映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
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第77回(2004年)アカデミー賞

第77回(2004年)アカデミー賞

77回アカデミー賞作品賞「ミリオンダラー・ベイビー」第77回アカデミー賞trivia
〜イーストウッドがスコセッシを蹴散らす〜

★ この年の司会は低下傾向にあるTV視聴率に歯止めをかけるため、若者に人気のコメディアン&俳優クリス・ロックが初起用された。放送禁止用語連発の毒舌が売り物のロック。その個性は主に授賞式"前哨戦"で発揮された。ロックは主演賞をデンゼル・ワシントン、ハル・ベリーが受賞するなど"黒人イヤー"となった第74回(2001年)以外はアカデミー賞授賞式など見たことがないと公言。

「芸術のための賞ほどばかげたものはない。2人の人間が全く同じことに挑戦しない限り、優劣をつけることなどできないじゃないか」
「単なるファンション・ショー。ゲイでない黒人の男はオスカーなど見ない」
「コメディは軽視され、黒人もノミネートされない。なぜそんな番組を見なければならないのか」


 アカデミー賞やアカデミー賞授賞式そのものを全面否定するかのような発言を連発した。司会を引き受けておきながら、アカデミー賞批判のオンパレードを繰り返すロックに当然アカデミー内部からは彼の降板を要求する声が続出した。授賞式のプロデューサー、ギルバート・ケイツは火消しに忙殺され、「ちょっと堅苦しい授賞式を皮肉ったにすぎない」として、ロックの降板はない旨を表明した。さて、肝心の授賞式当日は、客席に母親がいたかららしいが(笑)、期待された毒舌のキレ味はさっぱり。ニコール・キッドマン、ジュード・ロウ、トビー・マグワイアなど、会場にいないスターばかりをからかうという後味の悪さ。ロックって小心者なのね(笑)「就任時は黒字なのに、今では赤字70兆ドル。GAPのバイトだったらクビ」と公然とブッシュを批判し、アカデミー賞に無視された『華氏911』を褒め称えた勇気は買うが....。授賞式を見た後では前哨戦での"口撃"も、宣伝のための単なる話題つくりであった感強し。




★ 司会起用以外にも授賞式の演出には新しい試みが導入された。授賞式が長くなりすぎないように、人気のないカテゴリーは以下の2通りのどちらかの発表方法が採用された。

・プレゼンターが客席内で発表し、オスカー像をそのまま受賞者に届けに行く(受賞者をステージにあげない)
・候補者全員をステージにあげ、そこで発表するというもの(受賞者がステージにあがる時間を短縮。まわりの人と抱擁させてあげない(笑)かつ落選者はステージ上でさらしものに...。まるでひと昔前の日本レコード大賞みたい)
 
アカデミー賞は本来、仲間である映画人の優れた業績を称え合う映画業界内の賞である。同業者からの敬意ほど今後仕事を続けていく上で励みになるものはないだろう。受賞者にとってはまさに一生に一度の晴れ舞台である。(まあ、何度ももらっている人もいますがね)TV放送の都合ごときで、称えるべき受賞者の晴れ舞台に水を差してよいものだろうか?時間短縮の効果はあったようだがこの形式は不評。翌年、元どおりのやり方に戻っている。

★ 監督賞はマーティン・スコセッシクリント・イーストウッドの一騎打ちとみなされた。 5度目のノミネートで無冠のスコセッシ。現代アメリカ最高の監督として尊敬を集めるスコセッシにオスカー受賞歴がないことはハリウッドの7不思議とさえ言われていた。前回の『ギャング・オブ・ニューヨーク』でのノミネートは作品の評価が今ひとつだったが今回の『アビエイター』は最多11部門ノミネート。興行的にもまずまずで誰もが「今度こそスコセッシが・・・」との思いを抱いた。ところがオスカーの行方に大きな影響力を与えるとされているゴールデン・グローブ賞と全米俳優監督賞をともにクリント・イーストウッドが獲得。年末からBuzzが急騰する一方の『ミリオンダラー・ベイビー』、イーストウッドが主演男優賞にサプライズノミネートされるおまけまでつき、作品賞は作品規模から言っても『アビエイター』だろうが監督賞はイーストウッドとの声も大きくなってきた。アカデミー会員の1/5は俳優であり、彼らはそろって俳優出身のイーストウッドに投票するとさえ言われた。それでも、受賞歴のないスコセッシと1度受賞済みのイーストウッド。オスカーはスコセッシで決まりだから、他の賞はイーストウッドに、との説もあり下馬評はまったくの互角と言ってよかった。イーストウッドは「私とマーティの戦いのように言われるのは悲しい。私はスコセッシの全作品を尊敬している」とコメントしていたが。

ジュリア・ロバーツからオスカー像を受け取るクリント・イーストウッドプレゼンターはジュリア・ロバーツ。公表されていない"サプライズゲスト"だったがたいした驚きはない。ジュリアは2000年度に『エリン・ブロコビッチ』で主演女優賞を受賞してオスカー女優になったとたんに毎年のように授賞式に出席していたからだ。それまで全然出席していなかったのに。何とわかりやすい人(^^; 双子の子供を出産後、急に大きくなった胸をゆさゆささせながら、相変わらずのそそくさとした歩き方で登場。いきなり「マーヴァ誕生日おめでとう」と切り出す。マーヴァ、Who? マーヴァとは彼女の双子の子供の面倒を見ている女性だそうだ。優しいというか単なる公私混同、プレゼンターの自覚なしというか(^^;  そのジュリアが読み上げた名前はクリント・イーストウッド。ジュリアにキスマークをつけられ(すぐジュリアが拭いたが)登場したクリント。同伴した96歳の母親の遺伝子に感謝する、と述べた。そして「(今回名誉賞受賞の)シドニー・ルメットは80歳。私などまだ子供だ」と述べた。<6歳しか違わね〜じゃないか(笑)





受賞後のプレスルームでイーストウッドは「アカデミー賞を受賞した素晴らしい映画はたくさんある。そして受賞しなかった作品もたくさんある。とにかくベストを尽くすしかないのだ」とコメントした。クリント・イーストウッドは派手な女性関係はともかく(笑) とにかく業界内の人望が厚い。一度仕事をした人はまた仕事をしたがるという。最低限のスタッフに絞り、その代わりひとりひとりの報酬を厚くする。撮影中、昼食時間もトレーラーにこもったりせずみんなと一緒に食べる。椅子がないときは隅っこで立っていることもあるという。声を荒げることもない。今回の受賞は昨年、巨大指輪(笑)に阻まれ受賞を逃がした「ミスティック・リバー」の評価も加えての受賞であろう。2年連続作品、監督賞ノミネート、そして演技賞を昨年、今年と2つずつ受賞させている。クリント・イーストウッドは名実ともに名匠となった。なおマーティン・スコセッシが俳優出身の監督に敗れたのは1980年の『レイジング・ブル』でロバート・レッドフォード、 1990年の『グットフェローズ』でケヴィン・コスナーに負けたのに続きこれで3度目である。


★ この年評論家に最も愛された作品は『サイドウェイ』だった。ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、エドワード・ノートンなどの売り込みを拒否し、1600万ドルの予算、スター不在の地味なキャスティングで作られた小品である。ワインに人生を重ねたウィットの効いた脚色は各批評家賞脚色賞を総ナメ。全米だけで興収7000万ドルを超えるヒットとなり「誰かがメルローをオーダーしたらすぐ帰るぞ!」というセリフは映画未見の人でも知っているほど有名になったという。にもかかわらず、下馬評は作品賞も監督賞同様スコセッシVSイーストウッド!『サイドウェイ』は 大穴扱いだった。監督賞は『ミリオンダラー・ベイビー』のイーストウッドでも、作品賞にふさわしいスケールをもつのは『アビエイター』 であるとする声も強かった。例年なら作品賞と監督賞はかなり高い割合で一致するのだがこの年はどちらにどちらとははっきり言えないものも、半分づつ分け合うのでは?と考える人が多かったのが特徴である。

さてプレゼンターはダスティン・ホフマンバーブラ・ストライザンド。全米大ヒット作『ミート・ザ・ペアレンツ2』で夫婦役を演じた2人である。封を開けた後、バーブラが「眼鏡を忘れてしまって読めないわ」 というとダスティンがそっと耳打ち。わざとらしい楽しい猿芝居の後バーブラが「あら、うれしいわ。またクリントよ」



  受賞した『ミリオンダラー・ベイビー』はイーストウッドにして予算3000万ドル、37日間での撮影を余儀なくされた作品。2005年公開予定だったが作品の出来を見て急遽年内に繰り上げ公開を決定。年末に限定公開し、オスカーノミネート発表前、そして最終投票前にBuzzがピークに達するように絶妙のタイミングで拡大公開していった。戦略の勝利とも言える。作品賞は下馬評が割れることは少ないが、この年の作品賞は近年まれに見る大激戦と言われていた。『アビエイター』も『ミリオンダラー・ベイビー』もともに脚本が弱く両監督の最高傑作とはいいがたい。とくにイーストウッドは前年の『ミスティック・リバー』のほうが明らかにクオリティが高いと思われるのが...。『サイドウェイ』はワイン通にはたまらなく面白いらしいのだがそーでない人には"とてもよく出来た(とくにアラのない)小品"。 ちょっとアカデミー作品賞には物足りない。オスカーは批評家賞じゃないしね。要は傑出した作品がなかったのだ。それゆえ、キャリアと人徳でイーストウッド個人に与えられた"作品賞"という印象が強く残った。


★ この年の主演男優賞は近年まれに見るハイレベルな争いだった。だが下馬評で圧倒的に強かったのはジェイミー・フォックス。伝説のR&Bシンガー、レイ・チャールズをそっくりに演じて話題になった。レイ・チャールズが前年(2004年6月)に他界。翌年2005年2月に行われたグラミー賞では最優秀アルバムと最優秀レコードを含む8部門受賞。まさに"レイ・フィーバー"に後押しされ絶対視された。 対抗は一応『アビエイター』のレオナルド・ディカプリオと言われていたが...。

前哨戦では『サイドウェイ』のポール・ジアマッティ、『愛についてのキンゼイ・レポート』のリーアム・ニーソン、『海を飛ぶ夢』のハビエル・バルデムも有力候補といわれ、実際ノミネートされたジョニー・デップ、ドン・チードルと並んで7強と言われていた。ところが、ノミネートまでは当確と言われていたポール・ジアマッティがもれ、その代わりに『ミリオンダラー・ベイビー』のクリント・イーストウッドが俳優としては2度目のノミネーションを獲得。激戦と言われた主演男優賞に"7強"外からクリントがサプライズ候補として入った時点で 『ミリオンダラー・ベイビー』という作品が想像以上に強い支持をアカデミー会員から得ている事実を暗示した。

さて、当日。プレゼンターのシャーリーズ・セロンが艶やかに登場して読み上げた名前は本命のジェイミー・フォックス。壇上に上がった彼は"主演男優"のオーラがなく、終始落ち着かない様子。レイ・チャールズ、自分の娘、そして祖母へに感謝した。彼は小さい頃に両親が離婚し、母方の養母に育てられた。祖母とは、2004年末に他界した母方の養母のこと。彼は小さい頃に両親が離婚し、母方の養父母に育てられた。ピアノも祖母の意向で習っていおり、レイ役を演じるのにおおいに役立った。「今でも祖母とは夢の中でたくさん話すんだ。今日は話すことがたくさんあるから眠りにつくのが待ちきれないよ」やや演技過剰なパフォーマンスであったが、多くの人々に感動を与えた。この年のジェイミー・フォックスは助演男優賞とのWノミネート(黒人初)、ゴールデン・グローブ賞ではTVミニシリーズ部門主演男優賞を含む3部門ノミネートの大活躍。まさにジェイミー・フォックスの年だった、と言えそうだ。




★ 主演男優賞と違って、不作といわれたこの年。その中では、『華麗なる恋の舞台で』で舞台女優役をコミカルに演じたアネット・ベニングが1歩リードといわれていた。しかし、『ミリオンダラー・ベイビー』が出来の良さゆえ年末に繰り上げ公開されたことでヒラリー・スワンクのBuzzが急上昇。4年前の対決再び、と評するメディアもあったが前回と違って 今回は作品の勢いとともにヒラリーが大本命とされた。対抗はアネットと、批評家賞大健闘のイメルダ・スタウントンであった。

プレゼンターはショーン・ペン。 タキシードのシャツの胸元をはだけ、酔っ払ったように登場 いきなり「ジュード・ロウは素晴らしい俳優のひとりだ」とオープニングでの司会クリス・ロックのジュードへのコメントに反論。大人気ない?「アカデミーのお気に入りの女優は・・・」とショーンらしい反骨精神あふれる紹介で呼ばれた名前は本命のヒラリー・スワンク。ヒラリーは 「前回の反省から、まず夫に感謝します」とさりげなく2度目であることを強調。「夢みたいです。私はトレイラー出身の女優を夢見る女の子にすぎませんでした」そのあと延々と人の名前をあげ感謝のコメントをする。終了を促す音楽がなると「まだよ。最後はクリントなんだから」と叫び、感謝人羅列をひたすら続行した。真面目な性格といえばそれまでだが、あまりに芸がなく見事ワーストスピーチに選ばれました。おまけに後日、彼女の住んでいたトレーラーは高級な部類に属していた、と指摘される始末。2回目なんだからスピーチも少し学習しようね(笑)。



オスカー像を置いてハンバーガーをむさぼるヒラリー・スワンク前回受賞の『ボーイ・ドント・クライ』では男役を演じたコスプレ演技が評価された感が強かった。受賞後もとくにブレイクせず、オスカーの呪いの犠牲者になりかけていた。今回はボクシングシーンのみならず、普通の演技でも実力を見せつけ文句なしの受賞。これでヒラリーはハリウッドで独自のポジションを獲得したといってよいだろう。どんな役でも器用にこなせるタイプではないが、はまり役を得たときの底力を今回の受賞で見事に証明。これからは何年かに一度はオスカーに嵐を呼ぶ存在になりそうだ。でもオスカー女優なんだからハンバーガー食ってる写真なんか撮られないように気をつけて(笑)



★ 助演男優賞は『ミリオンダラー・ベイビー』を携えて4回目のノミネートとなったモーガン・フリーマンがぶっちぎりの本命であった。下馬評では批評家賞総ナメした『サイドウェイ』のトーマス・ヘイデン・チャーチが一応、対抗馬とされていたが...。

プレゼンターは昨年の受賞者レニー・ゼルウィガー。読み上げた名前はもちろん本命のモーガン・フリーマン。モーガンは照れたようにクリント・イーストウッドに 「また使ってくれてありがとう」、ヒラリー・スワンクにも礼をいい 言葉少なくあっさりとステージを去った。会場はスタンディング・オベーション。『ショーシャンクの空へ』の共演者ティム・ロビンスも立ち上がって祝福していた。この俳優がいかにハリウッドで尊敬されているか, 皆が彼にオスカーを与えたがっていたか、が一目瞭然でわかる名場面であった。「オスカーは何度もノミネートされることが重要だと思っていた 長く活躍できている、という証拠だから」と語っていたフリーマンだが「やっぱり受賞はうれしいものだね。クリントやヒラリーと一緒に 受賞できたのがよかった」とコメントしている。 蛇足だが、筆者、『ミリオンダラー・ベイビー』のPRで来日した時の舞台挨拶でフリーマンの実物をご拝見。背が高いため、見栄えはするものの、素顔はフツーの気のいいおじさま。映画で見る、あの独特のオーラは演技力によるものだったんだな〜と 改めて実感。そういえば「ミリオン〜」に関しては 「ボクシングに関するリサーチは特にしなかった。さまになって見えたのなら、それは私の演技力の賜物です」 だそうです(笑)




★ 演技賞のWinnerを選ぶ基準は様々である。

1.純粋に演技力を評価される
2.これまでの功績を含めて評価される。功労賞的な意味合い
3.技術的なものより、雰囲気を醸し出していることを評価される(これも立派な演技力だが...)
4.期待の若手に対する先行投資
5.病気からの復活、長い低迷期を得てのカムバック

大きく分けると上の5種類であろう。主演となるとほぼ1か2に限られ、助演男優はたまに5が加わる程度。若手に優しく中堅どころにも優しい、選考基準が一番幅広いのが この助演女優賞部門。上記どの基準を重視するかによって受賞予想は変わってくる。

 この年の下馬評は
 本命 ケイト・ブランシェット、→ 基準 1,2
 対抗 ヴァージニア・マドセン → 基準 3,5
 大穴 ナタリー・ポートマン → 基準 4

 この年の演技賞一番の混戦部門となった。 『エリザベス』で初ノミネート以来、毎年のように下馬評に名前が挙がっていたケイト・ブランシェット。どの作品に出ても見事な演技を披露するため、票が分散。作品の評価が伴わない不運もあり、今回やっと2回目のノミネート!今回は、最多11部門ノミネート、マーティン・スコセッシ監督作品『アビエイター』でエントリー。 出演作品の勢いもある。伝説の名女優、キャサリン・ヘッブバーン役で話題性も十分。俳優組合賞も受賞し、本命とされた。一方、ヴァージニア・マドセンは80年代後半にセクシー女優として活躍するも、その後低迷。最近はTV中心の活動をしていた。『サイドウェイ』は作品の核ともいえる役柄。年相応の自然な演技が絶賛され、批評家賞を総ナメにした。作品の勢い、ハリウッドのカムバック好きもあり、かなり手強い対抗馬であった。

 プレゼンターはティム・ロビンス。「演技力がなければ退屈な政治屋」と司会のクリス・ロックに揶揄されてもびくともせず、童顔をほころばせて駆け足でステージに向かう。オスカー俳優となった余裕か? ティムが呼び上げた名前は本命のケイト・ブランシェット。余裕でステージに上がり、スタッフやキャサリン・ヘッブバーンに謝意を陳べる。最後にスコセッシに対して「私の息子とあなたの娘が結婚することを祈っているわ」という意味不明のコメント。撮影セット上で仲良しだったらしい。スコセッシは苦笑い。

伝説の女優キャサリン・ヘッブバーン役。存命中をよく知るアカデミー会員も多いため「単なるモノマネ」と 評される危険性もあった。それを見事に跳ね除け、彼女の意思の強さを見事に体現したブランシェット。オスカー受賞者の役を演じてオスカーを獲得したケースはこれが初めてのようです。



★ 主題歌賞のノミネート曲は、オリジナルの歌手によってステージ上で歌われるのが慣習であるが、この年は有名歌手の楽曲ノミネートがなかった。そこで高視聴率獲得のため、オリジナル歌手の代わりに有名スターに歌唱を依頼するという奇策がなされた。『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』などに出演し、映画界進出にも意欲を見せる人気歌手ビヨンセが全5曲中3曲の歌唱を担当。あと1曲はアントニア・バンデラスカルロス・サンタナのラテンコンビに白羽の矢をたてオリジナル歌手の歌唱はカウンティング・クロウズによる『シュレック2』の主題歌"Accidentally In Love”1曲という有様だった。3曲も占拠したビヨンセの歌唱は畑違いの歌ばかりだったせいか大不評。ビヨンセ本人は1曲ごとに御色直しする気合の入れようだったが....。 フランス映画『コーラス』の主題歌「亡き人への想い」でのフランス語歌唱は、会場にいたフランス人女優ジュリー・デルビー(『ビフォア・サンセット』で脚色賞にノミネートされていた)から「中国語にしか聞こえなかったわ」と揶揄される始末。オスカーノミネート経験もある女優ミニー・ドライバーがオリジナルを歌い本人は歌う気まんまんだったという『オペラ座の怪人』の主題歌“Learn To Be Lonely”もオリジナル歌手ジョシュ・グローバンとのデュエット『ポーラー・エクスプレス』主題歌"Believe"もオリジナルの良さをぶち壊す出来。この賞の受賞対象は歌手ではなく、あくまで作詞・作曲者。そのためショーのパフォーマンスとはいえ、アレンジや歌い方、音程などを勝手に変えることを許さない先生方もいると聞くが...。まだ若いビヨンセには荷が重すぎたか?

メキシコ人女優サルマ・ハエックから「初めてノミネートされたスペイン語の楽曲です」と思い入れたっぷりに紹介された『モーターサイクル・ダイアリーズ』の主題歌「河を渡って木立の中へ」バンデラス&サンタナのパフォーマンスはまずまずの評価を得た。



だが、この歌唱のキャスティングが発表されるやいなや、授賞式に出席予定だった主演のガエル・ガルシア・ベルナルは「あの映画の一員として、彼(オリジナル歌唱のホルヘ・ドレクスレール)の存在を無視することはできない。、映画も歌も、他人のアイデンティティーを尊重することがテーマなのに」と抗議の意味を込めて授賞式出席をボイコットした。おそらくガエルが当初この歌の紹介役を依頼されていたのだろう。アカデミーは当初、この曲の歌唱をエンリオ・イグレシアスに白羽の矢を立てたがエンリオは拒否。バンデラスも引き受けてはみたものの、かなり気にしていた様子でホルヘ・ドレクスレールにコンタクトをとり「もし自分が歌うのがイヤならいつでも降りる」と申し出ていたという。ドレクスレールはバンデラスの心遣いを嬉しく思ったようだ。

ただ、事件はこの曲が主題歌賞を受賞した瞬間に起こった。オリジナル歌手であるホルヘ・ドレクスレールは、ステージ上でオスカー像を受け取りマイクを握るやいなや、スピーチの代わりに自分で歌わせてもらえなかった楽曲の1番をアカペラで披露。その後「チャオ。サンキュー」とだけ言ってバックステージに消えた。アカデミー賞史上に残る粋な"スピーチ"であり、退屈極まりないこの年の授賞式中、唯一と言ってもいいほど印象的な場面であった。自分で歌わせてもらえなかったドレクスレールの無念さも滲み出ていた。理不尽な演出の弊害が浮き彫りにされた形となり、アカデミー賞事務局は見事な"失態"を演じてしまった。ちなみにドレクスレールは授賞式終了後のアフターパーティで一般人に間違われ、入場を拒否されてしまった。オスカー像を見せ、ようやくパーティ会場に入れたという。この屈辱をばねに、またいい曲を作ってほしいですね。

"Al otro lado del rio..." J Drexler



第77回(2004年)アカデミー賞ノミネート一覧

 マークは受賞作品。リンクは原則としてamazon

作品賞
  「ミリオンダラー・ベイビー
   「アビエイター
   「ネバーランド
   「Ray/レイ
   「サイドウェイ

主演男優賞
 ジェイミー・フォックス 「Ray/レイ」
   ドン・チードル 「ホテル・ルワンダ
   ジョニー・デップ 「ネバーランド」
   レオナルド・ディカプリオ 「アビエイター」
   クリント・イーストウッド 「ミリオンダラー・ベイビー」

主演女優賞
  ヒラリー・スワンク 「ミリオンダラー・ベイビー」
   アネット・ベニング 「華麗なる恋の舞台で
   カタリーナ・サンディノ・モレノ 「そして、ひと粒のひかり
   イメルダ・スタウントン 「ヴェラ・ドレイク
   ケイト・ウィンスレット 「エターナル・サンシャイン

助演男優賞
  モーガン・フリーマン 「ミリオンダラー・ベイビー」
   アラン・アルダ 「アビエイター」
   トーマス・ヘイデン・チャーチ 「サイドウェイ」
   ジェイミー・フォックス 「コラテラル
   クライヴ・オーウェン 「クローサー

助演女優賞
 ケイト・ブランシェット 「アビエイター」
   ローラ・リニー 「愛についてのキンゼイ・レポート
   ヴァージニア・マドセン 「サイドウェイ」
   ソフィー・オコネドー 「ホテル・ルワンダ」
   ナタリー・ポートマン 「クローサー」

監督賞
 クリント・イーストウッド 「ミリオンダラー・ベイビー」
   マーティン・スコセッシ 「アビエイター」
   テイラー・ハックフォード 「Ray/レイ」
   アレクサンダー・ペイン 「サイドウェイ」
   マイク・リー 「ヴェラ・ドレイク」

脚本賞
<オリジナル脚本>
 「エターナル・サンシャイン」
   「アビエイター」
   「ホテル・ルワンダ」
   「Mr.インクレディブル
   「ヴェラ・ドレイク」

Charlie Kaufman winning Best Original Screenplay

<脚色>
  「サイドウェイ」
   「ビフォア・サンセット
   「モーターサイクル・ダイアリーズ
   「ネバーランド」
   「ミリオンダラー・ベイビー」

撮影賞
 「アビエイター」
   「ロング・エンゲージメント
   「LOVERS
   「パッション
   「オペラ座の怪人

美術監督・装置賞
  「アビエイター」
   「ネバーランド」
   「ロング・エンゲージメント」
   「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
   「オペラ座の怪人」

音響賞
 「Ray/レイ」
   「アビエイター」
   「Mr.インクレディブル」
   「ポーラー・エクスプレス
   「スパイダーマン2

編集賞
  「アビエイター」
   「コラテラル」
   「ネバーランド」
   「ミリオンダラー・ベイビー」
   「Ray/レイ」

作曲賞
 「ネバーランド」
   「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
   「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」
   「パッション」
   「ヴィレッジ

歌曲賞
  「Al Otro Lado Del Rio」 (モーターサイクル・ダイアリーズ)
   「Accidentally In Love」 (シュレック2
   「Believe」 (ポーラー・エクスプレス)
   「Learn To Be Lonely」 (オペラ座の怪人)
   「Look To Your Path (Vois Sur Ton Chemin)」 (コーラス) 

衣装デザイン賞
 「アビエイター」
   「ネバーランド」
   「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」
   「Ray/レイ」
   「トロイ

メイクアップ賞
 「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」
   「海を飛ぶ夢
   「パッション」

視覚効果賞
 「スパイダーマン2」
   「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
   「アイ,ロボット

音響効果編集賞
 「Mr.インクレディブル」
   「ポーラー・エクスプレス」
   「スパイダーマン2」

短編賞
<アニメ>
 「RYAN」
   「Birthday Boy」
   「Gopher Broke」
   「Guard Dog」
   「Lorenzo」

<実写>
 「Wasp」
   「Everything in This Country Must」
   「Little Terrorist」
   「7:35 de la manana」
   「Two Cars, One Night」

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
 「Mighty Times: The Children's March」
   「Autism Is a World」
   「The Children of Leningradsky」
   「Hardwood」
   「Sister Rose's Passion」

<長編>
 「未来を写した子どもたち
   「らくだの涙
   「スーパーサイズ・ミー
   「Tupac:Resurrection
   「Twist of Faith」

外国語映画賞
 「海を飛ぶ夢」 (スペイン)
   「コーラス」 (フランス)
   「歓びを歌にのせて」 (スウェーデン)
   「ヒトラー 〜最期の12日間〜」 (ドイツ)
   「Yesterday」 (南アフリカ)

長編アニメ賞
 「Mr.インクレディブル
   「シャーク・テイル
   「シュレック2」

名誉賞
 シドニー・ルメット

ジーン・ハーショルト友愛賞
  ロジャー・メイアー

ゴードン・E・ソーヤー賞
 宮城島卓夫

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2009.03.11 Wednesday | 00:55 | アカデミー賞の軌跡 | comments(0) | - |

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