ターミネーター4 (2009 アメリカ)
原題 TERMINATOR SALVATION
監督 マックG
脚本 ジョン・ブランカトー マイケル・フェリス
撮影 シェーン・ハールバット
編集 コンラッド・バフ
音楽 ダニー・エルフマン
出演 クリスチャン・ベイル サム・ワーシントン
アントン・イェルチン ムーン・ブラッドグッド
コモン ブライス・ダラス・ハワード
ジェーン・アレクサンダー ジェイダグレイス
ヘレナ・ボナム=カーター
ああ、昔はよかった。
縁側老人の繰り言のような書き出しで失礼。
結論を先に書く。
『
ターミネーター4 』は正真正銘の駄作。これを観た後では、『ターミネーター3』ですら大傑作に思えてくる。悪口のオンパレードなので、不愉快な気分になりたくない方は、これ以降読まないでください。
ただし、パレードに突入する前に少し長めの前説をします。m(_ _)m
ジェームズ・キャメロン 監督・脚本による『ターミネーター(以降T1と記す)』『ターミネーター2(以降T2)』は名作の誉れ高く興行的にも大成功。
アーノルド・シュワルツェネッガー を一躍スターダムにおしあげたシリーズである。ストーリー的にこれ以上続けるのは無理と思われたが、"金の成る木は、成らなくなるまで使い続ける"のがハリウッド。12年の時をへて、『ターミネーター3(以降T3)』が製作された。シュワルツェネッガーは続投したが、監督がジェームズ・キャメロンではなかったことが影響したか前2作に比べ大きく評価を落とした。
T3を観たとき、いくら主役が同じでもその他のキャスト、スタッフが変わってしまうとこうも違うのかなと思った。まずサラ・コナーがいつのまにか死んだことになっている。主要キャストの死を台詞だけの説明ですます?またターミネーターのキャラも"心理学がプログラミングされている"という言い訳のもとブレまくっていた。映像的にも車をあちらこちらにぶつけ、建物を破壊し続けていればファンは喜ぶと思ったのか?安直な場面設定が目立ち、パトカーが高速を横切る1シーンですら前2作より見劣りする有様。主役のニック・スタールにチャームが欠けていたのも痛かった。というわけでT3は劇場公開時酷評をあびた。だが、これはあくまでT1.T2と比較しての話。シリーズの続編ではなく、単体の娯楽映画として考えればそれほどひどい出来ではない。現に批評家の7割がこの作品を支持している。ただし、前2作はほぼ100%の支持...。
何はともあれ、T3興行的には成功した。だが公開直後に、アーノルド・シュワルツェネッガーがカリフォリニア州知事となってしまったため、続編製作が危ぶまれていた。だがシュワ自身がノリ気だったこともあり、続編の企画が進行。だがシュワの出演条件は「カリフォルニア州で撮影をすること」(自分の州の経済効果を考えてのことですね)。監督のジョナサン・モストウがこの条件を拒否したため、シュワの続編出演は流れ、監督のモストウも降板した。結局、監督は『チャーリーズ・エンジェル』の
マックG 、主演のジョン・コナー役に
クリスチャン・ベール を迎え、2009年『ターミネーター4(以降T4)』が公開されたのだが...。
さて、本題です。
T2でエドワード・ファーロング、T3ではニック・スタールが演じたジョン・コナー役。
今回は『バットマン』の
クリスチャン・ベール を迎え、万全の体制で臨んだ...はずだったが。
そのベールの演技が最悪なのである。怒鳴り散らすか、眉間にシワを寄せるかの2パターンしかない。
クリスチャン・ベールはラジー賞の受賞スピーチを用意しておいたほうがいいかもしれない。
T4の撮影中、
ベールが撮影監督をFワード全開で怒鳴り散らす音声がネットに流出 したが、演技もこれといっしょ。流出テープは手のこんだ宣伝ではないかと思ってしまったほどである。クリスチャン・ベールは子役出身にもかかわらずインディペント映画で演技力を磨き堅実なキャリアを築いてきた俳優だが、『バットマン・ビギンズ』でスターとなってからネジが外れたか?
だがベールばかりを責めるのは酷だ。そもそも脚本がよくない。ベールは「最初に送られてきた脚本にはジョン・コナーがカルト集団の教祖にように描かれていたので、『ダークナイト』のジョナサン・ノーランに脚本のリライトをしてもらい、魅力的なストーリーに変わっていった」と語っている。ど・こ・が???
まず、この映画のジョン・コナーとT2,T3のジョン・コナーはとても同一人物には見えない。
コナーが人類軍の救世主となるまでの描写がないため、仕方のないことかもしれないが...。
また、半分人間で半分機械という新キャラ、マーカス・ライトが登場する。それによりT4の主役はジョン・コナーなのかマーカス・ライトなのか曖昧になってしまっている。映画前半では、コナー!コナー!と叫ぶ台詞がやたらと多いため、主役はやはりジョン・コナーなのだろうが...マーカスのキャラはそれなりに魅力的である。科学者セレーナ(
ヘレナ・ボナム・カーター )とのやりとりはこの映画唯一の見所かもしれない。ラスト、てっきりコナーは死に、次回以降の主役はマーカスに交代かと思ったのだが...。
あ、ジュン・コナーが死ぬのは2032年7月4日。T-850に殺されるんでしたね。
この映画の年代は2018年。ここで死んだら辻褄があわなくなります。
マーカスは、より人間に近い外見をもつT−800を開発するための実験としてつくられたと想定されるが、これまでの物語を眺めた場合ここで新キャラを創出することに意味はないような気がする。
そのマーカス・ライトを演じたのはオーストラリア出身の
サム・ワーシントン 。彼は今年12月にいよいよ公開されるジェームズ・キャメロンの新作でも主演をつとめているようだ。キャメロンから「続編製作を許す代わりに、自分の新作の宣伝のためサム・ワーシントンを使え!」とでも言われたのだろうか?(笑)
※ 6.26追記 やっぱりサム・ワーシントンの出演はキャメロンとマックGの話合いで決まったそうです。とほほ(^^;
物語もドラマ性に乏しく、マーカスとブレア(
ムーン・ブラッドグッド )のロマンスは蛇足のように思える。ケイト・コナーの身重という設定も物語にまったく生かされていない。続編を想定し、先延ばしにしているのだろうが...。映像的にみてもアレやコレやぶっ壊すだけ。「T1」や「T2」のようなサスペンス性は皆無。シチュエーション的にも単調で、「T3」よりいっそう工夫に乏しい。
※ 映像的に「トランスフォーマー」との類似が指摘されています。自分は「トランス〜」を観ていないのでよくわからないのですが、何と「トランスフォーミネーターズ 」という意味不明な予告編が....。
Transforminators
そしてこんな話題も...。
大ヒット中の「トランスフォーマー2」と「T4」、監督同士が場外乱闘
一応続編ということで前3作への配慮もなされてはいる。だが、これはちょろっと台詞入れときましたレベルなのだ。「T1」や「T2」でサラ・コナーを演じた
リンダ・ハミルトン が声のみでちらっと出演するが必要不可欠な描写とはいいがたい。また、ターミネーターの決め台詞である"
I'll be back "をなぜかジョン・コナーが使っている。あれはターミネーターが言わないと意味ないよ...。その元祖?ターミネーターであるアーノルド・シュワルツェネッガーもCGでチラりと登場する。だが、このCGが今ひとつ。なんか蝋人形みたい(笑)。かつラスト...。嵐がくるだの、未来がどうのこうのだの前2作を彷彿させるモノローグが出てくるがこれすら付け足しっぽい。本編のドラマがきちんと描かれていないから説得力ゼロ。
もっとも致命的なのは
ターミネーターがあまり出てこないこと 。
T-800の原型であるT-600や飛行機型、バイク型などいろんなターミネーターが登場するが正直いってどのマシンも印象に残らない。T4においてターミネーターは"時折登場する敵の機械"にすぎない。この程度の描写ですませるなら
「ターミネーター(殺人機械)」というタイトルは返上すべきだ 。
T3、T4(マーカスの登場)はターミネーターに人間味をもたせようと試みているようだが、この物語の方向付けは間違っている。
『ターミネーター4』はヒットするとの前提で3部作構想がなされているようだ。
だが、全米では批評家の支持が33%!
参照 T1、T2の1/3、T3の半分以下...。(観客の評価はここまでひどくないようだが)頼みの興行も全米で1億ドルをやっと突破したところ。(制作費は2億ドル)、T3の1億5000万ドルには遠く及びそうもない。アメリカ以外の国でよほど大ヒットするかDVDがバカ売れしない限り、続編製作には赤信号がともっている。
ターミネーターシリーズはあくまでT1、T2だけでT3は蛇足と考える人も多い。だが、その「T3」よりも興行的、批評的に大幅に劣る「ターミネーター4」をどうとらえたらよいのだろう。『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲 』のようにシリーズを終わらせた作品として記録に残るか...それともこの作品は無きものとして『ターミネーター・ビギンズ』が製作されるのだろうか?
T4の前評判がよくないことは知っており、覚悟を決めて観にいった。と同時になるべく色眼鏡で観ないように心がけてはいたが...。観終わって思い出すのは、"ときどき爆破が起きていたこと"と"クリスチャン・ベールが怒鳴り散らしていた"ことだけ。このターミネーター・シリーズ。続編の企画を考えるより『ターミネーター4』の存在を一日も早く観客に忘れさせ、"ターミネーター正史"から抹殺する手段を考えるほうが先かもしれない。
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※ 2/1追記。ラジー賞ノミネートが発表されました。T4何とノミネートなし!最近のラジー賞は超腰抜けなので、そんな予感はしていましたが...。同系統のトランスフォーマーに存在感をかき消された?ラジーにすらひっかからなかったと言うべきか。
自分が感じたことを見事に文章にしてもらってます。(笑)
自分にとっては、ターミネーターは、もはや、「渡る世間は鬼ばかり」のようなものかもしれません。
突然設定が変わっていても、大きな枠組みは一緒で、でも、過去の遺産を引きずってて・・・
そんな感じになってしまいましたね。
今回から、新シリーズとするならば、過去は切り捨ててもらえればよかったのではないかと思います。
自分のブログは、やわらかい口調にしてますが・・・