映画のメモ帳+α

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ユナイテッド93  〜時期尚早だった9.11の映画化〜

ユナイテッド93(2006 アメリカ)

公式サイトにリンク原題   UNITED 93    
監督   ポール・グリーングラス      
脚本   ポール・グリーングラス   
撮影   バリー・アクロイド      
音楽   ジョン・パウエル   
出演   ハリド・アブダラ ポリー・アダムス

第79回(2006年)アカデミー賞監督、編集賞ノミネート

今日は9月11日。
アメリカ同時多発テロ事件(以下9.11と記す)からちょうど5年である。軍事超大国のアメリカが他国から先制攻撃を受けたことは、アメリカ人のアイデンティティを大きく揺るがした。アメリカでは、この事件の直後2〜3週間は仕事に手がつかず、呆然としていた人が続出したという。9.11をきっかけにしてブッシュ政権は「アメリカの防衛のためには、時には先制攻撃も必要」との方針を固めた。この方針にそってブッシュ政権はイラクに対して大量破壊兵器を隠し持っているという疑惑を理由に、イラク戦争に踏み切った。イラク戦争は泥沼化し、現在も解決の糸口がつかめていない。その発端となった9.11はどうだろうか?無数の推測が乱れ飛ぶだけで、全く全容が明らかになっていない。9.11がアルカイダの仕業であるということさえ、立証できる事実は5年たった今でも浮かび上がっていない。9.11は謎のままなのだ。

そんな状況下で、早くも9.11を題材にして映画『ユナイテッド93』が製作された。監督は『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラス。9.11でハイジャックされた旅客機4機のうち、唯一目標からそれ、ペンシルヴェニア州に墜落したユナイテッド航空93便にスポットをあてたドキュメンタリードラマである。ハイジャックされ絶望のどん底で、家族に電話する人々やその極限の状況の中で最善をつくそうとする乗客たちの姿が描かれている。製作に関してはほとんどの遺族から了承を得て、亡くなった40名の家族や友人、9.11委員会、航空管制官、軍関係者へ膨大な量のインタビューを遂行。メッセージを声高に主張することなく、知りえたことを映像化することに徹した作りとなっている。極限状態の中、乗客たちはハイジャック犯に立ち向かう最善の努力をした。そのためユナイテッド航空93便は標的をそれ、新たな激突の犠牲者を出すのを食い止めた。この意思の力は賞賛に値する。一度見たら忘れられない作品だ。

映画を語る場合、その映像から読み取れる以外の要素から映画を判断するべきでない。
僕は常にそう思っている。その観点からいえばこの作品はまごうことなき傑作だ。
でも、そんなキレイ事だけでは語ることができないテーマもある。ましてそれが現在進行形のことであれば尚更だ。

僕はこの作品を手放しで賞賛することができない。微妙なテーマを扱っているからではない。なぜ今これを撮らなければいけないのかがさっぱりわからないからだ。
「どの時点で、この痛ましい事実をスクリーンで語ってよいのか、常に疑問をいたいていた」ポール・グリーングラス監督は語る。「2001年9月11日は世界を一変させてしまいました。あの事件によって我々は難しい選択を迫られたのです。それを考えてもらい、事件に関わった人々の真実を知ってもらうことがこの映画の役割でなのです」※『ユナイテッド93』パンフレットを参照
意味がわからない。"我々"とは誰?"難しい選択"って何?
不謹慎を承知であえて言う。この事件に直接影響を受けなかったものから見れば −「あ、やっぱりテロはいけないことだ」「極限状況の中で最善を尽くす姿は感動的だ」
予備知識なしに、この映画からそれ以上のことを感じ取ることは困難だ。
マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー『華氏911』(2004)はイラク戦争を導いた現職の大統領を追い落とすことを目的に製作された。映画の力で目の前の現実を変えようとしたのだ。この作品にはそういう要素はない。

2006年9月3日「テロとの戦い」で死亡した米軍兵士の人数が2006年9月3日で2,974人となり、9/11テロで死亡した犠牲者数(2,973人)を超えてしまった。(source http://edition.cnn.com/2006/WORLD/meast/09/03/death.toll/index.html
世界貿易センタービルの犠牲者には今なお遺体すら判別されていない人々が1000人以上いるという。9.11は何も解決していない。「見たくない」「金儲けに利用されたくない」遺族から反発の声もあがっていた。

この頭が下がるほど誠実に作られた作品に難癖をつけるのは実に心苦しい。
だが、こんな状況下で9.11を題材とした映画(フィクション)を作るのは、やっぱり時期尚早だったと思う。あえて今、あの映像を大スクリーンで再現する必要があったのだろうか?
9.11-あの日、目に焼き付けた光景は誰も忘れちゃいない。
何故なら、悪夢はまだ目の前で続いているからだ。
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2006.09.11 Monday | 20:52 | 映画 | comments(4) | trackbacks(12) |

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2017.06.24 Saturday | 20:52 | - | - | - |

コメント

なぜ今なのか?
それを強く感じた少数派のひとりです。
憶測を交えたこのドラマが、なぜ今?

それにしても世の中には映画を見ただけで、画面に映ってない意図や思想や狙いといった「この映画で何を伝えたかったか」を読み取る超能力に長けた方が多いようで、なんともうらやましい限りです(笑)。

てなわけで、TBありがとうございました。
2006/09/13 2:47 PM by にら
にらさん、コメントありがとうございます!

この記事ではTB行脚はしない予定だったのですが、同じ少数派の方を見つけてしまったのでつい!。TBのあるべき姿ですね(笑)
「華氏911」を見なかった某大統領はこの映画に"感動"したそうです。9.11の映像を自国民に再び見せ付けることによってイラク戦争を正当化しやすくなりますからね。そういうことは製作サイドの意図するところだったのでしょうか?この作品からは読み取れないですね。
2006/09/13 9:16 PM by moviepad
初めまして、こんにちわ。今更ながらトラックバックさせてもらいました。
この映画、映画としての出来は良かったです。だけど純粋に映画として鑑賞することは難しいですね。
30年後にもう1度見てみたいです。
2007/01/31 6:17 PM by Myums
Myumsさん、はじめまして

公開タイミングってとても大事だと思います。
9.11を映画化することそのものが目的だったとしか思えないこの作品はどうしても好きになれないですね。


2007/01/31 6:56 PM by moviepad

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