第74回(2001年)アカデミー賞
第74回(2001年)アカデミー賞
第74回アカデミー賞trivia
〜"9.11”後、初のオスカーは黒人yearに! 〜
★ "9.11"事故、以降初のオスカー、ハリウッドに新しくつくられたゴダックシアター会場は厳重な警備体制がとられた。ロス全体に配置される数と同じだけの警官数が配置され、FBIも協力会場上空は市警ヘリコプターのみ飛行OKという物々しさ。年々過熱化する事前キャンペーンは今年も相変わらずで、とくに実話をもとにした『ビューティフル・マインド』に対して事実との相違点が相次いで指摘された。主人公ジョン・ナッシュのホモセクシュアル嗜好や離婚歴、ユダヤ人差別者疑惑など続々。モデルとなったジョン・ナッシュ本人が、テレビ番組の中で、同性愛者やユダヤ人差別主義者などの噂を強く否定していなければならないほどだった。

〜"9.11”後、初のオスカーは黒人yearに! 〜
★ "9.11"事故、以降初のオスカー、ハリウッドに新しくつくられたゴダックシアター会場は厳重な警備体制がとられた。ロス全体に配置される数と同じだけの警官数が配置され、FBIも協力会場上空は市警ヘリコプターのみ飛行OKという物々しさ。年々過熱化する事前キャンペーンは今年も相変わらずで、とくに実話をもとにした『ビューティフル・マインド』に対して事実との相違点が相次いで指摘された。主人公ジョン・ナッシュのホモセクシュアル嗜好や離婚歴、ユダヤ人差別者疑惑など続々。モデルとなったジョン・ナッシュ本人が、テレビ番組の中で、同性愛者やユダヤ人差別主義者などの噂を強く否定していなければならないほどだった。
★ 司会はウーピー・ゴールドバーグ。「アカデミー賞授賞式は映画スターとオスカー受賞者の大パーティね。まるでライザ・ミネリの結婚式みたい」と語り、笑いをとった。ライザの派手な結婚式についてはこの後もネタにした。彼女にウラミでも?(笑)ウーピーは個人的には一番好きな司会者なのだが、黒人差別問題から下ネタまでキワドイ発言が多いことで定評がある。今回も「ゴスフォード・パーク」の紹介で「使用人が15人もいるのに黒人は一人もいない」「今年も宣伝競争、激しかったわね。候補者がみんな真っ黒になった」とキツイ一言。後者は主演男優賞に黒人俳優が2人、主演女優賞にもノミネートと黒人俳優の躍進と、上記の熾烈な中傷合戦をかけたものである。
★ オープニングにトム・クルーズが登場。「心に残る映画をつくるコツはちょっとした魔法だ」というビリー・ワイルダー監督の言葉を引き合いに出し「あなたにとって映画とは何ですか」と問いかけた。この後、初ノミネートとなった元妻ニコール・キッドマンがステージを楽しめるようにとあっさりと退場。終了後のパーティにも参加しなかった模様。トム、結構いいやつじゃないか!(自分が好奇の目にさらされるのがイヤだっただけかもしれないが)
★ この日最初のサプライズは、ウディ・アレンの登場!!何しろ「アニー・ホール」(1977)で作品賞ほか4部門で受賞したときでさえ受賞式に出席せず、ニューヨークでクラリネット演奏をしていたという伝説の持ち主。もちろん、オスカー授賞式には初登場となる。関係者にもほとんど知らされておらず、会場からは驚きの声があがった。アレンは「9.11」事故以降のニューヨークを元気づけるため?ニューヨークを舞台とした映画の紹介役として登場した。「電話がかかってきたとき、オスカー像を返せといわれるかと思った。もう質屋はつぶれているのに」「自分よりふさわしい人をマーティン・スコセッシ、マイク・ニコルス、スパイク・リー、シドニー・ルメットなど15人ぐらいあげたが、全員に断られたらしい」とアレン節炸裂で笑わせた。もちろん退場後、すぐ帰った。ウディ・アレンにとってこれが最初で最後のアカデミー賞授賞式だろう。
★ 何といってもハイライトシーンのひとつは名誉賞。プレゼンターはデンゼル・ワシントンである。デンゼルは「彼こそが史上初の黒人主演俳優」と称え、『夜の大捜査線』の製作者ウォルター・ミリッシュ登場後、ウィル・スミス、デンゼル・ワシントン、キューバ・グッディング・Jr、ハル・ベリー、ウーピー・ゴールドバーグ、ローレンス・フィッシュバーン、スパイク・リーなどのビデオ賛辞コメントの後、その人シドニー・ポアチエ登場。ポアチエは気品と風格あふれ黒人俳優の先駆者、家族、そして過去、自分を評価し使ってくれた人々に感謝した。観客はもちろんスタンディング・オベーション。ハリウッドの黒人俳優がどれほどシドニー・ポアチエを尊敬し感謝しているかこれほどにじみ出ていた名誉賞受賞者への賛辞VTRもないのではないか?同時に名誉賞を受賞したロバート・レッドフォードがすっかりかすんでしまったほど。彼のサンダンス創立の実績も相当称えられるべきものなのだが...。プレゼンターが『追憶』で競演した"アカデミーの嫌われ者"バーブラ・ストライザントだったのが盛り上がりに欠けた原因?(笑)
★ 主演女優賞の下馬評は前哨戦圧勝のシシー・スペイセク、対抗は『ムーランルージュ』のほか『アザーズ』での演技も評価され、初ノミネートとなったニコール・キッドマン、全米俳優組合賞の主演女優賞を獲得したことで俄然クローズアップされてきたハル・ベリーといったところか。
プレゼンターはラッセル・クロウ。主演男優賞の発表がのち控えて気が気でないのか、軽い挨拶のあとあっさりと発表へ。呼ばれた名前はハル・ベリーだった。黒人初の主演女優賞受賞となった歴史的な瞬間である。ハルは、名前を呼ばれた瞬間からしばらく「Oh,My God」を繰り返し周囲に支えられ、ようやく席を立ってステージへ。ステージ上でもしばらく震えがとまらず、「Oh,My God」と唱え続け、大粒の涙。
「この賞は私ひとりのものではありません。ドロシー・ダンドリッジ、レナ・ホーン、ダイアン・キャロル、ともに戦ってきたジェイダ・ビンケット、アンジェラ・バセット、ヴィヴィカ・フォックスすべての有色人種の女性のものです。今夜また新しい扉がひらかれました」
45秒の時間を大幅にオーバーしたが「74年間の思いなの。時間はかかるわ」震えながら声を振りしぼってスピーチをするハルの姿に誰もが感動し涙ぐんだ。アカデミー、マネージャー、家族らに感謝して退場した。司会のウーピー・ゴールドバーグはその後「ハル・ベリーおめでとう。彼女が最初でよかったわね」としみじみ。間違いなくアカデミー賞の歴史に残る名シーンである。
>
★ 主演男優賞の本命は、作品賞が有力視されていた『ビューティフル・マインド』のラッセル・クロウ。対抗が『トレーニング・デイ』で悪徳刑事を演じ 新境地を開いたデンゼル・ワシントンというのが下馬評であった。作品の勢いが圧倒的に『ビューティフル・マインド』のほうが強く従来ならラッセル・クロウ当確といったところだったが...。 ラッセルには黄信号がともる要素がたくさんあった。
・ラッセルは昨年『グラディエーター』で受賞したばかり。
・先立って行われた英国アカデミー賞授賞式の後、イギリスのプロデューサーに暴行を働いた。
かつ、昨年の主演女優賞受賞者であり、プレゼンターを勤めることになっているジュリア・ロバーツが「オスカーを渡したい人、もちろんデンゼルよ」と強烈にプッシュ。同じオーストラリア人でありながら「アイツは俺の真似ばかりしている」とラッセル嫌いらしいメル・ギブソンもデンゼルの支持を表明。業界内の人望厚いデンゼル・ワシントンと人望のないラッセル・クロウ。直前の暴行事件でのイメージダウンが輪をかけ、デンゼルが本命とする声が高まっていた。それでも全米俳優組合賞をラッセルは受賞。巻き返したかのように思えたが。
プレゼンターは前述のジュリア・ロバーツ。「今年はトム・コンティが指揮者でなくてよかったわ」と一言。ちなみに昨年の指揮者はトム・コンティではなくビル・コンティ。ジュリア....(^^;さらに「シドニー・ポアチエにキスしちゃった」とはしゃぐ彼女は本当にオスカー女優なのだろうか(笑)。そして発表、ジュリアはしなだれるように「I love my life」とつぶやきデンゼル・ワシントンの名を読み上げた。立ち上がって息子を見守るような目で暖かい拍手をするシドニー・ポアチエ。睨み付けるように拍手をするラッセル・クロウ。襲い掛かるように大げさに抱きつくジュリア...。
「一晩に2人か。神様はすばらしい」といって落ち着いて語りはじめるデンゼル。「40年間追い続けたシドニーと同じ夜に受賞できた。あなたの軌跡をいつまでも追い続けます。それが私の人生であり生きがいです。神の祝福を」笑顔で立ち上がって応じるシドニー。デンゼルの姿は自信にあふれていた。こんなに堂々とした受賞スピーチも珍しい。「最高をめざすのが私の人生」といった後、家族に感謝してスピーチ終了。その瞬間、ジュリア・ロバーツ様はデンゼルにからみつくように抱きついた。一体、主役は誰なのでしょう(笑)。その後、満面の笑みでに監督賞のプレゼンター、メル・ギブソン登場。ラッセル落選はジュリアとメルが組んだ"陰謀のセオリー
★ 監督賞はツワモノぞろい。 ロバート・アルトマン、デヴィッド・リンチといった曲者に、昨年『グラディエーター』で作品賞を受賞しながら監督賞を逃したリドリー・スコット。映画化不可能といわれたファンタジーの名作「指輪物語」を見事に映像化、大ヒットさせたピーター・ジャクソン。だが、子役から俳優として活躍し、『アポロ13』、『身代金」『グリンチ』 などのヒット作もあり、ハリウッドへの貢献度抜群のロン・ハワードが、受賞相当とされた『アポロ13』でノミネートすらされなかったことへの同情票もあり本命とされた。一方、アンチハリウッドの作風を貫き、俳優から尊敬される無冠の巨匠ロバート・アルトマンを77歳という高齢もあり有力視する声も強かった。
プレゼンターは『身代金』の主演男優メル・ギブソン。そうなると...メルの読み上げた名前はやっぱりロン・ハワードだった。ハワードは「もう演技はできません。感想は一言。うれしい」 ラッセル・クロウとジェニファー・コネリーに「仕事を共にできてよかった」と感謝。目を潤ませるジェニファーに、にらみつけるように胸に手をあてるラッセル(笑)。最後に「(作品のモデルとなった)ナッシュ夫婦に感謝します。貴重な経験を共有できました」と締めた。会場にいた夫婦は恥ずかしそうに微笑んだ。ハリウッド生え抜きの職人監督、ロン・ハワードの受賞は誰もが納得、といわんばかりの穏やかな空気があふれていた受賞シーンであった。
★ 上記の通り、『ビューティフル・マインド』はライバル・スタジオからと思われるひどい中傷にさらされた。モデルとされるジョン・ナッシュを中傷することで、映画が事実と違うと主張し作品のイメージを落とそうとする、かなり悪質なキャンペーンであった。このようなネガティブ・キャンペーンが大々的に展開されたのは『ビューティフル・マインド』がぶっちぎりの本命だったからである。『ムーラン・ルージュ』は作品賞としては軽すぎ、『ゴスフォード・パーク』と『イン・ザ・ベッドルーム』は作品賞を受賞するには小粒すぎ、『ロード・オブ・ザ・リング』は3部作になることが発表されており第1作目に早々にオスカーを与えることもあるまい、といった空気が漂っていた。
プレゼンターはトム・ハンクス。「映画とは何か?それは簡単です。人と人とをつなげてくれるもの」オープニングのトム・クルーズの「映画とは何か?じっくり考えてみてください」という問いに答えたスピーチだ。2人のトムさん打ち合わせでもしたの?(まあ、台本にあったんでしょうね)トム・ハンクスが読み上げた作品名は大本命『ビューティフル・マインド』。まだ、舞台の袖に残っていたロン・ハワードがトム・ハンクスと抱き合って喜んだ。プロデューサーのブライアン・グレイザーはトム・ハンクスから受賞作品の書いてある封筒をとりあげ「接戦だったと書いてある」とあまり受けないギャグを飛ばした。本命の受賞であり、比較的淡々とした受賞シーンだった。
主演賞2つを黒人俳優が独占、というアカデミー賞の歴史に残る画期的な年度だ。
だが、司会はウーピー・ゴールドバーグ、シドニー・ポアチエの名誉賞受賞は事前に決まっており何となく仕組まれた、という印象も残る。"9.11"以降初のアカデミー賞。アメリカは黒人を称えることで何をアピールしたかったのだろうか?
第74回(2001年)アカデミー賞ノミネート一覧
※ ★マークは受賞作品。リンクは原則としてamazon
作品賞
★ 「ビューティフル・マインド
「ゴスフォード・パーク
「イン・ザ・ベッドルーム
「ロード・オブ・ザ・リング
「ムーラン・ルージュ
主演男優賞
★ デンゼル・ワシントン 「トレーニング デイ
ラッセル・クロウ 「ビューティフル・マインド」
ショーン・ペン 「I am Sam アイ・アム・サム
ウィル・スミス 「ALI アリ
トム・ウィルキンソン 「イン・ザ・ベッドルーム」
主演女優賞
★ ハル・ベリー 「チョコレート
ジュディ・デンチ 「アイリス
ニコール・キッドマン 「ムーラン・ルージュ」
シシー・スペイセク 「イン・ザ・ベッドルーム」
レニー・ゼルウェガー 「ブリジット・ジョーンズの日記
助演男優賞
★ ジム・ブロードベント 「アイリス」
イーサン・ホーク 「トレーニング デイ」
ベン・キングズレー 「セクシー・ビースト」
イアン・マッケラン 「ロード・オブ・ザ・リング」
ジョン・ヴォイト 「ALI アリ」
助演女優賞
★ ジェニファー・コネリー 「ビューティフル・マインド」
ヘレン・ミレン 「ゴスフォード・パーク」
マリサ・トメイ 「イン・ザ・ベッドルーム」
ケイト・ウィンスレット 「アイリス」
マギー・スミス 「ゴスフォード・パーク」
監督賞
★ ロン・ハワード 「ビューティフル・マインド」
リドリー・スコット 「ブラックホーク・ダウン
ロバート・アルトマン 「ゴスフォード・パーク」
ピーター・ジャクソン 「ロード・オブ・ザ・リング」
デヴィッド・リンチ 「マルホランド・ドライブ
脚本賞
<オリジナル脚本>
★ 「ゴスフォード・パーク」
「アメリ
「メメント
「チョコレート」
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
Julian Fellowes winning the OscarR for Writing "Gosford Park"
<脚色>
★ 「ビューティフル・マインド」
「ゴーストワールド
「イン・ザ・ベッドルーム」
「シュレック
「ロード・オブ・ザ・リング」
撮影賞
★ 「ロード・オブ・ザ・リング」
「ブラックホーク・ダウン」
「アメリ」
「バーバー
「ムーラン・ルージュ」
美術監督・装置賞
★ 「ムーラン・ルージュ」
「アメリ」
「ゴスフォード・パーク」
「ハリー・ポッターと賢者の石
「ロード・オブ・ザ・リング」
音響賞
★ 「ブラックホーク・ダウン」
「アメリ」
「ロード・オブ・ザ・リング」
「ムーラン・ルージュ」
「パール・ハーバー
編集賞
★ 「ブラックホーク・ダウン」
「ビューティフル・マインド」
「ロード・オブ・ザ・リング」
「メメント」
「ムーラン・ルージュ」
作曲賞
★ 「ロード・オブ・ザ・リング」
「A.I.
「ビューティフル・マインド」
「ハリー・ポッターと賢者の石」
「モンスターズ・インク
歌曲賞
★ 「If I Didn't Have You」 (モンスターズ・インク)
「May It Be」 (ロード・オブ・ザ・リング)
「Vanilla Sky」 (バニラ・スカイ
「There You'll Be」 (パール・ハーバー)
「Until」 (ニューヨークの恋人
衣装デザイン賞
★ 「ムーラン・ルージュ」
「マリー・アントワネットの首飾り」
「ゴスフォード・パーク」
「ハリー・ポッターと賢者の石」
「ロード・オブ・ザ・リング」
メイクアップ賞
★ 「ロード・オブ・ザ・リング」
「ビューティフル・マインド」
「ムーラン・ルージュ」
視覚効果賞
★ 「ロード・オブ・ザ・リング」
「A.I.」
「パール・ハーバー」
音響効果編集賞
★ 「パール・ハーバー」
「モンスターズ・インク」
短編賞
<短編アニメ>
★ 「フォー・ザ・バーズ
「Fifty Percent Grey」
「Give Up Yer Aul Sins」
「Strange Invaders」
「Strange Trouble」
"For the Birds" winning Best Animated Short Film
<実写>
★ 「The Accountant」
「Copy Shop」
「Gregor's Greatest Invention」
「Meska sprawa」
「Speed for Thespians」
ドキュメンタリー映画賞
<短編>
★ 「Thoth」
「Artists and Orphans: A True Drama」
「Sing!」
<長編>
★ 「日曜日の殺人事件」
「Children Underground」
「LaLee's Kin: The Legacy of Cotton」
「プロミス
「戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界
外国語映画賞
★ 「ノー・マンズ・ランド
「Ellimg」 (ノルウェー)
「アメリ」 (フランス)
「ラガーン
「Son of the Bride」 (アルゼンチン)
長編アニメ映画賞
★ 「シュレック」
「Jimmy Neutron: Boy Genius」
「モンスターズ・インク」
名誉賞
★ シドニー・ポワチエ
(威厳、スタイル、知性をともなった傑出した演技と独自の存在感をスクリーンに刻み込んだことにより)
★ ロバート・レッドフォード
(俳優、監督、プロデューサーとして、サンダンス映画祭の設立により世界のクリエイターに刺激を与えたことにより)
Robert Redford receiving an Honorary OscarR
ジーン・ハーショルト友愛賞
★ アーサー・ヒラー
ゴードン・E・ソーヤー賞
★ エド・ディ・ジュリオ
