映画のメモ帳+α

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おくりびと

おくりびと(2008 日本)

「おくりびと」公式サイトにリンク英語題  Departures
監督   滝田洋二郎  
脚本   小山薫堂      
撮影   浜田毅                  
音楽   久石譲               
出演   本木雅弘 広末涼子 山崎努
      余貴美子 吉行和子 笹野高史
      杉本哲太 峰岸徹 山田辰夫 橘ユキコ

第81回(2008年)アカデミー賞 外国語映画賞受賞。第32回モントリオール世界映画祭グランプリ受賞


年齢問わず、高給保証!実質労働時間わずか。
こんな夢のような職業がこの世にあるのでしょうか?
その正体は、この世からあの世への”旅立ちのお手伝い”をする納棺師。遺体を棺に収める仕事です。失職したことをきっかけに納棺師となった青年が他人の死に立ち会うことにより、自分が生きていること、そして家族や夫婦への愛情を見つめなおす姿を描いた映画が『おくりびと』です。主演の本木雅弘は10数年前のインド旅行をきっかけに死生観にめざめ、『納棺夫日記』(青木新門著)を読んたことで納棺師という職業を知ったそうです。それ以来ずっと死に携わる仕事に関心を持ち続けていた彼がプロデューサーに提案したことがきっかけで実現した企画。納棺をする本木の美しい所作が印象的な作品です。

※ 本木雅弘が読んだと語っている本。


まずファーストシーンが秀逸。新人納棺師小林大悟(本木雅弘)が遺族に死者の肌を見せないように遺体に布をかぶせたままで作業を進めていく。しかし、作業の途中あることに気がつきます。社長の佐々木(山崎努)に相談のうえ、遺体の死に化粧の施し方を遺族に尋ねる。ユーモアを織り交ぜながらも、死者を尊重する納棺師のプロフェッショナルな姿勢が見事に描かれています。

本木雅弘が役つくりのため納棺の現場を訪れたとき、ある納棺師の方が次のようなことを言っていたそうです。「ほかのどの職種よりも人に感謝される。こんなに充足感のある仕事はない
観客にその言葉を納得させるような場面が続きます。
納棺師は元来のイメージがよくない分、その仕事ぶりを見たときの感激がより大きくなるのでしょうね。
幼い娘を残して亡くなった母親。ルーズソックスを履いてみたいといっていたおばあちゃん、遺影は清楚なのに遺体はヤンキー風の少女、たくさんの女性に囲まれている、ドンファンみたいなおじいちゃん…。これらのエピソードの中に自分の体験を重ね合わせて涙する人も多いでしょう。最初は懐疑的だった大悟もさまざまな境遇の人たちの”旅立ちの場”を経験することにより、納棺師の仕事に深い意義を感じるようになっていく。

諸事情によりいやいや行っていた事柄に、次第とのめりこむようになっていく。
俳優・本木雅弘の出世作『シコふんじゃった』(1992)を彷彿させるシチュエーションです。本木は16年前と変わらぬ軽妙な演技で、主人公の心の移り変わりを的確に表現しています。業務用DVD撮影のため、遺体役をやらされる場面は爆笑もの!ところで、本木雅弘。実年齢がひと回り以上違う広末涼子と夫婦を演じても違和感が全然ないのはすごい!

しかし、次第に軽妙なモックンはなりをひそめ、大人の俳優本木雅弘が登場します。
冠婚葬祭の仕事とだけ伝えていたため、結婚式場の仕事だと勘違いしていた妻の美香(広末涼子)にも納棺師であることがばれ、家出されてしまいます。また幼馴染の山下(杉本哲太)にも「みんな噂しているぞ。もっとまともな仕事につけ」と助言される始末。大悟は仕事を辞めようとした矢先、ある出来事が起こり、自分の仕事ぶりを妻や山下に見せつけることになる。この納棺シーンの長回しは見ごたえ十分。ここまでは評判どおりの傑作だと思ったのですが...。

最後にもうひとつ事件が起こり、テーマは親子愛へとなだれこみます。
これが個人的に今イチ。NKエージェント事務員上村百合子(余貴美子)が語る”秘密”や、石ころのエピソード...感動を高めようとして無理矢理ぶちこんだ感がある。それまでの抑制された演出から急にバタ臭く、説明的な描写に変わってしまっている。また、大悟はある死体を前に「この人の人生って一体何だろうな。70数年生きてきてダンボール2箱しか残さないなんて」と語ります。映画を観た人ならこのセリフを額面どおりの意味には受け取らないでしょうが、それにしても孤独死の老人や首吊り自殺の現場にも立ち会ったはずの納棺師がこんな言葉を口にするなんて...。かなり興ざめしました。

新しい命の息吹をほうぶつさせる場面で映画は終わります。希望を醸し出すための演出でしょうが、あくまで納棺師が主人公の映画です。"旅立ちのお手伝い”の場面で締めてほしかった。最後の最後になってテーマのぶれを感じます。

ラストクレジットが流れる際、真っ黒の画面を背景に本木雅弘が納棺までの一連の所作をする映像が映し出されます。これが本当に美しい。プロの納棺師からお墨つきを得たというのも納得です。納棺師という職業に着目し、死を見つめることで自分が生きていることを再確認するという着眼点は秀逸で、一見の価値は十分にある映画です。
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おくりびと@映画生活


2008.09.14 Sunday | 00:05 | 映画 | comments(2) | trackbacks(25) |

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2019.09.05 Thursday | 00:05 | - | - | - |

コメント

こんばんは
もっくんっていい俳優さんだな〜と改めて感心しました。
納棺師という職業がほとんど普及してない田舎なので
その存在や仕事ぶりを知っただけでも大きな収穫があった作品です。
たしかにあのように厳かに丁重に,美しく旅立たせてもらえたら
遺族からはどんなにか感謝されるでしょうね。
最後の展開は,泣けたんですが,たしかにベタすぎの感もしましたね。
2008/09/27 10:49 PM by なな
ななさん、こんばんわ

納棺師という職業に着目した点は素晴らしいですね。

笹野高史の長口尺以降は泣かせようとする意図が露骨すぎて、
あざとさを感じてしまい、それ以前に流した涙がいっぺんに乾いてしまいました(^^;

あの長口尺の手前で終わっていれば素直によい映画だと思えたんですが...。

宣伝文句につられて今年のN0.1なんて書かれている人も多いですが、
個人的には邦画に絞ってみても5位以下ですねぇ...。
2008/09/28 1:47 AM by moviepad

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