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第79回(2006年)アカデミー賞

第79回(2006年)アカデミー賞

79回アカデミー賞作品賞「ディパーテッド」第79回アカデミー賞trivia
〜無冠の巨匠だったマーティン・スコセッシついに受賞!〜

★ 何と作品賞が"本命なき"争いだった。作品賞候補は『バベル』(7部門)、『クイーン』(6部門)、『ディパーテッド』(5部門)、『硫黄島からの手紙』、『リトル・ミス・サンシャイン』(各4部門)とドングリの背比べ状態。最多8ノミネート(6部門)を獲得した『ドリームガールズ』が作品、監督賞候補から漏れるという有様だった。最多ノミネート作が作品賞候補に選ばれていないのは、アカデミー賞史上初。また作品賞ノミネート作品から主演男優賞候補が出ていないのはなんと第1回以来。作品、主演男優賞が現在の5エントリーに定まってからは初めてであった。






★ その本命なき作品賞において『クイーン』は主演女優と脚本に賛辞が集中しており、一番可能性が低いと思われていた。だが他の4作ほど目立ったウイークポイントがないため受賞可能性ゼロとは看做されなかった。他の4作の弱点とは以下のとおりである。

『バベル』> 独特の演出ゆえ好き嫌いがはっきり分かれる。興行的にも不発。 
『ディパーテッド』> 娯楽性強し。リメイク作品。(エリア・カザンに名誉賞を渡したことによる)スコセッシアレルギー。
『硫黄島からの手紙』> イーストウッドは受賞したばかり。日本語作品。
『リトル・ミス・サンシャイン』> 実績の無い新人の作品。監督賞ノミネート漏れ。

以上が作品賞本命不在の理由である。前哨戦後半において全米製作者組合賞、全米俳優組合賞のアンサンブル演技賞、全米脚本家組合賞などの重要賞を相次いで獲得した『リトル・ミス・サンシャイン』の評価が急上昇していたが、何といっても監督賞ノミネート漏れは致命的であった。

さてその作品賞プレゼンターはジャック・ニコルソンダイアン・キートン。キートンが候補作品を読み上げたあと、ニコルソンが、自身の出演作でもある『ディパーテッド』の名を読み上げた。『ディパーテッド』が5作品中、北米興行収入が1億ドルを超えている唯一の作品。やはりアカデミー賞はハリウッド内部の賞。作品賞においては興行成績はそれなりに重要であることを示す結果となった。また長年冷遇してきた"現代アメリカ最高の映画監督"マーティン・スコセッシを称えるに際して監督賞だけでは失礼と考えた人も多かったのかもしれない。スコセッシは来日した際、「本当は『ディパーテッド』は作りたくなかった」と爆弾発言をしたのだが...。アメリカには伝わらなかったのだろう(笑)。



★ 監督賞は6度目の正直でマーティン・スコセッシが大本命。
投票母体が重なる全米監督組合賞でも7度めの正直でついに受賞し、お膳立ては完璧だった。作品賞が本命不在であることが示すように対抗馬も弱く、強いて言えば4月公開ながら前哨戦で大健闘した『ユナイテッド93』のポール・グリーングラスだったが、作品賞、全米監督賞にノミネートされていないという致命的な弱点があった。もはやスコセッシの敵は他の候補者ではない。唯一の不安要素は第71回(1998年)エリア・カザンに名誉賞を渡したことからくるスコセッシ・アレルギーがどのくらい残っているか?という点だった。

監督賞のプレゼンターはフランシス・フォード・コッポラジョージ・ルーカススティーヴン・スピルバーグ。この3アミーゴが出てくるということは...。スピルバーグが読み上げた名前はその人、マーティン・スコセッシだった。スコセッシは立て板に水のような早口で、サンキューを10回以上連発。レオナルド・ディカプリオに「もう6年もいっしょにやっているけど、あと10〜15年いっしょにやろう!」と呼びかけた。ディカプリオは「スコセッシがオスカーを受賞していないのはおかしい」とたびたび公言。スコセッシ映画に出たいという目的だけで(お近づきになるために)スコセッシと同じエージェントに移籍した。そのレオも目を潤ませながらスコセッシのスピーチを見守る。「長いあいだ、たくさんの人が私の受賞を願ってくれていました。病院でもエレベーターでも見知らぬ人が声をかけてくれました。“いつかオスカーを獲れるよ”と言ってくれたた人、ありがとう。」そして家族に感謝したあと、バックステージに消えた。ついにスコセッシは"無冠の巨匠"の称号を返上した。




★ 作品賞候補5作品中4作が群集劇だったこともあって作品賞候補から主演男優賞ノミネートがひとりも出ないという異例の事態となった。そのためかこの年の主演男優賞は不作と言われたが、本命はウガンダの独裁者イディ・アミンを演じた『ラストキング・オブ・スコットランド』のフォレスト・ウィッテカーだった。対抗は24年ぶり8回目のノミネートとなった『ヴィーナス』のピーター・オトゥールと言われたが、前哨戦がいずれもノミネートどまりだったことが痛い。かつオトゥールは第75回(2002年)既に名誉賞を贈呈ずみだった。受賞は下馬評どおりフォレスト・ウィッテカー。オトゥール爺さんは一瞬固まっていました。




ハンバーガーをお召し上がりになるヘレン・ミレン女王様★ 主演女優賞は現存のエリザベス女王を演じた勇気を称えられ?『クイーン』のヘレン・ミレンが絶対視された。前哨戦は第66回(1993年)のホリー・ハンター以来の総ナメ状態。その本命ぶりは、受賞式においてウィル・フェレルジャック・ブラックジョン・C・ライリーが"いかにコメディアンがアカデミー賞で冷遇されているか?という内容の歌のパフォーマンスをした際、ジャック・ブラックが"ヘレン・ミレンさん、アンタはホットだ!(授賞式終了後)どこのパーティに行く予定だい?"と歌い、ラスト3人で"ヘレン・ミレンとオスカー像を連れて帰るぞ。ヘレン・ミレン(=オスカー像)が俺の家にやってくるんだ!"と締められるほどであった。また主演女優賞の発表は終わっていないのに...。また同じイギリスのデイムであり、アカデミー賞の強面置物として名物化していたジュディ・デンチが『あるスキャンダルの覚え書き』でノミネートされていたにもかかわらず、「どうせ私はもらえないわ」とすねてしまい(笑)膝の手術を理由に授賞式を欠席してしまった。




受賞者は当然のようにヘレン・ミレン。「50年以上エリザベス女王が貫き通しているのは威厳と責任感、そしてヘアスタイルです。(ここで笑いが起こる)今私がここにいるのは彼女のおかげ。このオスカーを女王に捧げます。」とオスカー像を掲げた。20〜30代の若手スター女優の受賞が続いていた主演女優賞。ヘレン・ミレンはこの時61歳。60代以上の女優が受賞するのは第62回(1989年)のジェシカ・タンディ以来17年ぶり。史上5番目の年長受賞者だそうです。ところでヘレン・ミレンさん、女王に捧げたはずのオスカーを目の前にしてハンバーガー食っちゃだめですよ!こんな写真撮られるドジを踏むのはヒラリー・スワンクだけと思ってた...。




★ 助演男優賞本命はゴールデン・グローブ賞、全米俳優組合賞を獲得した『ドリームガールズ』のエディ・マーフィー。ジョームズ・ブラウンをモデルに役作りをしたジミー役はエンターティナーとしての本領をいかんなく発揮し、ジェニファー・ハドソンとともに映画の見せ場をさらっていると評された。今までほとんどの映画で主演を張っていたマーフィーが「ただで出演すると思ってくれ。見返りは必ずあるから」と説得され出演を決めた役である。もちろん(笑)初ノミネートだった。対抗は『リトル・ミス・サンシャイン』のアラン・アーキン第41回(1968年)の『愛すれど心さびしく』以来、何と38年ぶり3回目のオスカー候補となった。

プレゼンターのレイチェル・ワイズが読み上げた名前はアラン・アーキンだった。アーキンはステージにあがると用意していたメモを片手に下を向いたまま読み上げた。涙をためながら読むその姿には『リトル・ミス・サンシャイン』で演じたエロエロジジイの面影はひとかけらもなかった。なお、負けたエディ・マーフィーはショックのあまり?授賞式途中で帰ってしまったそうです。zzz...。



★ 助演女優賞は『ドリームガールズ』で大スター、ビヨンセをすっかり霞ませる存在感を示したジェニファー・ハドソンが本命。対抗は『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンと『バベル』の菊地凛子と言われていた。もし菊地凛子が受賞すれば第30回(1957年)のナンシー梅木以来49年ぶり2人目の日本人受賞となるため、日本のマスコミは騒ぎ立てたが本命が強かった。ハドソンはアメリカの人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」出身で3シーズン目、12人のファイナリストに残ったものの優勝を逃した。最終的にエフィー役を争ったのはその時の優勝者ファンテイジアだった!ハドソンは歌も芝居もこれが本格デビュー。『ドリームガールズ』が公開されると彼女の歌唱力が絶賛され、一躍時の人となっていた。アメリカ人が大好きなアメリカン・ドリーム!ということでオスカー受賞が期待されており、通常なら最初のほうで行われる助演女優賞の発表も中盤まで引き伸ばされていた。

受賞はやはりジェニファー・ハドソン。亡くなった祖母や母親、そして監督のビル・コンドンらに謝辞をのべ、ラスト「ジェニファー・ホリデーにも!」と付け加えた。ジェニファー・ホリデーは舞台版でエフィー役を演じた人である。受賞直後から(当然のように)ハドソンの歌手デビューが計画された。途中でアルバムのつくり直しを命じられたため、デビューは予定よりもかなり遅れ2008年9月30日にアルバム「ジェニファー・ハドソン」をリリース。婚約も決まり公私ともに絶好調だった翌10月、母、兄、甥が銃殺されるという惨劇が起こる。その後、2009年2月8日に行われた第51回グラミー賞にて最優秀R&Bアルバム賞を受賞。27歳にしてアカデミー賞とグラミー賞を両方受賞した屈指のエンターティナーのひとりとなっている。



★ メリッサ・エスリッジが『不都合な真実』の主題歌"I Need to Wake Up"のパフォーマンスを行ったあと、アル・ゴア元副大統領とレオナルド・ディカプリオが登場。今回のアカデミー賞授賞式が環境問題を重視したつくりになっていることを伝える。(本人が否定しているにもかかわらず)ゴア氏に大統領再出馬をうながす動きがあることを意識してレオが「今晩何か大切な声明ないんですか?」とゴアをつつくとゴアは「10億人の人たちが観ていることですし、この機会を利用して...」と言いかげたところで退場を促す音楽が鳴る。見事な猿芝居でした(笑)。その後、長編ドキュメンタリー賞の発表があり下馬評どおり『不都合な真実』が受賞。プロデューサーのデイヴィス・グッゲンハイムは「この映画を作ったのはこの男に感動したからだ!」と熱く語りオスカー像をゴアに手渡す。ゴアは「地球温暖化は政治の問題ではない。倫理の問題なんだ」と映画でのメッセージを繰り返し語り、ご退場。前述の"I Need to Wake Up"も『ドリームガールズ』からエントリーされていた3曲を押しのけ歌曲賞に輝いた。
アル・ゴアはスコセッシと並んでオスカー・ナイトの主役となり、約8ヶ月後の2007年10月12日、ノーベル平和賞の授与が決まっている。


第79回(2006年)アカデミー賞ノミネート一覧

 マークは受賞作品。リンクは原則としてamazon

作品賞
  「ディパーテッド
   「バベル
   「硫黄島からの手紙
   「リトル・ミス・サンシャイン
   「クィーン

主演男優賞
 フォレスト・ウィッテカー 「ラストキング・オブ・スコットランド
   レオナルド・ディカプリオ 「ブラッド・ダイヤモンド
   ライアン・ゴズリング 「Half Nelson」
   ウィル・スミス 「幸せのちから
   ピーター・オトゥール 「ヴィーナス

主演女優賞
  ヘレン・ミレン 「クィーン」
   ペネロペ・クルス 「ボルベール <帰郷>
   ジュディ・デンチ 「あるスキャンダルの覚え書き
   メリル・ストリープ 「プラダを着た悪魔
   ケイト・ウィンスレット 「リトル・チルドレン

助演男優賞
  アラン・アーキン 「リトル・ミス・サンシャイン」
   ジャッキー・アール・ヘイリー 「リトル・チルドレン」
   ジャイモン・フンスー 「ブラッド・ダイヤモンド」
   エディ・マーフィ 「ドリームガールズ
   マーク・ウォールバーグ 「ディパーテッド」

助演女優賞
 ジェニファー・ハドソン 「ドリームガールズ」
   アドリアナ・バラーザ 「バベル」
   ケイト・ブランシェット 「あるスキャンダルの覚え書き」
   アビゲイル・ブレスリン 「リトル・ミス・サンシャイン」
   菊地凛子 「バベル」

監督賞
 マーティン・スコセッシ 「ディパーテッド」
   アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 「バベル」
   クリント・イーストウッド 「硫黄島からの手紙」
   スティーヴン・フリアーズ 「クィーン」
   ポール・グリーングラス 「ユナイテッド93

脚本賞
<オリジナル脚本>
 「リトル・ミス・サンシャイン」
   「バベル」
   「パンズ・ラビリンス
   「硫黄島からの手紙」
   「クィーン」

<脚色>
  「ディパーテッド」
   「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
   「トゥモロー・ワールド
   「リトル・チルドレン」
   「あるスキャンダルの覚え書き」

撮影賞
 「パンズ・ラビリンス」
   「ブラック・ダリア
   「トゥモロー・ワールド」
   「幻影師 アイゼンハイム
   「プレステージ

美術監督・装置賞
  「パンズ・ラビリンス」
   「ドリームガールズ」
   「グッド・シェパード
   「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
   「プレステージ」

音響賞
 「ドリームガールズ」
   「アポカリプト
   「ブラッド・ダイヤモンド」
   「父親たちの星条旗
   「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」

編集賞
  「ディパーテッド」
   「バベル」
   「ブラッド・ダイヤモンド」
   「トゥモロー・ワールド」
   「ユナイテッド93」

作曲賞
 「バベル」
   「さらば、ベルリン
   「パンズ・ラビリンス」
   「あるスキャンダルの覚え書き」
   「クィーン」

歌曲賞
  「I Need to Wake Up」 (不都合な真実)
   「Listen」 (ドリームガールズ)
   「Love You I Do」 (ドリームガールズ)
   「Our Town」 (カーズ
   「Patience」 (ドリームガールズ) 

衣装デザイン賞
 「マリー・アントワネット
   「プラダを着た悪魔」
   「ドリームガールズ」
   「王妃の紋章
   「クィーン」

メイクアップ賞
 「パンズ・ラビリンス」
   「アポカリプト」
   「もしも昨日が選べたら

視覚効果賞
 「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」
   「ポセイドン
   「スーパーマン リターンズ

音響効果編集賞
 「硫黄島からの手紙」
   「アポカリプト」
   「ブラッド・ダイヤモンド」
   「父親たちの星条旗」
   「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」

短編賞
<アニメ>
 「The Danish Poet」
   「Lifted」
   「The Little Matchgirl」
   「Maestro」
   「熱血どんぐりハンター!」

<実写>
 「West Bank Story」
   「Binta y la gran idea」
   「Eramos pocos」
   「Helmer & Son」
   「The Saviour」

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
 「中国 エイズ孤児の村」 
   「Recycled Life」
   「Rehearsing a Dream」
   「Two Hands: The Leon Fleisher Story」

<長編>
 「不都合な真実」
   「Deliver Us from Evil」
   「Iraq in Fragments」
   「ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~
   「My Country, My Country」

外国語映画賞
 「善き人のためのソナタ」 (ドイツ)
   「アフター・ウェディング」 (デンマーク)
   「デイズ・オブ・グローリー」 (アルジェリア)
   「パンズ・ラビリンス」 (メキシコ)
   「Water」 (カナダ)

長編アニメ賞
 「ハッピー フィート
   「カーズ」
   「モンスター・ハウス

名誉賞
 エンニオ・モリコーネ
   (映画音楽への顕著な貢献)

ジーン・ハーショルト友愛賞
 シェリー・ランシング

ゴードン・E・ソーヤー賞
 レイ・フィーニー

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2009.03.14 Saturday | 00:06 | アカデミー賞の軌跡 | comments(0) | - |

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