでボイルがシンデレラ?になるまでの軌跡を歌ったような内容。

"夜に虎たちがやってくる。彼らは雷のようにうなりながら
希望を引き裂き、夢を恥に変えてしまう"

"この世にはかなわぬ夢があり、乗り越えることができない嵐がある"

"こんなはずじゃなかった。人生は私が思い描いた夢を打ち砕いた(And life has killed the dream I dreamed)"

と歌って夢をつかむとは、なんとも皮肉なものである。
紅白でのボイルはひたすら声を張り上げていた感のあるオーディション番組のときよりはるかに情感あふれる素晴らしい歌唱。これまでで一番良いのではないか?異国の地での緊張感が、歌にいい意味で影響を与えている。でも考えてみればこれは当たり前。もう、彼女は"TVのオーディション番組に参加した、田舎のさえないオバサン"ではない。CDを発売しているプロの歌手なのだ。

だが、センセーションを巻き起こしてから半年たらずで、彼女が"歌が格段にうまくなっていた"ことに感動した。遅ればせながら、彼女の歌声ももっと聞きたくなりCD購入の運びとなりました。

全体的な印象としてはボーカルはかなり洗練されていた。
48歳とはとても思えない、クリアで素直な声が心地よい。
とくによかったのは"I dreamed A dream"(夢やぶれて)はもちろん、スタンダード・ナンバー"Cry Me A River"、マドンナのスマッシュヒット"You'll See",そして日本のみのボーナストラック"Wings To Fly(翼をください)"といったところか。

日本でもおなじみ、ザ・モンキーズの"Daydream Believer"をあんなにしっとりとカバーしていたのには驚いた。ただ、オリジナルのイメージが強すぎるため、ボイルバージョンはまだしっくりこないが、聞き込めば耳になじむかもしれない。

"Cry Me A River"はジュリー・ロンドンの歌唱がとくに有名で、個人的にも大好きな曲。ボイルの歌唱は、低音で渋く歌うジュリー・バージョンとは似ても似つかぬクリアボイスだが不思議と抵抗がなかった。それもそのはず、どうもこの曲年季もののようなのだ。

1999年にボイルはチャリティCD"Music for A MIllennium Celebration,Sound of West Lothian"の中でこの曲を歌っている。1,000枚限定で発売されたため、今ではコレクターアイテムとなっているようだ。このときはまだモロに歌い上げているなあ...。

参考→Exclusive: Cry Me A River - Susan Boyle's first ever music release また、この頃、ロバータ・フラックの名曲"やさしく歌って"も録音したようです。Susan Boyle - Killing Me Softly With His Song。最近、TV番組でも、"Cry Me A River"を歌っているが、歌い方も10年前よりかなり洗練されてきていますね。

このアルバム、1曲目にローリング・ストーンズの"Wild Horses"をもってくるなど思い切った選曲もある一方、"Amazing Grace"や"Silent Night"(きよしこの夜)といった定番曲もある。全13曲中、12曲がカバー。9曲め"Who I Was Born To Be”だけが、このアルバムのために書き下ろされたオリジナル曲である。興味深いのはこの曲の歌唱がややぎこちないこと。ボイルは曲を自分のものにするのに時間がかかるタイプなのかもしれない。

だが、ラストの"Wings To Fly"(翼をください)。いわずと知れた赤い鳥の名曲で、合唱曲としてもおなじみの曲。日本のみのボーナストラックであり、ボイルはこの曲をレコーディングまで知らなかったはずだが、こちらのほうは見事に歌いこなしている。海外のファンからは「なぜ日本版にしか収録されないのか」と不満の声があがっているらしいが、それもそのはず。仕上がりはアルバムの中でも1、2位を争うくらい良い出来なのだ。声の美しさはN0.1。この曲が一番彼女にあっている気もする。何と贅沢なボーナストラック!

話題の人、スーザン・ボイルのデビュー・アルバム『夢やぶれて』は全体的には非常に聞きやすい仕上がり。クリアな声ゆえ耳障りにならないのでBGMに最適。寝る前に酒でもひっかけながら静かに聞き入るのも粋かもしれない。

しかし、こういう人が突然ブレイクすることができる欧米の土壌がうらやましい。日本ではまず起こりえない現象。もし、日本で"スーザン・ボイル現象"のようなことが起こるとすれば、前もって計画された、いわゆる"ヤラセ"だろう。また、日本のオーディションだったら間違いなく彼女は書類審査とやらで落とされる。転職試験などで履歴書に書かれた年齢だけを見て、応募者をすぱっと切り捨てるような採用担当者なども、"スーザン・ボイル物語"に心うたれたりするのだろうか?

スーザン・ボイルは最初のオーディション時、エレイン・ペイジのような歌手になりたいと答え、審査員の失笑を買った。だが、そのペイジから歌唱を称えられ、ステージで共演もはたした。まさに遅咲きのシンデレラストーリー大驀進中なのである。

Susan Boyle duets with Elaine Paige December 2009 - "I know Him So Well"



このシンデレラストーリーから"夢を持ち続けること"、"歌に外見も年齢も関係ない"、"外見と声のギャップが衝撃的"など能書きは山ほど思い浮かぶ。でも、それだけの理由なら"スーザン・ボイル現象"が、こんなに拡がることはなかったはずだ。彼女の登場が今のエンターティメント、そして世の中が忘れていた、もっと深い"何か"を人々の心の奥底から呼び起こしたのだ。

今、こんな状況になって改めて例のオーディション場面をみると感慨深いものがある。決勝のとき、精神的に参っている様子が伝えられるなど、スーザン・ボイルという女性は本来、そんなに図太い神経の持ち主ではない。オーディションはまさに一世一代の賭けだった。

「なぜ夢はかなわなかったの?」
機会がなかったんです。でもここで変わるかも

ひとりの女性の人生がまさに、ここで360度変わった。
また、侮蔑から賞賛に変わる瞬間でもあった。人は皆、自分の人生にそれが訪れる機会を待っているのだ。あの動画を100回も1,000回も繰り返しみた人も多い、というのもうなずける。

ちなみに、あのレディガガが彼女について、次のように語っている。
「スーザン・ボイル、大好きよ。彼女は、わたしのウーマン・オブ・ザ・イヤーね。彼女は2009年、ほとんどのアーティストが一生かかって成し遂げる以上のことを成し遂げたわ。2008年の今頃、誰も彼女のことを知らなかった。それがいま、彼女は大御所アーティスト以上のセールスを上げている」引用元

スーザン・ボイルのアルバム『夢やぶれて』はイギリス、アメリカのみならず世界中で大ヒット。発売1ヶ月足らずで既に600万枚!の売り上げを記録。これは一時的な話題、単なるネタの領域を完全に超えている。スーザン・ボイルが12年前、アイリーン・キャラの"FAME"を歌っている映像なども発見されているが、もう、"baby,look at me"とか"Remenber My Name"とわざわざ歌わなくても、皆が彼女に注目している。でもセレブっぽくふるまったりせず、歌うとき以外は"普通のオバサン"の雰囲気を保ち続けてほしいものである。

ちなみにアルバム『夢やぶれて』は、娘の才能を見抜き、オーディション番組に参加することをボイルに薦め続けた、彼女の亡き母親に捧げられている。今の姿を見せたかったでしょうね。

The Susan Boyle Show featuring Antony Hansen and the London cast of Les Miserables



スーザン・ボイルはその歌声だけで世界中の人に夢と希望を与えた。"スーザン・ボイル現象"は2009年、そして2010年の世相を色濃く反映したムーブメントとして末永く記憶されることになるだろう。スーザン・ボイルはまさに、"ワオッ!"な人なのである。
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Susan Boyle - I Dreamed a Dream (iTunes)
Susan Boyle - I Dreamed a Dream
2010.01.03 Sunday | 00:06 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(1) |

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2017.03.12 Sunday | 00:06 | - | - | - |

コメント

おじゃま致します。 スーザン・ボイルさんのエピソードは今もなお感動的です。
また、日本ではこのような人が生まれないだろう、という意見にも悲しいけど賛成します。
わが国も'70年代にはビジュアルは度外視して歌声の良さだけで小椋佳さんがスターダムに上がったのですが、今や音楽はビジュアル第一でF1層(10代20代女性)に媚びた文化に成り下がってますからね。嫌になります。
願わくばスーザンさんの人気が末永く続いて日本にもツアーで来ていただく事、またこの国の文化が実力ある大人に文句を開きますように。
2010/03/17 10:22 PM by born in 1964
born in 1964さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

音楽だけでなく、映画もしかりです。
本屋で映画雑誌のコーナーにいくと、表紙も中身もイケメン俳優ばっかりで
うんざり。F1層(10代20代女性)に媚びた文化は、結果としてその他の層を遠ざけ、
文化を後退させていると思います。

スーザン・ボイルみたいな人は日本では生まれないだろうと考える理由は
ビジュアル以上に、バックグラウンドの面からそう思います。

日本人は"もう何歳なんだから"みたいな考え方が根強いため
48歳で歌手になりたいなんて考えるのはキチガイ沙汰。
"年齢不問のアメリカン・ドリーム"みたいなものを
(スーザンはスコットランド出身ですが)信じていない。
スーザン・ボイルの人気が日本では欧米ほど盛り上がっていないのは
それが原因ではないでしょうか?

ちなみに、スーザンは再来日決まってますよ♪
4/1に日本武道館で、日本交響楽団オーケストラをバックに
コンサートを行うようです。
自分は東京に住んでいないので、観にいけないんですけど。
一度はあの歌声を生で聴いてみたいですね。

>またこの国の文化が実力ある大人に門戸を開きますように。

同感です。
スーザン・ボイルのような人が日本でもどんどん出てきてほしいですね。
日本にも"実力はあるのに、チャンスに恵まれず時が流れていった人"は
たくさんいると思います。
2010/03/19 11:57 PM by moviepad

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「夢やぶれて」スーザン・ボイル
新年が明けて、珍しくCDショップに入った。入り口近くで置いてあったのがスーザン・ボイルの「夢やぶれて」。     紅白にも出場した彼女は去年大ブレークした。イギリスのオーディション番組に出場。優勝こそならなかったものの、その歌声に多くの人は驚いた。そ
(りゅうちゃんミストラル 2010/01/04 11:08 AM)

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