映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< 第70回(1997年)アカデミー賞 | TOP | 第72回(1999年)アカデミー賞 >>

第71回(1998年)アカデミー賞

第71回(1998年)アカデミー賞

71回アカデミー賞作品賞「恋におちたシェイクスピア」第71回アカデミー賞trivia
〜 エリア・カザンの名誉賞受賞が物議をかもし出す〜

★ 作品賞は13部門ノミネートの『恋におちたシェイクスピア』と11部門で候補になった『プライベート・ライアン』の一騎打ちだった。助演女優賞のプレゼンターとして登場したロビン・ウィリアムズが「もしここで何か非常事態が起きたら、ステイーヴン・スピルバーグだけが残って後の方はお帰りください」と語ったが、下馬評では『恋におちたシェイクスピア』のほうが優勢と見られていた。結果は『恋におちた〜』が7部門、『プライベート』は5部門受賞であったが、実質的には作品、主演女優、助演女優、脚本などの主要部門を制した『恋におちたシェイクスピア』の圧勝であった。








★ 主演女優賞は『恋におちたシェイクスピア』のグウィネス・パルトロウが本命で、対抗は『エリザベス』のケイト・ブランシェットと見られていた。ミラマックス社の猛烈なプッシュと作品評価の高さゆえパルトロウが優勢であるが、演技力はブランシェットのほうがはるかに上、とする見方は衆目の一致するところであった。この2人は『リプリー』(名作『太陽がいっぱい』のリメイクですね。アラン・ドロンが演じた役をマット・ディモンなんて...いくら何でも酷すぎる)で共演していることから不仲説をかきたてられたが2人はそろってこれを否定した。受賞は下馬評どおりグウィネス・パルトロウ。他の候補者に感謝するとき、"友達のケイト・ブランシェット"と呼んだことは明らかに不仲説を意識したものであった。パルトロウはジョン・マッデン監督や共演のジョセフ・ファインズ、家族らに感謝したが、泣いているそぶりはしても涙は出ておらず、だらだらとした長いスピーチは(特にイギリスで)不評で、歴代ワーストのひとつと言われている。ジュディ・デンチが例の強面で指を組み替えながら睨み付けていたのが印象的でした。
<彼女のスピーチにイライラしてたんですね(笑)。
ちなみに敗れたブランシェットは授賞式終了後のアフター・パーティである雑誌の編集者に「あなたはオスカーを盗まれたのよ!」と毒づかれたらしい。可哀想なブランシェット...。



★ 外国語映画賞のプレゼンターはイタリアの大女優ソフィア・ローレン。彼女が作品賞ノミネート作として『ライフ・イズ・ビューティフル』を紹介した後、そのまま外国語映画賞の発表に移った。これはいくらなんでも露骨?ソフィアが封筒をあける直前、客席から「ロベルト」と声がかかるとそれに呼応するようにソフィアも「ロベルト!」と一言だけで発表をすませた。監督のロベルト・ベニーニはイタリア人らしく?いすの上に立ちががる大パフォーマンス。ステージにあがり、日本人のように深くお辞儀し「サンキュー、ソフィア。君がほしいよ」といった後、英語で不自由そうに感謝の言葉を綴った。「この会場にこられなかったスタッフに捧げたい。」というコメントがあったのはさすがである。またロベルトは主演男優賞も獲得。「何かの間違いじゃないかな。もう知っている英語は使い果たしてしまった。」とスピーチして笑わせた。





★ 助演女優賞はジュディ・デンチ。昨年、主演女優賞にノミネートされた『Queen Victoria 至上の恋』と違って出演時間はわずかであり、演技力というよりはその存在感=貫禄にアカデミー会員がひれ伏した感。デンチは「8分しか映画に登場していないのでもっと小さな像をいただいてもよかった気がします。アカデミー賞で一番素晴らしいのはノミネートされること。何週間ものあいだ、夢の中にいるような気分です。」とスピーチした。こんなことを言ってしまったのが災いして?その後彼女は主演3回、助演1回ノミネートされるがいずれも受賞を逃している。ただし、60歳をすぎてから6度もオスカーにノミネートされているのは特筆すべきことである。



★ 助演男優賞のプレゼンターはキム・ベイシンガー。彼女は何も言わずにいきなり候補者を読み上げた。司会のウーピー・ゴールドバーグが前にしゃべりすぎたため時間が押していた?『トゥルーマン・ショー』のエド・ハリスが本命とされていたが、オスカーは『白い刻印』のジェームズ・コバーンにわたる番狂わせ。コバーンは「この仕事に人生の半分以上を費やしているけどやっとひとつもらえたって感じですね。金のためにやる仕事と本気でやる仕事があるけど、この役は後者です。すばらしい脚本だった」と語った後、最後は妻のポーラに感謝した。彼はリュウマチ性の関節炎により80年代はほとんど活動ができなかった。それを乗り越えての復活を称えられての受賞だと言われている。オスカーウォッチャーのあいだで、"受賞予想に関しては、今後、候補者の病歴もチェックする必要がある"と囁かれた。



★ 美術賞のプレゼンターはグウィネス・パルトロウ。司会のウーピー・ゴールドバーグは彼女を紹介するとき「best actress nominee,sweet kid,Gwyneth Paltrow」と紹介したがsweet kid のところで憎々しげに顔をゆがませた(笑)。パルトロウは髪をつめて、ピンクのドレスで清楚な雰囲気を強調していた。ただ、ドレスのサイズが体にあっていないのでは?と評されている。

★ 編集賞のプレゼンターはジム・キャリー。彼は『トゥルーマン・ショー』でゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門)を獲得し、アカデミー賞でも有力候補と見られていたが落選してしまっていた。
編集賞のプレゼンターを勤めます今日の仕事はそれだけです。(会場から笑い)後は何の心配もない。(笑顔をつくる)ここにあがってきて後でパーティを楽しめばそれでいい。ハー(ため息)」その後、嘘泣きする。「オスカーをとることは世界一重要なことではない。でも光栄なことですよね。」といった後、再び嘘泣き。「ごめんなさい。自分が悪いんです。1ヶ月ほど前、自分に投票すれば少しは有利になるかと思ったんですけどやっぱり人にあって話さなければだめですね。」急に活気づき「Who care?(知ったことか)どうせロベルト・ベニーニに負けたんだ!彼が僕の領域に飛び込んできた」と語った後、平常に戻ってフツーに発表を行った。自分の不運もネタにしてしまうのはコメディアンの性というものなのだが、このスピーチは不評だったようだ。翌年『マン・オン・ザ・ムーン』で再びゴールデングローブ賞を獲得 (ミュージカル・コメディ部門主演男優賞)し、アカデミー賞好みの実在の人物役だったにもかかわらずまたしてもノミネート漏れしたのは気の毒としかいいようがない。『トゥルーマン・ショー』、『マン・オン・ザ・ムーン』ともに受賞してもおかしくない演技だと個人的には思うのですが...。コメディアンに冷たいアカデミー賞というべきか、単にジム・キャリーが嫌われているだけなのか?コメディ俳優が持ち味を殺さずに演技賞を受賞した例は、おそらく第63回(1990年)『ゴースト/ニューヨークの幻』でインチキ霊媒師を演じて助演女優賞を獲得したウーピー・ゴールドバーグだけだろう。




★ 脚色賞は『ゴッド・アンド・モンスター』のビル・コンドン。スピーチする彼を主要キャスト3人(ブレンダン・フレイザー, イアン・マッケラン, リン・レッドグレーヴ)が身を寄せ合いながら満面の笑顔で見つめているという微笑ましい光景がカメラに映し出された。コンドンは監督作『ドリームガールズ』が第79回(2006年)において有力視されていた作品・監督賞からもれるという苦水を味わったが、第81回(2008年)では授賞式のプロデューサーをつとめ好評を博した。『ゴッド・アンド・モンスター』はこの年の各映画賞をにぎわせた作品であるにもかかわらず日本ではビデオスルーの予定だったが、映画ファンの熱心な署名運動により劇場公開されることとなった。

★ 歌曲賞はホイットニー・ヒューストンマライア・キャリーのデュエットによる"When You Believe"。この曲は2大ディーヴァの共演にもかかわらず、ビルボードヒットチャートでは15位までしか上がらなかった。期待外れの結果に終わった原因は"映画がひどかったから"、"完璧すぎるので逆に聴衆がひいてしまった?"など諸説あるようです。いい曲なんですけどね。リハーサルで2人揃って「歌いにくいからキーを下げてほしい」と申し出たが、作曲家先生の許可が下りなかった模様。この2人のディーヴァ要求も映画界では通じず。さてパフォーマンスなんですが、オスカー慣れしているホイットニーと違って、マライアは明らかに緊張気味で得意の奇声ハイトーンも決まらず。2人が手をつないで歌う場面は何とも嘘くさい。(笑) ↓マライア見てると面白いですよ。フェイク歌唱のホイットニーに対して、「あんただけ目立つんじゃないわよ」と言わんばかりにマライアが戸惑っている。まあ、ホイットニーのほうが先輩ですけどね。

Whitney Houston Mariah Carey When You Believe(Live Oscars 1999)


★ 短編映画賞は『パーソナルズ』。ニューヨークにあるユダヤ人の老人コミュニティを描いた作品で監督は元ミス日本伊比恵子である。「日本から来た女の子がこの映画をつくりこのような賞を受けるなんて誰が想像したでしょうか?」と目をうるませながらスピーチした。

★ ブラジルの大女優であるフェルナンダ・モンテネグロが主演女優賞にノミネートされた。出演作『セントラル・ステーション』も外国語映画賞の候補となっていたが、いずれも受賞は逃した。授賞式が終わって帰国したモンテネグロはブラジルのメディアに対し「グウィネス・パルトロウが受賞したのは演技力ではなく、やせている彼女の清楚な雰囲気が買われたため。アメリカには彼女のような女優はほとんどいない。パルトロウへのオスカーはいわば投資なのよ」「『ライフ・イズ・ビューティフル』は(外国語映画賞の)受賞に値する作品ではない。ロベルト・ベニーニ個人の人気によるもので、作品が認められたわけではない」とアカデミー賞の感想を述べた。これに対し、アメリカのメディアは"sore loser (負けっぷりの良くない人)の戯言"と一蹴した。

★ この夜、最も会場がざわめいたのは名誉賞受賞者としてエリア・カザンが登場した瞬間だった。エリア・カザンといえば『紳士協定』(1947)、『欲望という名の電車』(1951) 、『波止場』(1954) 、『エデンの東』(1954) といった名作を手がけ、アカデミー賞監督賞も2度受賞している名匠である。カザンは一時期、共産党員だったことがあるため、非米活動委員会に召喚されたが、カザンは自分の身を守るため、共産党員だったことを認めたうえで、ダシール・ハメット、リリアン・ヘルマンなど8名の度業者を密告した。それ以来、カザンには「裏切り者」のレッテルが生涯つきまとうことになる。

カザンへの名誉賞授与決定がアカデミーから事前に発表されたときから既に物議を醸しだしており、「裏切り者に受賞させるとは何事か」「偉大な監督に対して受賞は当然である」と反応は真っ二つに分かれた。オスカー俳優リチャード・ドレイファスは反対の意思表明を出した。

プレゼンターはマーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロ
名誉賞受賞者が登場すると、いわゆるスタンディングー・オベーションがお約束事なのだが、カザンが登場したときは反応が3パターンに分かれ、会場は異様な雰囲気につつまれていた。

・立ち上がって拍手した人 ウォーレン・ベイティ、キャシー・ベイツ、メリル・ストリープ、リン・レッドグレープ、カート・ラッセル、ヘレン・ハント
・立ち上がりはしないが拍手はしていた人 スティーヴン・スピルバーグ、ジム・キャリー
・拍手すらしない人 エド・ハリス、ニック・ノルティ、イアン・マッケラン

カザンのスピーチは当たり障りのないものに終始し、詫びの言葉は出てこなかった。

マーティン・スコセッシはカザンが生存中に名誉回復するために尽力をつくしていた。
スコセッシが『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『アビエイター』(2004)で監督賞を逃した際、敗因はカザンのために働いた彼を快く思っていない人が少なからずいるためだと噂された。よって作品の良し悪しに関係なくスコセッシは一生オスカーは受賞できないだろうという声もあったが、2006年『ディパーテッド』でようやく受賞をはたし、スコセッシは汚名?を晴らしている。




第71回(1998年)アカデミー賞ノミネート一覧

 マークは受賞作品。リンクは当サイト記事もしくはamazon

作品賞
  「恋におちたシェイクスピア
   「エリザベス
   「プライベート・ライアン」
   「シン・レッド・ライン
   「ライフ・イズ・ビューティフル

主演男優賞
 ロベルト・ベニーニ 「ライフ・イズ・ビューティフル」
   トム・ハンクス 「プライベート・ライアン」
   ニック・ノルティ 「白い刻印
   エドワード・ノートン 「アメリカン・ヒストリーX
   イアン・マッケラン 「ゴッド・アンド・モンスター

主演女優賞
  グウィネス・パルトロウ 「恋におちたシェイクスピア」
   ケイト・ブランシェット 「エリザベス」
   フェルナンダ・モンテネグロ 「セントラル・ステーション
   メリル・ストリープ 「母の眠り
   エミリー・ワトソン 「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ

助演男優賞
  ジェームズ・コバーン 「白い刻印」
   ロバート・デュヴァル 「シビル・アクション
   エド・ハリス 「トゥルーマン・ショー
   ジェフリー・ラッシュ 「恋におちたシェイクスピア」
   ビリー・ボブ・ソーントン 「シンプル・プラン

助演女優賞
 ジュディ・デンチ 「恋におちたシェイクスピア」
   キャシー・ベイツ 「パーフェクト・カップル
   ブレンダ・ブレシン 「リトル・ヴォイス
   レイチェル・グリフィス 「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」
   リン・レッドグレーヴ 「ゴッド・アンド・モンスター」

監督賞
 スティーヴン・スピルバーグ 「プライベート・ライアン」
   ロベルト・ベニーニ 「ライフ・イズ・ビューティフル」
   ジョン・マッデン 「恋におちたシェイクスピア」
   テレンス・マリック 「シン・レッド・ライン」
   ピーター・ウィアー 「トゥルーマン・ショー」

脚本賞
<オリジナル脚本>
 「恋におちたシェイクスピア」
   「ブルワース
   「プライベート・ライアン」
   「トゥルーマン・ショー」
   「ライフ・イズ・ビューティフル」

<脚色>
  「ゴッド・アンド・モンスター」
   「アウト・オブ・サイト
   「パーフェクト・カップル」
   「シンプル・プラン」
   「シン・レッド・ライン」

撮影賞
 「プライベート・ライアン」
   「シビル・アクション」
   「エリザベス」
   「恋におちたシェイクスピア」
   「シン・レッド・ライン」

美術監督・装置賞
  「恋におちたシェイクスピア」
   「エリザベス」
   「カラー・オブ・ハート
   「プライベート・ライアン」
   「奇蹟の輝き

音響賞
 「プライベート・ライアン」
   「アルマゲドン
   「マスク・オブ・ゾロ」
   「恋におちたシェイクスピア」
   「シン・レッド・ライン」

編集賞
  「プライベート・ライアン」
   「アウト・オブ・サイト」
   「恋におちたシェイクスピア」
   「シン・レッド・ライン」
   「ライフ・イズ・ビューティフル」

作曲賞
<ドラマ>
 「ライフ・イズ・ビューティフル」
   「エリザベス」
   「カラー・オブ・ハート」
   「プライベート・ライアン」
   「シン・レッド・ライン」

<ミュージカル/コメディ>
 「恋におちたシェイクスピア」
   「バグズ・ライフ
   「ムーラン
   「パッチ・アダムス
   「プリンス・オブ・エジプト

歌曲賞
  「ウェン・ユー・ビリーヴ」 "When you Believe" (プリンス・オブ・エジプト)
   「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ミス・ア・シング」 "I Don't Want to Miss a Thing" (アルマゲドン)
   「ザ・プレイヤー」 "The Prayer" (キャメロット
   「ア・ソフト・プレイス・トゥ・フォール」 "A Soft Place to Fall"(モンタナの風に抱かれて) 
   「ザット・ウィル・ドゥ」 "That'll Do" (ベイブ/都会へ行く

衣装デザイン賞
 「恋におちたシェイクスピア」
   「愛されし者」
   「エリザベス」
   「カラー・オブ・ハート」
   「ベルベット・ゴールドマイン

メイクアップ賞
 「エリザベス」
   「プライベート・ライアン」
   「恋におちたシェイクスピア」

視覚効果賞
 「奇蹟の輝き」
   「アルマゲドン」
   「マイティ・ジョー

音響効果編集賞
 「プライベート・ライアン」
   「アルマゲドン」
   「マスク・オブ・ゾロ」

短編賞
<アニメ>
 「Bunny」
   「The Canterbury Tales」
   「Jolly Roger」
   「More」
   「When Life Departs」

<実写>
 「Election Night」
   「La Carte Postale (The Postcard)」
   「Culture」
   「Holiday Romance」
   「Victor」

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
 「パーソナルズ」
   「A Place in the Land」
   「Sunrise over Tiananmen Square」

<長編>
 「The Last Days」
   「Dancemaker」
   「The Farm: Angola, USA」
   「Lenny Bruce: Swear to Tell the Truth」
   「Regret to Inform」

外国語映画賞
 「ライフ・イズ・ビューティフル」(イタリア)
   「El Abuelo」(スペイン)
   「運動靴と赤い金魚」(イラン)
   「セントラル・ステーション」(ブラジル)
   「タンゴ」(アルゼンチン)

名誉賞
 エリア・カザン
   (長いキャリアの中で数々の名作を創造し、映画製作の本質に影響を与えたことに対して)

アーヴィング・G・タールバーグ記念賞
 ノーマン・ジュイソン

人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!
2009.03.08 Sunday | 00:34 | アカデミー賞の軌跡 | comments(0) | - |

スポンサーサイト


2017.05.25 Thursday | 00:34 | - | - | - |

コメント

コメントする









▲top