映画のメモ帳+α

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ジュリー&ジュリア

ジュリー&ジュリア(2009 アメリカ)

ジュリー&ジュリア原題   JULIE & JULIA
監督   ノーラ・エフロン
原作   ジュリー・パウエル ジュリア・チャイルド
脚色   ノーラ・エフロン
撮影   スティーヴン・ゴールドブラット
音楽   アレクサンドル・デスプラ
出演   メリル・ストリープ エイミー・アダムス
      スタンリー・トゥッチ クリス・メッシーナ
      リンダ・エモンド

第82回(2009年)アカデミー賞主演女優賞ノミネート(メリル・ストリープ)

1960年代にフランス料理を英語で紹介した本を出版した料理研究家ジュリア・チャイルド。185cmという長身と甲高い声が特徴の彼女は、TV番組にも登場し「ボナペティ!」(BON APPÉTIT! たっぷり召し上がれ)の決まり文句とともに人気を博した。そのジュリアの料理本"Mastering the Art of French Cooking"のレシピ524品目を1年間でつくりあげ、その結果をブログ The Julie/Julia Projectに掲載したジュリー・パウエル。30年のときをへて、料理を通じて自分の人生を切り開いていった2人の女性を描いた作品が『ジュリー&ジュリア』。目のつけどころはユニークだが、どうも食材の"調理法"に失敗してしまったようだ。
 



映画を観終わって満腹感にひたるどころが思い切り空腹感にむしばまれた。映画に出てくるフランス料理が食べたくなったからではない。観たいものを観せてくれなかったからである。

映画『ジュリー&ジュリア』は決してまずい料理ではない。ファーストフードレベルはクリア。100点満点中、70点くらいはつけられる出来である。だが、この映画はおフランス料理の映画。70点じゃ困るのである。ということで映画のレシピのどこに問題があったかを思いつくままに書き連ねてみる。

まず、無駄な調味料が多すぎる。ストーリーをかんたんに記せば、"善き夫に支えられ、料理を通して自分を表現していく2人の女性の姿を描く"といったところ。だが、この"善き夫"が余計なのだ。製作サイドは恋愛の要素も盛り込まないと観客が退屈するという妄想にとらわれすぎている。この映画に興味をもつ人が一番みたいのは"フランス料理"だろう。もっと料理をじっくり見せてほしかった。サエナイ、善き夫なんて観てて面白くもなんともない。(笑)監督、脚本は『めぐり逢えたら』、『ユー・ガット・メール』のノーラ・エフロン。女性監督が女性映画をとればうまくいくとは限らない。むしろ男性監督がてがけたほうが俯瞰的な要素が加わって良かったでは?と感じた。

料理にそれほど関心がない人にとって、この映画に期待するのはジュリア・チャイルドのパフォーマンスだろう。TV番組での豪快なパフォーマンスの再現を楽しみにしていた。だが、それは1シーンだけでしかもブラウン管の中というさみしいもの。途中で挿入されているジュリアのパロディ(男性がジュリアのコスプレをして、途中で指を切ってしまうというギャグ)のほうが面白かった。ただし、ジュリアを演じるメリル・ストリープの演技はいつもながら完璧。ドラマティックな見せ場はないにもかかわらず、ジュリアのおおらかで人生を楽しんでいる姿勢、時折みせる哀しみを見事に体現している。16回目のアカデミー賞ノミネートは確実。3度めの受賞も夢ではないだろう。

一方、ジュリー・パウエル演じるエイミー・アダムスも悪くはない。だが『魔法にかけられて』や『ダウト 〜あるカトリック学校で〜』ほど魅力的には見えなかった。ジュリーの心境はブロガーなら誰でも少なからず共感できる要素はあるだろう。だが、物語として語るにはあまりにも面白みに欠ける。映画はジュリーとジュリアのエピソードが交互に語られていくのだが、ジュリーのパートになると映画のテンションが思いっきり下がるし、ジュリーは今ひとつ好感がもてない人物だ。いっそのことジュリーのパートは全部削ってジュリア・チャイルドの伝記映画に徹してほしかった。そうすればTV番組での料理パフォーマンスもたっぷり観る事ができただろうに...。

JULIA CHILD MEMORIES: BON APPÉTIT! | Preview | PBS


------ここから先、ネタバレがあります。未見の方は要注意!-------

さて、この映画を観終わって疑問に思うことがある。
ジュリアはジュリーのブログを本当に好ましく思っていなかったのだろうか?自分の本のレシピを全部試してみてくれるファンがいることは喜ばしいことに思えるが...。下記の記事が信用に値するのであれば事実のようだ。

Julia Child Considered The Julie/Julia Project 'a Stunt'

嫌っていた理由は映画で語られているとおり。
ジュリアはジュリーのブログをstunt(人目を引くためのばかげた行為)だとみなしていた。その理由は"料理に真剣に取り組んでいない"から。また、4文字言葉が頻繁に登場するのも気に入らなかった。

ここから先は筆者の私見であるが、ジュリアは1年間で524のレシピ総てをつくりあげるという"企画性"が気に入らなかったのではないか?何かを成し遂げようとするときデッドラインを決めるのは重要であるが、そもそも料理はそういう動機でするものではない。自分が心血を注いだ"作品"を自己アピールのための企画物ネタとしてお手軽に消化されては、良い気分はしないだろう。1年間などという制約を設けず、一品一品じっくりと料理に取り組む姿勢が感じられたのであれば、ジュリアも悪くは思わなかったはずだ。

メリル・ストリープは80歳のころのジュリア本人に1度会ったことがあるという。だが、メリルは本人に会ったときの印象ではなく、50歳ころの彼女をモデルとして役つくりをした。映画がそのころの物語だというのもあるが、メリルは80歳のジュリアに対して、TVの料理番組とは違うイメージを抱いたからかもしれない。

------ネタバレ終わり-------

ジュリア・チャイルドのキッチン

映画『ジュリー&ジュリア』は結末がわかりきっている2つのエピソードの羅列ゆえ物語的にはやや退屈である。だが、伝説の料理研究家ジュリア・チャイルドを演じるメリル・ストリープの演技は圧巻。彼女が登場するだけで画面がパァッと明るくなり、何ともいえない大らかな気分になってくる。こんなメリルを観たのもはじめて。メリル・ストリープの演技だけでも見る価値はある作品だ。

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2009.12.12 Saturday | 20:25 | 映画 | comments(2) | trackbacks(4) |

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2020.09.28 Monday | 20:25 | - | - | - |

コメント

こんにちは。
明日が終われば、正月休みに入ります。
折角なので、こちらの映画を観てみようと思ってます。
ネタバレも全部読んでしまったわけですが、メリル・ストリープの演技を堪能しますね。
それにしても、この女優さんは さすが! にどのような役でもこなしますね。
2009/12/27 10:03 PM by
亮さん、こんばんわ。

この映画、強くはオススメしません。
ただし、メリルの演技は一見の価値あり!既に多くの批評家賞も受賞していますし、この作品の演技で3度目のオスカーをとると確信しています。

でもこの映画より、もし未見なら「アバター」をご覧になったほうがよいのでは?
たとえ2,000円払っても3D推奨。ただ字幕版だと字幕まで浮き上がって見えるので、吹替のほうが見やすいかもしれません。

話はそれますが、恒例の年間ベスト10は諸事情により1月中旬発表予定。
それまで当ブログの更新はありません(^^;

ということで、少し早いですが、今年も1年大変お世話になりました。
よいお年をお迎えください!
2009/12/28 12:28 AM by moviepad

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