映画のメモ帳+α

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アクロス・ザ・ユニバース

アクロス・ザ・ユニバース(2007 アメリカ)

「アクロス・ザ・ユニバース」公式サイトにリンク原題   ACROSS THE UNIVERSE   
監督   ジュリー・テイモア  
原案   ジュリー・テイモア ディック・クレメント
      イアン・ラ・フレネ   
脚色   ディック・クレメント イアン・ラ・フレネ         
撮影   ブリュノ・デルボネル                  
音楽   エリオット・ゴールデンサール               
出演   エヴァン・レイチェル・ウッド ジム・スタージェス
      ジョー・アンダーソン デイナ・ヒュークス
      T・V・カーピオ マーティン・ルーサー・マッコイ
      ジョー・コッカー ボノ サルマ・ハエック

第80回(2007年)アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネート。

ビートルズの曲ばかりを使ったミュージカル映画。本家ビートルズ映画を除けばありそうでなかった。そんな夢の企画に、ミュージカル『ライオン・キング』の演出で名をあげたジュリー・テイモア監督が挑みました。『アクロス・ザ・ユニバース』は、33曲のビートルズナンバーを俳優たちが吹替無しで歌いこなしたミュージカル映画。登場人物名もジュード、ルーシー、サディ、ジョジョなどビートルズ曲にちなんでおり、ビートルズファンにはこたえられない仕上がりとなっています。

この映画の全米公開前、ちょっとしたトラブルが起こりました。製作会社レボリューション・スタジオの会長ジョー・ロスがテイモア監督の許可なしに、オリジナルより30分短いバージョンを製作し、試写を行ったのです。テイモア監督は自分の名前をプロジェクトから取り下げることも辞さないと激怒。一方、ジョー・ロスのほうも、「ハリウッドではよくやること。4500万ドルの映画(おそらくこの映画のこと)を作るのと1200万ドルの映画をつくるのとはやり方が違うのは当たり前。彼女の反応は大げさだ」と一歩も譲らぬ姿勢。数ヶ月間の衝突後、テイモア監督のfinal cutが劇場公開されることになりました。

参考 ビートルズ由来のミュージカル映画をめぐり、監督とスタジオが激突!

上映時間をめぐる映画スタジオと監督の衝突(ちなみに、この映画の上映時間は133分)。あまりにもよく聞く話で、1映画ファンとしては無条件で監督サイドに肩入れしたくなるのですが...。『アクロス・ザ・ユニバース』に限っては、スタジオの判断のほうが正しいと思わざるをえませんでした。この映画、無駄に長いのです。

1960年代のアメリカ。ジュード(ジム・スタージェス)とルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)の恋愛そしてジャニス・ジョップリンとジミ・ヘンドリックスを彷彿させるセディ(デイナ・ヒュークス)とジョジョ(マーティン・ルーサー・マッコイ)、この2つのカップルと大学を中退し、徴兵されてしまうマックス(ジョー・アンダーソン)、彼らを軸にストーリーは展開していくのですが...。

ストーリーに関係ないキャラクターも出てきます。
まず、T.V.カーピオが演じたプルーデンス。“Dear Prudence"という曲を使いたいがために設定された、バイセクシャルの女性です。最初、 "I Want To Hold Your Hand"をしっとりとしたバラード調で歌い上げますが、この場面うざいだけ。カットしたほうがすっきりします。

また、Dr. Robert を演じたボノ。『マジカル・ミステリー・ツアー』を連想させるヒッピーの親玉みたいなキャラクターで” "I Am the Walrus"を歌います。ビートルズファンへのサービス、かつ60年代の象徴のひとつとして登場させたのでしょうが...。あまり必要な場面とは思えません。ちなみに現在、テイモア監督はボノと組んで、あの『スパイダーマン』のブロードウェイ・ミュージカル化に着手しています。ピーター・パーカー役とメリー役にはジム・スタージェスとエヴァン・レイチェル・ウッドの出演を希望しているとか。 どうせなら映画版をこのキャストに変えてみては?

ジュリー・テイモア監督は、先に使用する曲をきめ、その歌詞にあう物語をつくりあげていったそうです。上記の例もそうなのですが、あくまでその曲を使いたいから無理矢理挿入した、としか思えない場面が結構あるのです。一番残念だったのが、名曲"Let It Be"の使い方。ベトナム戦争と、1967年のデトロイト暴動の犠牲者への哀悼歌として歌われるのですが、あまりにも唐突に登場するため、映像が何を描いているのかを理解するのが精一杯。楽曲の良さを味わう余裕を与えてくれませんでした。"Let It Be"に限ったことではありません。映画全体としてみても、物語が自然な流れで進行しないため、歌にも登場人物にも今ひとつ感情移入できないのです。

個別にみれば面白い場面はいくつもあります。
ジュードやマックスらで歌われる"With A Little Help From My Friends"
RENT/レント』(2005)に比べて、はじけ方が足らない気もしますけどね。また、ジョー・コッカーがしわがれ声で歌う"Come Together"はさすがの迫力でした。♪Love lift us up where we belong〜♪だけのおじさまじゃありません(古い!)。マックスが徴兵される場面で使われる"I Want You (She's So Heavy)" 。徴兵され、パンツ1枚にされた男たちが、自由の女神像を持ち上げて歩く映像は舞台的です。

テイモア監督の前作『フリーダ』主演女優サルマ・ハエックもカメオで登場します。サルマはこの作品への出演を熱望し、めでたく"Bang Bang Shoot Shoot Nurses”の役を獲得。にもかかわらずサルマは「この中のたったひとりが私なの?」とのたまわれました。サルマ様のディーバ要求ゆえ、観客は"Happiness Is a Warm Gun"のメロディにのせて5人のサルマと向き合うはめになります。サルマの顔が川中美幸に見えたのは私だけでしょうか?

ビートルズにしては珍しい政治的メッセージソング"Revolution"はもちろん使われています。この曲はジョン・レノンがヴェトナム戦争について発言する時期がきたと考えて作った曲。2バージョンあり、シングル『ヘイ・ジュード』のB面(死語?)では歌詞が「革命に俺を巻き込まないでくれ」、アルバム『ビートルズ』の中では「巻き込まないでくれ、いや仲間に入れてくれ」となっている。正反対ともとれる歌詞の相違についてジョンは「どうすればいいのかわからないということだ」とコメントしています。映画がどちらのバージョンを採用しているかは観ればすぐわかりますね。

さて、ラストに近づくと錯乱気味の物語をまとめなければなりません。



-----警告!ネタバレあり。結末に触れておりますので点線内は映画鑑賞後にお読みください!-----


"Hey Jude"、"Don't Let Me Down"そして"All You Need Is Love"、"Lucy In The Sky With Diamonds"と一気に畳み掛けてきます。ここでグッときて”この映画最高!”になった人も多いでしょうね〜。ビートルマニアの人には説明不要でしょうが、この場面は、1969年1月30日にビートルズが実際に行ったアップル社屋上でのゲリラライブへのオマージュですね。映画『レット・イット・ビー』撮影のために行われ、1966年8月以来コンサート活動を中止していたビートルズにとって最後のライブ演奏となりました。映画同様、警察官が屋上までやってきたのですが、すぐに演奏をやめさせるようなことはせず、逮捕などの処置はなかったようです。"Don't Let Me Down"は実際に演奏された曲のひとつ。ビートルマニアは、"All You Need Is Love"が醸し出すハッピーエンドより、"Rooftop Concert"を物語のラストに据えた演出に心動かされたのではないでしょうか?

The Beatles, Get Back (Rooftop Concert)


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お約束のハッピーエンドでカタルシスを得ることが好きな方はこの映画を気に入ると思います。大ネタ、小ネタ満載なのでコアなビートルズファンの方は大満足でしょう。ビートルズについての映画ではないので、自分のような有名曲しか知らない人でも十分に楽しめます。ただ個人的には、物語の流れがあまりに悪いので豪華なPVを33曲分見せられたという印象が強い。ミュージカル映画ならではの、"歌と物語の融合"を味わうことができなかったのが残念です。
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アクロス・ザ・ユニバース@映画生活

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2017.09.24 Sunday | 03:32 | - | - | - |

コメント

こんばんは☆moviepadさん

観られましたね〜♪
わたしこれすごく気に入りました☆
へぇ、サルマハエックは熱望して登場だったんですね、
5人のサルマ笑えましたけどそういう経緯だったんだ〜
確かに!川中美幸似てるかも(笑)

ビートルズのナンバーが新しいアレンジですごく曲も気に入りました♪
2008/08/18 12:50 AM by mig
migさん、こんばんわ

サルマネタのsourceは英語なので
詳しいことはわからないのですが
たぶん「ちょっと出してよ」くらいの雰囲気だと思いますよ。
ルーシー役やらせろとは、さすがのサルマも言わないでしょう(爆)
もしかしたら、サディ役を狙っていたのかもしれませんが...。

5人のサルマを見ながら、この顔誰かに似てる...とずっと思い悩んでおり、
鑑賞後にやっと気づきました。
おかげさまで検索キーワード"川中美幸"でこの記事にアクセスがあります。
申し訳ない気持ちでいっぱいですが...。

映画は点数にすると70点くらい。
ただし、クオリティは50点で、残り20点は主観による水増しです。
記事に書いたとおり、PVビデオ集を見ているような感じでした。
個々のPVは楽しんだのですが、映画作品としては...
というのが正直な感想です。
またしても少数派意見のようですが(^^;
2008/08/18 1:26 AM by moviepad
こんにちは。
ビートルズは、有名な曲しか知らない自分ですが、この作品は気になってました。
moviepadさんの書かれているように、PVを観るというような気持ちで観ようかと思います。
自分はベスト盤しかもってないのですが、もう一度、じっくり聞いてから映画館に足を運びますね。
2008/08/18 7:20 AM by
亮さん、こんにちわ

僕もビートルズのCDは「1」しか持ってません。
この映画はおとしどころでは有名曲を使っているのですが、
それ以外はマニア向けの選曲がなされているようです。
おかげさまで、知らない曲がたくさんありました(^^;

でもビートルズについての映画じゃないので
予習はいらないですよ!

監督はミュージック・ビデオの作り方を
かなり意識した、とインタビューで言ってました。
PV集だと割り切って鑑賞すれば,
それなりに楽しめる作品です。
鑑賞後、ぜひ感想を聞かせてください!
2008/08/18 6:33 PM by moviepad
moviepadさん、こんばんは。
ずいぶんご無沙汰してしまった気がします・・・

この作品、東京では上映終了してようやく田舎でロードショーになりましたよ(苦)
スワロもようやくお目にかかりましたが・・・
見る前の期待が大き過ぎたのでしょうか。
見終わった後の感想は「期待以下」でした。

スワロもmoviepadさん同様、
唐突な展開、説明不足、無意味なシーンの挿入を感じました。
頭の方の「I Want To Hold Your Hand」は本当に要りませんね(苦笑)
ただ、歌としてはオリジナルよりもこちらの方が好きです(苦)
「Let It Be」では同じことを感じました。
本当に残念です。

ただ・・・
『RENT』と比較するのは酷です(苦笑)
2008/10/22 9:10 PM by swallow tail
swallow tailさん、ご無沙汰しております。

これ、自分もかなり期待していたんですよ〜、
製作発表のニュースを目にしたときからずっと日本公開を待ちわびていました。

当方「期待以下」どころが絶望の淵に突き落とされました。
リアルタイムで観たミュージカル映画中、最悪の出来!
(ついにはっきり書いてしまった...)
↑で70点なんて言ってますが、この映画、中身が空虚すぎるので
時間がたてばたつほど印象が悪くなる...。

>ただ、歌としてはオリジナルよりもこちらの方が好きです(苦)

この映画、熱心なビートルズファンには概ね好評のようですが、
「これより出来のいい、ビートルズカバー集など山ほどある」
という意見もありました。

>「Let It Be」では同じことを感じました。

PVが別の曲に切り替わったか、と思うくらい
物語の流れを無視した形で出てきましたね。
60年代を描くのもこの映画のテーマのようですが
ストーリーに関係ないデトロイト暴動をいきなり出されても...。

>『RENT』と比較するのは酷です(苦笑)

おっしゃるとおりです。
『RENT』の、居酒屋?でのはじけた場面、無茶苦茶好きなんですよ〜。
アレに比べるとこっちは...
暗がりでヘタレお遊戯してんじゃねーよ!って感じでした(爆)
2008/10/22 10:12 PM by moviepad

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