映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< グレン・グールドをめぐる32章 | TOP | ディア・ドクター >>

アカデミー賞、作品賞ノミネート枠が10本に拡大!

今度はこう来たか!?

米アカデミー賞の作品賞ノミネート枠がこれまでの5作品から10作品に拡大されることが発表された。表向きの理由は「幅広いジャンルの作品に門戸を開放するため」だが、本当の理由は一目瞭然。各批評家が指摘するとおり、"アカデミー賞授賞式中継の視聴率をあげるため"である。アカデミー協会の収益の大部分は授賞式中継の広告料によるものだと思われる。アカデミー協会にとって視聴率の低迷はまさに死活問題なのだ。


82nd Academy Awards® to Feature 10 Best Picture Nominees


『タイタニック』が作品賞ほか11部門を受賞した第70回(1997年)の5725万人(推定)をピークにアカデミー賞授賞式中継の視聴者数は下降の一途をたどっていた。受賞式が長すぎるのが原因だろーと地味な部門の受賞者を壇上にあげないようにしたり、受賞スピーチの時間に制限を設けたりいろいろ対策を練ったがいずれも失敗。昨年は第81回(2008年)司会者に人気俳優ヒュー・ジャックマンを起用。ミュージカル仕立てのショーを織り交ぜ、演技賞には過去の受賞者5人が壇上にあがりノミネート者を褒め称えるという新演出を施した。この演出自体は"まあまあ"好評だったのであるが、肝心のテレビ視聴率が微増に終わり、期待したほどの成果は得られなかった。結局、授賞式の長さもアトラクションも司会者の人選も関係ない!授賞式中継の視聴率が奮わないのは、ノミネートされている作品に問題があることにアカデミーもようやく気づいた!? 大ヒット作がノミネートされず、知らない映画ばかりが立ち並ぶアカデミー賞授賞式なんか興味ないよ!→視聴率は下がる、という図式である。 上の引用記事に"視聴率は、2008年に過去最高を記録し"と記載がありますが、明らかに事実誤認、もしくは翻訳誤りだと思われます。

アカデミー賞は"芸術的に優れた作品"が選ばれると思っている人もいるかもしれない。
また、1年を代表する映画を選ぶのだからその年最もヒットした作品に贈られるべきと考える人もいるだろう。さて、本当のところ、アカデミー賞作品賞はどういう基準で選ばれるのでしょう?

正解は"基準なし”。(一部賞のノミネート決定をのぞき)とくに審査員がいるわけではない。一定の用件を満たした映画人がアカデミー会員と認定され、会員数は現在6,000人を越えると言われる。その会員たちの投票数が一番多かった作品が受賞作となる。ぶっちゃげて言ってしまえば"ハリウッド業界内の人気投票"、内輪褒め大会なのである。商業的に成功した映画が選ばれるとは限らない。かといって芸術的に優れた作品が選ばれるとも限らない。そのときの"ハリウッドの気分"によって決まる賞である。戦争などその当時の社会情勢が色濃く反映する年もある。芸術的に優れた作品に贈られる各批評家賞とは根本的に性質が異なるものなのだ。

にもかかわらず、ここ数年のアカデミー賞は批評家賞のソレに果てしなく近づいており、毎年のように"誰も見ていない作品ばかりがノミネートされている"と批判をあびている。今のアカデミー賞だったら、『タイタニック』は受賞はおろかノミネートもされないのでは?と評する人もいる。アカデミー賞が批評家賞の結果に近くなった原因は、いわゆる”ニューシネマ世代"がそれなりの年齢となり、大作崇拝志向をもつアカデミー会員が全体的に少なくなったためと言われているが....。

それにしても第17回(1944年)以来65年も続いてきた決まりごとを変更するのはかなり唐突に思える。だがきっかけは明白。昨年『タイタニック』に続き歴代2位の北米興行収入をあげた『ダークナイト』(日本ではコケましたが...)がノミネート漏れしたことに懲りたからである。『タイタニック』のときは歴代最高の視聴者数となった!歴代2位のヒットとなった『ダークナイト』がノミネートされていれば....。アカデミー協会が悔やむのも無理はない。アカデミー賞協会会長シド・ギャニスも"ダークナイトショック"があったことを暗に認める発言をしている。

悔やんだところでノミネート作をアカデミー協会が決めることはできない。アカデミーができることは投票結果を発表することのみ。なら、作品賞のノミネート枠を5作から10作にすれば人気映画も取り込めるだろう....。要はそーいふこと。地味な作品にスポットをあてるためではない。昨今、ノミネートされにくくなったヒット映画を取り込んで視聴率のアップを図る!それが狙いである。

来年(2009年度)に目を向けてみよう。
現在アメリカではアニメ映画『カールおじさんの空飛ぶ家』(日本では12月公開予定)が大ヒット&高評価。また年末には『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督の新作が公開予定だ。枠を拡大すればこの2作を作品賞にノミネートできるだろう。もしかすると『スター・トレック』あたりもイケるかな?そんな魂胆がありありである。

第17回(1944年)に作品賞ノミネートをそれまでの10作から5作に減らした理由は"票が分散する弊害が強まったから"である。そもそも最近のアカデミー賞はぶっちぎりの本命作がないことが多い。10作に増やしたりして大丈夫?また10作品に拡大したことで"アカデミー賞作品賞ノミネート"のブランド価値が下落する懸念もある。まあ、映画配給会社としてみれば5だろうが、10だろうが受賞できるのはひとつなのだがらチャンスが広がったと歓迎する向きのほうが多いだろうが,,,。また他部門の作品賞(長編ドキュメンタリー賞、長編アニメ映画賞、外国語映画賞)との兼ね合いをどうするか?という問題が出てくる。もし作品賞10作品ノミネートをずっと続けていくのであればアカデミー作品賞のブランドイメージを下げない方策を講じる必要がある。その結果、長編アニメ賞(事実上、ピクサー作品の半独占状態)、外国語映画賞(選考の不可解さが長年指摘され続けている)あたりは将来的に廃止される可能性も出てくると思う。10作品に枠を拡大したのだから、アニメだって外国語映画だってチャンスはある!という大義名分のもとでね。さすがに長編ドキュメンタリー賞は残さざるをえない?

他にもいろいろ思うことはあるが、何しろまだ6月である。ノミネート発表は来年の2月2日。時間はたっぷりある。批判も予想され「やっぱりアレはなかったことにしてください」となる可能性も大いにある。かつてアカデミーが短編部門を廃止しようとした際、「新人の登竜門を奪うのか!」と同業者から猛反対を受けたため"しばらく様子をみる"という名目のもと、現在も続いているという事例もある。この作品賞ノミネート枠拡大案、企画倒れに終わりそうな予感がするが、とりあえず推移を見守ることにしましょう。

人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

スポンサーサイト


2017.07.23 Sunday | 00:54 | - | - | - |

コメント

moviepad様 こんにちは

>商業的に成功した映画が選ばれるとは限らない。かといって芸術的に優れた作品が選ばれるとも限らない

ので、アカデミー賞が何だかわからないモノになっている気がします。
ただ、“ハリウッドの気分”がハリウッドの良心に思えることもあります。地方都市では、決して観る機会がないだろうなという作品が、アカデミー賞ノミネートにより、全国で上映されるのは、私にとってはありがたいことです。

作品賞ノミネートが5作品では足りない気がする年もありましたが、毎年10作品は多い気もします。

ノミネート作品を倍にしただけでは、狙ったような作品が選ばれるとは限らない。興行収入
1作品賞とか、製作費に対する興行収入の割合が高い「費用対効果」作品賞とかの部門を作った方が、視聴率アップに貢献するのではないかと…
2009/06/29 2:26 PM by パール
パールさん、こんばんわ。

アカデミー賞って何だかわからないところがいかがわしくも面白いところであります。(笑)
最近、結果が批評家賞に近づきすぎているので、ややつまらないです。

確かに良心を感じることもあります。最近ではイラク直前の第75回(2002年)、『戦場のピアニスト』が監督・主演男優賞を受賞するという大番狂わせがあったことが記憶に新しいところです。その一方、物騒なテーマを扱った作品はノミネートはしても受賞はさせない傾向もあります。

作品賞受賞がもたらす映画のヒット、いわゆる"アカデミー賞効果"が最近ではほとんどなかったのですが、今年は久々に見られましたね。「スラムドッグ〜」は日米ともにヒット。アカデミー賞がなければ小規模公開にとどまっていたでしょう。

アカデミー賞は80年も試行錯誤した結果、今の形に定着しています。ちょろちょろいじっても結局は元に戻っている。ノミネートを10作品に増やしたところで大して変わらず、結局は元の5枠に戻るだろうと思います。そもそも「ダークナイト」は内容的にも年間トップレベルの好評価。10枠なら...ではなく5枠であっても当然ノミネートされるべき作品でした。


アカデミー賞は芸術的に優れたものに贈られるという"建前"ですので、興行成績がらみの賞を設けることはありえないでしょうね。視聴率が大事なのはよくわかりますが、アカデミー賞はTV番組ではないのですから"建前"が崩れすぎるようなことはやめてほしいです。でも本家アカデミー賞は、日本アカデミー賞より1000倍くらいまとも!何しろ日本アカデミー賞って当日授賞式に参加できない人はノミネートされないらしいし...。これは映画賞とは呼びません。単なるテレビ番組です。
2009/06/29 11:20 PM by moviepad

コメントする









▲top