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第10回(1937年)アカデミー賞

第10回(1937年)アカデミー賞

10回アカデミー賞作品賞「ゾラの生涯」第10回アカデミー賞trivia
〜ルイーゼ・ライナーの連続受賞は運がよすぎ?〜

★ フランク・キャプラ会長の組合との協調路線はさらに続き、アカデミー賞のノミネート決定後の最終投票はアカデミー会員であるなしにかかわらず、広くハリウッド映画人に開放した。その結果、前年は800名だった投票者が1万5000名に増えた。

★ 作品賞は『ゾラの生涯』。文豪エミール・ゾラがフランスの歴史を変えたといわれる冤罪事件ドレフュス事件に挑む姿を描いた作品。冤罪で逮捕されたアルフレド・ドレフュスがユダヤ人であったことからか、製作意図が露骨で「アカデミー賞は"社会悪撲滅映画・時代劇部門"を新設すべき」という皮肉な声があがった。作品はゾラの伝記映画というよりはドレフュス事件がメイン。映画は冒頭でフィクションを交えてあるとちゃんと但し書きがあるように、ラストの時系列がややおかしい。映画の出来はそこそこで、クオリティの高さというよりは作品のテーマに贈られた感。だが、日本では意外と知られていないドレフェス事件を知るためにも見て損はない映画だと思う。ドレフュスを演じたジョセフ・シルドクラウトはドイツ出身の舞台俳優。見事助演男優賞を受賞した。しかし彼は事前にエージェントから「君の受賞はないから授賞式に出席しなくてよい」と言われていたため、授賞式当日、そうそうに寝ていた。そこに「賞を渡そうとしているのになぜいないんだ」と電話でたたき起こされ大急ぎで会場にかけつけたという。

★ 主演女優賞はルイーゼ・ライナーが『大地』の演技で2年連続主演女優賞に輝いた。下馬評では『椿姫』のグレタ・ガルボが有力と言われていた。ライナーはMGMがグレタ・ガルボの対抗馬としてウイーンから呼び寄せた女優である。誰も予想しなかったことで、授賞式の日、ライナーは自宅でくつろいでいたという。ライナーにはMGMのボス、ルイズ・B・メイヤーの強力なバックアップがあった。だが、それによるやっかみは大きく、ライナー自身歯に衣着せぬ発言で知られていたため、敵も多かった。彼女自身、ハリウッドを嫌っており、それ以降活躍することもなく早々に引退した。ライナーは「ハリウッドという工場では、俳優は機械の一部にすぎなかった」と語っている。名物ゴシップ・コラムニスト、ルエラ・パーソンズはライナーを"Oscar Curse"(オスカーの呪い)と呼んた。その後も"Oscar Curse"の犠牲者は後を絶たない。

ルイーゼ・ライナーは前年の『巨星ジークフェルド』と違って出番も多くラストに見せ場がある。訛りの強い英語がばれないように台詞は少ない(笑)。演技は受賞に値するものだったが、何せこの年はライバルも強かった。前述のガルボをはじめ、『スター誕生』のジャネット・ゲイナー、『ステラ・ダラス』のバーバラ・スタンウィック、見事なコメディ演技を披露した『新婚道中記』のアイリーン・ダン...実績十分のライバルを差し置いてハリウッドでは新人の彼女が2年連続受賞というのは確かに奇妙である。ちなみにルイーゼ・ライナーが演じた役は当初田中路子が候補にあがっていたが日本人が演じることに反対する声があがりライナーに決まったという。もし田中路子が演じていたら日本人初のオスカーとれた?

★ 主演男優賞は『我は海の子』(すごい邦題だ...)で金持ちのクソガキの教育係となる漁師を演じたスペンサー・トレイシーにわたった。彼はたびたびトラブルを起こす問題児だった。ブロードウェイ出身というプライドからハリウッド映画人との交際を嫌っていた。
「虫唾炎手術後の経過がおもわしくない」という理由で授賞式を欠席。かわりにMGM社長ルイズ・B・メイヤーが壇上にあがり「彼はわが社にとって重要な俳優。彼は会社の命令に従うのがどれだけ大切かをよく知っているからです。」とスペンサーへの嫌味たっぷりのスピーチをした。

★ 助演女優賞は2年連続ノミネートとなった、舞台の名女優アリス・ブラディが受賞。映画では「苦しみに耐える女」の役柄が多かった。受賞作『シカゴ』は1871年におこったシカゴ大火の原因をつくったといわれる牛の飼い主キャサリン・オリアリーをモデルとした役。キャサリンが原因というのは新聞記者の捏造であったことが判明。その2年後にキャサリンは死去。また、アリス・ブラディもオスカー受賞後の2年後に癌で亡くなっている。単なる偶然....?演技自体はラストに決め台詞はあるが、それ以外たいした見せどころはなし。功労賞的受賞か。授賞式にブラディは欠席。見知らぬ男がオスカー像を受け取り、男は2度と戻ってこなかった。ブラディはその男に代役を頼んだ覚えはないと語ったため、アカデミーは12日後、改めてブラディにオスカー像を贈った。

★ 監督賞は『新婚道中記』のレオ・マッケリー。「うれしいけど、与える作品を間違っているよ」とスピーチした。彼が言う、"与えられるべきだった作品"とは同年に公開された『明日は来らず』のこと。離れて暮らさざるをえなくなった老夫婦の物語で、小津の『東京物語』に強い影響を与えたと言われている。レオ・マッケリーは監督報酬を削り、1年かけて作品を作り上げた『明日は来らず』を自身の最高傑作と信じて疑わなかったようだ。ジョン・フォード、フランク・キャプラ、ジャン・ルノアールらも本作を絶賛しており、『明日は来らず』が全くノミネートされていないことを不思議に思うが、スター俳優も起用せず、映画スタジオから「ハッピーエンドにしてほしい」という要望も拒否、興行的に惨敗したこともあり、そのあたりが嫌われた?ハリウッドってやっぱり...。『明日は来らず』は2010年、アメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。

★ 特別賞は『天使の花園』、『オーケストラの少女』と主演映画が2年連続作品賞にノミネートされた少女歌手ディアナ・ダービンに贈られた。『天使の花園』の大ヒットにより破産しかけたユニバーサル社を救ったことによる感謝の意もこめられていた。


第10回(1937年)アカデミー賞ノミネート一覧

 マークは受賞作品。リンクは当サイト記事もしくはamazon

作品賞
  「ゾラの生涯
   「新婚道中記
   「我は海の子
   「デッド・エンド
   「大地
   「シカゴ
   「失はれた地平線
   「オーケストラの少女
   「ステージ・ドア
   「スタア誕生」  

主演男優賞
 スペンサー・トレイシー 「我は海の子」
   ロバート・モンゴメリー 「夜は必ず来る」
   ポール・ムニ 「ゾラの生涯」
   フレデリック・マーチ 「スタア誕生」
   シャルル・ボワイエ 「征服」 

主演女優賞
  ルイーゼ・ライナー 「大地」
   アイリーン・ダン 「新婚道中記」
   グレタ・ガルボ 「椿姫
   ジャネット・ゲイナー 「スタア誕生」
   バーバラ・スタンウィック 「ステラ・ダラス」 

助演男優賞
  ジョセフ・シルドクラウト 「ゾラの生涯」
   ローランド・ヤング 「天国漫歩」
   H・B・ワーナー 「失はれた地平線」
   ラルフ・ベラミー 「新婚道中記」
   トーマス・ミッチェル 「ハリケーン」 

助演女優賞
 アリス・ブラディ 「シカゴ」
   アンドレア・リーズ 「ステージ・ドア」
   アン・シャーリー 「ステラ・ダラス」
   クレア・トレヴァー 「デッドエンド」
   メイ・ホイッティ 「夜は必ず来る」

監督賞
  レオ・マッケリー 「新婚道中記」
   グレゴリー・ラ・カーヴァ 「ステージ・ドア」
   ウィリアム・ウェルマン 「スタア誕生」
   シドニー・フランクリン 「大地」
   ウィリアム・ディーターレ 「ゾラの生涯」  

脚本賞
<原案>
  「スタア誕生」
   「黒の秘密」
   「シカゴ」
   「ゾラの生涯」
   「オーケストラの少女」 

<脚色>
 「ゾラの生涯」
   「新婚道中記」
   「我は海の子」
   「ステージ・ドア」
   「スタア誕生」

撮影賞
  「大地」
   「デッドエンド」
   「ホノルル航空隊」  

作曲賞
  「オーケストラの少女」
   「ハリケーン」
   「ゼンダ城の虜
   「シカゴ」
   「ゾラの生涯」
   「失はれた地平線」
   「君若き頃」
   「MAKE A WISH」
   「PORTIA ON TRIAL」
   「偽装の女
   「白雪姫
   「海の魂」
   「キャグニー ハリウッドに行く」
   「宝の山」

歌曲賞
  「スイート・レイラニ」 (ワイキキの結婚)
   「Remember Me」 (ドット君乗り出す)
   「That Old Feeling」 (ファッション・タイム)
   「They Can't Take That Away from Me 」 (踊らん哉
   「Whispers in the Dark」 (画家とモデル)

室内装置賞
  「失はれた地平線」
   「征服」
   「踊る騎士(ナイト)
   「デッドエンド」
   「EVERY DAY'S A HOLIDAY」
   「ゾラの生涯」
   「MANHATTAN MERRY-GO-ROUND」
   「ゼンダ城の虜」
   「海の魂」
   「ファッション・タイム」
   「テンプルの軍使」
   「スイングの女王」  

録音賞
 「ハリケーン」
   「地下室の饗宴・オペレッタの女王」
   「ラジオの歌姫」
   「シカゴ」
   「ゾラの生涯」
   「失はれた地平線」
   「君若き頃」
   「オーケストラの少女」
   「天国漫歩」
   「新天地」  

編集賞
  「失はれた地平線」
   「新婚道中記」
   「我は海の子」
   「大地」
   「オーケストラの少女」

短編賞
<カートゥーン>
 「村の水車」
   「THE LITTLE MATCH GIRL Charies Mintz」
   「EDOUCATED FISH」

<1巻>
 「THE PRIVATE LIFE OF THE GANNETS」
   「ROMANCE OF RADIUM」
   「A NIGHT AT THE MOVIES」 

<2巻>
 「TORTURE MONEY」
   「DEEP SOUTH」
   「SHOULD WIVES WORK」 

<カラー>
  「THE MAN WITHOUT A COUNTRY」
   「PENNY WISDOM」
   「POPULAR SCIENCE J-7-1」  

ダンス監督賞
  ハーミーズ・パン 「踊る騎士(ナイト)」
   バスリー・バークリー 「VARSITY SHOW」
   ボビー・コノリー 「READY,WILLING AND ABLE」
   デイヴ・グールド 「マルクス一番乗り
   サミー・リー 「アリババ女の都へ行く」
   ハリー・ロッシー 「氷上乱舞」
   リーロイ・ピリンツ 「ワイキキの結婚」 

助監督賞
 ロバート・ウェッブ 「シカゴ」
   C.C.コールマン.ジュニア 「失はれた地平線」
   ラス・ソーンダーズ 「ゾラの生涯」
   エリック・ステイシー 「スタア誕生」
   ハル・ウォーカー 「海の魂」

特別賞
 マック・セネット
   (映画コメディ技術への永続的な貢献) 
 エドガー・バーゲン
   (「チャーリー・マッカシー」(腹話術の人形)の創造)
 W・ハワード・グリーン
   (「スター誕生」のカラー撮影)
 近代美術館フィルム・ライブラリー
   (1895年以来、現在までの映画の収集と歴史的・審美的映画の発展の研究を一般に開放)

アーヴィング・G・タールバーグ記念賞
 ダリル・F・ザナック

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2009.01.08 Thursday | 00:14 | アカデミー賞の軌跡 | comments(0) | - |

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