映画のメモ帳+α

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アイ・ルック・トゥ・ユー /ホイットニー・ヒューストン

評価:
ホイットニー・ヒューストン
Amazonおすすめ度:

ディーヴァ(DIVA、歌姫)という言葉を最近よく聞きます。何をもってディーヴァとみなすかは人によって違うでしょう。個人的には"歌だけでリスナーをひれ伏させることができる歌手"だと考えます。大安売り中のこの言葉、そう簡単には使えないはず。ディーヴァと呼ぶにふさわしい数少ない歌手のひとりがホイットニー・ヒューストンです。ホイットニーはデビュー以来ヒット曲を連発しディーヴァにふさわしい実績を残してきました。優等生イメージだった彼女が問題児ボビー・ブラウンと結婚。"お嬢"の彼女が何で?子供が産まれたまではよかった。2001年1月、ハワイでマリファナ不法所持事件を起こし(司法取引により不起訴)イメージダウン。夫婦そろってヤク中であることが暴露され転落していく...。これ、ホイットニー・ヒューストンの話ですのでお間違いなく(笑)。ホイットニーはリハビリを重ね、2007年にボビー・ブラウンとも離婚。文字どおり再起をかけてつくりあげたのが『アイ・ルック・トウ・ユー』。9月に全米でリリースされるや30万枚を売り上げビルボードアルバムチャート初登場1位。流行り廃りの激しい音楽業界、7年ぶりのオリジナル・アルバムにてこの快挙!"ホイットニー完全復活!"と評判の高い新作です。

ホイットニーのデビューは衝撃的でした。母親はゴスペル歌手シシー・ヒューストン、そして叔母はあのディオンヌ・ワーウィックという血統書つき。モデルのような美貌、そして"ゴスペル・ポップ”と称された脅威の歌声。その歌声を聞きたくて彼女のデビューアルバム『そよ風の贈り物』を購入した記憶があります。ホイットニーの歌唱力については文句なかったのですが、音楽的には無難すぎるというか...大ファンになるというほどではなく、その後のアルバムは借りてすませました。(^^; ベスト盤は買いましたけどね。




決して熱心なファンとは言えなかったにもかかわらず、ひたすら待ちわびていたホイットニーの新作。昨今のガナっているだけのディーヴァ群にうんざりしていたからデス。REAL DIVA、C'mon!

ようやく、本題に入ります。
7月にロンドンで行われたこのアルバムの視聴会でプロデューサーのクライヴ・デイヴィスは「ホイットニーを市場原理に合わせるつもりはない」と断言。うーん、かっこいいジイサンだ。その言葉どおり、アリシア・キース、R.ケリー、エイコンらの旬のアーティストを起用する一方、ダイアン・ウォーレン、デヴィット・フォスターといった大御所やカバー曲もまじえ、ホイットニーらしいポップアルバムに仕上がっています。ただ、かつてTHE NEW YORK TIMESが"ゴスペルに根ざした強力なポップゴスペル唱法の伝統をよみがえらせた”(revitalized the tradition of strong gospel-oriented pop-soul singing")と評したように厚みのある力強い歌唱は影をひそめ、ハスキーにしっとりと歌いかける。彼女の"今"の声に合わせ、R&B、ダンスナンバー、バラードと曲調は違えどミディアム・テンポの曲が大部分をしめています。ホイットニーといえばその声の強さゆえ、1曲1曲が浮かび上がってしまうためアルバムを通して聞くとやや心地悪いこともありましたが、最新作『アイ・ルック・トゥ・ユー』は全体を通して聞いたほうがより堪能できるアルバムです。

 ホイットニーを薬物依存症から救い出したのが母親シシー・ヒューストン。シシーは裁判所の命令書を手に警官を伴ってホイットニーの自宅を訪れ「あなたを失うわけにいかない。悪魔には渡さない」と言いはなった後、ホイットニーをリハビリ施設に強制的に連れて行ったそうです。


個々の曲について簡単に触れます。

・1曲めはアルバム発売と同時にシングルカットされた"100万ドルの恋"(Million Dollar Bill)。ロレッタ・ハロウェイの"We're Getting Stronger"をサンプリングした今どき珍しい?オーソドックスなpop tune。アリシア・キーズスウィズ・ビーツの手による作品です。なんとなく"恋は手さぐり"(HOW WILL I KNOW)を髣髴させますが違うのは歌声...まああれから20年以上たっているだけら当然か。最初、周波数が狂ったのかと思うような低めのロング・トーンはお遊び?アリシアは自分からクライス・デイヴィスに電話をしてアルバムへの協力を申し出たようです。



・2曲めの"Nothin' But Love" と9曲めの"For the Lovers" はジャスティン・ティンバーレーク、ブリトニー・スピアーズなどを手がけたDanja(デンジャー)プロデュース作品。R&Bテイストのミディアムなダンス・ナンバー。ラジオでのオンエアを強く意識した曲?

・3曲めの"Call You Tonight" と"A Song for You"はビヨンセのビッグヒット"Irreplaceable"などで知られるノルウェーのプロデュースチームStargateによるもの。"Call You Tonight"はシングル候補だったようです。(えっ...?)また"A Song for You"はレオン・ラッセルのカバー。最初はピアノの音色にのせてしっとりと歌い上げるのですが途中からダンサブルテイストに様がわり。うーん、最後までバラードで通してほしかった。カバーの達人ホイットニーですが、これはちょっと...。曲調が変わったとたん急に安っぽく聞こえるんだな〜。なお、"Call You Tonight"と8曲めの"Worth It" には、マライア・キャリーの"We Belong Together"も手がけたジョンテイ・オースティンがソングライティングにかかわっています。

・5曲目の"Like I Never Left"と10曲めの"I Got You" はAKON(エイコン)プロデュース。"Like I Never Left"ではホイットニーとデュエットもはたしています。"Like I Never Left"は未完成の状態でネット上にリークされAKONは「シングルになると思っている」とコメントするもリスナーからは"ホイットニーぽくない"と不評。大幅に手直しが入った模様です。アルバム中盤、のどかな清涼剤のような仕上がりになりました。なお、この2曲ホイットニーもソングライティングに加わっています。

何〜がトレンドは追いかけないだ。最近の流行モンばっかりじゃねえか!と思った方も多いでしょう。ハイ、ワタクシもそう思いました。でもホイットニーが歌うとトレンドっぽく聞こえないんだな。声も枯れてるし(^^;。で、不満分子を黙らせるためにちゃんとバラードも用意してございます。ホイットニーといえばバラード!と思う人も多いでしょう。日本で一番有名なのは『ボディガード』の主題歌♪AND I〜イヤ〜イヤ、の"I WILL ALWAYS LOVE YOU"。一時期、結婚式の披露宴によく使われてましたね。別れの曲なのに(爆)。

それはさておき、続きです。

まずは90年代から活躍を続け、マイケル・ジャクソン"You're Not Alone"のプロデュースでも知られるR.ケリーが2曲を提供。幅広い音楽性で知られる彼ですが、ここでは美メロに徹しています。まずはアルバムタイトルチューン"I Look to You" 。個人的にはこの曲が一番好きですね。この曲をアルバムタイトルにした理由についてホイットニーは「この曲に私の言いたいことが集約されているからよ」と語っています。またラストの"Salute"ではR.ケリーは作曲だけでなくプロデューサーとして参加。"Eh eh eh"とバックコーラスもしていています。(笑) ここでは"Don’t call it a comeback, I’ve been here for years."(カムバックだなんて言わないで。私はずっとここにいるのよ)という歌詞が印象的です。ピアノの音色がこぬか雨のように響く。"Salute"はこれまでのホイットニーにはあまりなかったタイプの曲でラストに持ってきたのは意外でした。まさに今だから歌える曲なのかもしれません。コレも個人的にお気に入り。

そして7曲め"夢をとりもどすまで(I Didn't Know My Own Strength)"はダイアン・ウォーレン作曲、デヴィット・フォスター (松田聖子の「抱いて・・・」を作曲したのもこの方デス) プロデュース。笑ってしまうくらいの直球、王道路線で勝負に出ました。「私は痛みを乗り越えた。自分の強さを今まで知らなかった」と歌われるこの曲は今のホイットニーの心情に一番近い曲のひとつでしょう。この曲は9月15日、アメリカの人気TV番組オプラ・ウィンフリーショーで披露されました。その影響で発売3週目にしてアルバムの売り上げが上昇しています。



ホイットニー・ヒューストン7年ぶりの新作『アイ・ルック・トゥ・ユー』は7月、発売に先駆けてロンドン、ニュー・ヨーク、ロサンゼルスで豪華ゲストを招いて試聴会が行われました。"Million Dollar Bill"や"I Look to You"ではスタンディング・オベーションがわきおこるほどの大絶賛。ホイットニー完全復活!と派手に報道されました。まあ、目の前に本人やクライヴ・デイヴィスがいるんですから絶賛するしかないでしょー、ということでこの作品の"真のレビュー"を眺めてみることにします。

大体、似たり寄ったりです。ワタシの感想もほぼ同じであります。まず"選曲が非常によい"。はい、今回の新作はメガヒットになりそうな派手なチューンはありませんが全体的に粒ぞろいであります。また"ホイットニーの声が変化した。深みが増し、ハスキーになった"。はい、そのとおりです。

アルバム全体としては”まあまあ"という評価が支配的のようです。"まあまあ"と称した人は一体何がご不満なのでしょう?はい、ホイットニーの最大の武器であるその"声"なのです。ホイットニー特有のゴスペル風味も時折感じられなくはないのですが全体的にパワー不足。予備知識なしで聴いたら声の主があのホイットニー・ヒューストンと気づかないかもしれません。意地の悪いレビューアーは”ホイットニーよ、かつて君が歌えばスタジアムの屋根だって吹っ飛んだ。今の声じゃ高校の体育館の壁すら揺れないな”と評するほど。まあ、ここまでは思わないにしろ個人的にも"声のパワー不足"が一番の不満であります。例えば"I Look to You"でも"A Song for You"でも、ホイットニーならここら辺で野獣のようなフェイクがくるはずだとずっと構えていたのに...ドッチラケ(^^;。ホイットニーの声の変化を"成熟"ととるか"劣化"とみるかは人によって違うでしょう。ホイットニーとよく比較されるマライア・キャリーなどは明らかに"劣化"なので、"成熟"と看做される要素がある分さすがホイットニーと言うべきかもしれません。ただ、"I Look to You"など全盛期であれば"すべてをあなたに(Saving All My Love for You)"ばりのハイトーンできゅっと聞かせてくれたはず、と思うとちょっと寂しいものがあります。今の"年月が感じられる"声も魅力的ですけどね。

ホイットニー・ヒューストン6作目のオリジナルアルバム『アイ・ルック・トゥ・ユー』は前述のとおり全米アルバムチャートN0.1を獲得しました。当初全米においては9月1日発売とアナウンスされていたのですが来年のグラミー賞ノミネート資格を得るため、1日前倒しの8月31日に変更されています。大復活劇の締めはグラミー受賞?『アイ・ルック・トゥ・ユー』はアメリカの他、オランダ、ポーランド、ドイツ、イタリア、スイス、カナダで既にNo.1を獲得。"世界の歌姫"ホイットニー健在を見せ付けています。

彼女の新作は永久に聞けないのでは?と危惧していたファンも多い。ニューアルバムと立ち直った姿を見せてくれただけでもひと安心といったところでしょう。何はともあれ、大人向けの良質なポップアルバムを本当に久しぶりに聞いた気がします。クオリティは文句なし。ただ、ホイットニー・ヒューストンの本当の実力はこんなモノじゃない。その事はメディアもリスナーも、そして誰よりもホイットニー自身が一番知っているはずです。あのパワフルな声が戻ったときこそ、真の完全復活だと思います。『アイ・ルック・トゥ・ユー』はホイットニー・ヒューストン"完全"復活への第一歩と言うべきアルバムです。

 12/4追記。第52回グラミー賞ノミネートが発表されましたが、ホイットニーの名はどこにもなし(^^;。この程度じゃ復活とは認めないということか?それとも発売日を1日前倒しにしてエントリー資格を得るという露骨なグラミー狙いが嫌われたか?アルバム賞あたりはイケると思っていたのですが...。アカデミー賞もそうですが、アメリカのエンタメ業界は厳しいですね。


 2012年2月12日追記 2月11日ビバリーヒルズのホテルでホイットニー・ヒューストンの死亡が確認されました。ホイットニーはかつて"白く歌いすぎる"という批判に対し、「私はビリー・ホリデイみたいな生き方はしていないの」と反論したことがありましたが...。48歳、早い、早すぎる。厚みのある歌声はもちろん、類いまれなるボーカルセンスの持ち主でした。アメリカのポップ・チャートにおいて、男性はマイケル・ジャクソン、女性はホイットニー・ヒューストンが黒人歌手に大きく門戸を開いた。誰も異論はないでしょう。ホイットニーのような歌手はもう出てこない。one and only Whitney,god bless you!
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Whitney Houston - I Look to You (iTunes)

Whitney Houston - I Look to You



2009.10.01 Thursday | 00:02 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0) |

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2017.04.26 Wednesday | 00:02 | - | - | - |

コメント

夢をとりもどすまで、のその歌詞にはあきれてしまいました。そこまで強がらなくてもいいのに、と。むしろI look to youのほうが素直に応援してあげたくなります。アメリカ人的にはタフであることにあこがれるがゆえに、この歌が喜ばれるのでしょうね。でも、ぼろぼろになったホイットニーはかわいそう。これでカムバックだなんて。グッドモーニングアメリカのライブもひどい。あの声は咽頭炎との話もありますが、ドラッグのせいなのか?らりぴーではありませんが、ちゃんとカンバックできますように。デビュー当時のひらひらな声より今の低音のほうが好きだったりする。
2009/10/01 7:07 AM by ホントニー
夢をとりもどすまでの歌詞、自分はあきれはしませんでしたが...。
復活を印象付けるためにはそういう歌は必要かもしれません。
彼女の歌声に関してはまだまだカムバックとはいいがたいですね。
確かにグッド・モーニング〜のライブは今イチでしたが、続くオプラ・ウィンフリーショーでは少しよくなっている。
歌いこめば歌声も少しずつ回復してくるのではないか、と期待しています。
アルバムの出来はgood! ホイットニーのアルバム中、一番好きかも、です。
2009/10/01 8:09 PM by moviepad

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